青学の人々




  No.2Writing 桜乃

7月○日 月曜日  快晴


 今日は。青学女子テニス部の竜崎桜乃です。今は夏休みですが、都大会で惜しくもベスト8止まりとなり引退してしまった3年生に変わって1年生も本格的な練習が始まりました。とはいっても全国大会間近となった男子ほど大変ではないんですけどね。
 ―――リョーマ君スゴいなー、まだ仮入部なのにレギュラーの人たちと一緒に全国大会まで勝ち上がっちゃった。何回か補欠だったけどほとんどの試合に出たしね。
 男子も今隣で練習してます。本当に真剣そう。
 ・・・・・・休憩ないのかな? さっきからずっと練習してる。大変そう・・・
 ちょっと声かけちゃおうかな・・・・・・。「お疲れさま」くらいいいよね・・・・・・?
 「リョーマ―――」
 「みんな、お疲れ様」
 え? あれ? あの人・・・・・・
 「―――お? どーした。橘妹じゃん!」
 「だから私には『橘杏』っていう名前があるのよ、モモシロ君」
 フェンスの入り口で桃城先輩と話してるあの女の子、そういえば地区予選の日に会ったけど・・・・・・あ、思い出した。確か・・・
 「にゃ? 桃、彼女?」
 「へえ、他校に彼女か。やるね、桃」
 「って英二先輩も不二先輩もふざけないで下さい! コイツは―――」
 「誰なんスか?」
 「・・・ってオイ越前、お前何度も会ってるだろ・・・?」
 「そーっスけど、名前とか聞いてないし」
 「あ、そっか! お前肝心な時はいなかったしな。コイツは―――」
 「不動峰中2年の橘杏です」
 「不動峰中!?」
 「橘!?」
 「ってことは・・・・・・!!」
 驚く他の人たちに杏ちゃん―――って言ってもいいのかな?―――はいたずらっぽい笑みを浮かべて、
 「兄たちがお世話になってます」
 『えええええええ!?』
 みんな騒いでいるけど、その中で驚いてなかった(まあ知ってたんだから当り前だけど)桃城先輩が話し掛けてます。
 「んで? 今日は何しに来たんだ?」
 「ええ。不動峰[ウチ]も青学も全国まで上がれたし、関東でも対戦できなかったけどお互い頑張ろうって言う事で・・・
  ―――ハイこれ、差し入れ」
 レジのビニール袋? 何入ってるんだろ?
 「おお!? さんきゅ!」
 笑顔で取ろうとした桃城先輩から杏ちゃんは袋を遠ざけて―――
 「という訳で差し入れを持ってきましたのでよろしかったらどうぞ」
 「あ、ああ。すまん・・・」
 あ、杏ちゃんの笑顔って可愛い。手塚部長もなんか照れてるような・・・・・・。
 「にゃににゃに? にゃに入ってるの?」
 「袋の周りについた水滴と袋のふくらみ具合、それと割と軽そうな所からすると中身はアイスといった所だろう」
 「す、凄いね乾。そんな物まで予想できるわけ?」
 「しかも当たってるし・・・・・・」
 「しかし、本当にもらっていいのか?」
 手塚部長がなんか確認してる。なんでそんなに慎重になるのかしら?
 けどそんな部長を前にしてもくすりって笑ってる杏ちゃんもスゴいなあ・・・。ってなんか論点ずれてるかも・・・・・・。
 「この暑い中頑張って熱中症、とかになったら大変でしょう? ただの鼓舞ですから気にしないで下さい。お互い最高の条件で試合したいですし」
 「なるほど・・・・・・。
  なら橘に伝えておいてくれないか。『全国では今度こそ対戦しよう』と」
 「ハイ。わかりました。お兄ちゃんたちも楽しみにしてますよ」
 「そうか・・・・・・」
 そう言ってまた綺麗に笑う杏ちゃん。きっと本当に楽しみなんだろうなあ・・・。
 「―――では全員休憩! 
20分後に練習再開! 練習内容はそれまでどおりだ!」
 「うわーー!!!」
 「や〜っと休憩だ〜〜!!」
 やっぱり疲れてたみたい。みんなその場に座り込んでる。
 けどレギュラーの人たちは違うみたい。まだ元気そうに袋の中を覗き込んでたりする。





 「あ、俺コレも〜らいっ!」
 「あ、こら英二!」
 「けどこっちも捨てがたいにゃ〜・・・」
 「一応一番上なんだから下を優先してやれよ・・・」
 「いいじゃん先輩優先でv それより大石〜、コレとコレどっちがいい?」
 「(ため息)じゃあ俺はこっちにするから英二はそっちな」
 「半分くれんの? わ〜いvv んじゃ後で交換しようね〜vv」
 「はいはい(ちょっと苦笑)」



 「海堂、お前は何を選ぶんだい?」
 「別に何でも・・・って何メモしてるんですか!?」
 「これも立派な『データ』だからね」
 「何処がっスか!!」
 「個人の性格や思考パターンを分析する上で、『嗜好』というのは大きな手ががりとなる場合が多い。ならば俺がこのデータを取っておくのも当然だろう?」
 「・・・・・・なら当然他の人の分も取るんスよね?」
 「・・・・・・。ああ、そう言えばそうだったね」
 「・・・・・・(睨)」



 「あれ? 越前君チョコモナカにしたの?」
 「・・・変っスか?」
 「ううん別に。ただ和風が好きな君なら小豆か宇治金時にするかなあって思って」
 「別に。それに先輩だって宇治金時のかき氷じゃん」
 「ああそうだね。ふふ、僕だち気が合うねv」
 「//・・・何がっスか」



 「手塚は取らないのかい?」
 「ああ、俺は最後でいい」
 「だめっスよ部長! それにタカさんも! そうしたらいつまでたっても俺が取れないじゃないですか!!」
 「・・・構わず取ってる奴らもいるが・・・・・・」
 「いやけどアレって、なんか相方に脅されて取ったような・・・・・・」
 「・・・・・・。まあとにかく! 先輩達がお先にどうぞ!」
 「なら俺はこれをもらおう」
 「じゃあ俺はこれかな」
 「そんで俺は・・・・・・あれ? 橘妹。コレ本数足んなくねーか?」
 「まあさすがに中学生のお小遣いじゃ全員分は買えなかったけどね。昨日はお兄ちゃんたちにもあげたし。
  けどレギュラーの人たちとあとモモシロ君の分はぴったりあるでしょ?」
 「んじゃお前の分は?」
 「私? 私はいいわよ。運動してた訳じゃないし」
 「ンなの悪りーだろ? せっかく買ってきてもらったってのに」
 「いいわよ。飲み物は家から持ってきたし」
 「よくねーだろ? よくねーよ。 なら俺とお前で半分こだな。よし決定!」
 「え? いいわよそんな・・・・・・」
 「いいって。レギュラーじゃねーのにアイスもらって他の奴にも悪いしな」
 「モモシロ君・・・・・・」





 ・・・・・・なんかところどころ妙なやり問いがあったような気がするんだけど・・・、まあ気のせいよね。
 きっとこれからみんな仲良くアイス食べるのね。男子レギュラーの人達ってみんな仲良さそうだし。・・・ってあれ?





 ベンチに座って食べてるのは菊丸先輩と大石先輩。
 「大石〜、そっちのアイスおいしい?」
 「ああ、おいしいよ。一口食べてみるかい?」
 「いるいる!!」
 そういって菊丸先輩は大石先輩の手に持たれたアイスを直接一口かじって。
 「うま〜vv やっぱそっちも選んどいてよかった〜vv
  あ、大石。んじゃこっちもど〜ぞv」
 「さんきゅ」
 ・・・アイスの食べさせ合いって、男の子同士でも普通にやるのかしら・・・?



 フェンスにもたれて立ってるのは乾先輩と海堂先輩。
 「どうだい海堂。アイスの味は?」
 「ンなもん誰が食べたって同じじゃないっスか?」
 「そうかい? けど俺はそのアイス食べた事ないから―――」
 その言葉になんでか海堂先輩がびくりとしてアイスを遠ざけるように上に上げたんだけど・・・。
 「残念。俺とお前の身長差は
11cm。今の言葉で気付いたのはさすがだけど、本気で俺から遠ざけたければむしろ下に下げた方がいいよ」
 挙げた手をあっさり掴まれて一口食べられて。硬直してる海堂先輩の口元に自分のアイスを近づけて乾先輩が笑ってる。
 「うん。なかなかにおいしいね。お礼に俺の分もどうだい、一口?」
 「けっ・・・・・・」
 あ、海堂先輩そっぽ向いちゃったけど、それでもその前に一口食べてたような・・・・・・。そう見えただけかな?



 コート脇で立ってるのは―――というか移動してないのが手塚部長と河村先輩。
 「・・・・・・」
 「・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・今日もあついね」
 「・・・・・・。そうだな」
 「・・・・・・」
 なんか会話がほとんどないんだけど・・・。何か考えてるのかしら?



 乾先輩達がいるのとは逆のフェンスで食べてるのは桃城先輩と杏ちゃん。
 「お? んじゃ約束どおりな」
 「なら遠慮なくv」
 「・・・ってああ! お前かなりいったなー!?」
 「(モゴモゴ・・・)ごちそうさまv」
 「このアイス、ゴンデンスミルク上の方ちょびっとしか入ってないってのに〜・・・・・・」
 「おいしかったわありがとうvv」
 「俺はちっとも嬉しくねーーー!!!」
 「まあまあ。じゃあ帰りにそこのバーガーショップでチーズバーガー奢ってあげるから」
 「ホントか!?」
 「ええ。ただしポテト奢ってねv」
 「ってそっちの方が高いじゃねーか!!」
 なんかすっごいコイビトっぽい。あの2人って付き合ってるのかなあ?
 いつか私もリョーマ君と・・・・・・v
 ――なんて恥ずかしい///



 あ、リョーマ君発見。コートの脇に座ってた。隣は・・・・・・不二先輩。
 リョーマ君は黙々と食べてるけどそれを見てる不二先輩はなんか凄く嬉しそう。いつも笑みを浮かべてるけど、今日は回りの雰囲気まで柔らかい・・・。
 「あ、越前君。ここモナカついてるよ」
 「え? どこっスか?」
 「ココv」
 そう言って不二先輩はリョーマ君の顎を引き寄せると頬をぺろりと舐め・・・・・・え?
 「どーも」
 なんでリョーマ君そんな事されたのに平然としてるの? それともアメリカではそのくらいよくある事、とか?
 「ねえ越前君。そのアイスおいしい?」
 「何だやっぱりこっちが欲しかったんスか?」
 「う〜ん、こっちもいいけどね。くれるの?」
 「1口くらいならいいっスよ」
 「じゃあ『1口』v」
 また、不二先輩はリョーマ君を引き寄せて、今度は口にキスして・・・・・・
 「ん・・・む・・・・・・」
 いくらアメリカ帰りだからって、こんな事しないよねえ・・・・・・
 「―――おいしかったよ。ありがとう」
 何もなかったみたいに笑う不二先輩。リョーマ君も口の端に少し流れた唾液を指ですくって舐めてから、いつもの不敵な笑みを浮かべて、
 「んじゃ先輩のも『1口』下さい」 
 「いいよ。じゃあまずは『1口』ね」
 よくわからない言葉と一緒に先輩はプラスチックのスプーンで1口分すくって、それを口の中に入れた。待ちきれなかったみたいにリョーマ君が先輩の右手を掴んで無理矢理スプーンを口から出して、今度は自分から向かっていって。
 ディープキス、っていうのよね。口と口で触れ合うだけじゃなくて舌まで入れる深いキス。嫌々じゃなくて、リョーマ君、自分からやってた・・・。不二先輩に・・・・・・










  No.2続き.Writing 杏

 今日は。さっき桜乃ちゃん―――って私も呼んでいいわよね?―――が紹介してくれたから今更だけど、不動峰中2年の橘杏です。桜乃ちゃんがなんかあったみたいで書けないようだから、ここからは私が書くわね。
 えっと、差し入れした時の事よね。みんなに喜んでもらえてよかったわ。手塚君には妙に思われたみたいだけど、まあいきなりライバル校の人が練習中に入って来て差し入れなんてしてきたら変に思って当り前よね。けどホント、不動峰はみんな青学との試合、楽しみにしてるんだよv
 まあともかく、まずは菊丸君と大石君ね。ウチのダブルスも割と仲いいほうだけど(っていっても一番仲いいのは神尾君と深司君かしら? 一応あの2人もダブルスやるけどね)さすが黄金コンビ、仲いいのね。もう恋人って言っても良さそうなくらい。実際そうなんじゃないかしら?
 次は乾君と海堂君ね。そう言えばウチとの対戦のときもあの2人なんか話してなかったかしら? けどどちらかというと乾君が海堂君を追い掛け回してるって感じね。確かに海堂君って堅そうだし、さっきの様子じゃ照れ屋みたいだから難しそうね。でも脈はありそうだけど・・・vv
 それで手塚君と河村君・・・・・・この2人は多分傍観してたんでしょうね。是認否認せずただ見守る、というより干渉せずに見てるだけ。
 あ、私とモモシロ君の事も書いてあるわ。へえ、『コイビトっぽい』か。けど残念。まだ私とモモシロ君はただの友達よ。時々偶然会っては話したりする位のね。そのうちどうなるかわからないケド?
 で、問題の越前君と不二君ね。クス、やっぱり桜乃ちゃんって越前君の事好きなのね。以前の不動峰戦も怪我した越前君に駆け寄ってたし。けどあれは知らなかったとはいえ越前君には逆に悪印象に映っちゃったでしょうね。まああんな怪我したらつい駆け寄っちゃいたくなるでしょうけど。
 あれだけ人前でやればあの2人は恋人決定ね。しかもお互い周りに牽制してたし。どうやら桜乃ちゃんは気付いてないみたいだけど、今不二君あなたの方見て冷笑浮かべてるわよ? むしろ気付かなくて幸運だっていう考え方もあるけど。これでおおかたテニス部のライバルは潰せたでしょうね。けど越前君と不二君か〜。似合わないような納得できるような。
 あ、終わったみたい。





 「さて、早くアイス食べないと休憩時間終わっちゃうね」
 「そうっスね」
 あらあら、そう言って2人とも何もなかったみたいに食べてるわ。周りはそれどころじゃないのにね。
 ―――尤も一部例外あり、ってね。



 「うにゃ〜。おチビだいたん〜vv」
 「って英二、これじゃ俺たちはただのデバガメ・・・・・・」



 「やるなあ越前。お前もこのくらい積極的だといいのに」
 「大きなお世話っスよ」



 「・・・・・・・・・・・・(眉間の皺普段の5割増〔当社比〕)」
 「グラウンドはせめて
50周くらいにしてあげなよ?」





 「じゃ、行きますか」
 「そうだねvv」
 「練習内容が同じってことは、また紅白戦っスかね?」
 「対戦出来るといいね」
 「そーっスね」





 どうやらみんな公認みたい。桜乃ちゃんの『青学レギュラーは仲いい』って言うのは間違いないみたいね。
 「じゃ、頑張ってね、モモシロ君!」
 「おう! んじゃまた後でな!!」
 桜乃ちゃんはまだ戻ってこれないみたいだけど、また練習始まるみたいだから日誌はこれで終わりにするわね。
 ―――私? 別にいいんじゃないかしら。ああいう形でも仲がよければ。












 なんだかまとまりのないまま終わります。しかし『No.2』に三つ編み少女か・・・・・・.まあ杏ちゃん出せたから良いけど。あ、女子キャラなら朋ちゃんのほかに杏ちゃんも好きです。桃とのCPもいいなあ。なんか中学生っぽくて。この話じゃ微妙に杏が子悪魔チックだったけど。けど甘々じゃなくて砂漠の―――むしろ密林のオアシスみたいに爽やかにサバサバと、がこの2人の特徴っぽいような。ちなみに密林はもちろん他のバカップルら(失礼)ですな。杏ちゃんあっさり肯定してくれたよ。不動峰にも多いんかい!?
 そう、話は戻って
No.2。予告じゃ裕太編だったんですが、ちょっと(またも)長すぎるためこちらを先に。
 ところで桜乃の一人称は書きにくい。どこまで乙女入れていいのかわからん。それに引き換え杏のは書きやすかった。やっぱ『サバサバと』はいいねえ。これで合ってるのかよくわかんないけど。
 では彼女にはこれからも不幸になっていただきましょう! それでは!!

 夏でアイスで口移し。いや〜v バカップルの王道〜〜vvv けどどーせやるなら牽制もしちゃいましょう、と言う事で出来た今回の話。とはいっても今回他は大菊(たとえ誰が見ても菊大であろうとこれは大菊)・乾海・桃杏、あとは傍観者なのでやっかいなライバルはいなさそうですな。ザコ大勢といった程度。え? もちろん桜乃もザコでしょ。王子が完全アウトオブ眼中(死語)だし。あ、ところでこれどっちが攻?

 では今度こぞ思い残す事は何もない! っていうかいい加減切り上げて裕太話を書けっての!!

 あはv まだ思い残す事がありました。というか『勝手に設定』だったのですが、これが無いとこの話微妙にワケわかんないことになります。ハイ、不二様の好きなアイスですね。彼はチョコモナカ好き、という事でお願いします。好みのリンゴに合わせてリンゴシャーベットっていう手もあったんですけど、それじゃ口元にはつきにくい。は〜、お互いあくまで相手の好きなものを取る。口移しのため。・・・・・・バカップルですな。ええ全く。カキ氷って口の中で即溶けるんじゃ、とか一度湿気たモナカはマズいだろ、とかそんな突っ込みは無いとありがたいです。まあ液体だろうがしわしわだろうが好きな人からの口移しなら関係
Nothing!! ってとこですか(聞いてどーするよ・・・)? ちなみに桃杏の食べてたアイスは棒状ので上1/4以下がゴンデンスミルク、残りが和風のカキ氷で周りがミルクアイスという実際売ってる物件です。ゴンデンスミルクなくてもおいしいですよ。ただ損した気分になるだけで。



 ではこれにて。

200299