Wake Up ! Wait Lap !!
ガチャ―――。
乾:「この映像記録は、夏合宿の当番制を利用して、我が青学レギュラー陣の寝起きの様子を撮影したものである。
寝起きこそが人の最も無防備無警戒な瞬間。
本人も気が付いていない、テニスプレイに大きく影響を与える、潜在意識化の各種のファクターがそこから読み取れるのだ。
これは貴重な記録になるに違いない。
さて、不二。
昨日は先に気づかれたというアクシデントのため撮影に失敗したが・・・・・・。
―――今日は大丈夫だろう。なにせいつもの起床時間の30分も前なのだから。
さあ、今日こそ見せてもらうぞ。お前の素顔を・・・・・・・・・・・・」
ふふふふふ・・・と笑いつつ、カメラ片手に不二の眠るベッドへと忍び足で近づく乾。
乾:「よしよし。寝ているな。
まさか昨日と同じように寝たふりなどしているわけはあるまい。あいつが同じ手を、それも2回連続で使う確率など0%だ・・・」
彼の言葉を証明するように、不二の呼吸のストロークも実にゆったりとしたものだった。
乾:「では・・・拝ませてもら―――ん?」
無防備な主を護るべくきっちりかけられた布団を無遠慮にまくろうとして、ふと乾が首を傾げた。
乾:「膨らんで、いる・・・・・・?」
横向きに眠る不二。そのおなか部分が妙に膨らんでいる。
訝しみ、視線を下に落とす。布団を一通り嘗め回し、
乾:「体を丸めて―――いるわけではない」
膨らんだ布団が見せる不二のシルエット。間違いなく彼は脚を伸ばしている。
乾:「菊丸のように、枕を抱いて―――」
言いかけた言葉が、またも止まる。眠る不二の頭の下には確かに枕がある。当然のことながら、枕は1つのベッドに付き1つ。1人部屋である以上この部屋に他に枕はないし、クッション等の類似品もない。
乾:「まさか越前のようにペットを持ち込んでいるのか・・・・・・?」
だが、だとしたら彼は何を持ち込んでいるのだ? 不二の趣味は写真とサボテン集め。調べた限り彼の家ではペットの類は一切飼っていない。
暫く悩みこみ―――
乾:「――――――まあいい。百聞は一見にしかず。要は見てみればいいんだ。
では、
―――待たせたな、不二。いよいよ見せてもらおうか。お前の全データを・・・・・・・・・・・・!!」
ばっ―――!
乾:「――――――!!!」
布団をめくる。その先に見えた、あまりの光景に―――
乾はカメラを構えたまま、撮影も観察もデータ取りも全て忘れて硬直した。
無機質なカメラの向けられた先、そこには当たり前のことながら不二がいた。昨日にも増した笑顔で眠る不二。
そして―――
『膨らんだ』、おなか部分にはリョーマが抱きついていた。
とでもいうのか、絡み付いていた。まるでそれこそ抱き枕を抱くかのように。暑いからなのかなんなのか、パジャマのズボンも穿かず、すらりとした足を惜しげもなく見せびらかして絡みつく。
抱かれた不二は不二で、片手をリョーマの頭の下に回し腕枕をし、余った部分を頭に置き、もう片方の手は眠るリョーマを抱き寄せていた。
リョーマの体が動く。布団がなくなって寒いのか、不快な顔で呻き声を上げ、不二にさらに擦り寄るリョーマ。その体を不二が引き寄せつつ、頭をなでる。
安心したか、リョーマの眉に寄せられていた皺が消える。
再びゆっくりになるリョーマの寝息。
「―――で、いつまで見てるつもりかな? 乾」
乾:「ふ、不二・・・!!」
不二:「盗撮の次は寝込み襲い? キミのストーカーぶりも随分と板についてきたね」
リョーマの頭から抜いた肘を立て、うつ伏せのまま不二が笑っていた。柔和な笑みではなく、僅かに目を見開いた冷笑で。
慄く乾。だが彼が何かを言うより早く、
リョーマ:「う〜・・・ん・・・・・・。
しゅ〜すけ〜・・・、も〜あさ〜・・・・・・?」
さすがに隣でこれだけ動けば嫌でも気付くか、リョーマがロレツの回らない声で尋ねて来た。仰向けで両方の拳を顔に当て、目をごしごし擦る様は誰が見てもほのぼのするもので―――
不二:「ん? リョーマ君。まだ朝じゃないよ」
リョーマ:「ん〜・・・。そ〜なの・・・・・・?」
不二:「うん。だからまだ寝てていいよv」
リョーマ:「ん〜・・・・・・」
乾に向けたものとは全く違う笑みで、不二がリョーマの頭を優しく撫でた。リョーマもそれに応え、開きかけた目を閉じていって―――
乾:「えち・・・ぜん・・・・・・?」
乾の驚きの声。それを完全に無視して、
リョーマが不二の首に手を回していった。
不二:「ふふ。かわいいなあ。リョーマ君は」
リョーマに誘われるままに不二も顔を下ろしていく。
重なる、2人の唇。
リョーマ:「ふ・・・・・・」
不二:「ん・・・」
部外者別名乾を視界の外に追いやり、お互い充分キスを堪能し、
不二:「おやすみ。リョーマ君。また明日、ね」
リョーマ:「おやすみ・・・。しゅーすけ・・・・・・・・・・・・」
リョーマの言葉が切れていく.三度眠りにつく合図。
と・・・・・・
「ほぁら〜・・・」
またしても邪魔が入った。
リョーマ:「カル・・・ピン・・・・・・?」
特徴のある鳴き声に、ほとんど無意識状態で、それでもリョーマが愛猫の名前を呼んだ。ご主人にかまってもらえないのが寂しいのか、リョーマと不二を裂くかのように2人の間に入り込むカルピンを抱き締め、
リョーマ:「お前もおやすみ、カルピン・・・・・・」
―――あろうことか顔を舐めようとするカルピンの間をつき、ライトキスをした。
カルピン:「ほぁ〜〜〜」
リョーマ:「また、明日、な・・・・・・」
嬉しそうに長鳴きするカルピン。やはり嬉しそうに微笑むリョーマ。
そして―――
不二:「ふ〜ん・・・。『また明日』ね・・・・・・」
開眼でどす黒いオーラを撒き散らす不二。引きながらも撮影は忘れない乾。
なんとなくこのままだと血の雨でも降りそうな勢いなのだが・・・・・・。
リョーマ:「じゃ」
短く言い、リョーマがカルピンを放り投げた。
憐れにも飼い主に投げられながらも逆サイドをキープしそこで再び眠るカルピン。
そして、邪魔者がいなくなったリョーマは安心して再び不二に抱きついた。
リョーマ:「ん〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
そこでようやく何かに気付く。
がばっ!!
リョーマ:「い・・・乾先輩!!??」
乾:「やあ」
リョーマ:「な・・・な・・・な・・・・・・!!!」
真っ赤な顔であたふたと左右を見回すリョーマ。右にはカメラ片手に手を挙げ挨拶してくる乾。左にはいつもどおり、いや、なぜかいつも以上の笑みを浮かべた不二。
ワケがわからず、さらにうろたえる。
リョーマ:「な・・・ど・・・せん・・・? し、か・・・・・・?」
不二:「『なんで、どうして乾先輩が? しかもカメラ持って?』―――だってさ。乾」
乾:「・・・・・・恐るべき推理能力だな。さすがに今のは俺も推測のし様がなかった」
不二:「ふふ。これも愛の力だね」
リョーマ:「って! しゅ―――じゃなかった。不二先輩! 何勝手な事言ってるんスか!!」
不二:「ん? もちろん、『ありのまま』を」
リョーマ:「そん―――なワケないでしょ//////!!!」
不二:「ふふふ。照れちゃって。ホント、かわいいなあ」
リョーマ:「だから―――//////!!!!」
―――と、永遠に続きそうな会話からは身を引いて。
乾:「しかし・・・・・・まさかこんなデータが得られるとは・・・。
ふふふふふ・・・。これだからデータ取りは止められない・・・・・・・・・・・・」
そんなワケで、今朝もまたここ305号室には怪しい笑い声が響き渡っていたという・・・・・・・・・・・・。
―――この撮影は成功かそれとも失敗か!?
◎ ◎ ◎ ◎ ◎
以上。PS2ソフト『Smash Hit!』初期予約特典(?)のオリジナルアニメよりでした。あ〜vv 不二先輩とリョーマのがよかった〜〜〜vvv ・・・って他のは? はい。乾除きまだ見てません(爆)。ついでに3本買ってリョーマとその他2名のが(ヒデ・・・)ダブったおかげで菊ちゃんのと後2名(だから・・・)が手に入らなかったし!! まあいいさ。不二様のを拝見させていただけただけでも大満足さ! あ〜めちゃめちゃ絵がキレイでしたvvv
では、いよいよ来週火曜から夏休み。さ〜遊び倒すぞ(就職準備しろってーの)!!
2003.7.25
P.S.(プレステにあらず)
この話、表に置くかそれとも裏にすべきなのかものっそ悩む代物です(ウチのサイト基準にするとね)。結局企画ものなので表になりましたが、まあ2人が(どの2人とは言わないけれど)何をやっていたのか、それは皆様のご自由にどうぞ。
そういやこのタイトル。サブタイ(?)どおりめちゃくちゃに意訳むしろ異訳すると『お目覚めシーンは撮影禁止☆』。『Lap』はまあよく聞きますとおり『一周』とか『1往復』とか。『タイム』とか後につけるまでもなくそのタイム。しかし乾ならタイム取るだけで満足するワケもないでしょう。ついでに『Lap』。さりげに(じゃないだろ?)裏的には『重なる』だの『かぶさる』だのといった意味もあったり。だからどうしたとは言いませんが。そしてさらに『愛育する』なんて意味もまた。とするとタイトルは『「おはようのキス」はちょっと待ってv』か? ちょっとシリアス風味に決めるなら『Wait Lap』を『Wait Up』にすると『(寝ずに)人を待つ』という意味だそうで。とするとタイトル前半がリョーマ、後半が不二先輩となり・・・・・・果たして彼はどの時点から起きていたのか、と謎は広がる一方v
本気で毎度恒例てきと〜に決めてるタイトルなので、も〜訳は、というかはっきりきっぱりタイトルごと皆様のご自由でどうぞv ちなみに―――当り前ですがこんな英語ありませんのであしからず。
むう。追記の方がはるかに長くなってしまったところで、ではこの辺で☆