「植物って、話し掛けると良く育つのか。
  越前も、毎日話し掛けてあげたら、身長伸びるのかな?」





あ・べじたぶる





 




1日目。
 「おはよう越前」
 「ういーっス。おはようございます不二先輩」
 「今日の調子はどう?」
 「え? まあまあ、っスけど」
 「そう? じゃあ頑張ってね」
 「はあ・・・」
 たったった・・・
 「・・・・・・何だったんだ?」





2日目。
 「おはよう越前」
 「ども、不二先輩」
 「今日も暑いね」
 「そっスね」
 「熱中症に気をつけなきゃね」
 「そっスね」
 「じゃあね」
 たったった・・・
 「・・・・・・何だったんだ?」





3日目。
 「おはよう越前」
 「どもっス不二先輩」
 「通信簿どうだった?」
 「訊くんスか?」
 「あはは。その調子じゃ悪かった?」
 「けど落第はしないんでしょ?」
 「しないけど〜・・・
  ―――あんま酷いと大会出場禁止だよ?」
 「うげ。マジっスか!?」
 「青学は文武両道―――勉強・スポーツ両方出来るようにっていうのがモットーだからね」
 「う・・・・・・」
 「何だったら僕が勉強見てあげようか? 夏休みの宿題早く終わらせたら、きっと出させてくれるよ」
 「ホントっスか!?」
 「うん。じゃあ部活終わったらね」
 「ういっス!」
 たったった・・・
 「へへっ・・・」





4日目。
 「おはよう越前」
 「ども」
 「今日から夏休みだね」
 「そっスね」
 「用事は?」
 「部活でしょ?」
 「家族で出かけたりは?」
 「別にしないんじゃないっスか?」
 「そう? じゃあ僕と出かけようか?」
 「はあ?」
 「なんてね。
  今日も頑張ってね」
 たったった・・・
 「・・・・・・・・・・・・マジで期待しちゃったじゃん」





5日目。
 「やあ越前」
 「やあ・・・って、不二先輩なんでココいるんスか? 先輩ん家から結構離れてるでしょ?」
 「君に会いたくてね」
 「え・・・?」
 「ふふ。冗談じゃないよ? 毎日顔会わせてると、それが普通になっちゃってるからね。見れないと気になるな」
 「なんだ・・・。そんじゃ他の先輩達ん家も廻るわけっスか」
 「何? ずっとここにいて欲しい?」
 「まさか!!」
 「残念だなあ。他に廻る予定はなかったんだけど、そう言われたんなら廻らないとね」
 「うわあああ!!!」
 「ん?」
 「わかりましたウチ寄って下さい! 何もないっスけどリョーガのおかげでオレンジだけは不足しませんから!!」
 「そう? よかった。丁度お土産に水羊羹持ってきたんだ」
 「・・・めちゃくちゃ寄る気でした?」
 「直接行かなくてもその辺りで食べるっていう手もあるしね」
 「・・・・・・ワケわかんないし」





6日目。
 「おはよう越前」
 「不二・・・先輩・・・・・・」
 「どうしたの? 具合悪そうだよ?」
 「先輩・・・・・・。昨日の水羊羹、どこのヤツでしたか・・・・・・?」
 「ああアレ? せっかくだから僕の手作りv 寒天手に入れるの大変だったよ。サエがツテあるからってそっちから貰ったんだ」
 「何で手作りを如何にも買ったっぽく缶に入れるんスか・・・・・・・・・・・・!?」
 「ふふ。最近缶詰作りが面白くって。丁度災害対策にもなるし。
  ―――って越前大丈夫!?」
 「先輩・・・・・・、ひとつだけ言わせてください・・・・・・・・・・・・」
 「何?」
 「二度と・・・・・・
  ・・・・・・俺に食い物は寄越すな・・・・・・・・・・・・」
 「越前!? 越前!?」


 

 




 そして1週間が過ぎ、
 「おはよう越前」
 「どもっス不二先ぱ―――うおあっ!?」
 しゅるっ。
 後ろから近寄りがてら、不二は持っていたメジャー(2mまで対応)をリョーマの背中で伸ばしていった。
 とても喘ぎには聞こえない奇声を上げぞくぞくするリョーマ。赤い顔で見上げる彼を放って、メジャーを見る。メジャーに書かれた数値を。





 ―――
151cm





 「伸びないね、背」
 「悪かったっスね!!」
 首を捻り、不二がう〜んと呻いた。
 敗因は何なのだろう。これだけ話し掛けた。これでもまだ足りないとなれば後は・・・
 「直接触れ合うか・・・」
 「え・・・//?」
 物騒な言葉に顔を赤くするリョーマを、不二はきつく抱き締めキスをした。
 「ん・・・!! んうっ!」
 いきなりやられ、リョーマは焦った。周りの人ももちろん焦った。止めるべきか否か。そりゃここは観察すべきだろう。そんな腐女子の発言はいいとして。
 「ぷはあっ!!
  って何するんスか不二先ぱ―――いいい!?」
 しゅるっ。
 今度は前からメジャー攻撃。ぞくぞくぞくっ!と躰を震わせるリョーマを他所に、やはり不二は難しい顔でメジャーを見やり、
 「やっぱ伸びないね」
 「だから何!?」
 さすがにそろそろリョーマがぶち切れた。ただでさえ嫌いな身長の話。しかも何だかケンカまで売られてるっぽい。
 きつい眼差しで見上げるリョーマにようやっとそれを気付いたのか、慌てて不二がぱたぱた手を振った。
 「あ、ごめん。特に悪気はないんだ。ただ話し掛けると植物は良く育つっていうから、じゃあ話し掛ければ越前の身長も伸びるのかなって」
 「悪意バリバリじゃないっスか!! 俺は人間だししかもそーいう事情で話し掛けてきてたんスか!? 大体よく喋る人間の育ちがいいんだったら何で英二先輩より手塚部長の方が背が高いんスか!?」
 「なるほどそうか!! じゃあ次は手塚に―――!!」
 「行かないで下さい!!」
 踵を返しかけた不二を、全身を使って止める。丁度後ろにいた手塚が不思議そうな顔(推測)をしていた。
 「え・・・?」
 「あ、そのあの・・・・・・」
 引き止めたはいいがこの先どうするべきか。抱きついちゃった時点でほとんどのイイワケは無理。大体それだけ思いつくほど会話に慣れてない。
 「だからその、ホラ。
  ―――いったん育てるって決めたんだったら最後まで責任持ってよね」
 「それって・・・・・・」
 赤い顔で見下ろす不二。赤い顔で俯くリョーマ。気まずくて、でも不快じゃない沈黙が訪れ・・・・・・・・・・・・
 不二がふっ・・・と笑った。
 「そっか。じゃあ、





  一生背は伸びないでね、リョーマv」


 

 




 なお、そんな事を言いつつ一応真面目に身長アップを目指したらしい不二は。
 「じゃあさっきの続きでより親密に―――」
 「道路の真中で押し倒すな!!」
 「身長は遺伝子によりだからねえ」
 「だったら伸びるはずでしょ!?」
 「ここは基本に立ち返って牛乳を」
 「それは乾先輩で充分!!」
 「後は運動とか」
 「毎日テニスしてるじゃん!!」
 「今や懐かしぶら下がり健康法は?」
 「本気でいつの時代のだよ!?」
 「あ、骨は壊して伸びるから骨折でもしてみるっていうのはどうかな?」
 「全国出らんないだろ!?」
 とことん問題を持っていく相手を間違えたらしい。
 こうしてリョーマは、不二が持ってくる数多の『身長伸び〜る大作戦☆』から、一生逃げ惑うハメとなった。



―――Fin

 













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 7月3回目のラジプリネタ。そんな不二リョを推奨してくれなくっても(誤)vvv だってぶはっ!と来ましたよ聴いてて。テニプリ歴も早数年。様々な人に手を出していますし現在違う人フィーバーですが、それでもやっぱり不二リョも大好きv 不二が直接絡まない限り、わりとCPは不二リョを前提としてたり。幼馴染でのリョーマ乱入度が高いのはそういう事情によりです(言い逃げ)。
 (戻ってきた)あ、そうそうタイトル。野菜食う人っぽいですが、これで『植物人間(植物状態の患者)』も指すそうです。実際リョーマがそれだったらヤだなあ。日光・水・肥料それに愛情で育つリョーマか・・・。不二相手だとさぞかしでっかくなりそうだ。

2005.7.28