こんなところにあんなところに。

勝手に妄想! 不二受け劇場






  パターン1 青学対不動峰戦D2

 始まった地区大会決勝戦D2は―――いきなり青学不利の展開を見せていた。
 「・・・ってオイ。それじゃ何のために俺様たちは来てやったんだよ」
 「まあ、とりあえず冷かし兼賑やかし?」
 「それだけのために電車で2時間交通費片道
2000円以上か・・・・・・。痛いなー、俺」
 ベンチ後ろから聞こえてきた声に何気ない様子で振り向く青学一同。振り向き―――
 ―――まだ彼らを知らないリョーマ除き、全員がずざざざざっ! と後ずさりした。
 「跡部・・・!!」
 「それに、千石に佐伯まで・・・」
 「にゃ、にゃ、にゃ、にゃんで・・・!!??」
 驚く一同に気付いた周りの者もそちらを見やり――――――さらに激しく慄き後退していった。
 「な、なんでこんなところにコイツらが・・・!?」
 「ウソだろ・・・? いくら青学の偵察だろうがまだ地区大会レベルじゃねえか・・・!!」
 そこにいたのは、ごく普通のジャージ姿の3人だった。まあ頭の色が金茶色だったりオレンジ色だったりそれこそ金髪だったりで目立ったりとかもしているが、それらを除けばごく普通の中学生だった。・・・・・・彼らの正体さえ知らなければ。
 「誰っスか?」
 リョーマが先輩らに尋ねるのと、
 「誰だ? アイツら・・・」
 同じく知らない神尾が誰にともなく呟くのは同時だった。
 代表して、両部の部長が答える。
 「氷帝の跡部、山吹の千石、そして六角の佐伯。あいつらは関東でも指折りの強豪校のレギュラーだ」
 「だけじゃない。跡部と千石といえば去年の
Jr.選抜に選ばれたほどの実力の持ち主。特に跡部は全国区、それも全国でもトップレベルのテニスプレイヤーだ」
 「あいつらの学校は毎年関東や全国大会まで出場している。順当に行けばそのうち確実に当たる相手だ」
 「だが―――
  ―――アイツらも今日試合のはずだろう? なんでここにいるんだ?」
 橘が首を傾げた。別に試合の日は全国統一などという事はないだろうが、そこまで激しく時期をずらす地区もないだろう。少なくとも全国大会は同じ日にあるのだから。それに、彼らがジャージなのは実のところ試合をしてきたからだろう。他はともかく緒戦は5試合全て行う。これから始まる全国大会の記念すべき第1戦。いくらなんでもそれを他の者に任せてきたとは思えない(任せた部長がすぐ隣の青学にいるがそれは例外としても)。
 疑問に思ったのは橘だけではなかった。丁度チェンジコートのため移動していた不二もまた、騒ぎに気付き驚きの声を上げていた。
 「跡部! サエに千石君まで!!」
 「よお」
 「やあ周ちゃん。久しぶり」
 「不っ二く〜んv おっ久〜」
 目を見開く不二に手を挙げ軽く挨拶する3人。慣れた様子に―――しかもなぜか対不二限定の挨拶に―――引いていた英二が戻ってきた。
 「え・・・? 不二、こいつらと知り合い?」
 「『こいつら』って・・・」
 「酷いな〜。菊丸」
 自分を指差し項垂れる千石、ははっと軽く笑って流す佐伯、完全無反応の跡部を端から順に指し示し、不二はラストにその指を自分まで戻して笑った。
 「ああ、言ってなかったっけ。幼馴染」
 『ええっ!?』
 初めて知らされた衝撃の事実に周りがさらに引いていく。が、それは気にせず。
 「でもなんで3人ともここに?」
 「そりゃもちろん」
 「試合見に来たよんv」
 「つーかてめぇがサボってねえか監視にな」
 「って跡部ちょっとその言い方酷くない?」
 「どこがだ。現にサボりまくってんじゃねーか」
 「サボってないって。でもそれならむしろ君達3人は? 今日試合だろ?」
 「ああ、試合だったよ」
 「緒戦だけ終わらせてこっち来たよ。クジで全部S1当てといたからね」
 「俺は緒戦だけD2。さっさと終わらせて電車乗った」
 「そりゃ確かにS1だったらなかなか出番来ないけどさ、万が一来たら大変じゃない? 負けた挙句理由が不戦敗って」
 「ンな事にゃなんねーだろ。いくら準レギュだろうが俺様まで回しやがったらレギュラー外すどころか即刻退部だ」
 「さすがに退部はないけど・・・・・・地区大会程度で俺まで回してきたら全員シメるよ? 特に新部長」
 「ははっ。2人とも厳しーなあ。ま、回ってきたらさっさと諦めてよ。地区大会でそれだけ苦戦なんていったら全国なんて絶対ムリっしょ」
 「・・・・・・。さりげにてめぇが一番酷くねえか?」
 「うん。今の台詞はいきなり不利っぽい青学に一番痛い言葉だったんじゃないか?」
 「あれ? そーなの?」
 ボロクソに言われダメ出しまで食らい、注目される中青学ベンチはやたらと沈んでいた。あっさり無視して会話は進む。
 「え? 苦戦? してたの?」
 きょとんと首を傾げる不二。どこをどう見ても本気で言っている彼に、青学陣は肩をコケさせ周りは「あーもーつらい現実を前にまともな現状把握すら出来なくなったよ」とむしろ哀れみの篭った眼差しを送り、そして―――
 「全部てめぇのせいだろーが。まともにやれまともに」
 「だから失礼だなあ。真面目にやってるじゃないか僕は」
 「どこがだ。めちゃくちゃ手ェ抜きまくってんじゃねえか。せめて3%程度は本気でやれよ」
 「うわ。本気現消費税以下!」
 「いっそそれなら
100%フザけてやって欲しいよな・・・」
 ため息をつく2人を他所に、不二は跡部へと明るく笑いかけた。
 「やだなあ跡部。最初乗せるだけ乗せて図に乗ったところを一気に突き落とす! これほど面白いことがあるわけないじゃないか。その時の相手の絶望なんてまさに最高の快感[エクスタシー]と呼ぶに相応しい美味」
 「・・・・・・・・・・・・魔族?」
 「サエくん・・・。今この瞬間君の愛読書があっさり割れたね」
 「そーかよ。喰うんだったらさっさとやれよ。見飽きた」
 「しかも跡部くんまで詳しいし・・・」
 げんなりする千石はいいとして。
 不二はいつもどおりの笑顔で愛らしく小首を傾げた。
 「やだなあ魔族だなんて。そんな、ただ僕は自分たちを追い詰める事でより強くなろうと―――」
 「なんかどっかで聞いた理論だな・・・」
 「本気でそう思ってんならちゃんと目ェ見て話せ」
 「ちっ・・・」
 開かれる不二の目。確かに横を向いていた。
 「・・・・・・よくわかったね。完全に閉じた状態でさ」
 「ンなモンわかんだろ、普通」
 「いや多分わかんの跡部くんかさもなければサエくん位じゃないかな?」
 「そうか? よくよく見れば笑っててもどこ向いてるかなんて簡単にわかるだろ?」
 「ムリだから」
 そんなやり取りを耳に、不二は体の向きを変えた。対戦相手の2人の方―――であり同時に不動峰のベンチのある方を見やり。
 瞳を細め、薄く微笑む。誰もが知っているようで知らない、スイッチオンの合図。
 風に軽く髪を流し、
 「じゃあリクエストもあった事だし、そろそろ本気で行こうか」





 そして、不動峰の前に『天才・不二周助』が立ちはだかる・・・・・・。


―――その1 Fin






 ―――はい。勝手に妄想不二受け劇場その1でした。こんな感じで応援に来てくれるとう〜れし〜いな〜vv そして3人(不二入れて4人)の愛読書は『ス●イヤーズ』シリーズのようでした。この4人が本当に魔族なら負の心なんて喰いたい放題でしょうね。

2004.6.4