こんなところにあんなところに。
勝手に妄想! 不二受け劇場
パターン3 青学対比嘉戦S3
変則的な試合の流れを見せる全国大会。第一試合となったS3は、不二対甲斐戦だった。
試合に挑む不二。その心中は・・・決して穏やかなものではなかった。
(彼が・・・・・・オジイにボールをぶつけて、佐伯を負かした相手・・・・・・)
試合中にボールがぶつかるのはまだ仕方がない。現に自分も切原にぶつけられた。だが・・・・・・
(明らかにわざとだった・・・。オジイが何か言いかけたから、だからその口封じに・・・・・・)
ホームランとはいえベンチコーチに当たるような軌道の球はまず打たない。ブーメランスネイクのような特殊技ならともかく、全国大会にのし上がるほどに実力のある者ならば特に。
(この試合、負けられない・・・・・・!!)
その強い思いが―――
――――――かの天才のテニスに、僅かではない歪みを生み出していた。
「ゲーム比嘉!! 3−1!!」
「うっそお!!」
「不二が、リードされている・・・!?」
驚く青学一同。そして・・・
(なんで・・・だ・・・・・・?)
不二もまた、信じられない思いで手を見つめながら何度も瞬きした。
今の不二は、完全に六角メンバーの二の舞であった。怒りが冷静な判断を奪い、まともに相手の『瞬間移動』の餌食となっている。
(あるはずだ・・・。絶対あるはずなんだ・・・。攻略法が・・・・・・。
―――そうなんだろ・・・? 佐伯・・・・・・)
思い描く、先ほどの試合。結果的に負けたとはいえ、佐伯は確かに攻略法を見つけていたのだ。でなければ4ゲームも巻き返せたわけはない。
(オジイは一体何を言ってたんだ・・・・・・?)
聞こえなかったのだ。フェンスの外からでは。
今はいない―――病院へと行ってしまった幼馴染を思い描く。
(ねえ佐伯・・・。君はどうやって攻略したんだい・・・・・・?)
呼びかけても答えは返ってこない。応えも一切。
彼はここにはいない。答えを出すのは自分自身だ。
わかっていて、それでも・・・・・・
不二の目が一瞬下に落ちる。気付き、
―――甲斐は唇の端を吊り上げた。
「不二!!」
「―――っ!?」
顔を上げる。目の前にはもう甲斐がいて。
(しまった・・・!!)
焦り、慌てて振るラケット。もちろんタイミングは合わない。
(またか・・・!!)
取られる。
誰もが絶望した、瞬間―――
「目ぇつぶれ!! 不二!!」
「―――っ!!」
声が聞こえた。ずっと待ち望んでいた声。無条件で抗えなくなる声。
それに従い―――いや、従うなどという事すら考えずに、反射的に不二が目を閉じた。横を駆け抜けていくボール。見えはしないが、体の脇に風が巻き起こったような気がした。
(・・・・・・・・・・・・待って)
何かがおかしい。今一瞬感じた違和感はなんだ?
目を開ける。目の前にやはりいた甲斐。自分たち2人を阻むように、空振りした自分のラケットが見えた。
―――自分のラケットだけ。
(甲斐は一体どこでラケットを振った?)
考える。この違和感。甲斐の動き。タイミングの合わなかったインパクト。
全て足せば・・・
(そう、か・・・・・・。
わかった。一部だけど・・・瞬間移動のトリック・・・!!)
・ ・ ・ ・ ・
声のした方―――真後ろに振り返る青学一同。そこには、
―――いない筈の人間が立っていた。
肩で息をする男。かいた汗を拭いながら、にやりと笑う。
「青学臨時応援団代表参上、ってな」
「佐伯!?」
「アンタどうして・・・!!」
「オジイの所に行ったんじゃないのか!?」
驚く一同を半ば無視する形で、佐伯はフェンスまで詰め寄った。コートの中では空を見て口を小さく動かす天才の姿。何を言っているのかは聞こえない。多分声には出していないだろう。
確認し、
質問に答える。
「行ってきた。でもってみんなに任せて戻ってきた」
「なん、で・・・?」
「言っただろ? 『青学臨時応援団』だって」
「だが・・・・・・」
呟く大石に、
軽く指を突きつける。
大石の言葉が止まった。睨め上げるように見つめ、
佐伯は茶目っ気のある笑みを浮かべてみせた。
「俺の小さな自慢としてな、体育祭で俺が応援した組は確実に勝つんだ。おかげで毎年俺をどこの組に入れるかで争奪戦が起こる」
「そんな事、今は関係ないだろ?」
「ないな。けど―――
―――お前には関係あるだろ? なあ、不二」
「そうだね。君が入ってくれてよかったよ」
「そうだよお前がヘンな事言い出したから点取られた―――ってええ!!??」
大石の後ろに被さり文句を言おうとしていた英二。横手・・・というかコート・・・・・・早い話がその不二からかけられた声に、驚き度合いがますます上がったようだ。
そこらは無視し、
「どう? そんなモンで」
「そうだね。出来れば解説は普通にやって欲しかったかな。あと一歩で僕も英二と同じ意見を持つところだったよ」
「天才様には俺が説明するより自分で理解してもらった方が早いかって思ってね」
「あはは。嫌味? 君の説明なら普通に聞くだけで十分だと思うよ」
佐伯の笑いながらの嫌味にやはり笑いかえす不二。もう緊張は解けていた。歪みは直っていた。それはきっと、謎が解けたからなだけではなく・・・・・・。
自分を温かい目で見守る佐伯。全身でそれを受け止め、
不二は甲斐へと向き直った。
「2重のトリックだ。二次元的な動き―――こっちの真正面から前後にきつく動く事でこちらの遠近感を狂わせ、あたかも瞬間移動したかのように見せる。しかもそれだけじゃない。一瞬の目の錯覚を利用したんだ。後ろから打ち、それから前に移動した。こちらから見れば目の前にいた相手から球が飛んでくるわけだから、当然前から打たれたと思う。どうりでタイミングが合わないわけだ。早く振りすぎだった、と」
「ほお・・・」
指摘され、甲斐が軽く頷いた。否定はしない。
「で? だからどーする? トリックが見破れたとしても防げんかったら意味ないだろ?」
「あるさ。破るとっておきの方法がね」
言い、
不二は見せつけるように目を閉じてみせた。
「全ては目の錯覚だ。見なければ関係ない」
「・・・・・・はっ!!」
一瞬呆気に取られた後、甲斐が鼻で嘲った。他の者もまた然り。当り前だ。どこの世界に目を瞑ってテニスをする者がいる?
が―――
「不二、本気だね・・・」
「切原戦の再現、か・・・・・・」
かの天才なら、その無謀行為もまた可能。それは前回の関東大会決勝でまざまざと見せ付けられた。
吹き荒れる冷たい風に身を震わせる青学一同。今このコートは完全に不二のテリトリーとなった。
誰もが不二に注目する。その中で・・・
リョーマが、視線はやらないまま質問だけを横に送った。
「アンタもよくそんな事勧められたっスね」
「俺? 別に勧めてないだろうだからどうしろとは。
だから言ったじゃん。天才様には俺の説明じゃ役不足だって。俺じゃ絶対考えつかなかった攻略法だな」
「・・・ちなみにアンタ何考えてたの?」
「俺? ひ・み・つv」
「・・・・・・・・・・・・。別にいいけど」
そんなやり取りはともかくとして。
「ゲームセット! ウォンバイ青学不二!! 6−3!!」
「勝っちまった・・・」
「あれで・・・・・・?」
呆然とする会場中。中心で、
(ねえ、勝ったよ・・・?)
不二は綺麗に微笑んだ。迎え入れてくれる仲間と、そしていつも自分を見守ってくれる者へと向け・・・。
―――その3 Fin
―――甲斐のというか沖縄の方言がわからん・・・。NHK連ドラは観ておくべきだったのか・・・。
はい。勝手に以下略3です。六角の強制退場となった(爆)対比嘉戦。しかしながら希望は捨ててはいけません!! 明らかにあの擬似瞬間移動を攻略した筈のサエ。なぜその攻略法がカットされたまま試合が終わったか。つまりは青学戦で明らかにするためですね。ではここで問題。青学にはぶっちゃけオジイのようなアドバイサーがいません。では青学は誰からそのヒントをもらうのか?
・・・・・・答えがサエじゃん!!! しかも今回というかの六角臨時応援団って次のコレのための前振りじゃあないのか!? 一旦は病院に言ったサエ、しかし応援してくれた青学へ礼というか借りを返すというかのためにオジイを他のメンバーに任せ試合会場へ逆戻り! 戻ったところでちょうど不二の試合!! まどわされ不利となった不二へ叫んでアドバイス! かつての対切原戦ラストのリョーマのように!! ここで本気でサエ登場したら私泣きますよ!? もーサエってば漢すぎ!! 想像するだけでカッコよすぎ!!!
そうそうこれは補足しておかないと。肝心のオジイが倒れた回、読み損なったため(泣)理由がわかりません。一応瞬間移動のヒントを言おうとして甲斐にボールをぶつけられたという展開を予想して話をつくってます。実際と違うと思われますがすみませんそれこそただの妄想で。
なお余談として、ウチのサイトではサエに対して甘え口調の入る不二が、今回妙に男っぽい(笑)です。深い意味はないのですが一応なるべく原作に沿った形で・・・? ちなみにだから不二とサエの仲が微妙に悪そうに見えるんですかねえ・・・(再爆)。
そしてこの話、実は書いた内容の初っ端3割程度で切っています。その後甲斐に対して復讐を果たすサエがメインなのですが(大笑い)。・・・・・・なにせ全っ然! 不二と関係なくなっていくので。なお残り7割はそんなこんなで佐伯中心の方に改めてあげます。↑の自己分析の残り部分が出てきます。
2005.1.24