プチ小説21 六角編4 〜合流点・山吹と〜



 脅迫した―――もとい親切に教えてくれた男の供述を基に原住民らのアジトへと向かう3人。辿り着いた洞窟へと、互いに1つ頷き合って入る。と―――
 「あっれ〜? サエくん。それに黒羽くんに亮くんも」
 「奇遇ですね」
 「どうしたですか?」
 「千石! 室町に壇まで?」
 そこにいたのは、恐ろしいまでに予想外の人物等だった。



 とりあえず互いに無事を確認、状況報告をする。山吹はこの洞窟での人命救助が目的『だった』らしい。
 「『だった』?」
 首を傾げる亮に、
 「諦めました」
 室町が即答した。
 「・・・・・・・・・・・・いいけどよ」



 「つまりさ、みんなって入り口から入って来た以上出口知ってるんだよね?」
 やるべき事を全て終えたところで、千石が手を上げ質問した。
 「ああ。目印つけてきたから」
 答える佐伯に2人も頷いた。佐伯によるこの発案、彼ならばてっきり中にいるヤツ適当に締め上げ出口まで案内させるとでも言うかと思ったが、割とまともな案だったため2人も賛成していた。提案者兼代表者として確かに佐伯が今までさまざまな場所に印をつけていた。
 「ホントですか!?」
 「これはまた、随分都合のいい―――」
 「あはははははは。な〜に言ってるのさ室町くんってばv」
 瞳を輝かせる太一。懐疑的な眼差し(いやサングラスに隠れてわからないが台詞からして恐らくそうだろう)を向ける室町の口を塞ぎ千石が笑顔を向けた。
 「じゃあ、それ辿れば帰れるって事?」
 一応確認。やはりそれにも頷く3人。喜び―――
 「ただし原住民たちに発見されて消されるとマズいかなって思って、もの凄く見えにくい位置にわかりにくく残しておいたけど。あと暗号形式だから外すと迷うよ。トラップ付きだし」
 『おい!!』
 そんな事をホザく佐伯に、5人揃って突っ込みを入れた。
 「つまり何か!? お前が死んだら印付けて来た意味0って事かよ!!」
 「別にいいじゃん。仮にそうなったら中にいるヤツ適当に締め上げて出口まで案内させればいいんだし」
 「結局そこに落ち着くのかよ!?」
 「やっぱサエに任せんじゃなかったぜ!!」
 場所を無視して騒ぐ黒羽・亮に襟首を掴まれぶんぶん振られてなお平然としている佐伯。今までこんな場面が何度あったか、それに関してはもう考える気も失せるが、ただ1つだけ言える事があった。即ち・・・
 「俺達にとってはサエが切り札か・・・・・・」
 「いろんな意味で『完璧な作戦』だな・・・・・・」
 「ははっ。そりゃありがとう」
  「「皮肉ってんだよ!!!」」





 歩みを再開する。六角側にとってはもちろん前進で、そして向かいから歩いてきた事からすると、山吹側にとっては後退だろう。
 「俺達って・・・・・・もしかしてもの凄く悪い事してないか? あいつらに」
 「それは言うなよ。俺らにとっても悪い展開にしかなってねえし」
 お互い肩を叩き合い、黒羽と亮は現在先頭を歩く全ての根本原因たる佐伯を恨めしそうな眼差しで見やった。



 「ねえねえサエくん。腰に下げてんのって、もしかしてトンファー?」
 「コレか? もしかしなくてもそうだけど?」
 「へ〜。どうしたのそれ?」
 「ああ。以前襲われた時押収した」
 「それは略奪じゃ・・・・・・」
 「ん? 何か―――」
 「言ってないよ? それより見して見して♪」
 「いいぜ」
 軽く答え、佐伯が腰というより背中側につけていたトンファーを千石に手渡した。
 渡された千石は、
 「へ〜」
 暫く眺め―――次にもちろん振り回した。途端。
 ズダダダダ!!!
 「はあ!?」
 連続する何かの射出音と振り回したせいだけではない反動に、トンファーを取り落とす。地面でなおのた打ち回り、ようやくトンファーは静かになった。
 「えっと・・・・・・」
 「注意し忘れたけどさ、振り回すときはトリガーに注意しろよ」
 「はい?」
 通常のトンファーにはまずないであろうもの。トリガーがくっついたものといえばもちろんそれは―――
 「銃内蔵されてるから」
 「・・・・・・・・・・・・はあ?」
 「だから―――」
 「いやごめんもういい言わなくてわかったから」
 「そうか?」
 きょとんとする佐伯からは目を逸らし、千石は改めてトンファーを拾った。注意して見る。確かにグリップ上端、金属棒がT字に合わさるぎりぎりのところに小さなボタンがあった。
 「でも、なんでンな武器が・・・・・・?」
 さっきまで聞いた話では、原住民とやらは鎌やら棍棒やら吹き矢やらで攻撃してきていた筈。銃などという高度なもの(偏見)を持っているならそっちですればいいだろうに。
 思う、千石に、
 「俺が改造した」
 「サエく〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!」
 ―――どうやら答えはあっさり出たらしい。
 しれっと言い切る佐伯に、実際どうやったかとかそれだけの部品どこで調達したとかそもそも何で銃の構造なんて知っているとかその辺りの疑問は全て放って置いて、千石はただただ地団駄を踏むだけだった。
 それを煩そうに見ながら、佐伯が解説を続ける。
 「以前そういう武器使ってる女の子の出てくる漫画読んだんだけどさ、疑問だったんだよな。暴発―――というか間違って撃ったりしないのかって」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「普通の銃みたいにトリガーの周り覆ってもいいけど、それやるとトンファーとして使いにくいだろ? 第一これってトンファーとして打ち合うと絶対銃身歪んでいざ撃つ時暴発すると思うんだけどさ。
  お前もそう思わないか?」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 実際それをやってしまった人間はどう答えればいいのだろう・・・・・・?
 無言のまま固まる千石に、
 決定打が放たれた。
 「ついでに今のお前の『誤射』さ、
  ―――4人に当たった」
 「はい?」
 周りを見回す。そこにいるのは佐伯と、・・・・・・・・・・・・。
 「さすが『ラッキー千石』。狙ってないのに見事急所ばっかだったな」
 「ちなみにサエくんは?」
 「先に逃げた」
 「さいですか」
 それきり黙る千石。佐伯はその肩をぽんと叩き、
 「まあ、これで残るは俺とお前だけだな。とりあえずよろしく」
 「嫌だああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――!!!!!!!!!!」


Survivor―――佐伯






 ―――サエはぜひとも『味方キラー』と呼ぼう!がコンセプトだった六角編。むしろサエは『味方キルアジデーター』!? よくよく考えたらサエ本人はまだ1人も殺してなさげ!? なおサエの読んだ漫画は『
RAV』です。本気であの銃内臓型トンファーってさりげに危険なんじゃないのかなあ・・・? ちなみにそれとはトリガーというかスイッチの位置違いますが。

2004.4.4