Part2.本番序章
<ただいまより、男子の部第1試合を行います。選手および監督の皆さんは、速やかにコートへお集まりください>
などという場内アナウンスを聞き、ウォーミングアップを終わらせていた一同が会場へと集まっていった。
彼ら日本代表チーム、通称・・・を言うのは後にして、とにかく彼らの登場とともに会場中が一気に騒がしくなった。
『さあ! 我らが日本代表チームが現れました! 他の国と異なりプロアマ合同で組まれたチーム! その一番の特徴はなんと言っても全員の年齢の低さでしょう! 全員10代という異例の低さを誇るこのチームの平均年齢は18.2歳! しかも問答無用で大会参加最年少選手となった12歳の越前リョーマ選手までいます! 彼はアマチュアながら今年最初に行われたイベントの男子シングルスにて優勝を果たして以来、世界中のテニス界に注目される存在となっています!
―――ではここで、世界で活躍するプロテニスプレイヤーにして今回私とともに解説を勤めて下さいます徳川辰治選手にお話を伺ってみましょう。
どうですか? 今回選ばれた彼らは』
『そうですね。やはり最初に注目したいのは先ほどあなたも言われた年齢の低さについて、でしょうね。今回日本代表チームはその選抜にあたってプロアマ合同で大会を行い、その上位11人―――厳密に言えば男子シングルス5人、ダブルス3ペアを選びました。
・・・・・・実のところ僕も男子シングルスで出場はしたんですけどね』
『え? では失礼ですが・・・・・・』
『ええ。残念ながら。準々決勝まで勝ち、そこからはトーナメントではなく8人での総当り戦となったのですが、やはり強いですね。今回選ばれた彼らは。惜しくも6位だったため選ばれませんでした』
『6位・・・となると男子シングルスの代表者全員にのみ負けた、と?』
『ええ。ちなみに男子シングルスは全勝でトップだったのが跡部君。以下2位・不二君、3位・リョーマ君、4位・千石君、5位・観月君。ダブルスでは1位が忍足君・向日君ペア、2位が大石君・菊丸君ペア、3位が伊武君・神尾君ペアです。ですがどこも接戦でしたね。おそらくこの順位は毎回毎回変わるのではないかと。特にダブルスの1位と2位は』
『あれ? となると男子シングルスですが、跡部選手と不二選手は対戦をしたのでしょうか? 確かこの2名は今までほとんど対戦をしたことがないと言われていますが・・・』
『いえ。していません。不二君の1敗は跡部君との試合を棄権したからです』
『棄権、ですか・・・?』
『ええ。本人は「体調が優れなかったから」と言っていましたが』
『・・・・・・本当に?』
『さあ。友人の菊丸君に「生理痛?」とからかわれても笑ってるだけでしたからなんとも言えませんね』
『生理痛・・・って、それはさすがに嘘なんじゃ・・・・・・』
『でしょうね。まあどちらにしろ今回順位そのものはさして問題ではありませんし。彼ならたとえ1回棄権したところで他の選手相手に勝てる、と思ったからかもしれませんし。
―――といいますか実際そのとき既に残り2試合で全勝していた彼はメンバー確定だったんですけどね』
『残り2試合? 跡部選手と・・・・・・あとは?』
『リョーマ君との一戦ですね。行われたのが最終日でしたから。その時2人とも跡部君に1敗した同士だったためやはりメンバー入り確定だったんですが・・・・・・。
凄かったですよ。その1戦。今思い出しても身震いします。もしかしたら不二君はこの1戦のために体力を温存したのかもしれませんね』
『へえ・・・。
―――ところで徳川選手はその越前選手と知り合いだと伺ったのですが。現に今も彼のことを名前で呼んでいますし』
『ええ。彼の父親である南次郎さんに僕はプロ入り前に教わっていましたから。プロになった後も何かとお世話になっていますし、その関係でリョーマ君とも小さいころから・・・・・というか彼が生まれたころから、かな?・・・・・・親しいですね。まあ、ほとんど関係は父親と息子、といった感じですか』
『なるほど。では彼のテニスの実力は有名になる前から知っていた、と?』
『知っていた、というか彼に最初にテニスを教えたのは僕ですから。その頃は遊びといった感覚だったんですけど。ほら、父親と息子がキャッチボールをよくするような。そんな程度の感覚で。
でもその頃から凄かったですね。上達が早い早い。元々の身体能力が高いですし―――特に瞬発力と動体視力。まだ小柄である体をよく活かしてますね。その上テニスセンスに関しては恐らく不二君並にあると思います。さらに吸収力が半端じゃないですからね。ちょっと見た技を見様見真似でやってしまいますから。実際のところ、僕が彼に教えたのは本当に基礎の基礎、ルールやボールの打ち方なんかだけですし、南次郎さんに至っては相手をするだけで―――からかうだけ、とも言えますが―――何も教えてはいません。
これからの試合で明らかになるかと思いますが、彼の技、ほとんどは相手から盗み、それを自分流にアレンジしたもの、あるいは完全オリジナルです。凄いですよ。プロですらなかなかできないだろう技をいとも簡単に披露します。
あとはやはりゲームメイクですか。これも上手いですね。一言でいえば「狡猾」。単純に攻めたり守ったりする程度では彼に勝つどころか互角に勝負することすら無理ですね。一見がむしゃらに、それこそ「子どもっぽく」攻めるだけのようですが、その裏で罠にはめようとした相手を逆にはめ返したり、挑発して逆上させたりと。特に最近は不二君との対戦が多くなったからでしょうね。よりいっそう磨きがかかってます』
『不二選手ですか・・・。では彼もゲームメイクは上手い、ということですか?』
『上手い、どころではありませんね。彼が現在世界トップレベルにいる理由の大半はそのゲームメイクの上手さにあります。もちろんあの必殺技であるトリプルカウンターを初めとした各種の技を使えるだけの技術の高さも重要ですが、それらを最も効率よく使いこなせるだけの頭脳がなければ彼もここまでは昇れなかったでしょうね。彼が「天才」と呼ばれる所以です。彼を賞する際、そのゲームメイクでは世界「トップレベル」ではなく世界「トップ」だ、と言う選手は世界中で後を絶ちません。
尤も・・・・・・』
『尤も?』
『そう考えると今回の日本代表チームは面白いですね。ゲームメイクの上手さで世界に知れ渡っているのは不二君の他に千石君、そして忍足君。さらに知れ渡ってはいませんが互角に張り合えると思われるのが今言ったリョーマ君に伊武君、それに大石君・菊丸君の黄金ペア。
―――総じて、日本チーム、かなり「クセ者」揃いとなりましたね。恐らく世界のトッププロらが一同に終結したとしてもここまで揃うのは至難の業だと思いますよ』
『おや? 跡部君は入らないんですか?』
『彼・・・は、ゲームメイクの上手さよりも総合的な強さが目立ちますから。ゲームメイク、という1つだけを取り出して他の選手―――今名前を挙げた彼らと比較すると実のところわずかに下だと思います。ですが代わり、といいますか相手の弱点を見抜く眼力[インサイト]に関してはずば抜けてますからね。そこを攻めて一気に勝つ、という展開が多いです。
余談になりますが、実のところ跡部君と不二君は見事な対立関係、と言えますね。跡部君は総合的に高いです。だからこそ逆に何かひとつに秀でるといったものが特にはないわけですね。なにせそもそも必要ありませんし。この上なくバランス良く成長したわけです。
で、逆に不二君はこの上なくバランスが悪い、と言えます』
『え? それはまたなぜですか?』
『元々持っているものが少ないんですよ。身長も低いですし筋力があるわけでもない。総合的に体格が言い訳ではありません。だからといって小柄な体を活かした瞬発力、といったものもそう得意なわけではありません。どちらかというと彼は持久型ですしね。
―――でありながらなぜ彼が現在跡部君と並び、世界ではトップレベルにまで上り詰めているのか。それの答えがさっき言ったものです』
『つまりはゲームメイクのうまさ、ですか?』
『そうですね。彼の場合跡部君と逆にそれひとつが―――もちろんそこには全ての大元になるテニスセンスや実際にそれを実行できるだけの技術などがつきますが―――とにかくそれが人並み外れて高いです。他の全てをカバーし、なお余りあるほどに。
よくバランスのよさを桶にたとえますよね。桶に使われる木材の高さがまちまちだと一番低いところから水は溢れる、と』
『ええ。まあ・・・』
『跡部君の場合は全ての木材が高いですので水はたっぷり入ります。不二君の場合は全体的に低いですが、一本だけがやたらと高く、それを他の部分の補強にあてがうことで跡部君とほとんど同量の水を湛えることが出来ます。だから2人は丁度逆の関係であると同時に互角に戦えるんですよ』
『はあ・・・。なるほど』
『ああ、そういえば最初の話題、いきなり脱線していましたね。
日本代表チームは純粋に実力のある者を選手として選びましたが、それが全員10代となると彼らのこれからが楽しみですよ。
―――冗談抜きに今後テニス界は日本を中心に回るかもしれませんね』
『それはまた、大きく出ましたね・・・・・・』
『まあ・・・かなり僕自身の希望も入ってますけどね。けど可能性は割と高いと思いますよ』
『なるほど・・・・・・。興味深い話ありがとうございました。
では、そろそろ両チームとも準備が出来たようですね。ここからは中継に移ります』
・ ・ ・ ・ ・
さてそんな解説がテレビを流れているころ、先取控えのベンチでは・・・・・・。
「さ、跡部v」
「・・・・・・何?」
にこにこ笑顔の不二に詰め寄られ、跡部が眉をひそめた。
「何? ・・・って、もちろんv」
「ね〜v」
「せやせや。跡部。とぼけとらんとv」
そこへ、さらに千石・英二・忍足が相槌を打ってくる。
その迫力に押され一歩後退する跡部。ふと視線を回りに走らせ・・・・・・
(う゜・・・・・・・・・・・・)
会話に加わってこそいないものの、リョーマが、深司が、神尾が、観月が期待のこもったまなざしで熱っぽくこちらを見ている。こういった視線はむしろ好きなはずだった。なにせこいつらは自分を見て酔っているのだから(ナルシスト的発想)。
が、なぜか本日そこに感じたのは猛烈な寒気と心臓をわしづかみにされたかのような緊張感だった。それこそ普段の試合ですら感じたことのないほどの。
前4人の言葉と比べ―――いや、それを感じたのはさらに後ろで大石が悲痛そうな顔をしてため息をついているからか・・・。
とりあえずそんな跡部の疑問は―――
次の、そしてシメの向日の台詞であっさり判明した。
「さ! 跡部『部長』! 部長ならちゃんと掛け声かけなきゃだめだぜ!」
(掛け・・・声・・・・・・・・・・・・)
言われ、ようやく思い出した。彼の記憶力が悪いわけではない。あまりに忌まわしすぎる出来事に、脳が拒否反応を起こした結果、完全にそれを忘却していたのだ。―――つい今まで。
数日前に決まったアレ。てっきりその場限りの冗談だと思っていたのに・・・・・・
「あれって・・・・・・冗談じゃねーのか・・・・・・?」
「何言ってるのさ跡部。もちろん本気に決まってるじゃないかvv」
笑顔で花を撒き散らし、この上なく楽しそうに言う不二に、思うことはただひとつ。
(本気だ、コイツ・・・・・・)
そしてさらに悪いことに、どうも自分除く全員が覚えていた挙句本気でやるらしい(厳密に言えばやるのは自分ひとりだけなのだが)。
「やらねえと・・・ダメなのか・・・・・・?」
ムダと知りつつも一応尋ねる跡部。
結果は―――もちろんムダだった。どころかより最悪な方向に事態が転がっていく。
「当たり前じゃないかv」
「そーそーv みんなで決めたことだしv」
「お前もノリノリだったじゃねーかvv」
「今更恥ずかしがることあらへんでvv」
「そーそー。前ので既に恥なら十分かいたし」
「深司! その言い方は悪いだろ!? 跡部さんは跡部さんなりにしっかりやったんだし・・・・・・」
「しっかりやってアレなワケね。まだまだっていうよりむしろ問題外?」
「んふっ。まあしかしあれはあれでいいんじゃないですか? 少なくとも全員のリラックスと気分昂揚には繋がりますし。ねえ」
ぶちぶちぶち・・・・・・
モル単位(小さいんだか大きいんだか・・・)で血管が切れていく中、やはりラストにこの人が登場した。
「跡部、がんばれ。恥は一瞬で済む」
大石の全くもって慰めになっていない助言に、さらにぶちりとどこか大きな血管の切れる音がする(ような気がした)。
「じゃあ! 思い切っていってみよーーー!!!」
人差し指を青空に向け、声高々に宣言する英二。むしろ彼の今のが掛け声で十分じゃないか―――と思ったのは残念ながら跡部ただ一人だったようだ。
くじけたくてたまらない。前回の、記者会見のときの大石の台詞を借りるのならば、多分自分は今もの凄く深い谷底にいるのだろう。
が・・・・・・
どんな闇にも探せば光の1つや2つはあるものである。問題はそれに気付くか否か。
(この勝負・・・・・・もらった!!)
誰に対しての一体何の勝負なのか。あえて言えばその他全員に対する己をかけた勝負なのか。
―――とりあえず脳内バースト寸前の跡部はそのようなことは一切気にせず、己の見出した作戦を決行することにした。
俯き、深く息を吸う。
いかにもこれから何かしますと言いたげなそのアクションに、全員はやし立てるのを止め跡部を取り囲んだ。
全員の視線の先で、
跡部が顔を上げる。
吸った息で肺を固め―――
一気に吐き出した!
「俺様について来い! 愚民ども!!」
ごんがんばんげしげしがずどかごぎ!!!
英二を真似するかのごとく空を指差しかっこよくそう決めた跡部に向かって、他の全員が無言でその場にあるものを投げた。ラケット・バッグ・ボール・タオル・ペットボトル・ジャケット・シューズなどなど。ベンチがそこに入っていないのは、それを持ち上げて投げるだけのやる気があるものがいなかったからなだけだったりするのだが・・・。
何とか生きていたらしい。ぴくぴく震えつつも起き上がろうとする跡部。そんな彼に、手が差し伸べられた。
毎度の大石かと思い、その『手』を握る。
その手を―――その手に握られた、冷たくて硬いものを。
「今のキミのギャグもなかなか面白かったけど・・・・・・」
手を差し伸べた不二が、その手に持っていたものを跡部に渡しつつ、微笑んだ。
「キミこれでも一応僕たちのリーダーなんだからさ、掛け声のひとつくらいまともにかけられなきゃv
―――というわけで、次ふざけたら『それ』ね」
それ。
全員の視線が跡部からその手にもっていたものに移り―――
ずざざざざざざ!!!!!!
それを始めて見た深司・観月、そしてもちろん渡した側の不二と渡された側の跡部を除く7人が勢いよく後ずさる。神尾もまたそれを見るのは初めてだが・・・・・・知識以前に本能に従い誰よりも遠くに避難していたりする。
「何だ? これ・・・・・・」
尋ねる跡部の声もまた、震えていた。さらには後ずさりこそしなかったものの観月の顔色も悪くなっていく。
彼らとは対照的に、笑顔のままの不二がそれを指差し、丁寧に解説をつけた。
「『マーベラスサプライズ乾汁スーパーエクセレント』だそうだよ」
ずざざざざざざざざざざざざざ!!!!!!!!!!!!!
不二の説明に、後ずさっていた7人がさらに遠くまで離れていく。
「な・・・なんか名前変わってない・・・・・・?」
「見た目から既にパワーアップしてんだろ・・・・・・?」
千石の呟きに向日が付け足す。確かに、まあなんというかしなびた野菜で作った野菜汁とペナル茶を中途半端に混合したかのように、赤色とオリーブ色を足して2で割ったような地に緑のグラデーションを残したようなそれを見れば、正月に飲まされた野菜汁よりも遥かにタチの悪い代物だと思ったところで無理もないだろう。
「これで味はパワーダウンした・・・なんちゅう事あらへん・・・・・・よ、なあ・・・・・・」
「『ダウン』をどっちの意味でもっていくのかはわからないけど・・・・・・
―――確実に飲んだ人を倒せるかどうか、って意味では『アップ』じゃないかな?」
『ンな危険物持って来んじゃねえ!!!』
不二と深司を除く9名が至極当然の訴えをする。が、やはり当然の如く全く堪えないまま、不二がにっこりと笑った。
「どうする? 『部長』としての役目を果たす? それともこれを一気飲みする?」
究極の選択。恥と死、どちらを受け入れるべきか・・・・・・!
―――恐らく大抵誰に尋ねようと『恥』と答えるだろうが、こと跡部に関してはどちらも同じだけの比重を持っているようだ。
暫く顔を俯かせて考え込み―――
「早くしてねv」
不二の容赦のない脅しに、ついに彼は決心したようだ。
いまだ体にどっちゃりと乗っていたものを押し分け、立ち上がる跡部。怪奇物体入りガラスコップを右手ごと前に突き出し、全員に向き直り、
「行くぜ! 『東京強豪5校レンジャーズ』!!」
・・・・・・どうやら『恥』を選んだらしい。
そんな彼への代償はもちろん―――
あ〜〜〜〜〜っはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!!!!!
「―――って待てよ! なんで前回より笑いがなげーんだよ!!?」
「し、進化してる・・・!! 『出動』から『行くぜ』に・・・・・・!!!」
「さっすが跡部君・・・・・・!! 前回の反省を、うまく活かしてるね・・・・・・!!!」
「おかげさんで・・・、なんかよーやっとヒーローっぽくなってきたっちゅーかんじや・・・・・・!!」
「しかも今回、噛んでないし・・・・・・!!」
「相当・・・・・・家で練習されたようですね・・・・・・!!」
真っ赤になった跡部に、ひきつけを起こしつつも神尾、千石、忍足、リョーマ、観月が何とか答える。
「も〜跡部サイコー!! ステキすぎ!!」
「かっこいいぜ跡部!! いやマジでさあ!!!」
彼らが微妙にボカした部分を、涙をぼろぼろ流して英二と向日がはっきり言い切った。
「実は相当気にいってんじゃん?」
「確かにな。さっきはああ助言したけど、余計なおせっかいだったみたいだな」
深司に冷たく突っ込まれ、大石にはあらぬ誤解を受け、
そして―――
「うん。そうみたいだね。僕も考えたときはいくらなんでも悪いかなって思ってたけど・・・・・・どうやらこれでよかったみたいだね」
「違―――!!」
「じゃあみんな、士気も盛り上がってきたところでそろそろ僕たちも行こうか」
『おーーー!!!』
「ちょっと待て! そっちが掛け声―――」
かくて―――
「・・・・・・・・・・・・」
「あれ? 跡部どうしたの?」
「どうしたって―――
・・・・・・イヤ、何でもねえ」
「そう?」
自分の掛け声に一体何の意味があるのか、それを聞き返すことができないまま跡部はただため息をつくだけだった。
―――じゃなくて、異様なまでの盛り上がりを見せる日本代表チーム、通称『東京強豪5校レンジャーズ(命名不二)』の試合が始まったのだった!
―――跡部氏の不幸はまだまだ続く!
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
本っ気で跡部氏が不幸になってきました。その割には全く救済する気はありませんが(博)。今回、徳川さん入れて序盤はまじめにいってみました。ちょっと背景が書きたかったもので。なお彼の解説する皆さんの特徴はこのシリーズだけではなくテニス全般通してのMy設定、というか私的キャラ考察の結果です。不二先輩って、実はけっこう『強さ』のバランス悪いような・・・・・・。総合的には『強く』見えるけどばらばらにすると欠点だらけ、といった感じが・・・・・・。あ、でももちろんそれも全部隠せるからこそ『強い』んでしょうけどね。
まあこれ以上語ると徳川さん[ほんぺん]と重なるためこのくらいでやめるとして、
『マーベラスサプライズ乾汁エクセレント』は2002年度のジャンプフェスタでテニスのオリジナルアニメにて出てきたあれですね。ただし飲んだレギュラー(乾除く)6人はふもとの小川まで下るだけの元気があったようなので(残り2人は飲まずにすんだのか飲んでもそんなことはせずに平然としていたのか〔一人は自然と、一人は意地[プライド]で〕それとも下るまでもなくその場で倒れていたのかあるいはたまたま画面に映らなかったが実は下りていたのか―――なお、誰が飲み誰が飲まなかった(?)のか。この話を見てない方も、多分予想通りのあの2人です)、今回バージョンアップしたということで『スーパー』をつけてみました。しかし色。表現しにく・・・・・・。
そして『モル単位』。正式にはアボガドロ数ですが、理系を学んだ方ならいやでも覚えこまされた単位。1モル[mol]=6.02×10の23乗というとてつもない値―――と見せかけ実は分子レベルでしか使用しない、めちゃめちゃ小さな数字。いわゆる有名な12個1セットの『ダース』のもうちょい数値が大きくなった版、といった程度の認識で大丈夫な代物です。実際使わない場合は。
ではいよいよ試合開始です! なお試合は何日にも別れて行われること前提なので、同じ選手が何度も出場しても「ああ、違う日なんだな」と思っていただければ幸いです。ただしこの序章はこれ1回で。何度繰り返しても似たような結果しか出なさそうですし・・・・・・。
2003.4.28〜5.2