case6.不二&跡部




 その日の朝、不二家にて。



 「あら。周助。出かけるの?」
 「ああ」
 「行ってらっしゃい。気を付けなさいよ。人災の相出てるわよ」
 「『人災の相』・・・・・・?」







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 「では本日は、不二君と跡部君に組んで出ていただきます」
 『はあ!!??』
 観月のシナリオに大口を開けて驚く一同(の何人か)。中学の頃の仕返しとして隙あらばこの2人に復讐してやろうと(つまりは恥をかかせてやろうと)している彼の嫌がらせである事がミエミエのこのオーダー。
 が―――
 「
僕のシナリオに何か?」
 『いえ・・・・・・』
 こうも自信満々にいわれるとケチをつけにくい。
 まあこれに関しては当人らが反対するだろう、と意見を下げる。
 ―――のだが。
 「よろしくね。跡部」
 「不二、せいぜい俺様の足ひっぱんじゃねーぞ」
 『乗り気だし!!!』
 何も不自然に思わないのか、それとも売られたケンカは必ず買うタチなのか、あっさり当事者2人は決定事項としたようだ。
  ((まあ・・・・・・1戦くらい負けても後でカバーすればいいか・・・・・・))
 などと本人らに向けては口が裂けても言えない言葉でまとめるその他。
 その中で―――
 ―――なぜか千石1人が今だ顔を青褪めさせていた。
 一度解散した後、
 「(不二くん。ちょっと・・・・・・)」
 と、こっそり呼び寄せさらにひっそりと何かを耳打ちする。いつものへらへら笑顔はどこへやら、眉を潜め、あまつさえ脂汗など流していたりする。
 それを聞き・・・・・・
 不二が笑顔から一転、開眼モードへと変化した。
 千石の指差しに合わせ跡部を横目で見やりながら、
 (『人災の相』、か・・・・・・)
 ・・・・・・なんとなく朝姉に言われた―――告げられた事の意味がうっすらとわかったような気がしていた。







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 さて始まる試合。不二が前衛、跡部が後衛。
 その中で―――跡部が球を拾った。
 「不二くん!!」
 千石の警告を聞くまでもなく、不二は行動を開始していた。跡部が打つ位置を予想する。相手2人の作り出す『穴』は、ちょうど跡部と自分を繋いだその延長線上にある。
 普通なら左右どちらかに避けるだろう。その場面で。
 ―――不二はその場にしゃがみ込んだ。
 横向きに、右を向いて。逆手に持ったラケットで頭をしっかりガードしている。
 かなり意味不明の行動。というか完璧謎な行動。
 とりあえず不審げな顔をしつつ跡部の放った球は―――不二の予想通り彼の真上を飛んで相手コートの『穴』にドンピシャで決まった。
 きゃ〜〜〜〜vvv
 と客席が興奮する中、
 「ナイス不二くん!!」
 親指を立て、千石がそんな声援を送っていた。



 ―――のだが、
 残念ながらいくら天才といえど不二はそこまでダブルスに慣れてはいない。前にいる相手ならともかく後ろにいるパートナーを常に気にしつづけるような事がいつまでも出来るわけはない。まあ逆にダブルスに慣れた人間ならば後ろにいるパートナーを信じ、その一挙手一投足まで神経質に見張るなどという事はしないのだろうが。
 千石の警告と己の警戒心及び勘により跡部の『攻撃』に何度も対処してきた不二。が、さすがに全てを見切るのはムリだった。





 どごっ!!





 そんな、この上なく痛そうな音と共に、ネットに詰めていた不二がネット伝いにずるずるとしゃがみ込んでいった。
 ―――跡部の打った球を頭に喰らって。
 「周助!?」
 「不二!!」
 周りからの悲鳴が響きわたる中、千石は1人ため息をついていた。
 「あ〜あ、だから言ったのに・・・・・・・・・・・・」







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 千石と跡部はかつて中学時代、Jr.の選抜合宿で一緒になった事がある―――この話はもちろん有名なのだが。
 さてその選抜合宿。跡部も千石もシングルスとして参加したが、両方出来た方がいいだろうということでダブルスの練習も少々行なった。
 ダブルスのパートナーは参加者同士で適当に決められ、跡部は立海大付属中の真田と組む事になった。
 そして、そこで悲劇は起こった。というか正確には起こり『まくった』。
 ダブルスだというのに跡部がパートナーたる真田にボールをぶつけまくったのだ。傍若無人の典型たる跡部は、本気で自分以外の人間が同じコート(もちろん味方側の)に立っていることを認識出来ないらしい(かなりボロクソな言い方)。
 跡部は見た目の優雅さ(笑)とは裏腹にかなりのパワーがある。そしてさらにそれを増強するだけのボールのスピン性がある。後ろから喰らった真田は前にコケるだけでは飽き足らずさらに1回転したほどだ。
 だからこそ、千石は試合前不二に言った。
 『この試合の「敵」は相手2人じゃなくて跡部くんだからね!!』
 と―――。







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 「不二選手意識喪失にて日本代表、不二・跡部ペアは棄権負けとします」
 そんな、どこぞの格闘技グランプリのような判定を朦朧とした頭でかろうじて聞き取りながら―――
 (『人災の相』か・・・・・・)
 相も変わらず姉の占いはよく当たるなあ、などと考えつつ不二は意識を失っていった・・・・・・。





 ちなみに―――
 その後不二が目を覚ましたのはそれから2日後の事であった。



―――真田が1回転するのは事実です。








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 いっや〜。ホンット。『Smash Hit!』は面白い! やればやるほどネタが転がっている!!
 というわけでなぜかよく続く跡部様の話。誰と組んでも絶対にぶつけるかぶつかる。コンピューター同士でペア組んでる時点で必ずしも私だけの責任ではありません。まあ確かに2人の直線状に空きを作ってわざとそこに打たせたりとかはしましたが。ただし不二先輩と観月が組んでる時。おかげで3ゲームマッチで不二先輩は3回観月にぶつけました。わお。最高記録v なお今までの最高は毎度恒例跡部様の2回でした。
 ちなみに敵対した場合のムダ知識。『破滅への輪舞曲』をラケット振らずに直接食らってみましょう。菊ちゃんあたりなら一発で体力0まで落とされます。

2003.8.289