「Step4。応用編。『手塚は不二より年上だ』。
Tezuka is Older than Fu―――」
「待て不二」
Right you are !?
件のDVD制作にて。歌い終わった不二が、なぜかいきなり『試験に出るかな? 英語講座』をやろうと言い出した。それ自体はいい。本人も父親がアメリカ人のハーフかつ単身赴任中の父親に会いに行くため幼い頃からしょっちゅう海外に行き、さらに氷帝にて英語はきっちり学び(幼稚舎しかいなかったくせにその授業だけで全員最低英検2級は取っているらしい。なお不二は当然の如く1級まで取ったそうだ)、挙句というかプロデビュー後世界を舞台に活躍し、その間全く通訳をつけず普通に生活出来る時点で彼の英語能力(含め各語学力)の高さが窺えるだろう。
が、
「―――何?」
きょとんと訊いて来るかの男・不二に、手塚は眉間の皺を1.5倍ほどにして尋ねた。
「何だ? その文章は」
「だから、比較級。ちなみに日本語訳は―――」
「いい。そこは聞いた。
しかしその前の裕太とお前のものはともかく、なぜ俺が対象相手になるんだ?」
「やだなあ手塚。君が中心で僕が対象相手じゃないか」
「それにどれほどの違いがある・・・?
ではなく大体なぜこのような文章になる?」
「間違ってはいないでしょ?」
「どこがだ。俺とお前は―――」
「僕が2月生まれ、手塚が10月生まれ。
ホラ、間違ってないでしょ?」
「む・・・・・・。
だがそれならば普通は跡部を中心とすべきだろう? アイツも10月生まれでお前より上であろう。ほとんどの人はこれを見せられたところで意味がわからんぞ?」
「大丈夫だよ。顔写真乗せたらすぐわかるから」
「おい・・・・・・」
「それとも君はまさか―――!!」
手塚のツッコミを無視し、不二が驚愕に顔を震わせずざざざざっ! と下がっていく。
下がったまま、
「僕に『Sanada is Older than Fuji.』と言えと!?」
「だからその文章から離れろと言っているんだ!!」
「例えば?」
「む・・・・・・?」
問われ―――手塚が詰まる。いきなり例題を出せといわれ、しかも自分の言い分を元にすると使えるのは不二や跡部といった世間一般への認知度の高い者。まあこの辺りは普通にこの2人を比較すれば問題はないだろう。
しかし、
(不二と跡部で比較になるもの・・・。テニスの腕・・・は必ずしも跡部が上とは言い切れないか。その他―――勉強は互角、身長、体重、後は・・・・・・)
ふっ、と顔を上げる。
「決まった?」
「ああ」
頷き、意を決して手塚はその文章を口に出す・・・・・・前に。
彼について先に注意をしておく。手塚は決して英語が苦手なわけではない。ただし―――
―――手塚は『英語を学んだ日本人』の典型である。文法(もちろん比較級含む)や単語などにはめっぽう強い。が、その一方で聞いて話すといった類はやたらと弱い。全国模試はともかく、青学内での総合成績が大石・不二に次いで4番目だったのは英語が足を引っ張ったからだ(ちなみに同じ事は乾にも言える。なお大石は医師になるため英語の論文などを読む一方で話せないのも困るだろうと度々不二に教わっていた)。
つまり・・・・・・
これから言われる手塚の英語、最初から絶対期待してはならない。
そう。このように―――
「跡部 イズ モアー ナルシスト ザン 不―――」
「誰が自己陶酔症者だ!!」
どがしぃっ!!
「うごっ!?」
完璧カタカナ読み英語だった手塚の英語が、さらに強烈なツッコミにより中断される。
ツッコミという名の蹴りを手塚の後ろから後頭部に向けかました人物・跡部は、吹っ飛んだ手塚をさらに追い襟を片手で掴み上げた。
「ああ!? 手塚! てめぇ何勝手にワケわかんねえ挙句ヘタクソな文章作ってやがる!!」
「『ワケわかんない』って・・・・・・」
「ビバ☆自覚0、って感じだな」
ため息をついた不二の隣にて、こちらもいつの間にいたのか佐伯がこの上なく適切な評価をする。
2人の視線の先で―――
「わ、わかった跡部!! つまりこの比較級の文章では納得できない。比較するものを変えろと言いたいんだな?」
「・・・・・・。ま、まあそんな感じだけどよ。
念のため訊くがてめぇ本気でわかってんのか?」
「今度は大丈夫だ。任せておけ」
「ほお・・・・・・」
「例えば―――
『跡部 イズ―――』」
「手塚、悪りい。日本語訳の方で言ってくれ」
「む? お前なら英語はわかるであろう?」
(『英語』ならな・・・・・・)
手塚に隠れてこっそりため息をつく。自分の周りで英語がヘタな人物といえば、千石・向日・宍戸など。しかし・・・・・・
(アイツらよりヘタなやつぁ初めて見たぜ)
まあ、実のところ英語ペラペラな手塚というのも想像がつかなくはあるのだが、欠点0の万能選手といったイメージがあるだけに、与えられるインパクトといったらもうとてもとても言葉には出来ない。
(けどよお・・・・・・)
思う。
(そういやコイツ、以前はリハビリでドイツ行ってたんだよなあ? 英語でこのレベルって、ドイツ語どうしてたんだ・・・・・・?)
通訳にひっついてたかそれともリハビリ場から外には出なかったか。いずれにせよ情けないことこの上ない。
気を取り直し、
「で?」
「ふむ。『跡部は不二より暴力的だ』というのはどう―――」
「―――にもなんねーよ!!」
どかごしぃっ!!
再度後頭部蹴り。ただし足の裏全体を当てた先程と違い、今度は爪先をめり込ませる。
完全に没した手塚を捨て、跡部が2人の―――不二の方へと振り向いた。
「不二。さっきの文章、『Tezuka is Foolisher than Fuji.』にしとけ」
Foolisher=大バカな。
「上手いじゃん」
と茶化す佐伯の一方で、
「駄目だよ、跡部」
不二はふるふると首を振った。
「あん? 何でだよ?」
「だって―――」
言う。
「それじゃあ比較級じゃなくて最上級になっちゃうじゃないか」
一斉にあちこちから上がる笑い声。いや、全員笑い声すら上げられないほど痙攣している。
それを見回し、
「・・・・・・・・・・・・それもそうだな」
跡部もまた、実にあっさり頷いてみせた。
大バカにして幸せな手塚は、気絶していたおかげでそれらを耳にする事はなかった・・・・・・。
―――Fin
♪ ♪ ♪ ♪ ♪
はい。そんなワケで黒不二白跡部計画の第3弾は不二の『Right by your side』よりというかそのボーナストラックよりでした。出ましたねえ、プルタブと缶(そっちかい)。そっちメインで値段合わせに買ったこのCD、まさかこんないいネタを用意してくれていたとは・・・・・・!! しかしラストはぜひとも手塚に止めてもらいたかった。もちろん実際の声は不二のみで「あ、ちょ、何するんだ手塚!!」とかいう感じで。ノリは去年6月のラジプリ、桃と海堂がメインで切原がゲストの、あのテニプリ川柳断固阻止的立てこもり戦で。
曲は普通に好きな感じで。ラジオで流れてる時サビの伸ばしてる声がちょっと雑気味かと思いましたがやっぱラジオしかも受信状態の悪いAMをそのまま鵜呑みにしては駄目ですね。しかしあのパッケージ。めちゃめちゃかっこ良い・・・vvv ・・・・・・のはもちろんいいんだけれど、背景フランス辺り? 何ですか? 服色からしてドイツに手塚見舞いに行った帰りですか(注:逆方向)? そんなあああああ!!!
そういえばちなみにこれ、あくまで『天才〜』のCPはせんべのため特に手塚と跡部に大した絡みはありません。そして不二・手塚・跡部の3人がいれば成立するこの話、なぜ不必要な4人目が登場したのかというと・・・・・・現在企画で進めている『Jr.選抜妄想劇場 おいしいお茶の間の沸かせ方編』のリベンジだったりするからです。そう! こんな感じで茶々入れ隊とかの名目つけて出したい(力説)!!
2004.8.25
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