「ねえ手塚、もしも僕が世界の頂点に立てたとしたら・・・・・・、その時僕は君に勝ったっていえるのかなあ?」







        BIRTHDAY −始まりの場所[ち]へ−











 『跡部選手、不二選手! 優勝に準優勝、おめでとうございます!!』
 『華々しいデビュー戦でしたね!!』
 『いきなりのこの成績! 日本ではあなた方の活躍に大盛り上がりしています!!』
 『今のお気持ちをどうぞ!!』
 アメリカで開催されたテニス大会は、デビューしたばかりの子ども2人による番狂わせに、大いに賑わっていた。
 マイクを突きつけられフラッシュの眩しい中、渦中の人物その1たる跡部はいつもどおり悠然とその姿を披露し、そしてもう1人の不二は―――
 「ありがとうございます。とても嬉しいです」
 ―――力ない笑顔でそう答えていた。







・     ・     ・     ・     ・








 デビュー寸前だった手塚を突然襲ったアクシデント。左腕を壊した彼の代わりにデビューした自分。
 本来ここにいるべきなのは自分ではなくて。
 ―――そしてデビューしてみてもかつての気持ちは思い出せなくて。
 (手塚に匹敵する相手がいないから?
  ―――違うな)
 跡部の実力は手塚と互角。そして今日対戦してみたところによるとあの関東大会の時よりさらにレベルを上げている。彼は彼で戦うはずだった手塚に合わせて上げたのだろう。―――代理が来るとも思わず。
 確かに跡部との一戦は手塚とのそれに似ていた。少なからず自分も興奮したと思う。
 (けど、違うんだ・・・・・・)
 『テニスは精神[メンタル]が大きく左右するスポーツである』
 テニスプレイヤーならば誰でも知っているであろうこの事実。どこまで本当なのかはわからないが、特に自分に関して1つだけよくわかっている事がある。即ち―――
 ―――テニスは自分の気持ちひとつで簡単に変えられるスポーツである、という事。
 跡部との一戦。自分は始めから負けるつもりだった。そして実際に負けた。
 ―――『お前人生で1回は本気出せよな・・・・・・』
 試合後、握手もそこそこにゲンナリとそう呟いた跡部。
 ―――『1回は出した事あるよ? ただ2回目以降が来ないだけで』
 1回目はもちろん手塚と対戦したとき。しかし思う。
 ・・・・・・手塚と対戦したのは1回きりではない。『2回目以降』―――なぜ来ないのだろう。
 (手塚相手にも本気を出してなかった?
  ――――――まさか)
 即座に否定する。自分は手塚に勝つためにずっとテニスをしてきたのだから。
 (・・・・・・・・・・・・。
  ま、いっか)
 答えを放置するのは知るのが怖いからか。知っているのに知ろうとしない、それこそ『子ども』じみた逃げの姿勢に不二は小さく自嘲した。
 結局のところ――――――――――――





 ――――――手塚との闘いもまた、今の跡部とのものと同じだったのかもしれない。







・     ・     ・     ・     ・








 『今回の快挙、誰かにもう伝えましたか?』
 「いえ、まだ―――」
 「俺様の活躍ならわざわざ知らせなくっても誰でも知ってるに決まってるだろ?」
 言葉の詰まりを笑みでごまかした不二を遮り、自信たっぷりでそんな台詞を吐く跡部。毎度恒例の自分賛歌ながら慣れない記者らは絶句した。
 くしゃみできない類の硬質な静けさに包まれる中、
 不二がプッと吹き出した。
 「すっごいセリフ」
 「俺は当たり前のことを言ってるだけだぜ?」
 他の誰が言っても『馬鹿?』と突っ込みを入れたい台詞だが(いや、忍足辺りならたとえ跡部が言おうと突っ込んでいるか)、跡部ならばこの程度の言いっぷりは納得がいく。実際跡部に心酔する氷帝応援団などは今回の彼の優勝などもうとっくに知っているだろう。
 「だろうね」
 あっさり納得した不二は、笑みのまま頷いた。







・     ・     ・     ・     ・








 (相っ変わらずコイツは・・・・・・)
 いきなりの事だが、跡部家(の1つ)は不二家の隣にある。そのため実は跡部と不二は幼馴染(跡部曰く『腐れ縁』)である。―――正確にはさらに隣に住んでいたもう1人も加え3人で。
 小さい頃から不二は時折このような症状をきたす。小さい頃、その原因は大抵彼の弟である裕太にあった。ちょっとした事でケンカした時、そこまでいかなくても裕太のささいな一言。それら全てに不二は敏感に反応する。彼の中で裕太がどれだけ大きな存在だったか、恐らく不二当人よりもよく知っているのは自分ともう一人、落ち込む不二を一緒に慰めていたかの友人のみであろう。
 (考えてみりゃ、裕太以外じゃ初めてか)
 つまるところ今『あのヤロー』の存在は不二の中では絶対なわけで。
 『それ』がいないからこそ今不二は自分の居場所を見失っている。よくよく回りを見回せば彼の居場所などいくらでも見つかるだろうに、それなのに不二は自分が絶対と認めた人の中での自分しか見ようとしない。だからそれに否定されるとすぐ自分に迷う。
 (迷子のガキだってもうちっとマシなもんだろーが・・・・・・)
 現在地がわからないなら訊けばいいだろうに。迷子になったら動くななどというのは誰かが探しに来てくれる場合だ。
 (蹲ってても探しになんて来てくれねーんだよ。ソイツは)
 探しに来るのは――――――自分やかの幼馴染といった彼は望んでいないであろうおせっかいばかり。
 (それでも行ってやるだけありがたく思えよ)
 記者らの質問の合間を縫って、跡部はため息代わりにふんと鼻を鳴らした。







・     ・     ・     ・     ・








 『ちなみに今後の目標は? やはりこれからもっともっと活躍してくれることを期待したいのですが・・・・・・!』
 「そうですね。とりあえず世界トップでも?」
 ざわっ―――!!
 デビューしたての奴の台詞とはとても思えない発言。笑顔でさらりと言った不二を前に、ある者は自意識過剰だと非難し、別の者は所詮子どものタワゴトと嘲り笑った。
 いつもの跡部ならそれこそ鼻で一笑するだろう。「はあ? 馬鹿かてめえは。世界トップなんて俺様がなるに決まってんだろ? アーン?」などといった感じで。
 いつもの跡部なら。いや―――いつもの不二が相手なら。
 (本気か? コイツ・・・・・・)
 笑顔の中に紛れ込ませた真剣さ。読み取れないほど浅い付き合いではない。
 だから、
 跡部は結局揶揄に走った。
 「ああ? あのヤローがそうとでも言ったのか?」
 多分、いや間違いなく違うだろう。あのヤロー―――手塚にしては面白みのない目標だ。トップを取り、そして今度はその座にしがみ付き続ける。そんな低次元の目標をあの男が掲げるわけはない。あの男が目指すのはもっと遠く、遥かなる高みだ。
 ―――そしてそれを目の前で笑う男に課すわけもまたない。
 手塚にとっても不二というのは特殊な存在だ。彼の鋼鉄の精神を切り裂き、えぐることの出来る者など不二を置いて他にはいまい。唯一だろう。彼が具体的な恐怖を抱いた人物など。
 不二当人は知らないだろうが、手塚が不二にとって絶対であるのと同じく手塚にとっての不二も絶対なのだ。もしもこの事実を不二も知っていたとしたら恐らく・・・・・・
 その先にあったかもしれない未来。想像の向こうにある感情はなんだろう。
 ―――もしもこの事実を不二も知っていたとしたら恐らく・・・不二はここにはいなかっただろう。知った瞬間、不二にとってテニスの価値は0へと化す。
 それなのに今だ絶対であるテニスの価値。嘆くべきかそれとも喜ぶべきか。
 「手塚? 別に言ってないよそんな事。言うわけないでしょ?」
 半端なところで鋭く肝心なところで鈍い。
 (どーしよーもねえな・・・・・・)
 呆れ返る跡部を知ってか否か、不二があっさりと続けてきた。
 「僕がそう決めただけだよ。ホラ、世界中の人倒したら『
No.1』になれるじゃない」
 「意味違げーじゃねーか・・・」
 「語呂の問題だから」
 「・・・・・・・・・・・・ああそうかよ。
  ならとりあえず日本帰んのか? 『世界
No.1への道を歩みだした』とか報告して来いよ。ぜってーアイツ固まるぜ」
 想像のつき易過ぎる光景に、跡部はくつくつと笑った。自分ですらこれだけ振り回されるのだ。手塚などただひたすらに苦渋を飲まされ続けているのだろう。
 だが―――
 「いいや」
 「あん?」
 「日本には帰らないよ。当分ね」
 そう言う不二の顔に浮かんでいるのは、
 ―――やはり笑みだった。
 「僕がもっと強くなれるまで。もっともっと、強くなったんだってわかるまで戻らない。
  今戻ると多分―――
  ―――もう逃げ出せないから」







・     ・     ・     ・     ・








 気付いていないわけじゃない。自分は手塚に縛られている。いや、縛られていると錯覚している。手塚はもちろんそんなことなど望みはしていない。
 それでも、今帰ってしまえば多分、自分はまた手塚の幻影を追うだろう。
 (もう手塚はいない。わかってるけどね、頭では)
 もちろん本当にいないわけではない。手塚はいる。『今の』手塚は。
 だが少なくとも自分の求める手塚はもういない。それでも自分は今の手塚にあの頃の彼を重ねるだろう。
 重ね―――その違いに『気付いて』しまった時、自分は・・・・・・





 「だから、戻らない」







・     ・     ・     ・     ・








 「ああそうかよ」
 不二は気付かないのだろうか。そのような決意こそが、彼が手塚に縛られている何よりもの証拠だということに。
 (重症だな、こりゃあ・・・・・・)
 ヘタをするともう2度と這い上がれないかもしれない。どころかこのままでは確実にそうなるだろう。
 (それじゃつまんねーしな)
 口の中で呟き、跡部はテニスバッグから携帯電話を取り出した。







・     ・     ・     ・     ・








 「跡部?」
 周り完全無視でいきなり携帯をいじりだす跡部に不二が首を傾げる。
 が、それもまた無視して番号を押し終わった携帯を耳に当てる。わざと不二のいる側の耳へと。
 最近の携帯は便利なものだ。国内海外関係なくかけられる。
 海の向こうにして海の近く、また海岸のどこかで季節外れの潮干狩りでもしているかもしれない幼馴染の元へ、怪電波もとい
SOSを飛ばす。
 たとえお互いどのような気持ちであろうと―――不二を探し出すのは2人の役目だ。
 『―――もしもし』
 「サエ・・・?」
 電話の向こうから聞こえてきた、ノイズ混じりの懐かしい声にきょとんとする不二。
 「佐伯か? 俺様だ」
 『・・・・・・・・・・・・。ああ、跡部か』
 声よりも態度で判断したらしいことは数秒続いた沈黙が物語っている。考えていたのではなく―――電話を持ったまま硬直したのだろう。
 『珍しいな。いきなり何の用―――』
 「今から不二連れて日本に帰る」
 「ちょっ―――! 跡部!!」
 『え・・・? いるのか? 不二そこに・・・』
 佐伯を遮り勝手な事を言い出した跡部を止めようと不二が携帯に手を伸ばす。が、身長差を活かし頭を押さえつけた跡部に彼の攻撃は無駄なものだった。
 『・・・・・・わかった』
 親しげに話しかけていた佐伯の口調が変わる。跡部の短い言葉で彼も察したのかもしれない。いや、
 ―――わざわざ連絡を取ってきた時点で用件は1つしかない。幼馴染3人とはいっても常に不二を間に挟んで成り立つ関係なのだから。
 「
10月4日。俺様の家でパーティーを開く。来い」
 『命令形かよオイ・・・・・・・・・・・・』
 「以上。じゃあな」
 『聞けよ俺の話!!』
 ぶち。
 最後まで佐伯を無視して電話は切られた。つまるところ彼ら2人の関係はこんなものである。
 「跡部!!」
 携帯を折りたたむ跡部へと鋭い視線が突き刺さる。それこそ『本気』の不二の怒り。
 それを真正面から見据え―――
 「
10月4日は俺様のバースデーだ。デビュー記念もある。
  祝え」
 「普通・・・・・・、祝われる側って強制するものでもないんじゃない・・・・・・?」
 「それにお前のその手じゃテニスは当分無理だろ? ならいいじゃねえか」
 呟き、跡部は不二の右腕を掴むと本人に見えやすいよう持ち上げた。
 「痛・・・!」
 わざわざ見るまでもなく痛み止めを打ってもなお熱を持って痛みを訴え続けるそこに関してはよくわかっているだろう。先程の試合にて、最初に跡部の絶望への前奏曲[プレリュード]を返してヒビを入れ、ラストに破滅への輪舞曲[ロンド]を羆落としで返そうとして完全に折った右手の骨に関しては。
 顔をしかめる不二を半眼で見やり、ため息を付く。
 「馬鹿かてめえは。さっさと棄権しなかった罰だ。暫くおとなしく謹慎でもしてろ」
 ヒビの入った手で3セット粘り倒した不二。全てカウント0−6という結果に当初は彼の実力を疑っていた報道陣らも、それを知った途端逆に美談として飾りこの一戦を評価の対象からは外した。
 ―――この『美談』が負けるための口実でしかないと、わかったのは恐らく不二の『知り合い』たる一部の人間のみ。だからこそ跡部は最初から気付いていながらもわざと棄権を勧めなかった。
 そこまでして負ける事を望む不二へのささいな嫌がらせ。まさか3倍以上にして返されるとは思ってもみなかったが。
 ―――『お前人生で1回は本気出せよな・・・・・・』
 この言葉の真意は、そんな不二を相手に常に本気を出すハメとなっている自分への皮肉。<0−6>と結果には現れていないが、全ゲーム最低デュースまでは持ち込まれた。本気を出さなければ何ゲーム取られていたかわからない。
 一度でいいからコイツの本気が見てみたい。そう思うのは果たして何人いるか。少なくとも自分を入れてまず一人。
 (俺様らしくもねえ・・・・・・)
 「―――まあ跡部らしいといえばらしいけどさ」
 「―――!?」
 考えを読まれたのかと思い、跡部が珍しくぎょっとした。しかしどうやら彼は勝手に事を進めていった自分に対しそう評価したらしい。
 ふ・・・っと微笑む不二。その目元から力が抜けていく。いつからだろう? 笑みにまで力を込めるようになったのは。
 (そんなに僕落ち込んでたかな・・・・・・)
 佐伯まで出てきた時点で跡部の狙いはわかった。彼は―――彼らはこうやって不器用に、さらに不器用な自分を助けてくれる。
 (そうだね・・・・・・)
 思い出す。かつての自分。彼らと息を切らせてボールを追っていたあの頃の自分。
 いたじゃないか。『テニスを』楽しんでいた自分が。
 「そうだね・・・・・・」
 2度目の言葉はにっこりと綺麗な笑みに包まれていた。
 「1日はサエの誕生日だったし、祝ってあげなきゃvv プレゼント何にしようかなvv」
 「俺様の誕生日だっつってんだろ・・・・・・」
 「ああ、そういえばそんなイベントもあったね」
 「おい・・・」
 「あはは。冗談冗談。何? 跡部ってばそんなに僕に祝って欲しいの?」
 「欲しくねーよてめーなんかに!!」
 いつものように進んでいく会話(らしきもの)。これが2人の―――2人たちの『正しい』関係。
 「あ、ちょっと待ってv」
 「何?」
 「パーティーでしょ? だったら盛り上げ役がいなきゃv」
 「まさか・・・・・・」
 凄まじく嫌な予感がする。自分、不二、そして佐伯。3人はほとんど生まれたときからの知り合いだが―――『幼馴染』という1つのカテゴリーにくくるには実のところもう一人必要になる。
 ―――人呼んでミスター軽薄。楽しい事大好き人間のあのラッキー男が。
 表からは見えない部位にダラダラと汗を流す跡部を他所に、
 不二もまた携帯を手に取った。
 一連の操作に暫しのコール音。その後に出たのは―――
 『あなたのハートにラッキースマ〜ッシュ! 可愛いコアイドル、千石清純。あなたのために電話に出ましたv さ〜。今日の可愛いコは誰かな〜?』
「相っ変わらずあの馬鹿ヤローは・・・・・・」
 毎度恒例わけのわからないオープニングを飾る男―――千石の底抜けに明るい声に跡部が呻いた。念のため時計を見る。日本では早朝5時のはずだ。この男のテンションに時間は関係ないらしい。
 呻く代わりにくすりと笑う不二。彼相手には非表示にしないのだが、千石はいつも液晶を見ないのか毎度毎度このような出だしとなる。
 くすりと笑い―――さらに薄く微笑む。いわゆる・・・・・・どす黒い笑み。
 「そのスマッシュ、返させてもらうよ―――!
  羆落とし!!
  ・・・・・・というわけで久し振りだね千石君。不二だけど」
 『あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!! 俺のラッキースマッシュが返された〜〜〜!!!
  あ! 不二君おっひさ〜vv
  そうそう! テレビ見てたよんv 準優勝「おめでとう」vv』
 「ありがとう。それで僕と跡部日本に帰るんだけどさ」
 『うんうん。跡部君のバースデーパーティーやるんだって?』
 「あれ? 知ってたの?」
 『今テレビで見てる。衛星放送生で流してくれてるんだよねv
  んでもって、ってことは俺もご招待
OK?』
 「もちろんだよv」
 「オイ不二!!」
 「みんなで楽しくやろうねv」
 「俺は一言もそいつ誘うなんて言ってねえだろ!?」
 『わ〜いわ〜い♪ 跡部君ありがと〜vv』
 「てめーは来んじゃねーーーーーーー!!!!!!!」
 ぶち。
 最後まで跡部を無視して電話は切られた。つまるところ彼ら3人の関係もまたこんなものである。
 「不二ぃ!!」
 携帯を折りたたむ不二へと悲痛な叫びが突き刺さる。それこそ『悲惨』としか取れない跡部の怒り。
 それを真正面から見据え―――
 「僕の事無視した罰。おとなしく従おうねv」
 にっこりと悪魔の化身たる不二が微笑んだ。
 その悪質極まりない攻撃に・・・・・・跡部はがっくりと崩れ落ちるしかなかった。
 「くそ・・・。俺様のバースデーはなんで毎年こいつらに侵蝕される・・・・・・・・・・・・」
 さすがにお隣さんではなかったが、近所に住む千石とはなぜか保育園が一緒であり(ちなみにそこは超高級保育園。跡部と不二は普通に金を払って入り、佐伯は母親がそこで働いているため、そして千石は親が園長と親しい間柄にあったため安く入れてもらった)、さらになぜかそこにいわゆる『友人関係』―――といえなくもないような気もしないでもないものが発生してしまった。
 やたらと(ヤバい)波長の合うらしい千石と不二のイタズラに頭を抱え、そこへ同じく被害者だったはずの佐伯が爽やか自覚バリバリでトドメを刺していくのが毎度のパターン。
 ・・・・・・そして落ち込む不二を佐伯と共に探し当て、千石が引っ張り上げるのが特殊パターン。
 それが、自分達の位置関係[スタンス]。
 「よ〜っしじゃあ帰ろう帰ろう!!」
 今までの暗さはどこへやら、(折れているはずの)右手を振り上げ跡部を引っ張って歩き出す不二。引きずられるまま、跡部は結局いつもどおりため息をついたのだった・・・・・・。







・     ・     ・     ・     ・








 2週間ほどの『休養』の後、再びアメリカへとやってきた2人。げっそりとした跡部とは対照的に―――





 ―――リハビリをする不二の瞳にもう迷いはなかった。





―――Fin









・     ・     ・     ・     ・     ・     ・     ・     ・     ・     ・     ・

 はい。誕生日企画だっつーのに全然関係ないどころかなぜか祝われているのは不二様!? まあこれは『序章』ですからv
 さて4人の友人関係。跡部・不二・佐伯の3人に関してはちらほらとあるのですが(いや、不二と佐伯の幼馴染関係はアニプリではやっていましたが)、私的には千石さんも入れたいな〜v ということでこんな事になりました。しっかしこの4人、なぜか跡部・佐伯・千石→不二っぽいことになっていきそうな・・・・・・。実際この話もモロに跡部→不二になってましたね。愛情関係一切なしにするはずだったのに・・・。あ、ちなみにサエの設定含めてこの4人の関係詳細は登場人物紹介のほうに挙げ―――られるといいなと想います。
 まあそれはともかく、お誕生日おめでとう―――とはまだ序章なので言わずに終わりにします。あ〜早く言いたいよ〜。特にサエ(爆)。

2003.9.30〜10.3




最後にして最初に。この話、書くにあたってこのシリーズの冒頭、あらすじ兼設定部分を一部変更しました。手塚(と不二。あくまでこの時点でメインは手塚)のアメリカ留学は全国大会を制覇した9月ではなく青学を卒業した3月という事でよろしくお願いします・・・・・・そこまで変えたくないのか留学後半年でデビューという設定・・・・・・。