『ねえ跡部! 僕好きな子が出来たんだ!!』
 真夜中、突如かかってきた『知り合い』からの電話。電話越しにも花の咲き乱れていそうな浮かれっぷりはよくわかる。
 よくわかって―――
 「ああそうかよ。そりゃよかったな。んじゃ切るぞ」
 『あ、ちょっと待ってよ! まだぜんぜん語ってな―――!!』
 ぶつ。
 跡部はなおも喚く電話を強制的に切った。
 自ら切った電話を眺める彼。その顔には―――



 ――――――何も浮かんではいなかった。









帝王の宴 魔王の降臨
          〜
in Beharf of…〜










 あれから
10年が経った。かつて『天才』として世界No.2まで上り詰めた彼は、自らの恋人をさらに上へと上らせるため僅か20歳という若さで引退した。
 かの恋人―――越前リョーマを今回も下し、世界の壁の高さを思い知らさせた跡部は、



 「今日で俺は引退する」



 試合後のインタビューにて、いつも通りの様でそう言ってのけた。







・     ・     ・     ・     ・








 「お父さん、引退するってホント?」
 「何だ。聞いてたのかよ」
 「テレビで騒いでたよ。もちろん僕は生放送でちゃんと見たけど。お父さんが出てるんならしっかり見とかなきゃね」
 ロッキングチェアに腰をかけ、下を向き会話する跡部。その目線の先には、彼の腿に肘と頭を乗せくつろぐ
10歳程度の少年がいた。
 クセのない栗色の頭を撫でる。気持ち良さそうに目を細める子―――『お父さん』と呼ばれるならば彼にとってその少年は『子ども』なのだろう―――を見下ろし、にやりと笑う。
 「しっかり見て、俺様の美技でも盗もうってか? バーカ。まだまだ早ええ」
 「む〜・・・・・・」
 呻いた子どもが身を起こす。口を尖らせ碧い瞳に不満をいっぱい乗せ、
 「そりゃお父さんみたいにまだまだ体大きくないし筋肉もないけどさ」
 バスローブを着た跡部の胸元へと倒れこんだ。頑強でしなやかな筋肉はこの程度ではもちろんびくともしない。
 胸元の隙間から小さな手を差し入れ、広い胸筋をゆっくり撫でる。興味津々というようでもあり―――愛撫のようでもあり。
 徐々に下がり、今度は下から割って入り(とはいっても元々跡部が足を開いて座っていたため左程の事でもなかったが)太腿を撫でる。
 「あ〜あ。早くお父さんみたいになりたいな〜・・・・・・」
 元の姿勢に戻る子ども。滑り落ちる手首を捉え、
 跡部は手の平に軽くキスしてやった。舌を出し、指先までつーっと一直線に舐め、言う。
 「筋肉なんつーのは成長すりゃ勝手に付くもんだ。問題はどこまで使いこなせるかでな。
  それに、ねえ奴はねえ奴でいくらでも強くなるさ。やり方さえ見つけ出せればな」
 「不二コーチみたいに?」
 こちらの目を見てきょとんと問うてくる子ども。それに答える彼には、微塵のためらいもなかった。
 「そうだな。アイツもいい例か。ああ、あと越前もか。小柄な体にしちゃよくやってる。
  ついでに言っとくが俺もそこまで筋力バカじゃねーよ」
 「あはは。だろうね。お父さんの躰、凄く綺麗だもんね」
 がっしりと逞しい『綺麗さ』ではない。筋肉は確かについているが、必要なところに必要なだけ、だ。身長[サイズ]さえ合えば、もしかしたら女物の服ですら入るかもしれない。
 にっこりと笑ってそんな事をほざいてくる子どもに、跡部が半眼を向けた。何だろう。このものすっっっごくよく感じる既視感は。
 「・・・・・・誉めてねえだろ、お前は」
 「そんな事ないよv」
 「くそっ。こうなりゃ遺伝っつーより環境か? アイツら何吹込みやがった・・・・・・!」
 「え〜? お兄ちゃん達はいろいろよくしてくれてるよ? お父さんの事もいろいろ話してくれるし」
 「アイツらぜってー後で抹殺する・・・・・・!!!」
 「?」
 拳を震わせる跡部をさらにきょとんとした目で見つめてくる彼の少年。ぽんぽんとその頭を撫で、
 「それに、『練習場所』なら用意してやっただろ?」
 「え? じゃあ僕大会に出ていいの!?」
 「いいぜ。俺がコーチになってやる。プロデビューなんて簡単なもんだろ?」
 「やった〜vv」
 今まで試合に出た事などなかった。どころかスクールやクラブに通う事―――いや、そもそもこの家から出たこともほとんどなかった。テニスも、勉強も。何もかも教えてくれるのは今自分の頭を撫でてくれる『お父さん』で、大会などで外国に行っている間は彼の友人だという2人の男で。
 相手に不足するなんてワケはないが、それでも今の話は嬉しかった。何より・・・・・・お父さんがこれからはずっと一緒にいてくれる、という意味で。
 「ありがと〜! お父さん!!」
 首に抱きついてくる子どもを膝に座らせ、跡部は細い腰をゆるく抱きかかえた。
 顔が触れそうな距離で、まさしく臣下に命令する帝王の眼差しで言う。
 「代わりに、俺がこれだけしてやってんだ。ぜってー上まで上り詰めろよ」
 「え〜? ダメだよそれは」
 「あん? 何でだよ。
  謙遜とか言うんじゃねえぞ。お前にゃ似合わねえ」
 「違うって。だって・・・・・・
  頂点にはお父さんがいるんでしょ? じゃあまだまだムリだよ」
 首を傾げ、ね? と笑う子どもに、
 跡部もまた、口の端を吊り上げ笑ってみせた。
 「クッ・・・。なら2番目にまで上って来いよ。世界の
No.2だ。俺以外の奴は全員潰して来い」
 「もちろん」
 同じ笑みの2人。密やかに笑い合い―――
 瞳を閉じた2人の顔がさらに近寄った。







・     ・     ・     ・     ・








 それからさほど経つまでもなく。またも開かれるテニス大会。参加選手らのために用意されたホテルにて、ベッドに腰掛けた不二は出来たてほやほやの対戦表に首を傾げていた。
 「まさか・・・・・・」
 「何? どーしたの周助」
 「ああリョーマ君。ここ見て」
 シャワーを終え、タオルで頭を拭きつつ声をかけてきたリョーマへ、それを差し出す。彼が指差すは参加選手一覧。下の方、『無名』の新人辺りで。
 「《
Atobe 》・・・・・・?」
 同じところを見て、リョーマもまた同じように首を傾げる。
 「何? あの人引退したとかいってまた出てきたワケ?」
 「かと思ったんだけど・・・・・・」
 全て英語で書かれたパンフレット。選手名も今リョーマが読み上げたようにローマ字で書かれている。不二はわざと指で隠していた前半―――名前部分を見せる。
 「《
Syugo 》。シューゴ、ねえ・・・・・・。打ち間違いじゃん?」
 「名前だけなら、ね」
 もうひとつ。今度は姓名のさらに先を指す。
 「さすがに年齢
10歳は、間違いにしてはやりすぎじゃない? ちなみに生まれた時から一緒にいた身として詐称せずにいうなら、跡部は僕と同じ28歳だけど?
  それに跡部はコーチに回ってる。跡部のコーチは榊監督だったんだから間違え用はないよ」
 「ふーん・・・・・・」
 「子ども、かなあ・・・? でも―――
  ―――――――――――――――にしては早すぎる」
 口元に手を当てぼそりと呟く不二。自分にリョーマという恋人が出来て
10年。同時に跡部も子どもを産んだならば一見計算は合う。だが、
 (僕がリョーマ君に会ったのが4月。跡部の誕生日は
10月。よっぽどの早産じゃない限り、『子ども』はまだ9歳の筈だ・・・・・・)
 『ずっと一緒にいた身』として、跡部に関しては知り尽くしている。跡部は遊んでいるようで一途だ。たとえそれが絶対届かないとわかっていようと、誰かを想う片手間に他の誰かと、などという器用な、でもって軽い性格ではない。
 (筈・・・・・・)
 もしかしたら意外と軽い男だったのかもしれない。それとも早くもこちらは見切りを付け、ただの付き合いで共にいただけか。
 気持ちが陰鬱になる。
 彼を利用していたのは自分だ。彼が自分を好きだと、わかった上で気付かないフリをしてその優しさに付け入っていた。自分の中で消化できない全てのものを彼に押し付け、そしてその必要がなくなればあっさり切った。たとえ彼がその間自分に内緒で別の誰かと付き合っていようがそれで子どもを作っていようが、自分に責められる筋合いはない。
 俯く不二の目の前が、
 突如暗くなった。
 「―――?」
 見上げる―――よりも早く。
 不二をベッドへと倒し、その上に覆い被さりリョーマがぽつりと洩らした。
 「そんなにソイツの事気になる?」
 僅かに眉間に寄る皺が、細められた目が、尖る唇が。
 全て全て、それじゃ不満だと訴えている。
 暫しその真っ直ぐな瞳―――そういえばこんな風に嘘偽りなく自分を表す澄んだ瞳は跡部とそっくりだ。互いに自分を本当に『偽る』術を知らない―――を見つめ、
 不二はふっと笑ってみせた。
 「将来有望かもしれないテニスプレイヤーとしてはね。もちろん君のライバルになりうるかもしれない存在として。
  『僕』が気にする存在は、君ただひとりだけだよ」
 「キザすぎ」
 洩らした呟きをボヤきに変え、リョーマは不二へと顔を寄せていった。







・     ・     ・     ・     ・








 「じゃあリョーマ君はウォームアップしててね。僕は他の試合も見てくるから」
 「いいけど」
 試合当日、珍しくリョーマの準備運動に付き合いもせず、不二はあちらこちらで行われる試合をきょろきょろと見回していた。試合を繰り広げるのは、大抵は知った選手。だがそれらが見たいのではない。
 今回見たいのは―――もちろん『跡部シューゴ』。
 暫くうろちょろして、
 「あそこか・・・・・・?」
 端っこの一角、本来ならそうそう人も見ないであろうその辺りで行われている試合。しかし今、なぜかそこにはメインの場所以上に人が集まっていた。それも、普段とは違った様子で。
 「何・・・・・・?」
 周り中を取り巻く『混乱』。居合わせた彼らは、誰の応援をするワケもなくただ呆然と試合を見ているだけだった。通常そうそうなく――――――ましてや跡部の試合ならば絶対にありえない事。
 たまたま何らかの拍子で振り向いた何名かが、こちらに気付く。気付き・・・・・・さらに混乱を深めていく。
 「ほ、ほらやっぱ・・・!!」
 「どう見たってそっくりじゃんかよ・・・・・・!!」
 「だからあんな名前・・・!?」
 自分を見て驚く彼ら彼女ら。その辺りは無視して、不二は人込みを掻き分け前へと進み出た。
 最前列にてフェンスを握り締め、
 不二もまた、彼らと同じように呆然とする。
 「ゲームセット! ウォンバイ跡部! 6−0!!
  セットカウント3−0により、跡部選手の勝利とします!!」
 丁度かかる審判のコール。フェンスの中では、世界ランクもかなり高い選手を圧倒的な力で下したらしい少年が、握手もせずにコートから出ていった。まあ崩折れたその選手相手に握手を求めるのは酷かもしれないが。
 驚くのはその強さではない。跡部の関係者ならこの程度はやってもらわねば。
 驚くのは、彼の顔だった。
 「どういう、事・・・・・・?」
 栗色のクセのないショートヘア。全体的に線の細い、軟らかめのパーツ。中心にある碧い瞳は跡部もまた共通として、



 ――――――彼の顔は、幼い頃の自分にそっくりだった。



 が、
 「つまらないなあ。弱すぎて話にならないよ」
 肩越しに後ろを見やり、冷たい瞳で言い放つ彼の少年。鼻で嘲うその様は、自分よりもむしろベンチで彼の帰りを待っているコーチのものによく似ている。
 「どうせ世界なんてこの程度のレベルだ。さっさと優勝して終わらせちまえよ、周」
 「うん!」
 にやりと笑い、彼の頭を撫でる跡部に、彼―――シューゴも今度は満面の笑みで頷いた。そんな様は確かにかつての自分に似ているのか。
 「『シューゴ』。・・・・・・『周吾』、か・・・・・・」
 ひとつだけ、理解する。この名前の意味。
 『周』と、そう呼べるからだ。かつて、跡部が自分を呼んでいたのと同じように。
 声をかけようとし、しかし何とかければいいのかわからないかためらう周りを無視し、踵を返した不二はリョーマの元へと戻っていった。これ以上、何も得る必要はない。







・     ・     ・     ・     ・








 毎年秋アメリカで開かれる、規模はそうそう大きくもないが由緒あるこの大会。
21年前はデビューしたての日本人選手が優勝し、13年前はプロデビュー戦となった跡部と不二が華々しく活躍、さらに8年前はこちらもデビュー戦だったリョーマの一人舞台となった。21年前に日本人初の優勝をもたらしたのがリョーマの父、越前南次郎だとすると、どうもこの大会は越前・跡部2家にとって重要な位置付けを持つらしい。ついでに優勝時の年齢を比べると、南次郎が20歳、跡部が15歳(16歳寸前)でリョーマが13歳。これでもし仮に跡部の『子ども』―――跡部周吾が優勝したりすると彼は10歳。最年少記録はどうも日本人たちがどこどこ塗り替えることになるようだ。
 (なんて、思ったりしてね)
 決勝コートにて、不二はコーチとして最低の考えをしてみたりした。コーチならば自分の育てる選手の優勝を願うだろうに。
 (さて、どっちが勝つかな?)
 口の中で呟きながら、審判台を挟んで隣にあるベンチを横目で見やる。いつも通りの自信満々さで子どもを送り出す跡部を。
 この構図は、図らずも―――いや向こうは図ってきたか―――かなり因縁のある対決となった。かつては選手同士で戦った自分と跡部。自分の引退後は、まるでそれを受け継いだかのようにリョーマが彼と戦い・・・・・・全てにおいて負け続けていた。
 互いの教え子対決。今回有利なのはもちろんリョーマの方。技術や精神面ではともかく、体格や経験といった面では遥かにリョーマが優っている。今までの結果は覆されるのか、それとも・・・・・・。
 (とりあえず、精神面での影響はなし、か・・・・・・)
 周りのざわめきは先程の試合以上だ。かつてのライバルの教え子同士の試合。それでありながら謎の新人はライバルコーチと同じ顔、とくれば混乱して当然だろう。が、
 「フーン。『周吾』ねえ・・・。アクシュミ」
 「何の事かな?」
 口端で笑い挑発するリョーマ。乗る彼・周吾もまた挑発的に笑ってのけた。性格の違いが現れる。先程自分が感じた通り、今のでリョーマもまた確信しただろう。アレは『不二周助』とは無関係だ、と。
 「対戦できるの、凄く楽しみだったよ。よろしく」
 今度はにっこりと笑い、左手を差し出す。
 「跡部」
 「あん?」
 「彼―――周吾君、右利きじゃなかった?」
 前を見たまま、不二がぼそりと呟く。さっき見たとき、ほとんど試合は終わっていたが彼は間違いなく右手にラケットを持っていた。
 腕を組み、前を向いたままながら、それでも跡部は反応してきた。
 細めた横目でこちらを見やり、
 「試合前に敵陣視察か? ご苦労なこったな」
 「やっぱり彼、今回出てくるまでどこにも出してなかったよね?」
 即座に質問の内容を変える。『試合前』などと限定してきた時点でそれまでは絶対無理だったという事か。
 (まあ、跡部の子どもが活躍してるなんていったらとっくに世界中で話題になってるだろうけどね)
 デビューから引退までの13年間、一度たりとも世界
Topの座を誰にも明け渡さなかった跡部。彼に子どもがいるなどとわかっていたら世界中の注目の的だ。帝王の子もまた帝王となるのか。それとも・・・・・・
 だが跡部はそれには答えず、代わりに前の質問に答えた。
 「どっちでもいいじゃねえか。やりやすい方でやりゃ。越前だって右でしょっちゅうやってんだろ?」
 否定はしない。どころかこの言い方では肯定だ。その上―――
 「『やりやすい方』ね・・・。どういう意味で?」
 単純に自分がプレイしやすいという意味では間違いなくない。リョーマもテニスにおいてはほぼ両手利きといえるが、それでも便利さの差によりツイストサーブ除いて利き腕である左の方が数段上回る。
 後は、相手に対する揺さぶりか。普段リョーマ自身が用いるのと同じ手。後で右に持ち替えるつもりか?
 「さあな。まあ、『幼馴染』として1つだけ忠告しといてやるよ。
  ―――利き腕じゃねえからって甘く見ねえ方がいいぜ? 周は左右で全然差はねえよ。てめぇと同じでな、不二」
 確かに、実のところリョーマについて考えるまでもなく不二自身もまたテニスは左右どちらでも行える。それもほぼ上下差なく。
 右はともかく、左でも出来る理由は簡単だった。裕太と、そして佐伯の影響でだ。正確には彼ら2人の攻略のため。同じ打ち方をしようが右と左で打球の回転の向きが異なる。攻略するにはまず真似してみるのが1番簡単。自分も出来れば攻略手段も思いつくだろう。そんな理由でだった。
 その辺りはどうでもいい。
 (『不二』、か・・・・・・)
 中学入学以来、学校も別れ名前で呼ぶのは恥ずかしいだろと禁止されていた。それ以来は2人でない限りずっと名字だ。そういえば、ここ10年はその名字ですら満足に呼ばれてはいなかったか。
 「忠告ありがとう。とりあえず無駄にはしないように努力するよ、跡部」
 にっこりと、それこそまるで彼の『息子』たる存在を逆に真似するかのように不二も笑ってみせた。
 それに何か反応する事もなく、跡部の目線が外れる。
 2人の前で、
 それぞれの思いを乗せ、今試合が始まった。







・     ・     ・     ・     ・








 開始早々激しく続くラリー。互いに左右に振り合い、前には出さない。一見普通なようだが、フットワークに定評のあるリョーマを後ろに押さえ込むのは相当の技術が必要だ。
 (それはそれでいいけどさ・・・・・・)
 リョーマにももちろんそれはわかっている。同時にこのまま膠着し、持久戦へともつれ込めば自分が有利になることも。絶対的な体格差は何より体力―――持久力の差を生む。周吾のあの
130cm程度の小さい体ではあっさり尽きるだろう。・・・・・・165cmの自分に関してはあえて触れないが。
 が、
 (このまんまじゃつまんないじゃん・・・・・・)
 そんな手で倒す気はさらさらなかった。あの跡部の子ども―――かどうかはともかくとして、あの跡部がコーチとしてついた選手。たとえ
10歳なんて年齢だろうが、油断する気もましてや手加減する気も全くない。
 わざと打つ、コードボール。これで前に出ざるを得ない。
 (周助とおんなじならネットプレイは得意じゃない。跡部さんとおんなじなら―――)
 前へ走り寄る周吾に合わせるように、リョーマもまた前へと飛び出した。
 「ネット対決!?」
 「いや、だったら越前が有利だろ」
 「じゃあロブで逃げるか・・・」
 「それも苦しいぜ。ヘタに上げれば得意のジャンピングスマッシュが待ってる」
 好き勝手に未来予想する観客ら。その予想は―――
 ―――ことごとく外れた。
 『な・・・・・・!?』
 ネット際で先に飛び上がったのは周吾の方だった。
 「ドライブボレー!?」
 放たれた、強烈な球。腕力による単純な力押しではない。ジャンプにより充分に力を加え、打球にスピンを与えることでさらに重みを増している。
 「ぐ・・・・・・!!」
 かろうじてラケットで受けはしたが、左手1本で打ち返すのは無理。リョーマは右手を補助につけようとしたが―――
 カシャ―――ン・・・・・・
 手からラケットが弾かれるほうが先だった。
 「フィ、
15−0!」
 審判のコール。広がるざわめき。目を見開くリョーマと不二。そして、薄く笑う周吾と跡部。
 次も同様にラリーが続き・・・
 今度は周吾の打った球がネットインした。
 またも駆け寄る2人。今度仕掛けるはリョーマから。
 やられたらやり返す。見様によっては単純極まりない思考回路の元放たれるのはもちろん、
 「ドライブA!!」
 ざわめきが同時に1つの言葉を紡ぎ出す。リョーマの必殺技にして危険球その1。まともに喰らって倒れた相手は何人いるか。
 だが、それを知っていながらも跡部の浮かべる笑みは変わらなかった。
 「甘い甘い」
 小さな呟きに―――ようやく不二がそれに気付く。
 (この試合の展開・・・まさか・・・・・・!!)
 リョーマに警告しようと口を開くが、
 ―――既に遅かった。
 先程のリョーマ同様ドライブボレーを受けに行く周吾。バックハンドとなった状態で、さらに右手を添え、
 ダン―――!!
 片足で、前に跳ぶ。
 「弾かれない!?」
 「オイオイ、どころか―――」
 「―――打ち返した!!」
 着地後、慌てて追うリョーマ。だが僅かに足りず、伸ばしたラケットの先ギリギリをボールは駆け抜けていった。
 「
30−0!」
 「嘘だろ・・・? アレ・・・・・・」
 「スイッチブレードじゃねえか・・・・・・・・・・・・」
 ドライブボレーにスイッチブレードというかジャックナイフ、どちらも跡部の必殺技だ。確かに不二そっくりの彼が打てば驚くのも無理はない。が、
 不二が驚いたのは別の理由でだった。
 (この展開、関東の時のS1と同じ・・・・・・)
 関東大会1回戦。青学対氷帝におけるS1。今の2人の動きは跡部と手塚の動きをそのまま再現した形だ。ただし手塚はあれを追いついていたが。
 (リョーマ君の方が遅い・・・ワケじゃない。周吾君の技のキレが跡部以上なんだ・・・・・・)
 少なくともあの当時の跡部以上。そしてそれを可能にしているのは・・・・・・
 (あの筋肉の柔軟性、か・・・・・・)
 さすが『周』吾。自分と同じ特徴を持つ。筋力そのものはなくとも、バネのような柔軟性と、さらに球に自在にスピンを与えられるラケットコントロールがあればヘタなヘビー級プレイヤーなどよりやっかいな存在となる。跡部本人がそれを証明してはいるが、カウンターという特異な形を抜いて総合的に見ればさらに証明しているのが不二である。どちらも受け継いだとなれば・・・・・・
 立ち上がるリョーマを見下ろし、周吾が目を細めた。その口から放たれるはコーチと同じ一言。
 「甘いなあ」
 「にゃろ・・・・・・」







・     ・     ・     ・     ・








 「ゲーム1−0! 跡部リード!! チェンジコート!」
 審判に促されるままコートを出て行く2人。ベンチに向かい・・・
 「ねえねえどうだった? お父さん!」
 そこに待つコーチに駆け寄る周吾の言葉に、会場中が静まり返る。名字から関係者だとは誰もが推測しただろうが・・・・・・。
 そんな空気をものともせず、跡部は抱きつこうとしていた周吾にデコピンを喰らわせた。
 「バーカ。早すぎんだろ? 浮かれてんじゃねえ。試合[ゲーム]は始まったばっかだろーが」
 「む〜。いいじゃん。ちゃんと勝つんだから」
 額を両手で押さえ、周吾がベンチへと座り込む。跡部が前もって座っている以上それで揺れたりあまつさえ倒れたりするような事はない。勢いに持て余されるように、周吾の足が空中をばたばたと振られた。
 落ち着くのを待ってから、足を組替える跡部。片手で周吾の手を剥がし、露になった碧い瞳を見下ろし薄く笑う。
 「ま、1セットくらい取ったら何か考えてやるよ」
 「ホント!?」
 「だからとりあえず『じゃん』とか言うのは止めろ。すっげーヤなヤツ思い出す・・・・・・」
 「え〜?」
 なおも色々な意味で不満げな周吾の頭をはたき、
 「おらわかったらさっさと行って来い」
 「ってまだ何にもやってないんだけど・・・・・・」
 「ああ? まだ何がやりてえんだよ」
 「とりあえず汗拭くとか、スポーツドリンク飲むとか」
 「・・・・・・・・・・・・。
  さっさと行って来やがれ!!」
 「は〜い」
 審判の合図よりむしろ跡部の指差しに従うように、周吾はコートへと戻っていった。今回特に休まず、さっさと逆コートへ行き、そこでこちらのやり取りを見ていたリョーマへと。
 「じゃあ、さっさとやろうよ」
 「・・・・・・いいけどね」
 「本気でコイツの性格は誰の受け売りだよ・・・・・・」
 「僕じゃないと思うな。少なくとも」
 「いや、てめぇだろどう考えても」
 1番焦らした相手による責任転嫁に、完全に慣れたリョーマは何も返さず頷き、ベンチで跡部は頭を抱えてため息をつき、さらに不二は一応そっくりさんとして突っ込んでおいた。跡部のため息をより深くしただけだったが。







・     ・     ・     ・     ・








 その後のゲームは、リョーマにとって極めて不利な展開となった。





 上がるチャンスボール。スマッシュを打つリョーマ。ラケットを手に、いきなり逆を向く周吾。
 (羆落とし・・・・・・?)
 屈む彼を視界の端に収め、リョーマは後ろへと下がった。羆落としの意外な欠点。ロブで上がった球に追いつけば再びチャンスボールとなるのだ。そして逆を向き屈みこむ姿勢を取った周吾はよほどいいポイントに打たれない限り連打では打てない。どころか取りにいけない。
 そう、思ったのだが・・・
 周吾の打ったのは羆落としではなかった。新たなカウンターとも言えるか、彼の返す球はロブではなくドロップとなっていた。
 てんてんとネット沿い―――リョーマの後ろを跳ねる球。
 「はい、外れ」
 驚く一同を前に、周吾はにっこりと笑ってみせた。





 再びリョーマにスマッシュチャンス。ラケットを振り上げれば、その先でまたしても周吾が逆を向こうとする。
 「同じ手、2回も通じるって思ってんの?」
 ラケットを振り上げるだけで止める。適当に当たった球はネット伝いにゆっくりと落ちていき―――
 「ムリだろうね」
 屈みこまなかった周吾が逆向きのままラケットを当ててきた。
 振り向く勢いでボレーを放つ。タイミングを外され、リョーマは一切動けなかった。
 「やらないから。そんな二番煎じ」
 最初のリョーマの攻撃も含めた強烈な皮肉。モロに苛つきを露にするリョーマへと、再度周吾は笑みを向けた。





 今度はネット戦。片足スプリットステップによりフットワークでリョーマが勝る―――かと思いきや。
 「リョーマ君の動きが鈍い・・・・・・?」
 鈍い、というか、動く前に僅かながら躊躇があるのだ。
 「まさか・・・・・・」
 嫌な予感にかられ、不二がリョーマの足元と、そして周吾の手元を見る。
 互いの動くタイミング。リョーマの足がつく。周吾が打つ方向を変える。リョーマが飛び出そうと逆方向に重心をかけ―――
 ―――ここで再び周吾が打つ方向を戻した。
 「嘘・・・・・・・・・・・・」
 途中まで―――リョーマが足をついた後打つ方向を変えてきた相手はいた。だがその相手ですらそこまでが限界だった。ノーステップで方向を変えてきたリョーマには敵わなかった。
 だが周吾はそれをやってのける。リョーマの方向転換を見てからでは遅すぎる。ならば―――
 「―――っ!!」
 ようやく頭の中で繋がる事態。不二は口を開けて立ち上がった。
 この予知能力ばりの先読み。右利きのみの筈の跡部をコーチにつけての左右両腕利きの謎。プレイスタイルどころかからかうような態度そのもの。
 全ての答えは跡部自身が言っていた。


 ―――『だからとりあえず「じゃん」とか言うのは止めろ。すっげーヤなヤツ思い出す・・・・・・』
 ―――『本気でコイツの性格は誰の受け売りだよ・・・・・・』


 リョーマと付き合うなかで、跡部と共に離れていったあと2人の幼馴染。『食わせ者』が1人と、左利きが1人。そして、2人とも動体視力のよさでの先読みが得意。
 血の気が引いていく。
 (みんな・・・、周吾[そっち]についたんだ・・・・・・・・・・・・)
 試合を見ていられなくて、俯く不二。その耳へと、残酷極まりない声が飛び込んできた。
 「あっれ〜? けっこーいい試合してんね〜」
 「って、試合見てなくていいの? 不二」
 「あ・・・・・・・・・・・・」
 「ゲーム跡部! 6−2! セットカウント1−0! 跡部リード!!」
 振り向き直す―――までもなく、審判のコールが正確な結果を伝えてくれた。
 「へー。やんじゃん2人とも」
 「千石君・・・・・・、サエ・・・・・・・・・・・・」
 「やっ。不二くんおっ久〜♪」







・     ・     ・     ・     ・








 相当苛ついた様子でベンチへと戻ってくるリョーマ。自然と目に入る。中途半端に振り向きかけた状態で、何処も見ずに俯く不二も。フェンスの向こうで笑顔でひらひら手を振ってくる男2人も。
 「―――何やってんの? アンタたち」
 「ひっどいな〜リョーマくんその言い振り」
 「俺達お前の事見に来たんだけど?」
 「嘘つけ」
 「あれ? バレバレ?」
 「当り前」
 「何だ。意外と切れ者だったんだな、越前って」
 「うるさいよ」
 徹頭徹尾、初めから終わりまで徹底してからかい口調の千石と佐伯に、リョーマはため息をついて親指で横を示した。
 「アンタたち2人も仕込んだんだろ? アレ」
 「仕込んだ、っていうか・・・・・・」
 「まあ育成には関わってるかな? ただしメインは一応跡部だけど? というわけで性格が相当に可愛い」
 「じゃあさっさとそっち行ってきたら? 周助[こっち]はお構いなく」
 「あ、そう?」
 「なら遠慮なく」
 しれっと言い切り、2人がフェンスの中へと入ってくる。リョーマと、そして俯いたままの不二の横を通り過ぎ、
 「あ、サエ! キヨ!」
 「やっ。周くん」
 「周ちゃん久しぶり。見てたよ試合。凄いね」
 「てめぇら・・・、何しに来やがった・・・・・・?」
 「あっとべく〜ん。それはないんじゃん?」
 「周ちゃんの公式戦デビューっていったらそりゃ来るだろ。ようやっとお前の箱入り育成方針が変わったのかって評価しに」
 「そうか・・・。ついでに試合見てたんなら丁度いいな。さっきっから周の性格は誰の責任かって話になってんだけどな―――」
 「や〜周くん凄いよホント!」
 「この調子で頑張ってね」
 「ありがと〜vv」
 「人の話聞きやがれ! 周もだ! ンなやつらに愛想振り撒いてんじゃねえ!!」
 がん! ごん! ぎゅっ!!
 しゃがみ込み周吾の頭を撫でる2人にかかと落としを決め、懐く周吾を2人から剥がして引き寄せる。
 「うっわ〜。跡部くん相変わらず強烈〜」
 「これで周ちゃんの性格が暴力的になったら
100%間違いなくお前の責任だな・・・・・・」
 「聞いてたんじゃねえか。やっぱてめぇら後で抹殺決定だな」
 「あ、周くんそろそろじゃない?」
 「そうそう。あんまり待たせるとまた越前が怒るよ?」
 「そっか。すっかり忘れてた」
 跡部を無視して周吾を促す。ついでに別れ際もう一度ずつ頭を撫で、さらに跡部の怒りを買ってみたりもするが、それが発揮される前に安全圏[そと]へと避難する。コーチの仕事―――というか子どもを見る役目がある以上ベンチからは離れられない。
 「くっそ・・・。アイツら自分のやりたい事だけやっていきやがって・・・・・・!!」
 「まあまあお父さんv 落ち着いてvv」
 「誰のせいで俺がンな目に遭ってると思ってんだよ・・・・・・」
 項垂れため息をつく跡部へと、
 「じゃあお詫びの印にv」
 首に手を絡め、ぶら下がるように跡部に抱きついた周吾は、ほんの一瞬だけ、触れるようなキスを頬へと送った。
 「元気出してv」
 笑顔で言う周吾の頭を押さえつけ、
 跡部は問答無用で彼を引きずり落とした。
 「どこが俺へのお詫びだ。お前がやりたいだけだろ?」
 「だって1セット取ったら何かしてくれるって言ってたじゃない。なのに何にもしてくれないから自分へのご褒美」
 「ぐ・・・。1セット『くらい』、つっただろ?」
 2人の乱入のおかげですっかり忘れていた事項。しかし子どもの教育上親が嘘つきたることはとっても避けたい事態だ。
 顔を引きつらせつつもなんとかそう返す跡部へ、周吾は視線を逸らしては〜〜〜〜っとため息をついた。
 「やだなあこういう大人って」
 「〜〜〜〜〜〜!!! やりゃいいんだろやりゃあ!!」
 「そう来なくっちゃv」
 鍛え上げた体プラス逆切れ中に
30kg未満はとても軽かった。片腕で周吾を抱きかかえる。
 周吾も横抱きされるように跡部の腕に腰をかけ、再び首に絡みつく。
 完全観客無視で行われるディープキス。とりあえず先程からぼーっと彼らを見続けていた不二を絶望のどん底へ突き落とすのには成功したようだ。
 (これで、いいんだよね・・・・・・)
 たとえ今周吾のいる座がかつて自分がいたものだったとしても。
 自分はそこを捨ててもリョーマを選んだ。後悔はしていない。
 彼らがたとえ何を代理にしたとしても―――彼らが自分抜きに楽園を維持していたとしても。
 自分には・・・もう、関係ない・・・・・・・・・・・・
 と、
 「―――ん?」
 くいくいっと、腕が引っ張られる。いや・・・・・・。
 「どうしたの? リョーマ君」
 振り向き見下ろす先で、リョーマは自分の腕にしがみついていた。まるで、それこそ子どものように。
 「周助は、俺のだからね」
 肩に顔を埋め、ぼそりと呟く一言。絶望を打ち砕き、自分をたまらなく嬉しくさせてくれる、そんな一言。
 「うん。僕は、リョーマ君だけのものだよ。今も、これからも、ずっと・・・・・・」
 優しく頷き、不二はリョーマの頭をそっと撫でた。しがみついたせいで取れた帽子。サラサラの髪を梳き、頭へと優しくキスを送る。
 蜜月のような甘さを含めたこの時間は、
 「ほらよ。これでいいんだろ? 代わりに次から1セットでも落としやがったらお前置いて先帰るからな」
 そんな色気もへったくれもない跡部の台詞で終わりを告げた。
 「ええ〜!? 飛行機代持ってないよ〜!!」
 「知るか。適当に誰かたらして奢らせろ」
 「やったら怒るじゃん」
 「その前に相手殺しとくけどな」
 「やっぱダメじゃない」
 「なら落とすなよ?」
 「はいはい。最初っからそう言ってよ」







・     ・     ・     ・     ・








 「ゲームセット! ウォンバイ跡部! 6−4!!
  セットカウント3−1により、跡部選手の勝利とします!!」
 「あの越前が・・・・・・?」
 「子ども相手に1セットしか取れなかった・・・・・・?」
 「さすが帝王の子ども・・・・・・・・・・・・」
 驚く観客の中、リョーマは下を向いて慄き、そして結局ラケットを持ち変えることのなかった周吾は上を向いて嘆いていた。
 「あ〜。1セット落としちゃったよ。本気でどうやって帰ろう・・・・・・」
 「クッ・・・。せいぜい頑張れよ」
 「お父さん・・・。本っっっ当〜〜〜〜〜〜に、置いてくの?」
 「ったりめーだろ? 俺は有言実行がモットーだ」
 「う〜。いーもん。グレてやる〜・・・・・・!!」
 「グレてろてきとーに」
 「お父さんがい〜じ〜め〜る〜〜〜!!」
 「あーそーかよそりゃよかったな。おらさっさと挨拶してこい」
 「しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「ンな泣き方するヤツいるか」
 「ちっ・・・・・・」
 「・・・・・・お前本気で性格2人に似てきたな。
  んじゃ表彰式でもやってこいよ。俺は先帰ってるからな」
 「お父さんのばかあああああああ!!!」







・     ・     ・     ・     ・








 表彰式後、記者が群がるのはもちろん周吾の元へだった。大きなカップを両手によたよた歩く彼を取り囲み、一斉に光と音を浴びせかける。
 「今日はおめでとう! 凄かったわね!!」
 「ありがとうございます」
 「デビュー戦でいきなり越前選手を倒しちゃうなんてね! 今でも信じられないくらい!!」
 「そんな凄い事じゃないですよ」
 「さすが引退したとはいえ元帝王の跡部さんがコーチについただけある!! やっぱり周吾君も跡部さんみたいにこれからもっと活躍するのかな?」
 「とりあえず上には上りたいですね」
 ソツなく答えていく周吾。まるで取材など慣れきっているといった様に、記者たちの質問もだんだん遠慮のないものとなっていった。
 「そういえば周吾君、君跡部さんのことずっと『お父さん』って呼んでるよね。これってどういう意味でだい?」
 「『どういう』? 別に普通の意味でですけど?」
 「え? じゃあやっぱり君は跡部選手の息子・・・!?」
 「だからそう言ってるじゃないですか。他に何だと思ってたんですか?」
 「で、でも実の子、じゃあないわよねえ・・・・・・?」
 「さあ」
 「『さあ』?」
 「つまり違うかも、と!?」
 「生憎と僕の記憶は3〜4歳程度からしかありませんし、たとえ生まれた時からあったとしてその時から既にお父さんと一緒だったって言っても、証拠にも証言にもならないでしょ? 同じ理由で、生まれたばっかの写真があってお父さんと一緒に写っていたとしても。
  僕に訊くより直接お父さんに訊いた方が早いんじゃないですか?」
 相手をケムに撒く言い方ながら、さらっと彼が今言った内容は相当のものだった。つまり彼は生まれた時からずっと跡部に育てられている。プロとして世界中の注目を常に集めていながらも1回も浮いた話の出ることのなかった跡部に恋人どころかまさか隠し子がいたとは・・・・・・!! しかもそれを
10年間隠し通してきたからには相当の理由があるはずだ。
 何より――――――
 「ところでさ、周吾君。君、随分と不二さんに似てるよね? 名前も『周』なんて付くし」
 「そうですね」
 驚くほどあっさり乗ってきた。多少は凄かろうとやはり子ども、といったところか。
 「もしかして―――何か関係あり、とか?」
 「今日の決勝戦における対戦相手のコーチ、ですよ?」
 「い、いや・・・。それ以外にもなんか・・・・・・」
 「たとえばホラ、実は不二さんの子だった、とか」
 「うんうん。不二さんって以前女遊びというかなんというかが激しかったっていうし」
 「それで不二さんは越前選手と付き合うに当たってやっぱ子どもが邪魔―――ってこの言い方じゃマズいか―――とりあえず、引き取れない状況になって・・・・・・」
 「そんで知り合いの跡部さんに預けた、とか何とか」
 「ああ、あるいは元不二さんの彼女が今跡部さんの奥さんだ、とか何とかもあるかも」
 「だとすると年齢もぴったり合うし」
 「・・・・・・」
 
10歳程度の子どもというのを彼らは何だと思っているのだろう。こんな話はわかるまいとタカをくくっているのか、それともどうせ他人の事情だから自分たちには関係ないと思っているのか。
 黙ってそれらを聞きながら、
 周吾はくす、と笑った。
 (本当だったらどうするのさ。傷付いちゃうじゃないか)
 あまりに滑稽な憶測の数々。なんでそんな定番三文小説みたいなのの登場人物にならなければいけないのか。
 (このノリじゃ、次来る質問はアレか)
 予言やら予測やら、そんな大層なものではなく。ただこの、頭の中に『工夫』といった言葉が完全に抜け落ちているらしい記者たちのしそうな事といえば1つしかない。
 案の定―――
 「ねえ周吾君、君の『お父さん』は跡部さんだよね。じゃあ『お母さん』は?」
 (ほらやっぱ)
 思い、周吾は即答した。
 「いませんよ?」
 『え・・・・・・?』
 さすがに静まる周り。構わず説明を続ける。
 「僕にはお父さんしかいませんよ? 生まれた時から、今でもずっと。
  それで十分じゃないですか。他に何がいるんですか?」
 「で、でも・・・・・・」
 「じゃ、じゃあ周吾君はお母さんとかは―――」
 「いりません」
 「え、・・・っと・・・・・・。それじゃもし本物のお母さんが現れて『私があなたのお母さんよ』なんて言ってきた、ら・・・・・・?」
 「他人でしょ?」
 「そ、それじゃあ〜・・・・・・」
 なおもしつこく続けようとする記者たちに、周吾はため息をついた。それが当てられたように、記者たちが静まり返る。この辺りはさすが跡部の子どもか。言葉すら使わず、僅かな仕草や時に何もなくとも全てを支配化に置く。生まれついての才能。
 誰もが悟る。やはりこの子どもは帝王の血を受け継いでいる、と。
 周吾が顔を上げる。張り詰める周りの空気に、誰もが背筋を伸ばして彼の全てをこの目、この耳に収めようとする。
 そんな彼らの前で、
 周吾は前を見てはっきりと言った。
 「僕にはお父さんしかいませんし、それ以外欲しいとも思いません。
  僕が誰であり、どんな存在であるかについても全く興味はありません。
  僕はお父さんの子どもだ。それだけで十分です。
  他に何かありますか?」
 「い、いえ・・・・・・」
 「ありがとう、ございました・・・・・・」
 反論を一切許さない言い切り。呑まれ、記者たちが自然と道を開ける。
 開いた、その道の先で―――
 「なーにガキがいっちょ前に演説なんかしてやがる」
 唯一誰の支配下にも置かれない男が悠然と佇んでいた。
 「お父さん!」
 硬直した空気を霧散させ、無邪気に駆け寄っていく周吾。飛びかかってくる体を適当にあしらい、跡部は息子を肩に担ぎ上げた。
 「待っててくれたんだ!!」
 「考えてみりゃお前ほっとくと何しだすかわかんねえ」
 「何もしないよ〜。サエかキヨに頼んで一緒に帰ってもらおうかなって思っただけで」
 「くそっ・・・! やっぱ戻ってきて正解だったか・・・・・・」
 「知らないおじさんとかお姉さんとかに『僕買わない?』なんていうよりマシでしょ?」
 「余計に悪化させんじゃねえ。いいか? もう何度も言ったけどな―――
  ―――アイツら2人にだけは貸し作んな。いいか? 絶対だぞ・・・・・・?」
 「なんかすっごい熱入ってるね・・・・・・」
 「アイツらに作ったら最後、何されるかわかんねえからな。特にお前は止めとけ」
 「何の事?」
 「いいから。ちゃんと守れよ」
 「守ったらちゃんと連れて帰ってくれる?」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。お前の人生どこまでが天然でどこからが計算づくだ?
  わーったよ。連れて帰りゃいいんだろ?」
 「わ〜いやった〜vv」
 「代わりに何かは絶対やらせるからな」
 「『何か』・・・・・・って、何?」
 「さあな。せいぜい楽しみに待ってろ」
 ふん、と余裕綽々で―――というかもう少し端的に言ってしまえば『や〜いざまーみろ!』という感じで―――跡部が笑った。そのまま立ち去ろうとして、
 「跡部さん! その息子さん―――周吾君に関して質問したいんですけど!!」
 「本当にその子はあなたの息子なんですか!?」
 ようやっと真の標的を見つけ出したマスコミらが再び騒ぎ出した。
 肩越しに―――もちろん周吾を抱いたのとは逆側―――軽く振り向き、目線だけを向け言い放つ。
 「あん? 他に何があんだ?」
 息子そっくりの返答をする父親。自然と会話も対息子と同様の流れとなった。
 「実の、ですか?」
 同じ、ではあるが微妙に訊き方が弱い。それは以前―――不二と共にインタビューを受けていた時と変わらぬ事。跡部に対しそうそう気安く話し掛けられる存在は、幼馴染含む彼の直接の友人かさもなければ・・・・・・それこそ家族かといった程度だろう。
 「さあな」
 「え・・・・・・?」
 「何を以ってして『実の』なんつーかは俺も知らねえからな。俺が直接腹痛めて産めるわきゃねえんだから生物学的にって言われたって説得力ねえだろ? それに役所に届け出もしてねえから社会的にも『親子』じゃねえ」
 「あれ? してないの?」
 「母親の欄の埋めようがなかったからな。誰か忘れた」
 「ああなるほど。面倒くさいね、そういう書類って」
 「その割になくても不便ねえしな。
  まあとりあえずお前が生まれたときから世話してるから『育ての』って意味じゃ実の親子か」
 「僕も自分の出生になんて興味はないからね。それでいいんじゃない?」
 「てめぇが決めんな」
 「痛・・・」
 担ぎ上げられたまま頭をぐーではたかれ、周吾の『どうでもいいトーク』はあっさり終わった。
 「おらさっさと帰んぞ」
 「いや、お父さん歩いてくれないと僕も進めないんだけど」
 「ほお。つまりは今すぐ下ろして欲しい、と」
 「嫌〜!! 降りたくない〜〜〜〜!!!」
 「ああくっそ・・・!! 耳元で喚くんじゃねえ!!」
 肩の上でじたばたと暴れる周吾は無視して、止めていた足を進める。と―――
 「でしたらあと1つ!」
 またも呼び止められた。そういえば周吾相手にもあと1つ話題が上っていたか。
 もちろんそれはこの話題。
 「息子さんは不二コーチと何か関係があるんですか?」
 「顔はそっくりですし、それに名前も『周吾』なんて言いますし」
 「不二コーチか、あるいはそのご姉弟の子どもでは!?」
 そんな言葉にぴたりと足を止め、
 跡部は振り向き様、これまた綺麗にすっぱりと言い放った。
 「俺様のネーミングセンスに何か文句あんのか? アーン?」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そういう問題、なんですか・・・・・・?」
 「名前なんて互いにそれだってわかるための記号だろ? ただわかりやすいモンにしただけだ。
  ついでに―――





  ――――――不二[アイツ]となら何の関係もねえよ。持ちてえとも思わねえ」

















・     ・     ・     ・     ・








 それは、今より
10年以上前、少なくとも不二がまだリョーマに出会っていない頃の事。
 生まれついての才能―――『努力する事』というそれを持つ跡部が得意なのは何もテニスのみではない。彼はあらゆる物事においてそれを遺憾なく発揮し、そしてあらゆる物事をその身に付けた。生命工学というような分野においてもまた同じく。
 彼はプロデビュー後の賞金を含め自分の自由になる金を用い、家の地下に研究施設を建設した。研究及び実験内容は―――クローンの製造。
 同時に、この頃はまだ『恋人探し』をしては疲れた心と躰を自分により癒していた不二から彼を構成するものの一部を無断で奪い、核を壊した卵子[うつわ]に植え付けた。
 不二が跡部の心を弄んだのならば、跡部は不二の命を弄んだ。
 子宮をモチーフとしたガラス管で日々育つそれ。『生まれる』寸前で成長を止めさせ、そのまま待たせた。今すぐ生まれるように、そして、一生生まれないように。
 待機期間は・・・・・・そんなに長くはなかった。





 『ねえ跡部! 僕好きな子が出来たんだ!!』





 それが、それを解き放つ呪文。
 誰の腹も痛める事無く、代わりに誰かの心を壊して生まれた存在。遠い遠い昔、間違いなく自分も聞いた産声を上げるそれを抱き上げ、
 跡部は壊れた微笑みで新たな呪文をかけた。





 「『ようこそ、歪んだ箱庭へ』。
  お前は、そうだな・・・・・・。『周吾』、にするか。呼びやすいしな。



  ――――――これからよろしくな、『周』」









・     ・     ・     ・     ・

















 「う・・・・・・ん、む・・・・・・」
 「おらもっと舌使えって」
 「顎疲れた〜・・・・・・」
 「そりゃ災難だな。休んでねえで続けろ」
 「お父さん・・・、S?」
 「誰がだ! 罰なんだから厳しくして当然だろ?」
 「むは・・・あ・・・・・・」
 今度はベッドに腰をかけ、跡部はこれまた開いた腿に肘をかけしかし今度は下を向く周吾と会話をしていた。下を向き―――1セット落とした『罰』として跡部に奉仕させられている周吾と。
 「ふ・・・ん・・・・・・」
 足元に這いつくばり必死に自分のものを舐める周吾―――不二の、そっくりさん[クローン]。遺伝・環境、どちらの成果か、こんな事をやる様も本当にそっくりで。
 「くっ・・・・・・!
  まあ、上手くなってきたじゃねえの」
 胸に生まれる『周吾』への罪悪心と、それすらも取り込んだ上での快感により上がりかけた声を噛み殺し、跡部は偽りではない愛しさを込めて周吾の頭を撫でた。
 「ん・・・。ありがと、お父さん」
 決して『景』とは呼ばせない。彼は不二ではない。だからこそ、深みに嵌ってはいけない。そんな、戒め。







・     ・     ・     ・     ・








 頭上から洩らされる小さな喘ぎ声と、自分の頭を撫でる大きくて温かい手。
 隠れて上を見上げれば、跡部は瞳を閉じて快感をやりすごしていて。
 荒く湿った呼気と、薄く開かれた唇。唾液が零れそうにでもなったか、僅かに出した舌で唇を舐める。
 そんな父親の仕草に、
 周吾は脚をそっとすり寄せつつ、『罰』を続けた。
 自分の生まれについては知っている。自分が誰の遺伝子を持つか、自分が跡部と血の繋がりを持つどころか何一つ同じ物を持っていない事も。
 そして、跡部がそんな自分を指して『愛している』と言う、その理由[ワケ]も。
 跡部が『周吾』を通して見るは自分ではなくオリジナルの方で。
 跡部が『周吾』に注ぐ愛情は自分にではなくオリジナルの方にで。
 それでも―――



 ――――――そんな事はどうでもよかった。



 大事なのは自分が誰の代理かではなく今彼のそばにいるのはどちらかという事。
 今の状況は極めて都合のいいものだ。
 跡部はかつて愛した不二の代理に自分を造り出し、同時にその事に罪悪感を覚えている。代理としてしかその存在を求めなかった、自分へと。
 だからこそ解放しようとする。今回大会に出したのもその1つ。上手くいけば、それこそ不二のようにリョーマのような存在を見つけるかもしれない。
 それでありながらそれを恐れる。家という箱庭に閉じ込め、そこから出せば逃げないように見張り[コーチ]につく。
 矛盾した行為。縛られているのは自分のようで―――実際は跡部の方。彼は決して自分を手放す事は出来ない。罪悪感すら、2人を繋ぐ鎖のひとつに過ぎない。
 『ん・・・・・・!!』
 同時に上がる、2つの声。上から跡部の遺伝子を取り入れ、下から不二の遺伝子を吐き出し。
 周吾は何かで濡れた下は無視し、唾液で濡れた上だけを跡部の方へと向けた。
 「1セット、落としてごめんなさい」
 罰とは反省するために与えられるものだ。如何なる内容であろうと、ついでに如何なる本音であろうと。
 白人の血も混ざった白い肌を薄紅色に染め、瞳はそれ以上に顕著な形で快楽の色に染めつつも、それでも一応コーチらしい感じで跡部がため息などついてくる。
 「反省してんなら、次は落とすなよ」
 「次? あるのかな?」
 「あん?」
 「だって今って、一応越前選手がプロじゃ1番上でしょ? 倒しちゃったよ? 後はお父さんだけだね」
 暗に告げる。『外』に興味はないと。
 (僕が興味あるのは、お父さんだけだよ・・・・・・)
 それは果たして自分の意思なのか、『お父さん』の教育の賜物か、それとも実はオリジナルの思考パターンをそのまま追った結果か。
 いずれにせよ、それが今の自分の『意志』ならば大事なのは原因を探る事ではなくそれを成し遂げる事。
 (逃げるつもりはない。逃すつもりもね)
 正確に汲み取り―――それでも跡部は逃げを選ぶ。
 びしっ!
 「痛・・・!」
 「1セットも落としといて『倒した』なんて寝言ホザいてんじゃねえ。俺様の息子なら完全勝利してこい」
 「む〜! お父さん厳しい〜〜!!」
 「ったりめーだ。甘やかしたところで何にもなりゃしねえだろーが。大体甘やかしだったら佐伯だの千石だのがいくらでもしてるだろ?
  ・・・・・・ったくあいつらももーちょっと何か考えろよ。むやみに甘やかすからこういう性格になっちまうんじゃねえか・・・・・・」
 「お父さんが厳しすぎるからサエもキヨも甘やかしてくれるんじゃないかな?」
 「ああ? 周、お前まさか俺様の教育方針反対する・・・なんつーこたぁ―――」
 「もちろんないよ? お父さんサイコー!」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
  ほらな。だから甘やかしすぎだっつってんだよ」
 「お父さんがね」
 「何か言ったか?」
 「いいや別に」
 にっこりと笑って誤魔化し、本当に聞こえなかったわけではあるまいにそれでもそれ以上の追求をしない跡部に、周吾は試合時リョーマに向けて言ったのと同じ言葉を今度は心の中だけで呟いた。
 (ホント、甘いなあ)
 いつでも彼に纏わりつき、最終的に彼を『不幸』に陥れているのはその甘さだ。かつてはそのせいで不二を逃し、そして今ではそれが自分自身を縛り付ける。
 (だから、大好きだよ。お父さん)










 不二の持つ冷酷さ、それに千石の持つ狡猾さと佐伯の持つ残虐さを受け継いだ周吾。彼は、跡部の持つ『優しさ』を・・・・・・

 ――――――受け継ぐ事はなかった。







・     ・     ・     ・     ・








 「愛してるよ、お父さん」
 跡部をベッドの上に押し倒し、その上に乗りながら周吾が言う。濡れた瞳で、濡れた唇で、濡れた全身で紡ぎだされる言葉は紛れもない真実。





 反吐が出るほどの甘さと心臓をえぐるような苦しさ、そして泣きたいほどの嬉しさ。全てを受け入れより己に鎖を絡め、





 「ああ。俺も、愛してるせ。周」
 のしかかる周吾の体を抱き寄せ、跡部はその真実をもまた己の中へと封じ込めた。口先だけでしか吐けない、真実と共に。



―――Fin











・     ・     ・     ・     ・

 タイトルの『in Beharf of』。『〜のために』と『〜に代わって』の意味があるそうです。跡部のために、不二に代わって。うむ。どちらにしろ子不二(大笑い)こと周吾の事ですな。ちなみにこの言い方だと、『〜のために』は『便宜や利益を表すために』だそうです。うわ〜。周吾なんか真っ黒だ・・・・・・。さすがみんなの黒い部分だけ受け継いだだけあるなあ。対する跡部が純白光り輝いています。
 はい。そんなわけで表のパラレルシリーズ『天才少年たちの祭典』のさらにパラレル版でした。いやあ、最近、このシリーズ始めた当初は全く眼中になかったどころかその存在を知りもしなかった人らにハマったおかげで主に過去中心にストーリー全体がコロコロ変えられております。そしてその無茶の一番の煽りを食らったのが今回一応主役らしい跡部。不二を好きでずっと見守っていながら全くそれが報われず利用された挙句捨てられて、そして今度はそれをさらに利用した千石に流されて。全っ然! いい目見られてません。なのでこのパラパラ(パラレル×2・・・ってどういう略し方だよ)ではそんな跡部にぜひともいい目を―――なんてコンセプトでは全く作られていませんでした(爆)。コンセプトは『どこまでも都合よく利用される跡部に笑。』。本当に跡部が可哀想な程利用されまくってます。しっかし
28歳・・・って、実年齢の倍になっちまったよついに。やりすぎです問答無用で。ではそろそろまだマシな方に戻しましょうか。さすがにこれ以上は上げたくない・・・。そしてこれ以上上げる―――と言うか周吾がもう少し大きくなると・・・・・・
 ―――間違いなく跡部×周吾ではなく周吾×跡部になりそうですね。ラストそれっぽくしておきながらもさすがに
10歳児に主導権渡す28歳ってか跡部様はどうよという理由で一応やるときは跡部が上に・・・・・・というのでもいいのですが、実はこの2人、設定上ではまだSEXはしていなかったり。あくまでやるのは『遊び』やら『戯れ』やらのキス、後『罰』なんて程度。SEXまでやると本気で跡部が深みに嵌ります。なので頑張って堪えて1人になってからヤって(爆)・・・・・・周吾はもちろんそんな様は全て知っていたり。知っていながら自分からは絶対物事を進めない。苦しみぬいた跡部が限界を越えて堕ちてくるのをひたすら待つだけ。わ〜遊ばれてるぞ跡部様! ちなみにさらに遊んでるのが佐伯&千石の正真正銘Sコンビ。周吾に出生の事を教え、跡部への気持ちというか欲望を植え付けさせて煽り立てて、そしてそっちの面でも『仕込んで』みたり。跡部の言った「上手くなった」がSコンビのおかげだと知られたら・・・間違いなく殺されるでしょうな。ああそうそう話題をこの段落初っ端に戻しまして、それこそ跡部が完全に『堕ち』ない限り周吾×跡部にはならないでしょうね。なにせ元々は跡部×不二でしたから、あくまで周吾が不二の代理を担い続ける限り逆にはなりようがありません。

2004.3.84.3


 そういえば『歪んだ箱庭』とか書くとものっそ跡部氏2ndシングルB面の《トラソルの鳥篭》が出てきそうです。あれは『歪な』でもって直接箱庭にはかかってませんが。偶然なのですが―――書いててやたらとよく馴染むなあと思っていたらそれでしたね。なので当初『歪な箱庭』にしていたものをさすがに被りすぎ? と思い変えたのですが。ちなみにもちろん歌とは何の関係もありませんが。
 そして余談。意外と悩んだのが跡部からのアイノコトバ。『好きだ』というより『愛してる』だろうなあ・・・と思いつつも、周吾―――というか不二からはあっさりいつも出てくるのに跡部の告白ってどうも想像しにくい・・・。日々歯の浮く寝言ホザいていそうですが、肝心なところではリョーマ以上に自分では言わず相手に言わせていそうだ。もしくは行動第一で『これが俺の気持ちだ』とか。