帝王の宴 魔王の降臨
          〜
in Beharf of…〜








 それは、まだ周吾がロクに何も出来なかった小さい頃の、ちょっとしたイタズラだった。
 歯が生えるか生えないかの瀬戸際頃、何でもかんでも口に入れては舐めていた周吾。その日も自分の膝の上で口に入れられるものはないかと探していた『息子』に、
 ―――跡部は、それを与えた。
 ズボンのファスナーを開け取り出したもの。周吾はためらいなくそれに手を伸ばし顔を寄せた。
 口の先が触れる。鈍く、甘い感覚が背筋を駆け抜けていく。
 「く・・・・・・!」
 たまらず吐き出しかける声。そういえば周吾が『生まれて』以来ここ数ヶ月は自慰すらしていなかったか。
 だがそれ以上に、
 「ん・・・。いいぜ、周・・・・・・」
 この手からは完全に離れていってしまった存在。それと同じモノが、今自分の手の中に、自分だけのものとして存在する。その快感。
 「む〜・・・」
 無邪気に声を上げる周吾の頭を優しく撫でる。小さな小さなその頭は、今自分がやっている行為がなんなのか理解出来るわけもなく。
 「うあっ・・・・・・!」
 「ふあっ・・・!?」
 あっけないほど簡単な頂点。いきなり飛び出した何かに周吾も驚いて身を引いた。
 「おい! 大丈夫か!?」
 ころりと後ろに転がった周吾に、快感はどこへやら跡部が目を見開いて詰め寄った。抱き上げ急いでしかし痛くはないよう顔を拭く跡部の目には、純粋な心配しか浮かんでいない。その場に誰か彼の知り合いがいたなら驚いただろう。これだけ慌てふためく跡部というのは極めて希少物件だ。
 そして慌ての対象たる周吾は、
 「あ〜」
 跡部の腕の中で、両手をぱちぱち叩いて喜んでいた。
 「・・・・・・・・・・・・ってお前なあ」
 「わ〜」
 がっくり項垂れる跡部。今の自分の心配は何だったんだろう・・・?
 「ま、いいけどな」
 苦笑し、唇にまだついていた汚れを舐め取る。苦くてマズいそれ。今更ながらに赤ん坊にこんなものを与えて大丈夫だっただろうかと思う。
 が、
 「あ〜! あ〜!」
 周吾にとってはそれもまたよかったらしい。ぺちぺちとこちらの頬を叩き、舌を入れてやればそれまた舐める。
 空気の通り道を塞がないよう唇は触れ合わせないまま、舌だけ絡め合い遊ぶ。飽きて、周吾が眠ったところで、
 「いい夢見ろよ、周」
 跡部は軽くキスして、ベッドへと連れていった。







・     ・     ・     ・     ・








 なぜかこの『遊び』に、周吾はハマったらしい。まあ子どもからしてみれば、『口に入れて暫くすると硬くなって液体が飛び出す面白いもの』だ。その味はともかく、面白いものが好きであろう子どもには丁度いいおもちゃか。
 順調に成長する周吾。もちろん成長過程には歯が生えるというイベントも含まれる。
 「〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」
 容赦なく噛まれ、跡部は上げかけた悲鳴を無理やり殺した。ついでに上げかけた拳も震わせる程度で下げる。
 (こ・い・つ・・は〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!)
 小さい頃、不二に離乳食を口移しで与えれば舌を噛まれ、そして周吾には――――――
 (ああわかってるよ! こいつらにゃあ言ってもわかんねえっつーかそもそもンな事やってる俺が悪いってな!!)
 どこに対してだか怒りをぶつける。とりあえずそれで収める跡部。が、彼の悲劇はこの後に続いた。
 『噛むと効果的らしい』。いやこんな子どもっぽさ0%の感じではないだろうが、ともかく周吾はそう理解してしまったようだ。
 その後毎回噛まれては怒声を押し殺し、得意げに見上げる周吾にひきつった笑みを向ける。気持ち良さ皆無の行為に、もう絶対禁止にしようかと悩んでいたところで・・・・・・
 ぱたりとそれが止んだ。
 跡部の、空気をも己の支配化に置く才能がここで発揮されたらしい。直接言葉には乗せなくとも毎回びしりと亀裂の入る空気に、さすがに周吾もそれはやってはいけない事だと悟ったようだ。
 普通に舐められるようになり、今度こそ互いにメリットのある行為となる。
 今日もまた、自分にねだる周吾の頭を撫でながら、
 (ああ、そういやいつまでやらせるか・・・・・・)
 跡部はそんな事を考えていた。
 現在、周吾は一切外に出していない(なにせこの家の敷地内だけで山あり湖ありのため全く遊ぶのに不便はないため)。彼に接するのは少ない使用人たちと、後は佐伯と千石だけ。あと子どもの情報源といえば絵本にテレビだが、周吾は絵本はともかくテレビはあまり好きではないらしく、ついていても見る事無くこちらに寄って来る。こちらが見ていればそれに合わせて周吾もまた見るのだが、経済ニュースを興味津々に見る子どもというのもなんだかなあ・・・という事で周吾の前では跡部もあまりテレビを見なくなった。なお余談として跡部が教育番組を見れば周吾もまた見るのだが、それはそれで自分がなんだかなあ・・・という感じだったので止めた。絵本についてもそれを直接楽しむというよりこちらが構うのを楽しみにしているようだ。内容全文暗記しているクセにこちらに読ませたがる。わかるクセに「どれどれ〜?」と訊いてくる。
 まとめると、どうも周吾は直接自分の周りにいる人に懐いているようだ。しかし使用人らには最低限しか接触させず、向こうもこちらの意図はわかっているようだから周吾を邪険にする事はないが必要以上に構う事もなく、逆に周吾も使用人らとは仲良くするがせいぜいその程度。この点においては全員の理解は一致しているようだ。周吾がとりわけ自ら好んで接するのは佐伯・千石、そして自分の3人のみ。つまり―――
 (俺ら次第でコイツはいくらでも変わるってか・・・・・・)
 世間から。社会から。常識から。
 ―――3人が与える情報次第で周吾はいくらでも外れる事は可能という事だ。
 思いながら、
 跡部は今日もまた周吾にそれを差し出した。







・     ・     ・     ・     ・








 そして何年も経ち、周吾の年齢も1ケタから2ケタに変わった頃。
 「・・・・・・ん?」
 何も教えず何も知らず本日も行なわれる行為。しかし自分の前に跪きそれを舐める周吾の様子はいつもと僅かに違った。眼力などわざわざ用いるまでもない。周吾の様子ならずっと見続けていた。
 周吾が合わせた腿を僅かにすり寄せた。もっと小さい頃なら、さらにこんな場面でなければトイレにでも行きたいのかと思わせる仕草。だが現在、そしてこの状況においてのそんな仕草は、訴えこそ同じであろうがその意味は大きく異なる。
 「へえ・・・・・・」
 薄く笑う。
 (コイツも大人になった、ってか・・・)
 もっと遅いものかと思っていたが、まあこのような事を日々やっているのだ。早くともそれはそれで納得だ。
 「どうしたの? お父さん」
 「いーや別に?」
 動作を止め見上げてくる周吾ににやりと笑みを向け、
 「うひゃっ!?」
 跡部は足の指で周吾の脚の間を軽く押した。それだけで間の抜けた悲鳴と共にびくりと跳ね上がる周吾。笑えるほどの過剰反応に、もちろん跡部は堪える事無く口に手を当てくつくつと笑った。
 「―――ってお父さん////!!!」
 赤ら顔を顰められても全く迫力はない。むしろその可愛らしさがまたたまらないと親馬鹿決定な事を思いつつも、一応ちゃんと真面目に怒っている本人には付き合ってやるべきだろう。跡部は怒りを霧散させるようにぱたぱたと手で払い、今だ笑顔のままながら周吾の両脇に手を差し入れ持ち上げた。
 自分の脚に座らせ、横抱きにする。何をするつもりかきょとんと首を傾げる周吾のそこを手の平で包み込み、
 「気持ち良いだろ? ここ」
 言いつつ、パジャマの上から軽く揉んで刺激を与えてやる。小さな体に合わせて小さなそこは、それでも得られる快感により徐々に形を変えていった。
 「う・・・ん・・・、あ・・・・・・」
 この程度の事でもすぐ反応する周吾。怯えるように肩を竦め体を丸める。
 「何怯えてやがる? 怖いか?」
 「そ、そんな事ないよ! ただ、なんか・・・・・・」
 「なんか?」
 「・・・・・・・・・・・・。
  ―――すごくドキドキして、自分じゃないみたいに声とか出ちゃうのが恥ずかしい・・・・・・」
 ためらった後、ぼそりとそんな事を言ってきた。
 真っ赤になって俯く周吾に、跡部は暫し目を見開いて絶句し―――
 「だから笑わなくったっていいじゃないか!!」
 無言のまま涙を零し布団をばんばんと叩き全身を痙攣させる跡部へと、周吾の的確な突っ込みが入った。
 「悪いって。な? 怒るなよ」
 零れた涙を拭い素晴らしいまでに説得力のない訴えに入る跡部。完全に拗ねに入りふん!とそっぽを向く周吾の耳に囁きかける。
 「ンな事気にしてらんねー位気持ち良くしてやるからよ」
 「ふあ・・・・・・」
 吹きかける息と舐める舌に、周吾がさらに身を強張らせた。強張らせて―――こちらの腕にしがみつく。
 これまた可愛らしい所作。絡ませたままさらに刺激を与えていくと、周吾は困ったように顔を上げてきた。涙で目が滲んでいる。声を堪え、ぎゅっと瞑っていたからだろう。
 「んじゃあ勿体ねえが、声は出ねえようにしてやるよ」
 顎を持ち上げ、唇を軽く舐める。それだけで十分だった。
 固く閉じられていた唇があっさり解かれる。出てきた小さな舌をちょんちょんと突付いてやると、自分から積極的に動き出した。
 「ふ、は・・・・・・」
 「ん・・・」
 唇を合わせる。角度を変え、何度も。
 周吾が腕から首に絡みついてきた。自然と丸められていた背筋が伸ばされる。
 空いた腕で腰を抱き寄せ、ズボンと下着を脱がせる。勃ち上がり、とろりと雫を垂らすそれ。
 キスをしながら横目で確認し、跡部は開いた脚の間に周吾を下ろした。周吾も腰を捻ってキスし続けるのは辛かったのだろう。こちらの脚に開いた自分の両脚を乗せる。
 真正面で向き合い、さらに躰を接近させる。勃ち上がった互いのものが触れ合う。
 「はっ・・・!!」
 見ていなくても感覚で伝わったようだ。周吾が閉じていた目を見開き、息を呑んだ。
 尚も口付けを続ける。続ける片手間で、自分のものと周吾のもの両方を握り、扱き上げる。
 「あっ・・・、やっ・・・!!」
 一定タイミングで何度も上がる周吾の嬌声。離れる口を追い、嬌声を閉じ込めるようにキスを交わす。
 支えを―――肉体的精神的支えを求める周吾もまた、躰全体を使ってこちらにしがみ付いてきた。
 必死についてこようと頑張る周吾。唯一自分を保つ術として与えられたキスに没頭する間に、
 「ふあっ・・・!!」
 「くっ・・・!!」
 2人同時に達した。
 跡部の胸にもたれかかり。周吾を抱き寄せ頭に顔を寄せ。
 互いに支え合い荒い息を落ち着かせる。
 落ち着いたのは―――跡部の方が先だった。
 「どうだ? 気持ちよかっただろ?」
 にっと笑って訊かれ、周吾は口をへの字にした。
 「わかんないよ。何か・・・もう一生懸命で・・・」
 「だが―――またやりてえだろ?」
 人差し指でつーっとなぞる。達したばかりでより敏感になったそこは、それだけでもう反応を示してきた。正確には―――そこからの刺激を受け取った周吾は。
 「あうっ・・・!!」
 躰を跳ね上げる周吾。再び緊張した躰をリラックスさせるように、跡部はぽんぽんと頭を撫でてやった。
 「ま、また今度やってやるよ。そろそろ寝んぞ」







・     ・     ・     ・     ・








 そして、本当に寝てしまった跡部(もちろん後始末はきっちりやってから)。周吾も彼に抱かれるように横になり、寝たフリをして・・・・・・
 ―――跡部の寝息が深くなったところで、目を覚ました。
 肘をつき、体を起こす。仰向けになっていた跡部を見下ろし、
 「お父さん・・・・・・」
 小さく小さく呼びかけ、唇をぺろりと舐めた。
 反応なし。何度か行ったが結果は同じ。跡部は人の気配に敏感だがあくまでそれは自分に敵意を持った者に対してだからなのか、それとも跡部もまた1度達し疲れたからなのか。
 (ま、どっちでもいいけどね。都合いいから、僕にとっては)
 周吾は身を起こし、布団を跳ね上げた。
 露になる跡部の全身。ぷちりぷちりとパジャマのボタンを外し、開け広げていく。
 (キレーな躰・・・・・・)
 お風呂や着替えで毎日見るが、やはりじっくり鑑賞する機会は少ない。月明かりに照らされた躰はまるで硬質な鉄鉱石のようだ。思う存分眺める。
 眺めるだけで飽き足らなくなってきたところで、手を伸ばした。触れる。熱の通った温かい躰を。
 擦っていく。普段の適当なふれあいではなく、明らかな愛撫で。
 白い肌が染まっていく。それでもまだ、跡部は目を覚まさなかった。
 触るだけでも飽き足らず、顔を寄せていく。両脚を広げて跨り、胸の中心部を下から上へと舐め上げていった。
 飾りを啄ばみ、吸い上げ、唇で噛む。逆側も弄っていると、2枚のパジャマ越しに跨ったものが感触を変えるのを感じた。
 (そろそろいい、かな?)
 股から降りる。下を脱がせれば、思った通りそこにあったものは緩く勃ち上がり始めていて。
 周吾は跡部の脚を開かせ、今度は四つん這いでその間に潜り込んだ。いつもと同じ事。ただ若干体勢が違う事とそして―――
 ―――跡部が了承していないという事だけが相違点。
 「う、ん・・・・・・」
 慣れた仕草。もうどこに何をすれば跡部が感じやすいかなど完璧に把握している。跡部の前ではヘタな振りをしてわざとじらしたりもするが、今は時間との勝負だ。あまりかけすぎるといくら何でも起きてしまう。
 それが完全に勃ち上がり、硬度を増したところで、周吾はさらに自分の下を脱いだ。
 自分のものも弄くる―――までもなく既に限界が近かった。先程と同様、跡部のものにぴたっとくっつける。それだけで達してしまった。
 跡部本人はまだ達していないのに、勃ち上がったままもう濡れてしまったそれ。絡んでいるのは自分のものなのに、なのに『自分のもの』ではない。『憎っくき恋敵』のものだ。
 自分が生まれる前、彼はどれだけそれで己を濡らしたのだろう。自分の事は一切求めようとしないクセに。
 クッと笑う。自分は今更何嫉妬などしているのだろう? 彼はもう自分のものだ。今までだってただ自分の成長を待っていただけだろう。だからこそ今日、彼は一段階事を進めた。
 (ねえお父さん、僕はもう準備万端だよ? いつでも進めていいんだよ?)
 それを今すぐ知らせる方法がある。言葉などよりもっとはっきりと。
 改めて、周吾は跡部を見やった。酷く扇情的な光景。今すぐむさぼりつきたい。上からでも―――下からでも。
 だが―――
 (ムリヤリ・・・は辛いからね。僕も、お父さんも)
 荒い息を落ち着け、鼓動を収める。溜まった生唾をあえて飲み込まず、周吾は器上にした両手に吐き出した。
 手を下へと落とし、潤滑油代わりに入り口へと擦り付ける。残念ながらローションだのワックスだのはない。目的どおり使う限りそういうものは洗面所にあるのが普通だろうし、少なくとも現時点では跡部がそこまで事を進めようとしていない以上、違う目的であろうとこんなところにそんなものがあるワケはない。自分で用意してもいいが、何に使うのかと問われたら答える術がない。『コレ』は証拠を残してはいけないのだから。
 こちらも時間はかからなかった。上に乗っていた時、もう下からの感触だけで入り口は脈動していた。
 「お父さん、行くよ・・・・・・」
 一応の最終確認。待つ事もなく、周吾は再び跡部の上に跨った。今度は膝だけをつけ、ピンポイントで躰を落としていく。
 「ふはっ・・・!!」
 勃ち上がった跡部のものが、まず入り口に触れる。瞬時に脳へ伝えられた極上の刺激。目を見開き、躰をのけぞらせる。
 「ん・・・、んっ・・・!」
 嬌声は押し殺し、体重をかけさらに押し込んでいく。異物感に対する吐き気と、それが跡部のものだという快感が同時に襲ってきた。
 争うまでもなく、快感の方が遥かに勝った。理性で吐き気を抑え、奥まで一気に押し込む。
 「〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
 悲鳴を堪え、息を止める。マズい。躰に力が入った。
 まるでストレッチをしているかのように、ゆっくりと息を吐き出す。実際ストレッチをし慣れているからだろう。自然と力は抜けていった。
 互いに達するギリギリを堪える。やり過ぎは禁物とわかってはいても、突っ込んですぐイきましたーではあまりにつまらない。
 跡部の横腹に軽く手を当て、ゆっくりと躰を上に上げる。再び落とせば更なる最奥へと導かれ。
 「ん・・・あ・・・・・・」
 押し寄せる快感の波。堪えていた嬌声がいつしか出ていたのにも気付かず、周吾は何度も上下運動を繰り返した。これまでに2度達している自分もまた、すぐに元気を取り戻し―――
 「あっ・・・・・・!」
 達したらしい跡部のものを中に感じるのと同時、周吾もまた自分のものを跡部の腹部へと撒き散らした。
 「お父さ・・・ん・・・・・・」
 白んでいく意識の中、周吾はただ幸せを噛み締めていた・・・・・・・・・・・・。







・     ・     ・     ・     ・








 抜く事すら忘れ、気を失った周吾。完全に眠りについたところで、
 ―――跡部は閉じていた目を開けた。
 「周。オイ周」
 呼びかける。反応なし。
 確認して身を起こす。落ちないように周吾の体を支え。
 繋がったままの部分。動いた衝撃で、きゅっと入り口がしぼんだ。
 「・・・っ!」
 刺激され、同時に思い出す。目こそ閉じていたものの、逆に過敏になっていた聴覚と触覚が捉えていたもの全てを。
 興奮が蘇る。それだけで達しそうだ。再び周吾の中で。
 「さすがに、そりゃマジいな」
 苦笑し、跡部は周吾の体を持ち上げた。ずるりという感触で繋がっていた部分が離れる。
 なおも眠ったままの周吾を横たえさせ、再び後始末をする。今度はティッシュではなく、舌で。
 今はすっかり萎えたものに口をつける。咥えれば、全て口の中に収まってしまうほどそれはまだ小さい。周吾にはこんな真似は随分させているが、自分が周吾にやったのは今回が初めてだ。ヘタにやってしまえば歯止めが効かなくなる。だからやらなかったというのに・・・・・・。
 汚れを取り、中のものは指で掻き出す。トロトロ溢れ出てくるのは自分が注入した分。
 「・・・ったく。アイツらは周に何仕込んでやがる。ンなモンまで教え込みやがって」
 自分はこんな事を教えてはいない。周吾が知っているのは、間違いなく自分以外のあと2人に教わったからだ。
 教わり――――――『実践教育』も施されただろう。
 わかっているのに・・・
 ――――――怒りは全く込み上げなかった。
 むしろ感謝したい位だ。自分では越えられなかった一線。まさか周吾から越えてくれるとは。
 「は、はは・・・、ははは・・・・・・・・・・・・」
 最早笑いしか出てこない。くしゃりと前髪を掻き毟り、跡部は呟いた。
 「サイテーだな。俺は」





 片づけを終え、独り出て行く跡部の後姿を、
 ――――――周吾は逆を向いたまま見送っていた。







・     ・     ・     ・     ・








 出来上がった暗黙の了解。互いに『知らない』上で成り立ってしまったゲームに終わりは告げられず。
 今日もまた、2人は相手が応じてくれない事を支えに妨げにし、遊びに打ち興じる・・・・・・・・・・・・。



―――Fin















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 はい、『帝王の宴 魔王の降臨』の第2弾でした。お父さんの純白さは書いていて面白いです。あまりに純白すぎて息子に遊ばれまくってます。さって次は周吾中心で元凶のSコンビ登場。この2人の手によりようやっと周吾も『可愛らしく』・・・・・・なるといいな〜・・・・・・。
 そういえば今回、『2』と名付けつつ話自体は過去へと戻っています。次の『3』でもそうなりそうです(周吾6〜7歳辺り編ですかね)。そして急転直下の『4』でいきなり終わりそうです(
HappyBadかはもちろん秘密v)。もともと1話単品で終わらせるはずだったのをいろいろ案も出リクエストも多かったので続けてみた話。さってこれは果たして進められたと言っていいのか否か・・・。
 なお『1』の後書きにて2人はまだ関係を持っていないと書きましたが―――見事に嘘になりましたね(最低)。一応お互い同意の上でではないので〜・・・・・・もちろん不可ですなこのイイワケは。

2004.5.72005.3.18