Who are Star ? Our Star ?


12
〜被害者の復讐劇〜




 
 実際の大会の様子が知りたい。そんなスタッフの申し出を受け、今までの対戦VTRを観せる事にした。記録担当の乾と、何となく細かい事担当の大石、そして『レギュラー』ではないため撮影中ヒマなリョーマの案内で。
 「おーい乾〜! 次お前の番だよ〜!!」
 「わかった。すぐ行く」
 途中で乾が抜け、小型テレビの前ではスタッフと大石・リョーマが残った。
 みんなで観る。地区大会に始まり都大会・・・・・・
 「こういうプレイって、アリなのかい・・・?」
 都大会決勝、青学対山吹戦S2、リョーマ対亜久津でスタッフが首を傾げた。さんざん亜久津にボールをぶつけるリョーマに。
 途中経過を知っているからみんな盛り上がったが、確かにこの試合だけ観ればかなり不自然なものだろう。
 大石はため息をつき、
 「あまりテニスプレイヤーとして胸を張れるものじゃありません。が、別にルール違反ではありません」
 「そう・・・なのか?」
 「テニス中にボールがぶつかる事そのものは仕方ないんです。さっきの地区大会での桃と越前のようにダブルスで息が合わなかったり、また体に向け飛ばされたボールというのは体勢の都合上返しにくいんですよ」
 「てゆーか、『体』にぶつかんないんじゃ返せないし」
 「・・・つまり?」
 「ラケットも体の一部と考えるなら、ラケットが届かなければ返せません。むしろボールにぶつかるつもりで走り寄るんですよ。となれば本当にぶつかるのも避けられないでしょう?」
 「なるほど・・・・・・」
 納得したので、次へ進む。関東大会に入り、スタッフも知る氷帝や六角と当たり、そして王者立海大へ―――
 切原対不二戦で、明らかにわざとばこばこボールを当てる切原を前に、さすがに納得した一同も唖然とした。
 「コレもまた・・・あり、と・・・・・・」
 「残念ながら・・・・・・。
  ま、まあ切原もこの一戦後変わりましたし、今では普通に勝つようにしてますけど・・・・・・なあ? 越前?」
 「勝つ? 勝ちましたっけ切原さん?」
 「それは言ってやるな越前!!」
 言いかけた(言い切った)リョーマの口を大石が塞ぐ。確かにその後の切原といえば、対リョーマは勝敗不明だし対ケビンは棄権負け。赤目モードじゃなくなって以来実は弱くなってないかとほんの一分の
Fanに訝しまれているが、きっと全国では千石の如く新生となって帰ってくる・・・筈だ!!
 「え・・・? 千石さんも引き分けじゃなかったっけ・・・?」
 「その前に桃には勝ったから!!」
 心の声になぜか反応したリョーマの口を再び塞ぐ。
 と―――
 「けど、ボールをぶつけられる・・・か・・・・・・」
 「そういう内容っていうのもいいよな・・・。ぶつけられて、それでもそんな卑怯なヤツに立ち向かうって感じで・・・」
 「不二先輩は駄目っス!!」
 物騒な会話をするスタッフらに、リョーマが脊髄反射で声を上げた。まるで本人の代わりであるかのように、テレビの前に両手を広げ立ち塞がる。
 リョーマには一歩遅れたが、大石もまた同じだけの真剣さで訴えた。
 「そうです!! この時はまだ軽い傷で済んだものの、一歩間違えれば失明含め大惨事になっていたかもしれないんですよ!? いくら撮影のためとはいえウチの部員に怪我をさせるのは副部長として絶対認められません!!
  それに不二は全国を戦い抜くためにもとても大事な、欠かせない存在です!! これが俺たちのラストチャンスなんです!! お願いですから戦わせてくださいお願いします!!」
 「大石先輩・・・・・・」
 土下座して頼み込む大石に、リョーマが小さく呟く。そう言う大石自身、関東での怪我が治りきらず全国への出場を断念した。だからこそ、その辛さや苦しさは誰よりもわかっているのか。
 そんな彼の説得に心打たれたか、もしくはただの提案にそこまで過剰反応されるとは思わなかったのか、スタッフも慌てて否定した。
 「い、いやいやいや!! そんな君らに迷惑をかけるような事をやろうとか思ってるワケじゃないから!!」
 「だからホラ、顔上げてくれ!! ただ今のはそんな案もあるな程度で言っただけだから!!」
 「本当にですか・・・?」
 「ああもちろん」
 「撮影させてもらってるのはこっちだからね。君らの嫌がる事なんて絶対やらないよ」
 「もうやりまくってぐふっ!」
 「ありがとうございます! 本当にありがとうございます!」
 三度何か言いかけたリョーマを、今度は無理やり頭を下げさせ礼を言う。
 和気藹々とした雰囲気が戻り、
 「でも、やっぱぶつけるっていう案は捨てがたいよなあ・・・・・・あいやもちろん君らにじゃなくってね」
 「明石君がぶつけられるとか? 実際にはやらないとしても、それで相手に勝ったら結構見せ場じゃないか?」
 「ああ、なら舞ちゃんにっていうのはどうだ?
  ミクスドでさ、舞ちゃんにぶつけられて怒った明石君が新技出すとかして逆転勝利」
 「お、いいなソレ」
 再び会議に戻る彼ら。今度は何の注意もない(赤の他人が怪我する事についてはどうでもいいらしい)のでそれで決まりとまとまる彼らは見ていなかった。
 ―――リョーマと大石の目がきゅぴ〜〜ん☆と輝いた事を。
 今度は2人同時に手を上げる。
 「いいですね今の案!!」
 「だったら俺も女装してでも協力するっスよ!!」
 「なら後ろは任せろ越前!! 自由に動くパートナーのサポートは英二で充分慣れてるからな!!」
 「助かるっス大石先輩!!」
 「じゃあ一緒に頑張ろう!!」
 『おー!!』
 「・・・・・・・・・・・・そうかい? それなら助かるよ」





・     ・     ・     ・     ・






 そして、明石
&vs大石&女装したリョーマの試合は本当に行われた。互いの恋人(特に不二)がえらく不服そうだったが、知らない間に決められていたのだからどうしようもない。
 目に炎を燃やしたリョーマと大石。握り潰さんばかりの握手を交わし、
 試合が始まった。





 ポ―――ン・・・
 「きゃっ・・・!」
 「よしっ・・・!」



 ドゴッ!!
 「痛い!!」
 「―――っし!!」





 大石の、針の穴を通す精密なコントロールでのムーンボレーが舞の頭にぽこぽこ当たる。
 リョーマの、ツイストサーブに始まり超ライジング、ドライブA〜C、バギーホイップショットにジャンピング
&ツイストスマッシュ挙句に無我の境地でのパクリ技と、当てる必要のない球までガンゴンぶつけられるもちろん舞に。大石に比べ悪逆非道振りが目立つが、『女同士』につき特に非難も出なかった。
 ベンチタイム中。
 「ちょっと君達、いくらなんでもやりすぎなんじゃ・・・・・・」
 さすがに止めようとしたスタッフに、
 リョーマは『女の子らしく』体をくねらせ答えた。
 「え〜? でも俺たち言われた通りやってますし〜」
 「『舞ちゃんにぶつけられて』ですよね? なのでちゃんと舞さんの方にだけぶつけていますよ?」
 「いやでももうちょっと加減してあげるとか〜・・・・・・」
 「せっかくの映画なんですし〜」
 「リアリティを追求した方がいいかと思ったんですが、やはり止めた方がよろしいでしょうか?」
 「む・・・・・・。
  ―――舞、頑張れ」
 「そんな〜〜〜!!!」





・     ・     ・     ・     ・






 「ゲームアンドマッチ! 大石・越前ペア! ゲームカウント6−0!」
 「やりましたね、大石先輩vv」
 「ああそうだな越前!」
 明石チームがアウトした2球除き、
22球全てぶつけて勝った2名。その頭には、もちろん後半部の『怒った明石君が新技出すとかして逆転勝利』などという説明は残っていなかった。
 「にゃんか大石俺と勝つより嬉しそー・・・」
 「越前君だって、いくら女装中だからってサービスしすぎだよ・・・」
 一部不満は出たが、普段の恨みが晴らせスッキリしたリョーマと大石。
 そして―――





 「明石君、舞ちゃん。
  悪いけど、この試合カット
 『ええ!?』
 「いやねえ、この試合出しても一体どうすればいいのやら・・・・・・」
 「じゃ、じゃあ私の苦労は―――!!」
 「病院で検査するんだったらちゃんと代金は払うから」
 「そ〜〜〜んな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!」

―――13

 




 切原弱体化説を言ったのは私です(爆)。アニメはそれきりで終わってしまって残念ですが、きっと全国では・・・・・・!!

2005.10.13~17