§1 『愛情』のカタチ





  跡部・佐伯・千石3【4日目・山吹にて『祭り』結果報告】

 「や〜南、た〜だいま〜♪」
 「千石! それにお前たちも!! 大丈夫だったのか!?」
 再び山吹宮殿にて。何の脈絡もなく(戦争終結を伝える伝令馬よりも早かった)現れる当事者らに、南を始めとした一同は驚きの声を上げた。
 それに答える、当事者のようなそうでないような微妙な立場の人物。
 「ああ、大丈夫だったよ。若干1名ズタボロだけど」
 「おい・・・」
 佐伯に振られるまま(ついでに小さな抗議の声を聞き取り)そちらを見やって―――
 『ゔ・・・・・・!!』
 2日前件の会話を聞いていた一同が呻き声を上げた。


 『もしも失敗したならば最初に死ぬのは景吾君だろうね。自分を犠牲にしたとしても他の者を守ろうとする。実に優しく育ってくれたものだ。
 そして―――
 ―――そういった事態になったのならば僕が容赦なく攻め込む。氷帝帝王という以前に僕は1人の親として景吾君を愛しているからね。景吾君もそれはわかっている。だからこそ絶対に失敗はさせない



 頭の中に、氷帝帝王の―――跡部の父親の言葉が蘇る。
 「(け、怪我だよなあ? これまだ怪我のレベルだよなあ?)」
 「(一応五体満足で帰って来たんだし、セーフじゃないのか・・・!?)」
 「―――何ヒソヒソ話してやがる?」
 それこそ本当の意味での当事者が声を上げた。
 眉を顰める跡部に、
 「実は・・・・・・」





ψ     ψ     ψ     ψ     ψ






 話を聞き終わり、
 「ほお・・・」
 跡部の感想は実に短かった。
 「ってそれだけかよ」
 「他に何かいんのか?」
 「そりゃいるだろ。お前狂介さん―――というかご両親にどういう育てられ方したんだよ?」
 実に疑問でたまらない。これが脅迫である事くらい跡部ならわかるだろう。それでありながらあっさり流すとは・・・・・・。
 じ〜っと見つめる一同の前で、
 「別に普通だったぜ?」
 跡部は逆に首を傾げてみせた。
 にやりと笑い、
 「それも一種の信頼だろ? いいじゃねえの。ベタベタ甘やかしていざって時何もやんねー親よりゃ」
 「それは・・・そうかもしんないけど・・・」
 「けどなあ・・・・・・」
 「それに―――
  ―――そういうのはウチだけじゃねえよ。氷帝全体がその風潮だ。少なくとも、親父が帝王になってからはな」
 「は〜・・・・・・」
 そういえば、と思い出す。氷帝は確かに元から大国だったが、今の帝王が王位についてから飛躍的に発展していったという。
 なんとなく、理由がわかったような気がする。
 (国民に王が全頼を寄せる・・・か。そりゃ寄せられたら応えるしかないよな)
 思い、南は苦笑した。王がそれだけ信頼されている氷帝だからこそ成り立つ仕組。まだまだ新参者の自分ではとても無理な話だ。
 考える南に、
 「ま、国の運営の仕方なんてそれこそ国それぞれだろ? どれが正しいどれを真似しろって事でもねえだろうし、てめぇはてめぇがいいって思う方法でやりゃいいんじゃねえのか?」
 そんな言葉がかけられた。
 かけた相手に再び苦笑する。現氷帝帝王の息子にして次期王決定と言われる男。これまた納得する。彼は間違いなく現帝王の息子であり次の帝王となるだろう。
 笑って、南も返した。
 「ま、理想なんてまだまだわかんないけどさ、俺は俺の方法でやっていくよ。その内見つけられるように」
 「ンなモン一生見つかんねーだろ」
 「―――お前も人生悟ったな〜」
 「ああ!? どういう意味だ佐伯!!」
 「さあ? どういう意味だろう?」
 「しれっと爽やかにすっとぼけてんじゃねえ!!」
 「いや言っちゃお前が可哀想かと」
 「て・め・ぇ・は〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
 拳をと限定する必要もなさそうなほどに全身を震わせる跡部。怒りのオーラを身に纏い追い掛け回す彼とひょいひょい逃げる佐伯に呆れ返る南の耳に、
 「俺は南大好きだけどね」
 それこそ何の脈絡もなく言葉が放たれた。
 見る。まるでそれでやっと気付いたかのように、2人を目で追っていた千石が南の方へ顔を向けてきた。
 にっこり笑う千石。いつも通りの読めない笑みを浮べる彼の肩には、赤い紋様が描かれていた。
 初めて見るそれ。それが何を意味するのかはわからない。
 わからないままに、南も返した。
 嬉しそうに笑い、
 「そりゃ光栄だよ」



―――とりあえず戦争は終わり

 








 ―――このシリーズで(といってもまだ2話だけですが)共通して言えること―――そもそもの根本。それがなされた理由がわからない(爆)。
 というわけで2話目。というか不動峰編です。『山吹編』じゃないのか? と言われそうですが、この次が『ルドルフ編』になりそうだったのでこちらにしました。そう、初っ端っから焦点は明らかに氷帝にありながらも言わせてください! このシリーズ、偶然ながら青学・不動峰・ルドルフ・山吹・氷帝・六角・立海の順で進んでいく・・・・・・といいなあ、と。正確には『青学編(実質氷帝メイン)』、『不動峰(+山吹)編』、『ルドルフ(なのに青学ばっか)編』、『山吹編(実質千石編的インターミッション)』といった感じです多分。氷帝以降いまいち内容不明。とりあえず『山吹編』から『六角編』までのみタイトル(?)と内容が合いそうな・・・。
 ではv 今度は§2にて?

2004.4.2011.30