§２ 陰謀の裏に隠された陰謀
長い長いプロローグ ⅱ―――由美子
～けれどそのルドルフ王国は、あまり良くない事を考えていて･･･～
「んふふ･･･。いいですか赤澤。今回の青学訪問、目的はもちろん―――」
「新国家としての挨拶だろ？」
「違います！ 全く貴方は今まで何を聞いていたんですか」
「これから説明じゃねえか･･････」
「いいですか？ 今回の僕たちの目的、それは―――青学の乗っ取りです」
「いや無理だろぜってー」
「何を言ってるんですか」
「お前がな」
ばきっ！
「いいですか赤澤。確かに青学は大国であり歴史も古く由緒ある国です。地形の上から考えてもこの国を乗っ取ろうと考える者はいないでしょう」
「そりゃまず接してる国もねえしな」
「そうです。青学を始めとし氷帝・六角、そして我がルドルフは山に囲まれ孤立状態。山の合間に山吹や不動峰などもありますがいずれも小国。地形に悩まされここまではなかなか来れません。
そして青学は氷帝・六角と、公的なものではないですが実質的には協定を結んだ状態です。３国は３国で支え合って成立している、といってもいいでしょう。その中で、他国の侵略に対する防衛の役割を持つのは工業国であり他国からの最初の侵略ルートとなる氷帝です。つまり―――
―――青学は他国に対する警戒が六角と並んで薄いんですよ。しかもルドルフと同様『王家』という存在による独裁が行われているのならば、そこさえ押さえれば国全てを掌握したと同じです。なお解説しておきますと、六角は共和国につき国を運営する機関は存在しません。もし六角を直接支配するならば、国の運営に関し議会を開かせそのメンバー全てを如何なる方法であろうと納得させなければなりません。ですが逆に『青学』という１つの国の立場で六角を取り込むのは簡単です。六角には船頭がいないのですから、協力という名で吸収してしまえばいい。そして問題の氷帝ですが―――工業国であるという事は、同時に農業を始めとした第一次産業に弱いという事ですよ。氷帝が科学力を差し出す見返りに２国から援助されているのは食糧です。その２国から食糧援助を断ち切られたら？ いくら機知に長け国内及び各国に多大な影響を与える氷帝帝王であろうと、この問題は解決出来ませんよ。こちらに頭を下げる以外は。これで晴れて３国はこちらのもの、となるわけです。
このような手順を考えれば青学を攻めるのは当然です―――よね！？」
「そ･･･そうだな･･････。
だが青学だってそこらは考えてんじゃねえのか？ そうそう簡単に入れねえだろ」
「いいえ甘いです。確かにかつては入れませんでした。表には出てこないものの、不二家第一王子由美子嬢がいたおかげで。彼女は『青学最強の魔法使い』と称されるだけではなく、その頭の切れ振りも目を見張るものがあります。彼女がいたならば、どのような策を労しようと確実に成功する保障はありませんでした。が」
「その由美子嬢も今では氷帝の国民、ってか」
「ええそうです。青学に帰ってくる事もありますが、いない時を見計らい速攻で制圧してしまえばこちらのものです。異変に気付き戻ってきた時にはもう遅い、と」
「だが確か、青学の王子は３人いただろ？」
「確かに下に２人います。ですが彼ら２人は由美子嬢に比べればまだ扱いやすいものです。特に一番下は、ね。
―――どうです赤澤。身内に裏切られる気持ち、というのは。少し遅いですが、彼には反抗期になってもらいましょうか」
「へええ･･･。さすが観月。策を論じさせたら右に出る者はねえってか」
「んふっ。当然でしょう」
「―――へえ」
「何やってるだーね淳？」
「いいや別に何も？ ただの盗み聞きさ」
「･･･十分してるだーね」
「される向こうが悪いんだよ」
「･･････。
で？ 何か面白い話聞けただーねか？」
「そう思う？」
「淳、今すっごく楽しそうな顔だーね。そういう顔の時は絶対いい事ないだーね」
「クスッ･･･。よくわかってるじゃないか柳沢」
「その性格、直す気ないだーねか淳？」
「ないね」
ψ ψ ψ ψ ψ
―――そんなやり取りの数日後。