昔々のそのまた昔、お城には綺麗な綺麗なお姫様がいました。
お姫様はかつて悪い魔法使いにかけられた呪いのために、自分の責任でもないのに百年間の眠りにつくハメになってしまいました。
いばらに囲まれ眠り続ける哀れなお姫様の目を覚まさせてあげる方法はただひとつ。



<お姫様に 己の持つ全ての愛情を注ぎ込んであげること>



そして時は移り・・・・・・







眠れる森にての物語







 「ついにここまで来たか・・・」
 「そしてこれが・・・・・・」
 「伝説の、眠れる姫・・・・・・」
 いばらの道を乗り越え城内への侵入に成功した真田・手塚・橘。城全てがいばらに覆われているはずなのになぜか太陽の明かりが眩しい塔の最上階にて、彼らは『それ』を見た。
 見た目自分達とさして変わらない程度の年齢。右目下にほくろのある端正な顔は、今はいっそ無邪気といえるほどのあどけない表情を浮かべ深い深い眠りについていて。
 一瞬にして目を奪われる。目を奪われた彼らには―――
 ―――『姫』の割に着ている服がただの綿の白ローブというそっけない物件だったり、微妙な寝相の悪さを発揮し掛け布団だったであろうタオルケットをベッドの下に落としていたり、そもそも『百年間眠り続けていた』クセにシーツを初めとした周りの家具がやたらと新しく綺麗だったりする事は・・・・・・もちろん気にならなかった。
 暫し姫を観察し・・・
 「で、姫を起こすには・・・」
 「外にいた魔法使い曰く、『己の持つ全ての愛情を注ぎ込んであげること』だそうだが・・・・・・」
 「しかし本当にそうなのか? 鵜呑みにするのは危険なのでは・・・」
 「大丈夫だろう。呪いを緩和させた魔法使いだというしな」
 「だが・・・それだと百年前から生きていたことにならないか? どうみてもあの少年は我々と同年齢だろう?」
 「自らが呪いの一部を引き受けたと言っていたじゃないか。立派なモンだ」
 「むう・・・。確かに・・・・・・」
 議論は一段落つき、
 いよいよ本題、『姫の起こし方について』へと移っていった。
 「『お姫様に 己の持つ全ての愛情を注ぎ込んであげること』・・・・・・?」
 「えらく抽象的な話だな」
 「さてどうやって注ぎ込むかが問題だよな」
 さらに暫しして・・・・・・
 「よし」
 最初に拳を打ったのは手塚だった。
 「何か思いついたのか?」
 「うむ。ここはいささか古典的な手法でいくしかあるまい」
 「というと―――」
 それ以上の説明はせずに、手塚は姫の眠るベッドの脇に膝を折り―――
 潤い溢れる頬をうやうやしく撫で、その延長にある唇へと己の顔を落としていった。
 触れる程度の、羽根のようなキス。一瞬で全てを終え―――
 ―――当然の事ながら、姫は全く目覚めなかった。
 「・・・・・・むう」
 「『注ぎ込み方』が足りねえんじゃねえのか・・・・・・?」
 本気でそれで上手くいくと思っていたらしい。身を離しつつ真剣に首を捻る手塚へと静かに橘が突っ込む。
 そんな橘を押しのけ、
 「では次は俺が行こう」
 次いで真田が、手塚と同じように腰をかがめた。
 再びなされるキス。今度は一瞬では終わらずに。
 その間息を止めていたらしい。真田が酸欠で倒れたところで終了した。
 そして―――
 「お?」
 先程は何の反応も見せなかった姫が、僅かだが様相を変えた。
 「ん・・・・・・」
 眉を顰め、僅かだが誘うように唇を開き・・・
 「やり方は、間違ってなかった・・・・・・ってワケか」
 呟き、3番手・橘が姫の元へと馳せ参じる。
 唇を重ね、舌で舐め。開いた部分をさらに開き。
 「う・・・ん・・・・・・」
 洩らす喘ぎの数が増えていく。覚醒まであと一歩―――
 ―――というところで。
 『―――お〜い景吾〜!!』
 外からそんな声がすると同時。
 「うおっ!!」
 橘はこめかみに強力な爪先を喰らっていた。
 ガラスのない大きな窓から振り子運動の要領で飛び込んできた少年が、蹴り倒した橘を踏んだまま爽やかに手を上げた。
 「よっ、景吾。朝だぞv」
 手を上げ―――ついでに脚を上げる。振り下ろされる先には姫の顔が―――
 「どああああっ!!」
 間一髪。目覚めた姫が、ぎりぎりで身を捻ってかかと落としをかわした。ぼすんとかなりの衝撃を布団に伝わらせたかかと―――頭蓋骨に当たっていたら問答無用で陥没していただろう―――を無視し、起き上がった姫が現れた少年の襟首を掴み上げる。
 「てめぇ佐伯! 朝っぱらっから何しやがる!!」
 「だから起こしに来たんだって。お前起きんの遅すぎ。今何時だと思ってんだよ」
 「7時前だ!! 立派に朝早ええだろーが!!」
 「何言ってんだよ。俺なんて毎日4時半に起きてランニングとかして食事の仕度して挙句お前のバラとかの手入れまでしてんだぞ?」
 「それでンなカッコして外から来やがったのか・・・・・・」
 麦藁帽子にオーバーオール、なぜか手は剥き出しだがその先に園芸用のハサミを持ち、下も長靴なその姿は確かに庭師だろう。
 「そんな格好っていえば、お前はお前でどういう格好してんだよ? 普通にパジャマ着ろよ」
 「暑ちいじゃねえかズボン。これだったら好きに捲くれんだろ? それにいっつも布団はちゃんとかけろっててめぇが文句言ってたんだろーが」
 「それでローブねえ・・・。まあ発想は悪くないって思うけど・・・・・・
  ―――捲くった時点で意味ないじゃん。しかもそういう事ばっかするからヘンな虫が来るんだし」
 「あ? 虫? 別に刺されてねえぞ?」
 きょとんとする姫の死角で、推定庭師の少年は踏みにじったかかとにさらにぐりゅりっ! と捻りを入れた。
 無声で悶絶する橘。びたばた暴れる体にようやっと気付いたらしく、姫が頭をがりがり掻きながらそちらを見や―――ろうとして。
 「景〜〜〜vv おはよ〜〜〜vvv」
 今度はどばんとまともに扉を開け乱入してきた存在が、手塚と真田をふっ飛ばしてベッドへと駆け寄ってきた。
 「お前は・・・!!」
 見覚えある少年―――城の外で自分達に姫の事を教えてくれた魔法使いに橘が驚きの声を上げ―――
 「ぐはっ!?」
 さらにかけられた重みに、一言残して没した。
 橘の体を踏み台に、軽くジャンプをしベッドを飛び越える庭師。空中で姫を攫い、向こう側へと難なく着地した。
 「がっ!!」
 次いで飛び込んできた魔法使いに再び踏みつけられ完全昏倒。さらに少年は橘を下にしたままがんがんげしげしと地団駄し、
 「サエばっかずるいずるい〜!! 僕だって景と一緒にいたいのに〜〜〜!!!」
 「それでこんな部外者焚きつけたのかよ。全然役不足だったみたいだけどさ」
 「あーもーここまで使えないとは思わなかったよ!! 挙句に景にキタナイ手まで出すし!!」
 「それに関しては万死ですら値しないな。死なんかじゃとてもとても償えないよ。でもってそれを促したお前もな」
 「君がさっさと交代しないからだろ!? 約束の百年目だよ!! そろそろ僕と交代しなよ」
 「ハッ! 交代? 何言ってんのかな不二。景吾の支配権は毎回公平に、だろ? 次お前になるとは限らないぜ?」
 「くっ・・・! なら今ここで勝負だ!!」
 「望むところだ!!」
 『じゃ〜んけ〜ん―――!!』
 ・・・・・・・・・・・・
 「ほら。俺の勝ち。じゃあ次の百年も俺が景吾の『対』な」
 「くっ・・・・・・!!!
  絶対今君後出ししたでしょ!?」
 「後出し? そんな卑怯な事俺がするわけないだろ?」
 「代わりにお前の見て出すモン変えてたけどな」
 「ぐ・・・。景吾、そういう突っ込みはすんなよな・・・・・・」
 「卑怯卑怯卑怯〜〜〜!!! ずるいずるいやり直し〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
 「往生際悪いぞ!! 一度決まったモンにいちゃもん付けんなよな!!」
 「景だってそういう卑怯な人とは一緒にいたくないよねえ!!??」
 「いや・・・俺はもうお前らどっちだろうとあんま関係ねえしなあ・・・・・・」
 「ほら。景吾は俺がいいって言ってるだろ?」
 「ん・・・・・・」
 姫を後ろから抱き締め耳を舐める庭師。負けずに(ようやっと橘を解放し)魔法使いがベッドの上をにじり寄り、
 「景は僕のこと嫌い・・・?」
 「あ・・・・・・」
 姫の頬を撫で、これまで3人がやってきた通り口付けした。
 2人を抱き寄せ、姫が綺麗に微笑む。
 「バーカ。だからどっちだろうが構わねえんだろーが。
  ―――愛してるぜ、お前ら2人とも」
 「景吾・・・・・・」
 「景・・・・・・」







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 なおもひとしきりギャラリー無視でいちゃいちゃした後、
 「あ、そうだ景吾。お前に言おうと思ってたことがあったんだ」
 「あん? 何だよ?」
 「お前が大切にしてるいばらの一部がさあ、
  ―――今朝なんでか一部斬られてたんだけど。しかもけっこー無残にボロボロに」
 「何だと・・・・・・?」
 部屋中の空気が、5℃下がる・・・・・・。
 「そうなんだよ景。僕も止めてって止めたんだけど、そこにいる3人が剣で刈り取っちゃったんだ。自分達が入るのに邪魔だって」
 「ああ・・・・・・・・・・・・!?」
 さらに5℃下降・・・・・・・・・・・・。
 「いや、それはその確かにそうなんだが・・・・・・」
 いちゃいちゃタイムの間に復活していた3人。しかしながらあまりの事態に逃げる事すら忘れ見入っていたところで、予期もせぬ濡れ衣(ではないが)。
 弁解しようとした3人を無視し、姫は冷ややかな声で己の従者2人を呼んだ。
 「佐伯、不二」
 『はい』
 こんな時だけ下の者っぽく。ベッドの周りだけにあるカーペットに片膝をつき頭を垂れ、魔法使いは持っていた杖をそのまま、推定庭師はハサミを元の形である剣へと変形させ、それぞれ姫へと献上した。
 そちらに礼を言う事もなく受け取り、姫が限りなく冷たい眼差しを3人へと向ける。
 「勝手に不法侵入してきた挙句、俺様の大事なバラ傷つけてきただあ・・・・・・?」
 中央にて合わされる手。重なり合う2つの武器が、溶け、絡まり、1つのものへと融合していく・・・。
 「てめぇら覚悟出来てんだろうなあ・・・・・・」
 武器と共に、姫の服もまた変化していく。ただの綿の白ローブから、漆黒で複雑な紋様の描かれた黒ローブへと。
 「そ、そのローブは・・・・・・!!」
 慄く真田の声を打ち消し。
 「俺様への反逆は罪が重いぜ!! 死んで反省しな!!」
 姫の怒声と、
 そして大爆発が部屋中を満たした・・・・・・。







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 かつてこの国ではこんな風習があったという。優れた魔法使いの子どもたちを集め、さらなる技術向上のために教育を施すというものが。現在ではそこまで強い力は必要なくなり、またこういった英才教育は一部洗脳も含み危険な戦闘人形を作り出すといった反対運動の勝利により行われてはいない。ただし行われなくなった一番の理由は、そこまで強い存在が現れなくなったからだというのが裏での通説なのだが。
 そして通称『
Jr.選抜』と呼ばれるそれに参加した者たちは、全員制服として同じローブが与えられる。複雑な紋様の描かれた、黒ローブを。







Ψ     Ψ     Ψ     Ψ     Ψ








 城を追い出され、意気消沈した3人。馬鹿でかい城の敷地を入り口に向かいとぼとぼと歩いていると、
 「あっれ〜? 珍し〜。お客さん?」
 「む・・・?」
 向かいからかけられたお気楽な声に重たい視線を上げ、
 『―――っ!?』
 3人で凍りついた。
 そこにいたのは、やはり自分達と同じ年程度の少年だった。オレンジ色の頭に、背中に杖を差しているところからすると魔法使いのようだが、さらにそれを裏付ける要素として―――
 「その、ローブは・・・!!」
 「ああ、コレ? 
Jr.選抜でもらったやつ。けっこー便利だし気にいってるからまだ着てるんだよね」
 「
Jr.選抜・・・」
 「ということは・・・・・・」
 「訊くが、もしやお前はこの城の中にいる姫とは知り合いなのか・・・・・・?」
 消沈した意気を込ませ問い詰める3人へ、
 「姫・・・? ああ、跡部くんの事か。だったら知り合いだよ?
  何? 会ってきたの? 不二くんサエくん共々元気だった?」
 「あ、ああ・・・・・・」
 とりあえず分類すれば『元気』ではあっただろう。頷き・・・
 「ところで訊きたいんだが・・・・・・」
 3人は、今城の中で起こった不条理事態の答えを求め、かの少年へと縋りついたのだった。







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 「は〜あなるほど〜。それは災難だったねえ・・・・・・」
 それが、話を聞き終えた少年の第一声だった。
 「一体何がなんだか・・・・・・」
 珍しく弱気に呻く真田。
 魔法使いの少年―――もちろん千石は、同情的な眼差しで彼らの肩を叩いてやった。
 「何て言うか言いにくいんだけどさ、
  ―――その伝承、しょっぱなっからか〜な〜り、間違ってるよ」
 『何・・・・・・!?』
 その伝承を信じてここまではるばるやってきたのだ。それが間違っているとは一体・・・・・・
 「その伝承ってアレでしょ? 要約すると、『昔々お城で誕生したお姫様のパーティーのために賢い人―――つまりは魔法使いね―――が呼ばれました。呼ばれた魔法使いたちはお姫様のために何かひとつづつ授けていきました。ところが最後の方になって、呼ばれなかった悪い魔法使いが「姫は年頃になったら針で指を刺して永遠の眠りにつくだろう」と呪いをかけてしまいました。最後の魔法使いはその呪いを無効化する事はできませんでしたが、『永遠の眠り』を『百年の眠り』にする事に成功しました。かくて、姫が眠りについて以来城はいばらに包まれ、姫はその守りの中で百年後自分の目を覚まさせてくれる存在を待ちました。己の持てる愛情の全てを注ぎ込み、目覚めさせてくれるものをいつまでもいつまでも・・・』ってヤツ」
 「そう。それだ」
 頷く彼らに苦笑いを浮かべ、極めて残酷な真実を告げる。
 「その伝承、むしろ合ってる部分探す方が大変だよ。最初に言っておくけど、そもそもこの伝承というか出来事、始まったの千年以上昔だよ」
 『な、に・・・・・・?』
 「さっきこのローブ見て反応したよね。もしかして跡部くんも着てたの見た? だったら話は早いと思うけどさ―――
  ―――『
Jr.選抜』の制度、廃止になったの五百年以上前だよ」
 「そういえば・・・・・・」
 「ならば、この伝承は・・・・・・」
 「順を追って説明していくと、最初は合ってるんだ。根本問題として生まれたのは『姫』じゃなくて『王子』だけど違いはその程度で」
 「・・・・・・十二分に大きな違いじゃないのか?」
 「大丈夫だよ。別に法律上結婚するのは男女じゃなきゃいけないなんて決められてもないし―――ちなみに正確にはそう決められてたんだけどね、なにせ向こうはその法律も支配する王家だからね。あの王子こと跡部くんが生まれた時点であっさり法改訂されちゃったよ。
  それに跡部くんの容姿なら『姫』って言っても全然おっけーっしょ」
 「それは確かに・・・・・・」
 起きるまで、本当に女性だと3人とも思っていたのだ。それに関しては大いに頷く。
 「で、魔法使いの呪いに解除っていった流れは合ってるんだよ。ただしちょっとその内容が言い伝えられてる内に変わっちゃっただけで」
 「つまり?」
 「みんな言うところの『悪い魔法使い』っていうのは、別に本当に悪くって呼ばれなかったワケじゃないんだ。最初にタネ明かししておくと、その『悪い魔法使い』がサエくん、呪い緩和した最後の魔法使いが不二くん」
 「不二についてはそう聞いたな・・・」
 「で、パーティー前にサエくん閉じ込めてちゃっかり自分だけ参加しちゃったのが不二くん」
 『何・・・・・・?』
 「ただしだらだらのんびり進められちゃったおかげで肝心なトコ寸前でサエくんに来られちゃって、それでサエくんに先『贈り物』されちゃったんだね。
  ―――『第二性徴を迎え恋愛感情に目覚めた景吾が永遠に自分のものになりますように』って」
 『・・・・・・・・・・・・』
 「不二くんめちゃめちゃ起こってね〜。当り前だけど。てゆーか生まれた時から跡部くん奪い合ってる2人ってどうよ? とか思っちゃうけど。
  それで、不二くんがそれを完全無効化はさすがに出来なかったけど、『永遠に』ってトコ『百年の期限つけて』にしたんだよね。そんでそれ以来、百年ごとに2人は跡部くんの支配権、っていうか―――どっちが跡部くんに愛されるかずっと争ってんだよね。
  ちなみになんでそんなに長く生きてるのかってね、それがある意味『呪い』っていうか『眠り』の正体って感じなんだけど、
  ―――百年間愛しきるまで跡部くんと、契約した『対』は時間が止められて年取らないんだ。逆に愛されなくなったらその時点で死ぬけどね。無理矢理止めた分の時間巻き戻して」
 「では、跡部はそう脅されて現在の状態だというのか?」
 じっと千石を見つめ問う3人。その瞳は純粋に跡部を心配している。
 わかった上で、
 「そうだと思う?」
 千石は逆に問い返した。
 「確かに跡部くんが魔法使いとして実力をつけることにしたきっかけはそれだって。『呪い』を打ち破るため」
 「ならば―――」
 「でも違うんだ。跡部くんは決して2人に縛られるのが嫌なワケじゃないんだ。ただ2人の手の平で踊ってるだけっぽいのが悔しいから破りたいだけで」
 「そう・・・なのか?」
 「そうだよ。だって・・・
  跡部くんの実力、もう2人超えてるもん。破ろうと思ったらいつだって破れるし、自分の力で充分生きていけるよ。現に『対』じゃないもう片方は自力でさらに百年生きてるワケだしね。
  なのに破ろうとしない。二人に命預けて、でもって千年ずっと一緒に暮らしてる」
 千石の言葉に、
 思い出す。あの時の跡部の態度。



 ―――『バーカ。だからどっちだろうが構わねえんだろーが。
     ―――愛してるぜ、お前ら2人とも』




 とても幸せそうに、彼はそう言っていた。
 とても―――太刀打ちは出来そうになかった。
 「まあそんなワケで、
  ―――あの3人にもう手は出さない方がいいと思うよ。次は命がないだろうから」
 しれっとなされた脅し。顔を上げた時に、もう千石はそこにはいなくて。
 「あ〜と〜べ〜く〜ん!! 遊びに来たよ〜!!」
 入り口にて声を上げる千石。そして―――
 『は・・・・・・?』
 いばらがほどけ、勝手に道を作っていく。
 『おう千石! 勝手に入れよ!』
 中から聞こえてくる、間違いない跡部の声に、
 「なるほど・・・。普通に入ればこのように開いたわけか・・・・・・」
 3人は、静かにそう呟いていた。














































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 昔々のそのまた昔、お城には綺麗な綺麗なお姫様がいました。
 お姫様はかつて悪い魔法使いにかけられた呪いのために、自分の責任でもないのに百年間の眠りにつくハメになってしまいました。
 いばらに囲まれ眠り続ける哀れなお姫様の目を覚まさせてあげる方法はただひとつ。



 <お姫様に 己の持つ全ての愛情を注ぎ込んであげること>



 そして時は移り、現在・・・・・・







Ψ     Ψ     Ψ     Ψ     Ψ








 「景吾ー! 朝だぞー!」
 「ってだから毎朝俺のこと永眠させようとすんじゃねえ!!」
 「景〜! 遊ぼ〜!!」
 「俺の平穏はどこ行ったーーーーー!!!!!」
 「跡部く〜ん!!!」
 「だああああ!!! てめぇらいっぺん死んで来い!!!!!!」



 今日もまた、お城では謎の怪奇光線と怒声と共に、平穏な時が過ぎ去っていく・・・・・・。



―――Fin











 わ〜やっつけ仕事ばんざ〜い!! この話、実は裏ちっくで跡部総受けにしたかった・・・。表になった理由は裏の方が長くなって面倒そうだから(爆)。設定は全部出たのでこれで裏行くか。眠った跡部にやりたい放題! 初っ端の目の覚まし方が『己の持つ全ての愛情を
注ぎ込んであげること』になってる理由はそんな感じで!
 しっかし私コミックス
&友達が買った本誌まとめて後で読ませてもらう派なのですが、おかげで今だリョーマvs真田です。ところで―――
 ―――サエが橘に負けるですと?
 ざけんな不動峰。いいじゃねえかてめぇ既に宍戸にだって勝ってんだからよ。うっわ不動峰マジで嫌いになってきたわ氷帝が負けた時点からその傾向にあったけど。
 というわけで―――ではないのですが、サエが横からかっさらう方式大好きです。とここで言うのは、次上げる話もまたそういう展開になる・・・といいなあと思ったからです。よ〜し! 次は『お家騒動』の第2話、頑張って仕上げるぞ〜!!!

2004.9.18