エピローグ.“従者”改め王子 −佐伯−


 帰路にて。ちゃんと『姫を助ける』という初期目標をクリアしたからだろう。ごく普通に(生きたまま)他のメンバーとは別れられ、残りは最初に合流した跡部と佐伯のみとなった。
 「んで、結局何だったんだよ今回の騒ぎ?」
 担がれただけにしても、そもそも何の目的があって佐伯は自分たちを担いだんだ?
 不機嫌そうに尋ねる跡部に、佐伯は笑顔で、
 「見たままだけど?」
 「いや見て全然ワケわかんなかったから訊いてんだけどな」
 「まあつまりは知り合い同士が、どっちが強いか決闘をしようという企画だったっていうワケだ。でもって俺の戦略勝ち、と」
 「『戦略』・・・・・・・・・・・・?」
 人質とって脅すのをそう呼んでいいのやら。会話を聞いた限りでは“姫”とやらの方が常識人だったような・・・・・・。
 「つーか、1から
10まで全部嘘八百だったのかよてめぇの話」
 不機嫌度合いをさらに上げ尋ねる。やはり佐伯は笑顔のまま、
 「いや? わりと本当だ。
  争っていたところ決闘の話を持ちかけ周ちゃんをあそこまで連れて行ったのが“魔王”」
 「幸村が参戦しなかった理由って・・・・・・」
 「1枚噛んでたからな。しかも公平な立場でだから。そりゃ加われないさ」
 「んじゃてめぇがアイツと話してたのって・・・・・・」
 「つまりはその辺りだな。みんなの前でされるとタネがバレる」
 「ああ、あの何の捻りもねえ御伽噺か」
 「だからあれは本当だって」
 ははっと声を上げて佐伯が笑った。
 「どこの“姫”だよ。聞いた事ねえぞあんなヤツ。どっかの小せえ村の話か?」
 「あ、酷いなあ。ちゃんと大きいところだぞ? ただし場所じゃないけどな」
 「・・・・・・つまり何のだよ?」
 跡部が怪訝な顔を見せる。ぺろっと舌を出し、佐伯は種明かしをした。
 「六角の」
 「・・・・・・・・・・・・は?」
 「千石が話してただろ? 六紡星の中で、立海ともうひとつ青学のそれが誰だかわからない。
  ―――青学の六紡星が通称“姫”」
 「んじゃアイツ・・・不二って・・・・・・」
 「つまりはそういう事。でもって姫は魔道士としての腕は天才だけど、言動全般が子どもじみて―――浮世離れしてる。だからそんな姫の面倒見が必要だ。それが“従者”。
  だから“魔王”知ってた千石は先にカラクリがわかってた、ってワケだな」
 「なら・・・・・・山吹っ飛ばしたアレって・・・・・・」
 「なんか観月が自分が魔道士な事さんざん自慢してたからな。景気付けに一発やってみた。即座に逃げられた」
 「・・・・・・魔道士探してた意味ねーじゃねえか」
 「だな。だからいらないって言ったじゃん。
  けど俺はちゃんと言ったぞ? 『トリックスター』だって。隠してるのが武器だけだなんて制限つけなかっただろ?」
 「・・・・・・・・・・・・」










あるところに、とても綺麗なお姫様がいました。お姫様はある日突然、魔王にさらわれてしまいました。

 代表として、従者はお姫様を探す旅に出る事になりました。











 ・・・・・・いきなり決闘を申し込まれたヤツがそこへ赴く過程をこう言い表そうと思えば出来るのかもしれない。
 「マジで意味のねえ旅だったな」
 「あるだろ?」
 「どこに」
 ボヤく跡部の前へ回り込み、
 佐伯は目を細め微笑んだ。





 「お前に逢えた」





 頬へと伸ばされた手を、跡部はパン! と払いのけた。
 「白々しいウソはもういいぜ?」
 「つまり?」
 「どーせそーいう紛らわしい言動も、俺が抜けないようにするためだろ? 終わったんだからもーいいじゃねえか」
 「つまり?」
 「今すぐ別れたところでお互い何の問題もねえだろ? 後はただ帰るだけなんだからよ」
 「つまり?」
 「だから!」
 面白がるように何度も訊いてくる佐伯に、跡部の怒りが爆発した。
 「てめぇそれ全部口先だけだろ!? 従者ならせいぜい姫とよろしくやってろ!!」
 「俺が? 周ちゃんと? また何で」
 「どーせ俺は決闘で離れてる間の暇つぶしみてーなモンだったんだろ!? 決着ついたんだからとっとと帰りゃいいじゃねーか!!」
 「本当にそう思うのか?」
 「ったりめーだろ!?」
 燃える目で睨みつけてくる跡部を、その奥に揺れる哀しみを見、
 佐伯は楽しげに笑った。
 「本当にそう思うのか? ちなみに周ちゃんと俺はただの仲いい幼馴染だけど?」
 「・・・・・・・・・・・・あん?」
 「別にそれ以上の関係はないさ。周ちゃんは恋愛より遊び―――研究の方が楽しい派だし、俺に懐いてくれてるけど俺限定でもない。お菓子くれる大人はみんな大好きな子どものノリだね。
  俺は周ちゃんは可愛い弟だと思うし実際愛情注いでるけど、だからといって『恋人』として愛してるワケじゃない。総じて、ただの仲いい幼馴染さ。
  俺が愛してるのはお前だけだよ景吾」
 「〜〜〜〜〜〜////!!!」
 さらっと言われた告白。跡部の顔が面白いように真っ赤になった。
 彼の前に跪き、手を取り甲に口をつけ、
 「愛してます。婿養子にして下さい」
 佐伯のキザ過ぎるプロポーズに、跡部は嬉しそうな顔で無理やり苦笑いを浮かべ・・・・・・
 「――――――ってちょっと待て!! 『婿養子』!? つまり俺が嫁か!?」
 「ああもちろん。大丈夫だ。お前のご両親には先に許可をいただいた。『ふつつかな息子ですがぜひよろしくお願いします』と喜ばれてたよ。何の障害もないな」
 「ありすぎるに決まってんだろーが馬鹿野郎!! なんで親父と母さんに先話つけてんだよ!?」
 「親へのご挨拶といったら普通花嫁側が先だからだろ?」
 「俺より前にしてどーすんだよ!? つーかてめぇとっくに俺の事知ってたってか!?」
 「部下の事は知ってて当然だろ? お前の出したレポートはちゃんと全部目を通したぞ」
 「てめ青学の所属だろ!?」
 「誰がそう言った? 周ちゃんは青学の六紡星とは言ったが俺も青学の国民だとは一言も言ってない。ちゃんと氷帝に籍は移したぞ? 結婚しやすいように」
 「そこまでやるか・・・・・・・・・・・・?」
 「そりゃもちろん。お前と結婚できるとなれば」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もーいい」
 「んじゃ決定。これからよろしくな、景吾」
 立ち上がった佐伯にぎゅっと抱き締められる。その腕の中で、
 「バーカ」
 跡部は、幸せそうに微笑んだ。



―――HAPPY END











 これでいいのかみんな!? とりあえず死なずに済んだから
OKですか!?
 そんなこんなで漢なサエがみんなをイビる話・・・・・・の予定だったのですが。最初のほ〜にノリで書いた一文のせいでなぜか虎跡になりました。それでも幸村除いて全員一度はひでえメに遭ったか!?
 それでは、長々かかって2名除きほんっと〜に意味のなかった話略して『サーガ』。本当にこんな意味があるのだからびっくりだ☆ これにて了です!!
 なお余談。国名は同じく虎跡の『お家騒動!』ネタですが、とりあえず好きな学校名を(爆)。四天宝寺はまあそのままですが、『西米[せいべい]』はアメリカ西海岸の事です。アニプリオリジナルの一同でもあり、ついでにリョーガも分類すればここか? と。

2005.6.58