王子様get大作戦!!






 今日は。私は。青春学園3年に属する女子中学生です。
 ただいま私はとある人の頼みにより、越前リョーマ君と菊丸英二君・不二周助君(あいうえお順)をくっつけようと奮闘中です。それとこれというのも私が越前君―――というかリョーマ君と幼馴染かつ家が隣だったり、菊丸君と不二君と同じクラスでさらにその2人にその事がバレたりしたからなんだけど・・・・・・。
 おかげで私がこの3人の誰かと付き合ってるなんて不本意極まりない噂が流れたり、あまつさえそのせいで男女問わず睨まれ苛められたり呼び出し食らったりしてるんだけど―――私はこの3人の、というか私の幸せのためこの3人を応援しようと思います!!







――――――――――――






 「あほかーーーーー!!!」
 昼休みの3年6組にて、私は力の限りそう叫んだ。ドバンと握り拳で机を叩くと斜め前に座っていた菊丸君がびくっとしてくれたけど―――不二君はダメね。この程度じゃ顔色1つ変えてくれないわ。
 「何その結果は!!? アタシがここまでこぎつけるのにどれだけの苦労を重ねたと思ってんの!?」
 「だ、だって・・・・・・」
 「『だって』!? だって何!? 言い訳出来るならしてみなさいよ!?」
 「ゔ・・・・・・」
 黙りこくる菊丸君に目をやり、下ろしたままの肩までの髪の隙間から周りを見やる。うわ〜、みんなの目が痛い・・・・・・。
 (まあ仕方ないか。なにせこのアイドルらを思いっきりこき下ろしてるわけだし・・・・・・)
 「まあまあさん。落ち着いて。かっかするのは健康によくないよ」
 「アタシはまだ
14よ!! くも膜下出血に悩む年じゃないわ!!
  大体なんでアイス買うのに
30分もかけたのよ!! 越前君の俺様至上主義的性格くらい2人ともよく知ってんでしょ!? だったら何そんなに待たせてんのよ!?」
 「俺様至上主義的性格って・・・・・・なんか氷帝の跡部みたいだね」
 くすりって笑う不二君に私の怒りも一気に冷めた。落ち着いたっていうよりもう呆れて何にも言えないだけだけど。
 「タメ張れるでしょ、越前君なら・・・・・・。
  で、実際のところ何でそんなにかかった訳?」
 ―――先週の日曜日、男テニがないからって私は3人の遊園地デートを企画したワケ。上手くいけばこれで結ばれるかな〜なーんてちょっと胸躍らせての2人の報告がこれ。アイス買うのに時間かかってリョーマ君怒らせたそうで。
 「ああそれ?」
 頬杖突いてため息もつく私に、不二君はにっこりと笑って言ってくれた。そりゃもう爽やかに。
 「どっちがお金払うかで揉めただけだよ。ホラ、払った方が相手に恩売れるわけだし」
 爽やかだった。見てて私の胸もときめくほどに。ときめきすぎて頭に血が上るほどに・・・!
 「あほかあんたたちは!!! 割り勘って手があったでしょうが!! 何そんなくっだらない言い争いに
30分も費やしてんのよ!!!」
 『ああそういえば』
 (もうイヤ。助けて大石君・・・・・・)
 異口同音でぽんと手を鳴らす馬鹿2人に、思わず私は涙を流してこんな2人の親友をやっていられる奇特な人に
SOSを頼んだ。もちろん届く訳はないけど。
 とりあえずここで落ち込んでいてもしょうがないので活を入れる。いや誰に対してだかもうわかんないんだけど。
 「あんたたち本っ気でやる気あんの!? ないんだったら今すぐアタシに言いなさい!! 即座に落としてあげるから!!!」
 「無いわけないじゃん!!」
 あ、菊丸君復活。さすがにこの1言は効いたみたいね。
 「ならラストチャンスは今週の日曜よ! もう越前君には私まで睨まれて後がないんだからしっかり次で決めなさい!!」
 これはホント。最近リョーマ君も身の危険を察したのか、私からは努めて逃げようとする。もちろん逃がしはしないけどね。
 「今週の日曜・・・って、俺たち部活あんだけど」
 「日曜日は突然の雨で部活は休みよ」
 「いや降水確率
10%だし・・・・・・」
 「降るのよ。っていうかむしろ降らせなさい」
 我ながらかなり無茶苦茶だというのはわかっている。けど―――
 「・・・・・・了解」
 それを現実に可能にしちゃいそうな人がすぐそばにいるってどうよ?
 開眼モードで微笑む不二君に「・・・。お願いね」と頼んで教室を飛び出した。目指すは1年2組。これでリョーマ君をおびき出せば後はあの2人が何とかしてくれる―――ええ今度こそ!







 「越前君いますか〜?」
 とりあえずエヘv と変な―――もとい愛想笑いなど浮かべて1年2組の敷居を跨ぐ。目的の人物はすぐに発見できた。テニス部の男の子―――名前忘れたわ―――と向かい合わせにお弁当を広げていた。
 「いません」
 「・・・・・・」
 食べる手を止めずにはっきりと言い切られる。そりゃまあ気持ちはわかるけど、なにもそんなはっきり拒否しなくても・・・・・・。
 それを無視してずかずかと入り込む。やっと向けられた視線はかなり冷たいものだった。
 「いないって言ってんじゃん」
 「なら次からは返事をしないことを勧めるわ」
 半眼でため息つくリョーマ君に頬をひくひくさせつつもなんとか『笑顔』で返す。いっしょに食べてた子がびくりと震えてたけどまあそれは気にせず、私は単刀直入に言った。彼に回りくどい事は厳禁。
 「話があるんだけど」
 「聞く気ない」
 「・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・」
 これでもまだ回りくどかったみたい。
 「ちょっとキミの予定が聞きたいんだけど」
 「だから言ってんじゃん話す気ないって」
 「なら勝手に言うから。
  ところで越前君日曜ヒマ?」
 「部活」
 「つまり部活がなければヒマな訳?」
 「ないわけないでしょ?」
 「わからないわよ。例えば雨が降るとか」
 「日曜思いっきり晴れじゃん」
 「雨が降るとか」
 「ない。天気予報でだって晴れって言ってたし」
 「雨が降るとか」
 「・・・・・・。しつこいなあつまり何が言いたい訳?」
 ふっ。かかった。
 「日曜ヒマならデートしない?」
 「だからヒマじゃないって」
 「日曜ヒマ『になったら』デートしない?」
 「・・・・・・本気?」
 「大丈夫よ。しょせん日本の天気予報なんて当たる確率
80%だし」
 「じゃなくて。これで何回目だと思ってるわけ?」
 「5回ね。今回で」
 「・・・・・・いい加減あきらめようとか思わない?」
 「思わない。とりあえず今回は発破かけといたから。これで失敗したらアタシがその場であの馬鹿2人殺す。っていうか黒魔術でも使って操る」
 何かもう私にも自分で何言ってるかわかんなくなってきたわ。バースト寸前って感じね。
 「いや」
 「なんで?」
 「アンタのその『デート』に付き合わされて、今まで良かった事なんてないじゃん。俺だって馬鹿じゃないんだから学習するんだけど」
 ・・・・・・・・・・・・ぷちv
 「あ・ん・た・が・・・・・・」
 震える声で呟きつつ背後からリョーマ君のこめかみを握り拳でホールドして喚く。
 「半分は台無しにしたんでしょうがーー!!」
 「ぐ・・・・・・!!」
 「なに
30分待たされたくらいでいちいち怒ってんのよ!! あんたもあんたでやる気あんの!?」
 「・・・・・・・・・・・・っ!!」
 もがいていたリョーマ君の抵抗がいきなり弱まる。手を離すとくたりと机に倒れこんだ。あ、そういえばこめかみって急所よね・・・・・・。
 「・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・」
 じっと見守る事1分。目覚める様子のないリョーマ君の襟元を掴んでがくがくと前後に振り回す。
 「いや〜〜〜!! 目を覚まして〜〜!! あんたに今死なれたらアタシはどうすればいいのよ〜〜〜〜〜!!!??」







 ―――とりあえず何とか目覚めたリョーマ君と私が呼吸を落ち着けたところで。
 「・・・・・・なんでそこまでムキになんのさ?」
 リョーマ君の質問に笑みが零れる。ふっふっふってね。アラ? 何か止まんないわ。
 「目的のためなら手段は選ばないわよアタシは。覚悟しなさい」
 「ふ〜ん。ま、別にいいけど・・・・・・」
 リョーマ君はそんな私を見て引くどころか逆に燃えたみたい。いつも通りの生意気な笑みを浮かべて私の制服の襟元をグイって掴むとそのまま引き寄せた。
 
151cmのリョーマ君と157cmの私。元から身長は私の方が少し高かったけど、リョーマ君が座ってるせいで余計にその差が大きくなる。
 「タダで、はやりたくないなあ・・・・・・」
 「アタシに取引持ちかけるわけ? いい度胸してるじゃない・・・・・・」
 ほとんど見上げるリョーマ君と見下ろす私。急な動きで前に垂れた私の髪のおかげで丁度周りからは私たち2人の口元が隠れてる。
 ―――なーんて言って取引にキスするわけじゃないんだけどね。期待した人ゴメンね。私とリョーマ君はそんな関係じゃないから。ええそりゃ全っ然!!!
 「言っとくけど何か買う、ってのはナシね。あの2人が何でも買ってくれるでしょ?」
 「そんなのはどうでもいいけどね―――」
 そう言ってさらにリョーマ君が私を引く。おかげでもう彼の顔を通り越して肩にぶつかりそうになる。
 「わ・・・?」
 驚く私の髪を掻き上げリョーマ君が耳元に囁いた。
 「          」
 ・・・・・・は?
 「はあ!?」
 がたんと大きな音を立てて飛び退く私。
 「冗談でしょ!? 何でアタシが―――!!」
 「いいじゃんそのくらい」
 にやりと笑うリョーマ君。く〜!! 小憎たらしい!!!
 「そんなのアタシじゃなくたっていいじゃない!! おやさしい先輩方にやってもらえれば!!」
 「英二先輩だと信用できない。不二先輩だと後で何要求されるかわからない。ならアンタしか適役はいないでしょ?」
 「・・・・・・!!!」
 冗談じゃない! 何が悲しくて中3にもなって1年の宿題を、それも1週間も肩代わりしなきゃいけないワケ!!
 「無理に決まってるでしょ!? アタシ受験勉強で忙しいんだから!!」
 「けど受験って中学でやった範囲全部でしょ? ならこれも勉強になんじゃん」
 「ヘリクツこねない!!」
 「こねてんのはアンタ。大体こんなことに時間割く余裕あんなら十分ヒマなんじゃない?」
 (ぐ・・・・・・!!)
 リョーマ君のなかなかに痛い一撃にノックダウン寸前になる。けどここは諦めないわ! まだ私には奥の手がある!!
 「へええ、そう。じゃあアタシも最終手段に出ようかしら・・・・・・」
 「最終手段・・・?」
 胡散臭げに私をねめ上げるリョーマ君。うっわ〜v そーいう目されるとムッカつく〜vv
 その期待に応えるべく私は懐から数枚の写真を取り出した。こんな事もあろうかと大事に取っておいたそれは・・・・・・
 今度は私がリョーマ君の耳元に妖艶な笑みを浮かべ囁きかけた。
 「・・・リョーマ君
10歳にして寝込みを父親に襲われるの図とか、7歳の頃のずぶぬれでカルピンと戯れるの図とか。
  あの2人にはさぞかし高く売れるでしょーねえ・・・・・・」
 「・・・・・・!!」
 おお!? リョーマ君耳まで真っ赤!! これぞ秘技『幼馴染の特権』!! こんな写真ご両親に言えばいくらでももらえるわよ!!
 「返せ!!」
 「い・やv」
 突如椅子を蹴倒して写真を奪おうとするリョーマ君をひらりとかわして一歩飛び退る。
 「返せって言ってんだろ!?」
 「だから『い・や』だってv 越前君がデートの約束了承するなら返してあげるわよ?」
 ほほほほほと笑ってさらに一歩下がる。惜しい所でリョーマ君の手は写真には届かない。
 「これでも女テニ副部長兼エース! 簡単には渡さないわよ!!」
 「へえ、運動神経には自信ありってワケ? けどお生憎様。瞬発力なら男子テニス部トップだよ、俺」
 「む・・・・・・!!」
 さすがリョーマ君。攻撃あるのみ。ひらりひらりとかわしてはいるけど気が付けば教室の角に追い詰められてるし。ドア開ければ逃げられそうだけど今そんな動作したら隙突かれそうだし・・・・・・。
 「さて、もう逃げ道はないよ。どうする?」
 「ん〜、じゃあこうしようかしら」
 ドアに背を預けて写真を持った手を思い切り挙げる。もう片方の手でリョーマ君の頭の前に翳して進撃を食い止める。
 「ふふん。届くものなら取ってみなさい」
 「な・・・・・・!!」
 ばたばたばた!!!
 (ちょっとかわいいかも・・・v)
 頭を押さえられながらも懸命に腕を伸ばすリョーマ君。けどやっぱり6
cmの身長差はどうにもならないみたいで、かすかすと何も触れない。
 「残念だったわね〜。お・チ・ビ・ちゃんv」
 その言葉にさらに怒るかと思いきや、リョーマ君の攻撃はぴたりと止まった。
 (あら?)
 「―――その名前を・・・・・・」
 「・・・・・・?」
 「呼ぶなーーー!!!」
 突然さらに暴れだすリョーマ君。隙を突かれて翳していた手が払われる。
 リョーマ君はほとんど私にのしかかる勢いでジャンプしてきて―――。
 がらり
 「越前いるか?」
 バ〜ッドタイミ〜ング!! っていうかここまでくればもうコント?
 「え・・・・・・?」
 「あ・・・・・・」
 当然の事ながら私にリョーマ君を押し止めるだけの力はない。その状況で支えを取り除かれれば当り前の事しか起きない。
 びたん!!
 私とリョーマ君は今ドアを開けた人―――手塚君の見守る中絡まるように外に倒れた。私はその後横に転がって上半身を起こし、そしてリョーマ君はそのままの勢いで前に回って一気に起き、目的の物―――倒れた拍子に私の手から抜け出て宙を彷徨うそれへと手を伸ばした。
 『写真!!』
 ぴたりとハモる声。伸ばされた2人の手の先で・・・・・・
 「なんだこれは?」
 ふと手を伸ばした手塚君がその写真を取っていた。手塚君の身長は
180cm弱。私やリョーマ君よりずっと高い。
 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」
 「うわああああああ!!!」
 私とリョーマ君の悲鳴が今度は不協和音で重なる。リョーマ君の方の事情は放って置いてもこれを人に見せたら希少価値が下がる!!
 ばっ、と。
 さすが自分で瞬発力のよさを誇るだけあって、手塚君がそれに目をやる寸前に奪い取るリョーマ君。ほとんど涙目でぜーはーと荒い息をつく。
 「な、何でもないっス・・・・・・」
 「そ、そうか・・・・・・?」
 そりゃそんな顔で言われても信じられないわよね。
 「はい。何でも」
 断言しつつリョーマ君の目線は手塚君じゃなくて私の方を向いていたりする。睨みと、あとザマアミロって意味で。
 (ふう・・・・・・)
 とりあえずその視線を流して立ち上がり、服についた埃をぱたぱたとはたく。その間にリョーマ君はもういつもの様子で手塚君と話していた。まあ手は学ランの内ポケットに伸びてるけど。
 「で、何スか部長?」
 「ああ、突然竜崎先生に用事が入ったから今日放課後の部活は各自自主練になった。それを伝えに来たのだが・・・」
 ちらりと手塚君の視線が私とリョーマ君の間を往復する。
 「・・・取り込み中だったか?」
 「いいえ全然。ありがとうございました部長。おかげで助かりました」
 「そ、そうか・・・・・・?」
 まあそう確認したくなるのも無理ないわね。いつもにはない程の丁寧さで頭を下げるリョーマ君と彼を悔しげに睨む私なんて変な組み合わせを見れば。
 「ああ、そうだ。
  ―――。葉月が君の事を探していたぞ。何でも今日の部活の事で確認が取りたいらしい」
 「葉月ちゃんが? けど弥生は?」
 「長瀬なら今日は風邪で休みだ」
 「ありゃありゃ。それは大変」
 ちなみに葉月ちゃんは女テニのマネージャー。弥生は部長で手塚君と同じ3年1組。なら手塚君がそれを知っててもおかしくはないってわけ。
 「じゃ、あんま後輩待たせちゃ悪いから行きますか」
 乱れた髪を直して歩き出した。途中にいたリョーマ君をちらりと見てから―――
 「―――!?」
 左手1本で彼の襟元を掴んで引き寄せる。苦しそうに顔をしかめるリョーマ君ほとんど額をつけて囁く。
 「ならさっきの取引呑んであげるわよ。代わりに今週日曜日
10時に駅前。絶対に行きなさいよ」
 「へえ。話わかんじゃん」
 「・・・むっかつくわね〜あんた」
 「アンタに気に入ってもらおうなんて思ってないし?」
 どん!
 やっぱり左手1本でリョーマ君を突き飛ばす。教室の壁にぶつかって苦しそうに1回咳込む彼に、
 「『約束』は守ってもらうわよ」
 「そっちこそ」
 にやりと笑う私たち。これじゃモロに悪役だっての。
 「越前!? 大丈夫か!?」
 驚く手塚君に背を向け歩き出す私。―――だからこれじゃ私一人が悪役だっての!





――――――――――――






 そんなこんなで(本当に)雨の降った日曜の夜。結果を聞きにリョーマ君の部屋に上がりこんでいる私。まあそんなの、いつもなら不満そうなリョーマ君が笑顔全開で迎え入れてくれてあまつさえ飲み物まで出してくれる様をみればすぐにわかるけどね。
 「で、どうだったの、今日のデート?」
 「ん。やっと2人とも言ってくれたよ。これで晴れて恋人ってわけ」
 ガラスコップ片手に問う私に、ファンタの缶にそのまま口をつけつつリョーマ君が答える。
 「へえ、よく
OKしてくれたわねあの2人。絶対嫌がるって思ってたんだけど」
 「『そのうち変わるかもしれないから気長に待つ』って」
 「ふ〜ん。またそれは殊勝な・・・・・・」
 ―――実のところ私にこの3人をくっつけるよう頼んできたのはリョーマ君本人。彼は菊丸君と不二君両方が好きなんだけど、言い出せないから何とかそのきっかけを作って欲しいって私に言って来たわけ。まあ幼馴染のよしみってやつね。
 で、なんと都合の良い事にそれとなく聞いてみた結果その2人もリョーマ君が好きらしくて。それでやっぱり彼の幼馴染の私に頼んできたのよ。直接言うとシャイな(大爆笑)リョーマ君のことだから嫌がるんじゃないかって心配して。
 そんなこんなで掛け橋となって駆けずり回ってたのよ。もちろん私がダブルで依頼を受けてたなんて事お互いは知らなくてね。まあ見物としては面白かったわね。せっかくのチャンスをお互いぶち壊しまくってくれた辺りは特に。
 「じゃあこれからは3人でお付き合い?」
 「そーなんでしょ? もちろん嫌がっても離す気はないけどね」
 これはまた菊丸君も不二君も大変な王子様を好きになったものね。まあ私には関係ないけど。
 さてそれではいよいよ・・・vvv
 「それよりさあ、本当にこんなんでいいの?」
 そう言ってリョーマ君がタンスの奥から引っ張り出してきたのは1枚のTシャツ。一見ただの子供用セール品だけど、そのおなか部分には
Fanにとっては涙もののとある世界的大物歌手の直筆サインが描かれている。
 「いいのいいのv それが欲しくて頑張ったんだから」
 「そう? ならもっと無茶なもん頼むかと思ったのに」
 「アタシにとってこれはお宝物よ! っていうか家宝にしたいくらい!!」
 「・・・・・・そうなの?」
 疑わしげに聞くリョーマ君。まあテニスが価値観の
99%を占める彼じゃしょうがないか。
 これはリョーマ君がアメリカにいた頃の物件。毎日毎日テニス三昧の彼を不憫に思ったらしく、小母さん(つまりリョーマ君のお母さんね)がその歌手のチケットを取ってくれたらしいんだけど、なんとその歌手が大のテニス
Fan! その頃もうJr.で無敗を誇るリョーマ君はアメリカのテニス界では有名人で、逆に感激したその歌手がサインに握手にCDプレゼントまでしてくれたらしい。くくう!! 悔しい!! 知ってたら私だってリョーマ君と一緒にライブに行ってたのに!!
 たまたま発見したその歌手とリョーマ君のツーショットを見て以来どうしたのかと問い詰めて、やっと思い出してもらえてその話を聞けたら今度はこの騒ぎ。「別にいらないからいい」とか言ってたくせに成功報酬にしやがって。いい性格してるわこの子。
 「ありがと〜vvv」
 「・・・・・・
こっちこそ
 照れて小さく呟かれた一言が面白くて、ついついぷっと吹き出した私にリョーマ君はか〜っと赤くなってベッドにあった枕を投げつけてきた。
 「用事終わったんでしょ!? じゃあ早く出てってよ!!」
 「はいはいv じゃ〜ね〜、リョーマ君v」





 

――――――――――――






 さてそんな恋人達が結ばれた次の日に。
 「・・・で? なんでアンタまでここにいるわけ?」
 「酷いわ越前君。せっかくあなたのために身を粉にして働いたっていうのに・・・・・・」
 「俺のためじゃなくてサイン入りTシャツのためでしょ? だったらもう渡したんだから関係ないじゃん」
 「そうそう。せっかく僕と越前君の愛のお弁当タイムなんだから邪魔しないでねv」
 「ってどこが『不二とおチビの』なんだよ!」
 「ああ英二、いたの?」
 「〜〜〜〜〜〜!!!」
 ・・・・・・私だって訊きたいわよ。なんでこんなバカップル達と一緒の机をかこまなきゃいけないのか。
 「だから言ったじゃない。今回の一連の騒動のせいでアタシはあんたたち3人のファンに恨まれて居場所がないって・・・・・・」
 「ふ〜ん、自業自得じゃにゃいの?」
 ・・・・・・・・・・・・ぷち。
 「あんたたち3馬鹿トリオがいつまでもグズグズグズグズしてるからアタシがいらない苦労したんでしょーが!!!」
 「わ〜〜〜ちょっとタンマタンマ!!」
 「『3馬鹿トリオ』って、明らかに日本語としても英語としても間違ってんじゃん」
 「まあ越前君。彼女は彼女なりに頑張ってくれたんだから、それなりに感謝はしてあげようよ」
 「うるさーい!! あんたたち1回死ねーーーーーー!!!」
 机を振り回して暴れる私の後ろで昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いていた・・・・・・。



終わ―――らしていいのか、これで・・・?
















――――――――――――――――――――――――

 いいんですもうこれで・・・。てなわけで初!ドリー夢にして不二菊リョなれ初め話でした。昨日からなんか今まで毛嫌いしていたドリー夢もいいなあ・・・と思い始めてのこの作品。の割にはこのキャラ誰かと結ばれて無いし。いやあ、学園のアイドルと親しくして周りに恨まれるってのを書きたかっただけです。その割にはいまいち失敗。絡まれるどころかむしろ絡み返してるし。しかも3人に向かって『馬鹿』の嵐。うわ〜、Fanの皆様ごめんなさい本当に。けどかく言う私もこの3人大好きです!! ちなみにこの話、書きたかったのはメイツを怒鳴るシーンと(助けて大石君・・・・・・)、でもって「馬鹿」の連呼。―――本格的にダメっぽいdeath
 あ、ここに出てくる某世界的大物歌手。モデルはいません(ってかテキトー)。なので皆様好きな方を当てはめてください。タイトルにかけて「プ●ンス」なんかでもいいかと。いや
Fanのウチの親に怒られるか・・・・・・。そーそー、タイトルはどの王子様でもおっけーです。
 ではこの初の試みを終わりにします。あ、途中出てきた女テニについてはやはり適当に決めたので2度と出てこない設定だと思います。

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