“3[Triple]”Date!

 






 飽きもせずにこんにちは。です。
 3馬鹿トリオの問題も一区切りし、精神的に限界を迎えた私はその疲れを癒すため温泉に―――行けるほどの余裕はもちろんないので、小学校の頃の友人2人と遊ぶ事にしました。で、今私たちは地元、東京にいます。





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 「で、あそこが前言ってたお店」
 後ろを歩く2人(歩道は広がって歩いてはいけません)を振り向き、私は前を指差した。
 「ああ、あれ?」
 「そう。あの高いビ―――」
 言いかけて―――私は硬直した。するしかなかった。
 友人に合わせて前を向く私の目、それに最初に映ったのは件のビル・・・ではなく―――通りの向かいから歩いてくる少年3人。
 ・・・・・・どこぞの3馬鹿トリオだった。
 「どうしたの?」
 「え? い、いえいえいえ。何でもない何でもない」
 「いや、それ信じろって方に無理があるんじゃ・・・・・・」
 「あ! そうそう! 今の店!! 間違ってたわ私ったらv 逆だった。逆よ逆」
 「逆? 店名もしっかりあってるけど・・・・・・」
 「ああ、ここらへん、何か似た名前の店多いから、ちょ〜っとした偶然よv」
 「・・・。アンタ大丈夫?」
 「まあ、これこそだから・・・・・・」
 さり気にどころかあからさまにボロクソいわれてるような気もするけど! あの3馬鹿トリオに会うんだったらむしろ遭うんだったらその程度の汚名、笑って受け入れましょう!!
 「じゃ、じゃああっちのお店に
Let's Go!」
 と、逆側を指差す私。なんだけど・・・・・・
 見落としが一つ。後ろにいる友人は前にいる私を見ている。となれば――― 
 ―――必然的に、さらに前にいた3人も見ることになる。
 「あ! 見て見て!! あそこの3人、すっごいかっこいい!!」
 「ホント! どこかのモデルかしら・・・?」
 ザザザザザ・・・・・・
 自分でもよくわかる。今私は音を立てる勢いで顔から血の気が引けている。
 (違う・・・。あれはただ―――以下の中学生・・・・・・)
 よっぽど突っ込みいれて去ろうかと思ったけど、それを実行するより早く、さらに間の悪い事は続くもので・・・・・・
 「あ! じゃん!!」
 「あれ? ほんとだ。偶然だね」
 「何? またこのウルサイ人?」
 「誰がウルサイ人よ誰が! てゆーか人が気ぃきかして
180度後ろ向いててあげたんだから見なかった事にして無視していくのが人情ってもんでしょうが!!」
 人の努力を毎度恒例完全無にして声をかけてきた、曰く『モデル』らしい『かっこいい』人こと3馬鹿トリオに、心からの大絶叫を送りつける。
 ―――もちろんそれが効くわけもないけど。
 「んで? 何やってんの?」
 尋ねてきたのは菊丸君。
 「何か日々のゴタゴタに疲れたから癒しを求めて『』んだけど」
 殊更過去形に力を込めて、言い返す。あんた達のおかげでそれもできなくなった、と嫌味を込めて。
 が、敵はあっさりとそれを無視してくれた。
 「傷心旅行でここらへん? 規模ちっちゃ過ぎ。まだまだだね」
 「だめだよ越前君。彼女はそれでも満足してるんだから」
 ぶちぶちぶちぃ―――!!
 鼻で笑うリョーマに、笑顔でとどめを刺す不二君。頭の中で何かが大量にぶち切れていく音を聞きつつ、私はかろうじて保たれた理性により拳を震わせる程度にとどめることに成功した。ここでこの3馬鹿トリオに付き合ってはせっかくの癒しの旅が―――!!!
 そんなわけで、出来れば一刻でも、というか一秒でも早くこの場を去りたかったんだけど・・・・・・
 「え? 何々。この3人と知り合い?」
 「紹介して紹介して!!」
 両サイドから友人に肩を揺さぶられて、それも叶わぬ夢となった。
 「え〜っと・・・・・・」
 心底癒そうな顔で呻いてから、3人を順不同に指差していく。
 「はじっこのなんかガキっぽくてうっさいのが菊丸英二君。もう一方の笑顔が怪しいのが不二周助君。一応悪くも悪くもクラスメイト」
 「何かな? その言い方」
 「てゆーかそれって紹介?」
 「クレームは一切受け付けずにハイ次。
  で、その真ん中でふんぞり返ってんのが越前リョーマ。もう敬称はいらない感じ。幼馴染兼お隣さん。ついでにここ最近絞め殺したい相手
No.1
  以上。3人まとめて『3馬鹿トリオ』。知り合いになった事はアタシの人生の中で最大の汚点になりそうな気もするけど、とりあえず甘んじて受け入れて現在この状況」
 「さん。日本語として通じてないよ」
 「アンタに殺されるほど俺甘くないけどね。ていうかむしろ殺し返してあげるよ」
 「お〜。おチビすっげ〜!!」
 ぱちぱちと送られる拍手。それを聞く事もなく、さらにその3人にこっちの2人を紹介していく。
 呆然としてる友人2人を今度は手の平で指し示して(じゃないと失礼になるからね)。
 「隣にいる活発そうな子が芹沢明菜ちゃん。さらに隣の奥ゆかしそうな子が伊瀬智美ちゃん。2人とも小学校の頃の友達」
 ちなみに私とリョーマが『幼馴染』なのは彼がアメリカに行く幼稚園までの事。さらに休みだったりで家がアメリカに行ったりする時遊んだりもしたけど、そんなわけでいくら家に遊びに来た事があろうと小学校で同級生だった友人2人が彼のことを知らないのも当然。
 「じゃあ紹介も終わったからこの辺で―――」
 触らぬ神にというか魔(殊更『悪』を強調)にたたりなし。さっさと去ろうとする私。なのに―――
 がしいっ!
 それを全く理解していない(いやまあ当り前だけど)友人2人は無謀な提案をしてきた。
 「あの、そちらは3人で?」
 「でしたら、一緒に行きませんか? 大勢の方が楽しめると思うんです!!」
 (ひいいいいいい!!!???)
 顔を赤らめ乙女2人の発言。気持ちはわかるけどね。もちろん私がやりたいってわけじゃなくて、いつも周りにそんな事されてるから客観的分析として。でも・・・
 「え? 俺達と?」
 「う〜ん。どうしようか?」
 きょとんとしながら―――2人の溢れんばかりの・・・訂正。溢れ返る殺意は真っ直ぐこちらに向けられていた。わかっている。言われなくともわかっている。今この3人が何をやっていたのか。
 ―――間違いなくデートだろう。それもめでたく結ばれてからは初めての。
 それを邪魔されつつあるのだ。後で私は絶対に抹殺される。
 だらだらと汗を掻き、完全に硬直する。止めなければ、そう思っていても、体は全く言う事を聞いてくれない。
 そして―――
 「・・・・・・・・・・・・勝手にすれば」
 (なんでそうなんのよ!!??)
 2人がすぐ断らなかった事に腹を立てたリョーマのこの一言により、今日一日の―――そして今後の私の運命は強制的に決められたのだった・・・・・・。





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 女の子2人に入れ代わり立ち代り話をする男の子2人。そして―――
 余った男の子が必然的に私の元へと嫌味を届けにやってくる。
 例えばリョーマの場合。
 「アンタ今までさんざん人に迷惑掛けといてさらにコレ?」
 「アンタには言われたくないわよ・・・・・・」
 「やっぱあのTシャツ返して」
 「あ、ウソですv ごめんなさい。もう2度とこのような真似はしませんからv」
 例えば菊丸君の場合。
 「てめえ、よくも俺達の邪魔してくれたじゃねーか(ぼそり)」
 「うわすっげードス効いてんですけど・・・」
 「今ここで全身の骨バキバキに折ってコンクリ詰めして東京湾に沈めてやろうか? ああ?」
 「すいませんお願いします止めてください・・・・・・」
 そして例えば不二君の場合。
 「ああ、そういえばそこのアイスクリーム屋さん、いろいろな味があって美味しいって評判だよ。
  ね? 英二」
 「そうそうすっげ〜美味しいのv」
 「え? そうなんですか?」
 「食べてみたいですv」
 「じゃあ買ってきてあげるよ。ここで待ってて。
  ―――ちなみにお勧めは
からし納豆だからv」
 「ちょっと待てえ! あんた自分の好み人に押し付けんな!!」
 「僕の好み?
  やだなあ。そんな名前からして気持ち悪そうなもの僕が食べるわけないでしょ?」
 「説得力0%・・・」
 「もちろんそれを食べるのはキミだよ。好物でしょう?」
 「いやああああああ!!! アタシもついてく〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 と叫ぶ間にもすたこらと行ってしまった不二君と菊丸君。まあ前々回の反省で割り勘でもしに行くんでしょう。
 今の会話が聞こえていなかったのかきゃぴきゃぴと盛り上がる友人2人。それを横目に、私はゲッソリと呟いた。
 「今日1日で胃に穴が空くかも・・・・・・」
 「そりゃゴシューショーサマ」
 隣にて、やはり2人の帰りを待つリョーマがにやりと笑っていた。





 帰ってきた2人。それぞれアイスを3つづつ持って、まず私たち3人に手渡す。―――臭いからして本気で私の分はからし納豆だった。
 「ほい」
 渡し終わって、菊丸君が手を差し伸べてきた。手に平を上に。
 「何?」
 「もちろんお代」
 「・・・払うの?」
 「当り前でしょう?」
 今度は心底不思議そうに不二君が。
 「こういう時は普通―――」
 「初対面のヤツに奢る義理はねえ」
 「でもさっき―――」
 「『買ってきてあげる』としか言ってないよ。『奢ってあげる』なんて一言もね」
 「つまり・・・・・・」
 「『つべこべ言ってねえでさっさと払えv』ってコト」
 「・・・・・・いくら?」
 「毎度〜。
210円」
 そう言ってきた菊丸君に、ため息をついて私は財布から
100円玉と10円玉を出す。嫌がらせの如く2では割れないように。ちなみに今の会話、私に対して菊丸君と不二君が2人交互に話していたんだけど、その割にはラストに話していたのは菊丸君。2人は一体どの台詞から順番を入れ変えていたのでしょう? などという文字Onlyの小説ならではの問題など出しつつ、私は事態についていけない2人にもお金を出すよう促した。
 全員分まとめて受け取る菊丸君。その間にもラストの1個、つまりリョーマの分を持っていた不二君が、私たちに渡す時とは全く違う笑みで優しくリョーマに差し出した。
 「はい。越前君」
 「ども」
 左手に2つ持たれていたアイス。今流行りの伸びるそれが互いにくっつき、2人の間でにょ〜っと伸びた。
 「あ・・・」
 「と・・・」
 コーンをくるくる回して間のものを絡め取っていく。千切れた後は他のところにくっつかないように舌を伸ばして・・・。
 完璧バカップルの様に、私は金を手に乗せたまま石化した菊丸君にそっと耳打ちした。
 「(もしかして、どっちがリョーマ君のアイス持って行くかで争った?)」
 「(ゔゔゔ〜。じゃんけんで不二になった〜。俺もやりたかったにゃ〜・・・・・・)」
 それを見て、何か釈然としないものを感じているらしい友人2人をよそに、私は思いっきり納得できる事態にただ頷くだけだった。





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 そんなこんなでアイスを食べ終え―――いやまあその間も大変だったんだけど。3馬鹿トリオは同じアイスを買ったというのにお互い食べさせあったり勝手に食べたり。当り前だけど他のアイスになった女子3人には目もくれず。あ、ただし納豆アイスはさりげにおいしいと私が呟いた途端和食好きのリョーマに取られさらに他の2人にも取られ、取ったお詫びに一口食わせろと脅した結果、おかげで私は2種類のアイスを堪能したけどね。なので実は今私は友人2人に睨まれてたりv
 ―――あー、この3人に付き合ってたら私もおかしくなってきたわ。バカップルに当てられるよりはその他に睨まれた方が遥にマシなんて・・・・・・。
 さて、今私たちがいるのはゲーセン。何となく入って、現在菊丸君がコンビニキャッチャーに挑戦中。
 「おっし! キーホルダーゲ〜ット!」
 かわいいぬいぐるみのキーホルダー。はしゃぐ女子2人(もちろん私は除かれる)を無視して―――
 「ほい。おチビにプレゼントv」
 「俺?」
 「そうそうv 俺の愛の形v 受け取ってvv」
 「そりゃどーも」
 「・・・・・・ふ〜ん。『愛』ね・・・・・・」
 受け取るリョーマの隣で不二君が黒さも露に呟いて、
 「それなら僕も」
 と、丁度私たちの後ろにあった
UFOキャッチャーにお金を入れて、菊丸君のものより少し大きなぬいぐるみを一発でゲットした。さすが天才。
 「じゃあはい、越前君v 僕の愛の形v」
 「はあ」
 「む〜!! 負けにゃいからな〜!!!」
 「君が僕に勝てるとでも?」
 などとなんだか2人で燃えて、店中の景品の当たるものからより愛のある―――大きなものを取っていく。ゲーセンのプロ
vs天才。傍から見ている分にはなかなかに面白い対決だった。取ったものを1個たりとももらえない友人2人はだんだん意気消沈していったけど。
 この店で1番大きなぬいぐるみを取ったところで対決は自然と終了。2人とも取ったため決着はつかず。
 「はい、越前君v」
 「受け取ってv 俺達の―――」
 「僕たちの―――」
  「「愛の形vvv」」
 いや無理じゃないかしら? とついつい思う。不二君と菊丸君がそれぞれ両手に山と積んだ景品の数々。それをさらに小さいリョーマがいっぺんに抱えれば―――
 「・・・・・・先輩、前見えないんスけど・・・・・・」
 もちろんこういう事態になる。
 とりあえず一番大きなぬいぐるみ2個のみリョーマは両手に抱えて、その他は袋に入れて菊丸君と不二君がぶら下げる。そんなリョーマの様は可愛いなあ、と周りに思わせるのだろう。実際2人は実に微笑ましそうに見やっていた。
 が、それが面白くないであろう(当り前)友人がこんな質問をしてきた。
 「ねえ越前君。そんなにもらってどうするの?」
 その質問に固まるリョーマ。確かに彼の1人部屋にコレだけ飾るとなると、スゴイ光景になりそうだ。
 1分ほど続く沈黙。あわよくば1個や2個もらえないだろうかと企む友人を見て、私はただ無言のまま心の中で彼女の冥福を祈りつつ涙を流すしかなかった。彼女はもちろん気付いていない。今の台詞で立派に地雷を踏み込んだことを。
 不二君と菊丸君がようやっと殺意を私以外に向けてくれた中、リョーマも面白くなさそうな顔で俯いた。彼女の台詞の真意は気付いただろう。だがここで自分以外の誰かがこれを受け取れば、『2人の愛』とやらを少しでも明渡すことになり―――
 (いいじゃない。ちょっと位・・・・・・)
 なんて思う。別に浮気おっけーと言ってるわけじゃなくて、この2人の溺愛振りを考えると少しくらいなくなったところで全く以って支障はないように思える。琵琶湖からバケツ1杯分水抜いたところで何も変わりないようなものだ。
 まあそれは独占欲の強いリョーマには許せないらしくって、こんな結論を出して来た。
 「菜々姉も母さんもこういうの好きだし、リビングに飾る」
 「に゙ゃ! って事はもっと取らなきゃ!!」
 「そうだね! ご家族の方と親しくしておいて損はないからね!!」
 「いやあんたたちもういいから・・・・・・・」
 そう言い再びゲーセンに戻ろうとした2人。両手の塞がっているリョーマの代わりにその肩を掴んで引き止める。
 そっとリョーマを見やる。今始めて彼と気持ちがシンクロしたらしい。口の中で「どーも」と言い、小さく頭を下げる彼。私は―――
 ―――この3馬鹿トリオと意思の疎通が行なえるほど親しくなった事が、もちろんちっとも嬉しくはなかった。





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 で、次は映画。一部の劇場でやってるホラーもの。こういうときの定番と言えば「きゃ〜vv」とか悲鳴上げて隣の人に抱きつく、なんて言う感じのものだろうけど・・・・・・。
 実際友人2人はそれ狙ってたみたいだけど・・・・・・。
 もちろんこの3馬鹿トリオがそんな事をさせるわけもなく、リョーマを間に挟んで両脇が菊丸君と不二君。さらにがら空きな事を利用してその隣はそれぞれ先程ゲーセンで取ってきた巨大ぬいぐるみ。
 最後尾から2列目で悠々と座る彼らにハンカチを噛み締める彼女らを促し、私たちはその後ろへと座る事にした。幸か不幸か、私が真ん中。丁度リョーマの後ろ。
 (心底嫌な予感・・・・・・)
 というかこれを不二君と菊丸君が提案してきた時点でわかってはいたけど。
 始まる映画。飲物とポップコーンを持ち込んでいた彼らは回し食べをし(もちろんそれが私たちに回る事はない。先手を打って自分たちの分は別に買っておいてよかった)、受け取りがてら渡しがてらにリョーマの手に愛撫。
 映画が進み、飲物を飲み終え肘掛に両手をかけるリョーマの腕にさりげなく手を重ね。
 さらに進んでいよいよ恐怖場面。悲鳴にびくっと肩を震わせるリョーマをあやすように頭をなでなで。
 撫でた手がそのまま下に下がって腰に到達。服に入って上下に分かれて上と下からリョーマを攻撃。
 「ん・・・や・・・・・・」
 そんな甘い声が小さな映画館にさらに小さく広がり―――
 次の悲鳴と共に、
 「ウザイわあんたたちぃぃぃぃぃ!!!!!!」
 ごん! がん!
 後ろに座っていた私が拳を固めてリョーマ君の両隣でセクハラを働いていた男2人の頭を思いっきり殴り飛ばした。





 「てめえぜってえ後で殺す・・・」
 「、いい度胸だね・・・・・・」
 休憩時間(長い映画だったもんで)、席に座って身を縮めてしゃくり声を上げている(恐怖で。ただし原因は映画ではなくセクハラ男にあり)リョーマの両脇で、菊丸君と不二君が頭をさすりつつ小声でぼそりとそんな事を言って来た。ちなみに友人2人は現在トイレ。あ〜あ。こんな2人の姿を見たらまだ諦めがつく、というか幻滅するでしょうに。
 見ざる言わざる聞かざるを実践して、2人を完全に無視している間にも後半が始まった。





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 (長かった・・・・・・・・・・・・)
 心身ともに疲れ果てた中、ようやく別れのときがやってきた!
 「じゃあここら辺で―――」
 よくよく考えると会ったすぐ後にもこんな台詞を言ったような気もするけど、まあそれはいいとして。
 「うん。じゃあこの辺りで」
 そう言い、あっさり別れようとする少年3人。
 そして―――それを健気に引き止めようとする少女2人。
 (ああ、止めた方が・・・・・・)
 本日何度こう思ったのだろうか? そしてその気持ちは何度通じたのだろうか? ―――いやまあ0回なんだけど。
 そんなわけでもちろん今回も通じる訳はなく。
 「すみません。夜ももう遅いですし、送ってくれませんか?」
 「家はこのすぐそばですし、今日私一人なんです」
 などなどアプローチをかける2人。かなり積極的な誘いもかけているようだけど、
 それらはただ一言の元に切って捨てられた。
 「ああ、大丈夫大丈夫。安全だから」
 『・・・・・・・・・・・・』
 何がどう『安全』なのだろう・・・・・・という突っ込みは止めておく。直接言われたのが自分でなくともかなり胸に突き刺さる台詞だ。
 「それに、『すぐそば』なら尚更1人で帰れるでしょう?」
 さらにかかる追い討ち。なかなかに上手い断り方に今度はついつい拍手したくなった。
 こういう際、家がどんなに遠かろうとそれは言えない。『すぐそば』ならまだしも遠い家にわざわざ送ってくれるヤツなどかなり少ないのだから。
 それを逆手に取る今の断り方は・・・・・・相当に手馴れているのだろう。ってこういう私が手馴れてるワケじゃないけどね。もちろん。
 屈辱的な扱いに下を向く2人。そこに、決定打が下される。
  「「じゃあ僕たち/俺達は、越前君を/おチビちゃんを送ってくからvvvvvv」」
 「結局送ってくんかい!!」
 どんがらがっしゃん! と倒れる友人2人に替わって突っ込みを入れる。
 「あったり前じゃ〜んvv だ〜って夜道におチビちゃん1人歩かせると危ないしvvv」
 先程女子3人には『安全だ』と自信満々に答えていた男がさらに自信満々に言う。
 「それに越前君の家遠いからねvvvvvv」
 徒歩
30分の人を断った男が、徒歩5分の家を『遠い』と評する。
 そんな2人の間に挟まり―――厳密にはその2人とさらに両手に持ったぬいぐるみに挟まれた少年は、
 「だってさ」
 とあっさり了承した。普段無表情気味の顔が、さりげなく得意満面になっている。2人が自分を選んでくれた事に、どうやらご満悦のようらしい。
 完全に灰と化した友人2人を尻目に、
  「「「じゃ〜ね〜」」」
 などと言い残し去っていく3人。
 いちゃいちゃとくっつく後姿が見えなくなる頃、ようやくどこかを彷徨っていた2人が戻ってきた。
 「ねえ、訊きたいんだけど・・・・・・」
 「あの3人って一体・・・・・・」
 のろのろと身を起こしつつ尋ねて来る2人の肩にぽんと手を置き、
 私は最も適切な説明をした。
 「命が欲しいなら一切関わらない方がいいわよ・・・・・・・・・・・・」
 「そう、ね・・・・・・」
 「今日の事は、悪夢だと思って忘れるわ・・・・・・・・・・・・」
 少女ら2人の心に一勝消えないであろう傷を残し、そして私は多分今後一生消えるハメになるであろう出来事は静かに幕を閉じたのだった・・・・・・。



―――Fin

















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 さってまたしてもワケのわからん話が登場しました。3馬鹿トリオにひたすら当てられ、みなさま如何でしたでしょうか。3+1+1+1。ここまでくればお分かりでしょう。所詮このバカップルの邪魔をする事は誰にも出来ません。
 ではわけのわからんこの話。あとがきもわけのわからんまま終わりにします。

2003.8.17

 そういえば、リョーマの持っていたぬいぐるみ、イメージは熊=プーさん。犬=スヌーピーといったところです。