Challenge6.黒サエCPなし1 vs不二兄弟 −世界一長い話−
それは幼い頃の事。不二兄弟のお守りを頼まれた佐伯は、こんな事をやってみた。
「これから世界一長い話を聞かせてあげるね」
『わ〜い!!』
ぱちぱちと手を叩いて喜ぶ2人。立ち上がり、佐伯はそれっぽく咳払いなどしてから話を始めた。
「あるところにね、大きな大きな山があったんだ」
ジェスチャー付きで示す。両手をいっぱいに広げれば、2人も前に身を乗り出して頷いてくれた。
『うんうん』
「その山のてっぺんにはね、大きな大きな木が生えていたんだ」
今度は爪先立ちになって背伸びする。
『うんうん』
「その木にはね、大きな大きなどんぐりがついてたんだ」
再び両手を広げる。
『うんうん』
「その木からね、ある時どんぐりが1つ落ちたんだ」
『うんうん』
「トン・・・、
ころころころころころころころころころころころころころころころころころころころころ・・・・・・」
『うんうん』
「ころころころころころころころころころころころころころころころころころころころころ・・・・・・」
『うんうん』
「ころころころころころころころころころころころころころころころころころころころころ・・・・・・」
『うんうん・・・』
「ころころころころころころころころころころころころころころころころころころころころ・・・・・・」
『うんうん・・・?』
「ころころころころころころころころころころころころころころころころころころころころ・・・・・・」
『うん、うん・・・・・・?』
「ころころころころころころころころころころころころころころころころころころころころ・・・・・・」
『・・・・・・・・・・・・?』
「・・・・・・おい佐伯、一体どこまで落ちんだよそのどんぐり」
同じくお守りを頼まれていた跡部。話を始めた佐伯に最初は黙っていたものの、いつまでも終わらない―――そして不二兄弟の捻る首の角度がそろそろ限界を迎えそうだったため、ため息をついて突っ込んだ。
『ころころ』を延々・・・・・・235回繰り返したところで呼ばれた佐伯が違う言葉を発する。
「もちろん山が終わるまで?」
「ちなみに今どこだよ?」
「9分目位?」
「長すぎだろーがまだ1/10かよ!?」
「当たり前だろ『大きな大きな山』なんだから」
「で・・・・・・
―――一応訊いておいてやるが、下までたどり着いた暁にはどーなるんだ?」
「ぽちゃんと落ちて終わり」
「そうか・・・。なら後15分程度我慢してりゃ終わるってか―――」
「―――ワケないだろ? そしたら次のどんぐりが落ちる。以下延々繰り返し」
「おい!?」
「だから前フリしただろ? 『世界一長い話』だって。ダメじゃん景吾。人の話はちゃんと聞いてなきゃ」
「どういう話だそりゃ!! オチも何もねえじゃねえか!! 長けりゃいいってモンでもねえだろ!?」
「つまり展開をつけて欲しい、と?
例えば落ちる音を『どん!! ず、ど、ごろっ、ごん! がん!! ひゅるるるる・・・どかん!!』とか」
「なんでどんぐりがンな落石並みの音出してんだよ・・・?」
「これまた『大きな大きなどんぐり』だからな」
「・・・・・・。多分下までたどり着く前に破裂すんじゃねえか? いくら大きかろうとどんぐりな時点で」
「なるほどな。それもまた一興か」
「だから!! 何なんだよその話は!!」
「だから、『世界一長い話』だって」
「・・・・・・・・・・・・。
確かにそうかもな。こーやって議論してて、ここまで先に進まねえ議題も珍しいしな」
「だろ?」
なぜか自信満々に言う佐伯。『世界一長い話』をさっさと切り上げるためにも、跡部はただ黙って頷くしかなかった・・・・・・。
―――黒サエCPなし1 Fin
―――この話、我が家で小さい頃実際された話です。最近再び姉にされて気付きました。「この話、突っ込むヤツがいないと終わらない・・・!!」と。・・・・・・一体なんでこんな話がされてたんだろう我が家。いろいろ不思議が多いなあ・・・。
2005.4.2