佐伯家の人々
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中央:佐伯虎次郎〔身内呼称=コジコジ〕 言わずと知れたこのサイトの主役(爆)。『佐伯』とだけ表された場合、ほぼ確実に彼を指す。その他プロフィールは公式設定どおりなので(当たり前)省略。 左:佐伯真斗 佐伯の双子の姉。ただし姉とは見なされていない。身長170cm。右利き。現在ドイツ在住。跡部を永遠のライバルとみなし近親憎悪で争っては佐伯に十把一絡げにやられる。 右:佐伯虎太郎〔身内呼称=コータ〕 佐伯の従兄。母方姉の息子かつ誕生日が7〜9月のどこからへんのため『兄』になった。黒髪右利き大阪弁だがそれ以外は佐伯と同じ。身長175cm。 いろいろと厳しい佐伯家をさらに一回り厳しくした家庭で育ち、おかげで佐伯以上に金にうるさく汚い。現在大阪四天宝寺中在住。実力は余裕でレギュラークラスだが、交通費がなかったため全国大会には出場していない(年齢を誤魔化しホストクラブでバイトしていたところ先生もちろん女性に遭遇。お互い黙っていようと約束したにも関わらず即行学校にチクられクビに。腹が立ったのでその時の証拠写真を学校・家庭・教育委員会にばら撒き辞任かつ離婚に追い込む悪逆非道ぶりを発揮)。その事で白石には散々に言われる。なお趣味は逆ナンに遭い飯を奢られる事。 *髪色から、両方の知り合いには佐伯を『白佐伯』、コータを『黒佐伯』と呼ばれたりもする。ただし実際は逆。コータの方が性格は掴みやすく扱いやすい。 なお名前の由来、やはり佐伯家全体がタイガースファンだったらいいなあ・・・・・・。 |
街角にて。前にいた人物に、リョーガは首を傾げ呟いた。
「ありゃ佐伯・・・・・・か?」
『か?』についたアクセント。意味はあるとも言えるしないとも言える。確信が持てないからこその疑問文だという事に対してはあると言えるだろうし、付けたところで答えが導き出せるわけもないという事に対してはないと言うしかない。
そんなこんなで正体不明な仮定『佐伯』。自分が知る彼との相違点を挙げるなら、まず髪色。銀髪の佐伯と違い、目の前の男は黒髪だった。
(けど髪型は同じだよなあ・・・・・・)
2つ目は利き手。弟も左利きのため、右利き左利きでのちょっとした違いはいつも見ていた。この男は右利きだろう。
(つっても佐伯も両手利きのケあるしなあ・・・・・・)
リョーマと違い、テニスのみならず生活全般でだ。その気になれば完全に右利きを装い暮らしていけるだろうそれに何の意味があるかはさておいて。
改めて3つ目。佐伯は標準語で話す。今聞こえているのは大阪弁だった。
(まあ・・・・・・佐伯も話しちゃいるしなあ普段使ってないだけで)
その証拠に、昨日誰かと電話していた時は両方混ざってなぜか名古屋弁になっていた。どこをどう組み合わせた結果そこに落ち着いたのかはよくわからないが。
そして何より4つ目。
「ナンパはしねーだろアイツは・・・・・・」
さすがにここは声に出た。半眼でリョーガが見る先で、『佐伯』は街行く女性と親しげに話していた。もちろん道を訊かれて答えているのかもしれないし、友人のお姉さんとかだったりするのかもしれない。引ったくりを捕まえたとかいうのもアリだろうし、ただ何となく暇人同士が暇を潰していたところでおかしくはない。が、
「・・・・・・・・・・・・」
リョーガの機嫌ががこがこ下降する。元々人当たりはいいヤツだが、見も知らない相手に進んで話し掛けおだて盛り上げ何とかお付き合い願おうとする―――一言でまとめてナンパはしない。女性からの場合でもやんわりと断る。
するとすれば・・・・・・
「ほ〜。アイツはンなに俺に不満、と」
リョーガは頬を引きつらせ笑みを浮かべた。
? ? ? ? ?
不満満点のまま家に帰る。
「ああお帰りリョーガ」
「おお。帰ったぜ佐伯」
・・・家に佐伯はいた。いつもどおり、銀髪左利き標準語の佐伯が。
「んじゃあやっぱアレは違った、ってか・・・?」
「『アレ』?」
「いんや何でも―――」
ねえ。
言おうとして、言葉が途切れた。
佐伯の後ろからぴょこんと顔を出した金髪少女を見て。
「な〜にコジコジ。お客さん?」
「ああ、コイツが話したリョーガ」
「へ〜え」
ひょこひょこ近付いてくる少女。見下ろし、
リョーガはぶるぶると震えた。
「どしたの? 寒いの?」
そんな、すっとぼけた質問をしてくる少女はどうでもいい。
佐伯をびしりと指し、
「お前やっぱそういう事か!?」
「はあ・・・?」
「ソイツが成果だってか!? しかも声かけてだけならまだしも家連れて来るってか!? ンなに俺が嫌か!? ちくしょーくそー太陽のバカヤロー!!!」
「・・・・・・大丈夫か? リョーガ」
支離滅裂に壊れたリョーガを心底気の毒そうに見やる佐伯。伸ばされた手をぱんと払い、
「お前は結局そういうヤツだったんだな!? どーせ俺にコナかけてきたのも俺が金持ってそうだったからってだけなんだな!? 俺は本気だったぞどちくしょう!!」
「落ち着け」
ごがらん。
無難な音で―――丁度届いていたらしいタケノコの缶詰を頭に叩きつけられた。水と中身含め推定5kgはありそうなそれ。力は込めず落とされただけだが、リョーガは頭を抱えしゃがみ込んだ。
じっと見下ろし、
「配線直ったか?」
「余計壊れるわあ!!」
「そんな馬鹿な。電化製品修繕法の最終案はいつでも殴る事だぞ? 最近では特に母さんが拳を振り上げるだけで直るようになったぞ」
「・・・学習してんだな、やっぱ」
よもや自分が電化製品と心を通じ合わせる日が来るとは思わなかった。
挫けた心を立ち直らせ・・・
リョーガは持っていたタオルを噛み締めえぐえぐ泣き出した。
「・・・本気で壊れたな」
そんな感想は置いておいて。
「佐伯お前何だよ。俺ってモンがありながら〜・・・」
「は・・・?
それはつまり、今日勝負で勝ったからダビデにお昼奢らせたのが不満だと? やっぱ俺に昼を奢るのは自分の役割でありたいと?」
「違げえ!! ・・・つーか後輩相手に全力で挑んで倒したってか? お前先輩としてそりゃどーなんだよ?」
「やっぱなホラ、来年で俺たちも卒業なワケだ。そしたら―――」
「ああ。もう試合できなくなるから思い出にか」
「そしたらアイツを突っ込んでくれるヤツはもう誰もいなくなるワケだ。バネさんみたいに付き合いのいいヤツは奇特だからな。
だから俺は、誰でもツッコミ甲斐のある面白いダジャレを言えるように、と徹底特訓をさせたんだ」
「・・・・・・。勝ったのはお前のツッコミか? それともダジャレのセンスか?」
「もちろんダジャレのセンスだ。俺はこれでもボケ担当だ」
「・・・・・・・・・・・・。
まあ今のは聞かなかった事にして」
再びえぐえぐ泣きつつ恨みがましい目を向け、
「佐伯お前〜。今日街角でナンパしてただろ〜」
「は? ナンパ?
何で俺がそんな金のかかる事を?」
「・・・。訂正。
佐伯お前〜。今日街角で逆ナンされてただろ〜」
「だから何で俺が?」
あくまできょとんとする佐伯。リョーガはタオルを地面に投げ捨て指を突きつけた。
「しらばっくれんなよな!! 俺はこの目でしっかり見てたんだぜ!?」
「・・・・・・・・・・・・。
ちなみに参考までに、どんな光景を?」
「だから!! カムフラージュのため黒髪のヅラつけて右利きを装い大阪弁で喋るお前が女性と親しげに話してたんだよ!! でもってその成果がその女じゃねーのか!?」
言い切った先にあったのは、
何とも表現しがたい微妙な空気だった。
口を開いたり閉じたりしつつ、少女が佐伯とリョーガを交互に見やる。
そして佐伯は・・・
頭を軽く押さえため息をついていた。
「お前さあ・・・」
「何だよ!? そこに証拠がある時点でイイワケなんて聞かねえからな!!」
「じゃなくって、
――――――そこまで違う時点で、実は他人じゃないかとか思わなかったのか?」
「・・・・・・は?」
目を点にしてみる。と、
どばあん!!
「あ〜や〜っと辿りついたで! 久しぶりやな真斗コジコジ! ここまでの道のりは遠かったわ〜!!」
「あー! コータ久しぶり〜♪」
「丁度いいタイミングで来たな。今お前の話題してたんだよ」
「なん? ついに俺をお兄様認めるっちゅー話か?」
「全く全然100%確実に違う」
「しくしくしくしく・・・。まーわかっとったけどな」
豪快な勢いで扉を開け乱入してきた男が、その勢いのまましゃがみ込んで泣き出し―――突き飛ばされ前につんのめったリョーガと目が合った。
「あー!! お前さっきの!!」
「・・・なんやわからんが俺の事知っとるん? そらどーもどーも。以後よろしゅう」
「・・・・・・。ああ、こっちこそ」
差し出された手をついつい握ってみたりして、
リョーガは眉を寄せ佐伯を見上げた。(リョーガ視点で)謎の2人もまた、佐伯を見ている。
彼らが何を求めているか如実に悟り・・・佐伯は上を見上げ黙考した。
顔を下ろし、
「えーっと、直に会うのは初めてだったな。
真斗、コータ。そこでさっきっから1人騒ぎ立ててる我が家ではちょっと異色のテンションのヤツが越前リョーガ。今ウチの同居人だ。きっちり自分で生計立ててる辺り、コビ売っといて損はないぞ」
「・・・何か今、すっげーヘンな紹介ついてなかったか?」
「極めて普通のものだったぞ?
でもってリョーガ、まず俺の隣にいる、いかにも精神年齢低そうな女が前々から言ってる、佐伯家サバイバル脱落者こと俺の双子の姉貴の佐伯真斗だ」
「脱落してないわよ!!」
「そしてそこにいるお前曰くカムフラージュのため黒髪のヅラつけて右利きを装い大阪弁で喋る男が従兄の佐伯虎太郎、略してコータだ。実の双子以上に良く似てると大絶賛。ちなみにカムフラージュなのは大阪弁だけだ。ノリの良さでウケが良くなるからな。実際馬鹿っぽくって親しみやすいだろ」
「あんなあ!! 大阪弁は地や!!」
「何となくお前ら気が合いそうだぞ。揃って3馬鹿トリオって感じだ」
「・・・そりゃお前に比べたら誰とでも気は合いそうだよな」
「あー確かに賛成」
「どっちかっちゅーと『被害者連盟』やよなあ」
それこそトリオのように揃ってため息をつき、
にっと笑ってコータがリョーガへ手を出した。
「ま、紹介どおり俺はコータや。改めてよろしゅう、リョーガ」
至近距離で見てみると、やはり佐伯にそっくりだった。
「ああ、こっちこそな」
握手したところで、隣からにっこり笑いつつ真斗も手を出してきた。
「私は真斗ね。よろしく、リョーガ」
「ああ、こっちこそな」
やはり握手。こちらも間近で見てみると、男女の差はあるとはいえ割と佐伯に良く似ていた。
両手で握り合う。そのままぶんぶん手を振る事5秒、10秒、15秒・・・・・・・・・・・・
「あの、さあ・・・・・・」
半眼でいい加減放せと指摘しようとするリョーガ。完全に無視し、2人はきらきら輝く目を彼に向けた。
「ぜひこの俺をよろしゅう」
「いえいえ私がオススメよ。あなたのような人にはこの天真爛漫で愛くるしい私がぴったりv」
「はあ? ガキっぽくって暑苦しいの間違いやろ?
そない女より俺の方がええでリョーガ。現実を見通し将来安泰や!」
「それはアンタ人生揉まれすぎでしょ」
「何やと!? 苦労人のどこがあかんのや!?」
「明らかに同じく苦労してそうな相手なら一時的にでもそれを忘れられるような存在の方がいいに決まってるじゃない!!」
「お前と一緒で人生破綻するより俺と一緒に成功する方がよっぽどマシや!!」
「ええっと・・・・・・」
リョーガ無視で立ち上がり取っ組み合いを始める勢いの2人。下から見上げながら、リョーガはふと佐伯の紹介文を思い出した。
―――『きっちり自分で生計立ててる辺り、コビ売っといて損はないぞ』
「・・・・・・なるほどな。腐っても佐伯家の人間、ってか」
かつて自分もおっさんどもを財布代わりと見なしていたが、そう見られるとこうもわびしいものらしい。出所して次会った時は、少しは人間扱いしてあげよう。
そう思っていたりする間に、勝負はあっさり片がついた。
ごがんごがん。
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!?????????』
再び振り下ろされるタケノコ缶。中身は早めに食わないとヤバいかもしれない。
いらなくなったタケノコ缶をぽいっと脇に捨て―――もとい大事そうにそっと置き―――、
佐伯は転がる2人を踏み越えリョーガへと近寄った。
ぎゅっと腕を組み、
「コイツは売約済みだから不可」
「佐伯・・・・・・・・・・・・」
信じられない思いでリョーガが呟いた。今の台詞はつまるところ・・・・・・
―――と感動に耽る間もなく。
「せやったら奪うまでや!! 行くで真斗!!」
「りょーかい!! 幸せは自分の手で掴みとってこそよ!!」
「コイツの預金は一生涯俺が押さえた!! お前らにビタ一文渡してたまるか!!」
「おーい佐伯ぃ〜・・・・・・」
今度こそリョーガ完全無視で取っ組み合う3人。さほど広くもない廊下でどたんばたん暴れまわり、
「アンタ達何騒いでんの〜!」
どごっ!!
再び扉から、今度は音もなく入ってきた人―――佐伯家の母のひと蹴りで、リョーガともども全員呆気なく吹っ飛ばされた。
偉大なる母は腰に手を当て軽く眉を顰めた。
「家の中では暴れない。壊した分の弁償費請求されたくなかったら直しなさい」
「という事だ。頑張れリョーガ」
「わ〜いありがとーリョーガv」
「助かるわ〜。親切さんやなあリョーガは」
「じゃあリョーガ、後よろしくね」
「・・・・・・大体どーいう家かはよくわかった」
なぜか一致団結している佐伯家の一族。独り疎外され、リョーガはこの日一番重いため息をついたのだった。
―――Fin
? ? ? ? ?
家族だけに飽き足らずついに親戚登場!? とりあえず彼コータは大阪から千葉までヒッチハイクで来た事を推奨。
さて虎太郎。佐伯が『次郎』なのに上にいるのは姉のみ。となれば一体『太郎』はどこにいるんだそんな問いによりこの名前となりました。しっかしヤだなあ。この顔の2人がコタロウコジロウ。虎跡虎【DD大作戦!】で跡部が笑ったのに無理はないような気がするのですが・・・。
そんなワケで、以後出てくるのか謎の彼。余談として絵を描いた際、佐伯より目は細め(というか半眼気味。千石さんみたいな感じ)をイメージして描いたらなぜか若かりし頃の南次郎になっていました。なんでそこまでいってリョーガにはならないんだろう・・・? 仕方ないので結局そのままです。ちなみに彼らがやっているのは夏の風物詩、スイカ割りです。決してあのバッドで頭をかち割るつもりではありません説得力0ですが。
2005.6.25〜28