それは、アメリカでの夜の事。
ふいに甘えたくなる、そんな瞬間の話
ホテルの一室にて、絨毯に座りのんびり本など読んでいた佐伯。こちらは寝転がっていたリョーガは、ずりずり這いずって佐伯の腰に抱きついてみた。ごろにゃ〜ん♪などやってみる。
「どうした? リョーガ」
「いーや別に?」
「? そっか?」
首を傾げつつ、佐伯は読書に戻っていった。膝(正確には腿)の上に頭を乗せ、ぐるりと上を向いてみる。・・・・・・本が邪魔で佐伯は全く見えなかった。
ひょい。
「・・・ってお前なあ」
「構ってくれよ〜お」
「・・・・・・はあ?」
台詞どおり『はあ?』という顔をする佐伯に両手を伸ばす。呆れ返ったまま、佐伯も本は諦め手を取ろうとしてくれた。
手が触れそうになって・・・
ひょいひょい。ひょい。
「・・・お前ムカつくヤツだってよく言われるだろ」
「10人中9人に言われんな」
しれっと言ってやると、ムキになった佐伯はさらに手を取ろうと悪戦苦闘してくれた。
ひょいひょい、ひょい。ひょいひょいひょいスパーン!!
「〜〜〜〜〜〜!!!」
「Winner」
なぜか手の代わりに頭をはたかれ、痛みを堪える間に佐伯は勝手に勝者宣言をしていた。両手を軽く上げ他に誰もいない部屋相手に強調する佐伯の手首を掴んで、リョーガは無理矢理下ろさせた。
「違げーだろ!?」
「どこがだ? 手と頭は繋がってるだろ?」
「それにしたって普通こういう展開なら手ぇ追うモンじゃねーのか!?」
「勝つために手段は選ばないぞ?」
「ああそりゃすっげーよ〜くわかる」
「じゃあそういう事で」
「そうじゃねえええ!!!」
膝の上で頭をごろごろ動かすリョーガ。このまま立ち上がると相当面白い展開が待っていそうだが、これはこれで面白いので放っておく。
「つまり?」
「構ってくれよおお!!」
ネコパンチといった感じに、曲げられた手が連打で襲ってくる。こちらも同じタイミングで佐伯は防御をした。
ぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱしぱし・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・不毛な争いだったな」
「全くだな」
そうお互い気付いたのは意外と早く、攻防戦が300回を越えた辺りだった。
力尽きたように、リョーガが鼻から息を吐いた。片手だけ残し、もう片方で首を支える。
佐伯も片手は絡ませたまま、もう片方でリョーガの頭を撫でる。くしゃくしゃ絡まれる猫毛は、思いの外柔らかかった。
「どうしたんだよお前?」
下を向き、尋ねてみる。
「ん〜、何かな」
上を向き、リョーガは答えた。
「幸せだな〜、って思って」
「・・・温泉浸かったオヤジの台詞だろ、それは」
「あひっで!! 今マジで思ってんだぜ?」
「どの辺りで?」
「だから―――」
リョーガが頭の下に敷いていた手を外した。佐伯の首に巻き、引き寄せる。
かなり近付いたところで、にっと笑った。
「俺がいて、お前がいて」
「ばーか」
笑いながら、佐伯が残りの距離を縮めてきて・・・・・・
がちゃ。
「あ、いた」
「おい佐伯、リョーガ。4人でトランプしね―――
―――悪かった」
がちゃん。
ω m ω m ω
何も言わず隣の部屋まで戻ってきたリョーマと跡部。後ろ手に扉を閉めたところで、2人揃って額の汗を拭った。
「今なんか、凄い光景が見えたような・・・・・・」
「見えなかった。見えなかったぞ俺には」
「けどアンタ『悪かった』って・・・」
「気のせいだ。幻聴だ。幻覚だ。あそこには誰もいなかった」
あくまでそう言い張る跡部を10秒ほど見つめ、
「・・・・・・・・・・・・そだね」
リョーマもまた、それに賛成する事にした。
―――Fin
ω m ω m ω
サエとリョーガのいちゃいちゃもの。よくよく考えるとすっげー怖いモンだなあ(失礼)。
というワケでそんな2人が希望だった。というか、「お前は俺だけのモンだよな」的展開が。どっちの台詞かはご自由にご想像下さい。多分崩れたのはネコパンチのせいだと・・・・・・。いや寝転がってネコパンチ。この2人にやらせると凄まじい事になりそうですが、見た目だけはほのぼの萌え〜!!
ではそんな、謎なまま話は終わりです。そして余談としてこの絵、最初の内リョーガがなぜかどうやっても千石さんでした。いっそ開き直ってキヨサエにしようかと思ったくらいですが、そうか。千石さんってこういう髪型(もうちっとバサバサ気味)だったのか・・・とようやっと理解しました。
2005.7.4