「佐伯?」
 「どーした佐伯?」
 「サエくん・・・?」
 「大丈夫? サエ・・・・・・」
 「佐伯さん・・・?」
 「何やってんだアンタ・・・?」
 みんなに見守られる中、
 佐伯はひたすらに泣きじゃくっていた。







■   ■   ■   涙の理由   ■   ■   ■








 「何だよ酷いじゃんかよ・・・。俺はこんなに必死だったっていうのに・・・・・・」
 ぐすぐすえぐっ・・・としゃくり声を上げる佐伯。不二が差し出したハンカチを頭を下げて受け取り、それで涙を拭う。
 「そりゃ努力と見返りがイコールで結ばるなんて幻想浮かべるほど俺だって子どもじゃないけどさ・・・・・・。
  俺がこれだけやるのにどれだけ頑張ったと思ってんだよ・・・・・・。なのに全然俺には振り向いてくれなくてさ・・・。世の中不公平だよなあ・・・・・・」
 「まあ、確かにそういうモンだけど・・・・・・」
 千石がためになるのかならないのかわからない相槌を打つ。別に佐伯は聞いてはいない―――と思いきや聞いていたらしい。うんうん頷き、
 「あんなに尽くしたんだぜ・・・? 昼も夜もさ・・・・・・。そりゃ打算まみれだったかもしれないけど、それでも俺の気持ちは純粋だったんだぜ・・・?」
 「自分で言うとむたくそに説得力ねーよな」
 ごがっ!
 冷静に突っ込んだケビン。次の瞬間には3mほど吹っ飛んでいた。死角からというかありえない方向から伸ばされた佐伯の足により。
 落ち込んでいても破壊力は変わらないらしい足がそそそ・・・と引っ込められる。泣きっ放しの顔に関しては変化なし。多分上半身のみ注目していた者は、今の行為に全く気付かなかっただろう。
 「まあ、世の中言っちまったらいけない一言っつーのは確かにあるからな」
 そんなリョーガの言葉に、ようやく佐伯が目立った反応を見せた。真っ赤に腫れた目でじとっと見上げ、
 「・・・・・・何だよリョーガ。お前も何か言いたい事あんのか?」
 「俺?」
 自分を指差しきょとんとし、
 リョーガはふっと笑った。佐伯の頭をぽんぽんと撫で、
 「ンなに泣くなよ佐伯。俺たちはいつだってお前の味方だぜ? な?」
 「リョーガ・・・・・・」
 1人おいしいトコ取りをしたリョーガにほぼ全員の殺意が集まる。
 唯一向けなかった跡部は、
 極めて素朴な質問をした。
 「で、結局・・・・・・」

















































 「何あったんだお前?」

 「福引の景品に焼きうにがあったから半券集めたのに外したんだよ!!!」



















































 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
 「あんなに必死こいて集めたのに・・・!! 買い物してる人に片っ端から声かけたのに・・・!! ていうか
30枚でくじ1回は横暴だろ!? 集まるかよンなに!!」
 臥せっていたベッドをどんどん拳で叩いて力説する佐伯を、今度こそ全員が半眼で見やった。
 「・・・・・・・・・・・・帰ろっかな」
 「そうだな」
 がたがたがた。
 リョーマの一言を機に、部屋から6人はぞろぞろ出て行った。
 残された部屋で、人格を壊した佐伯はまだまだ呪詛を洩らしていた。
 「くっそ〜!! ぼったくり商店街が!! 今までどれだけ尽くしてやったと思ってんだよ!? 呼び込みだって売り子だって引ったくり捕縛だってちゃんとやっただろ!? 1つくらいくれたっていいだろーがちくしょ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」



―――Fin











 ―――皆様ごらんになったでしょうか。今年のアニプリお正月スペシャル『てにぷり』を。あの時のネタもくじ引きでしたが、子ども引っ張ってたお母さんですかね? 携帯かけてた小学生くらいですかね?
 ・・・以上、観ていなければ全く不明な後書きでした。扮装してまで券集めてたら素敵だよサエ・・・・・・。

2005.8.17