存在自体が冗談のような男佐伯虎次郎。エブリディエイプリールフールな彼があえて今宵送るのは・・・





人生ばっかりだ!!
〜全てのウソがホントになる日〜






再び出会い編―――
       
 俺が物心ついて、最初に意識した相手は幼馴染の跡部だった。
 跡部を見ると、跡部といると、不思議と胸がどきどきする。
 気のせいだろうか? ゆっくり息を吐いて落ち着こうとしてもなかなか鼓動は収まらず。なぜか顔まで熱くなってきた。その内息も荒くなってきた。
 これは何なのだろう? 暫し、考え・・・。
 ハッとする。
 そう、これは・・・・・・!!





 「そろそろ俺も更年期に差し掛かってきたのか・・・」
 「てめぇ今まだ
14だろ!?」











告白編―――
       
 跡部に殴られ、世の道理というものを教えられ。
 「そう! だから俺はお前が好きなんだ景吾!!」
 一世一代の告白をする佐伯。一言一句逃がさぬよう、瞳を閉じ真正面からそれを聞き、
 跡部はなぜかほろほろと涙を流した。
 「あのなあ佐伯・・・」
 「ん? 何だ」
 無邪気に首を傾げる佐伯に、再び教える。世の道理というものを。





 「・・・・・・そういう重大な事は今日以外に言ってくれ」
 「?」











付き合い編―――
       
 ひっく・・・。えくっ・・・。
 「どうした景吾? 俺と付き合えてそんなに嬉しいか?」
 「どこをどう解釈したらそうひえっ!?」
 「『そうひえ』? どこの方言だ?」
 「標準語だ!! つーか今の俺見りゃっ!? どういう状況かわか・・・・・・っ!」
 「ああもちろんわかるぞ? 何せ俺たちは恋人同士だからな。言葉はなくとも通じ合ってる」
 「さえひゃ!!」
 「・・・・・・やっぱ撤回」
 「仕方ねーだろーが勝手に出てきちまぐ―――んだから!!」
 「ほ〜らだからお酒はほどほどにって」
 「飲んでねえ!! でもってしゃっくりで苦しいんだから無駄に突っ込ませんじゃねひゃっく!!」
 「おお、さすが景吾。それでも完全に突っ込み切るまで自制したんだな。しゃっくりもお前が支配したか」
 「支配したんだったらとっくに止めれ―――っ!!」
 「・・・何だてっきり遊んでんのかと思ったら、本気で止まんなかったのか」
 ぶんぶん。(←無言で頷き)
 「で、俺に止める手伝いをして欲しいと?」
 ぶんぶん。
 「なるほどなあ。俺の方がおばあちゃんの知恵袋って感じのモンが多いと見たか。
  そういやしゃっくりといえばこんな言い伝えがあるな。『しゃっくり百万べん』って言って、100回すると死ぬそうだ。その割になんで『万』がつくのかは謎だけどな。
  ―――ところでお前大丈夫か?」
 「心配すひゃだったら無駄話止めやがれ!! その間にもカウント増えてんだろ!?」
 「馬鹿だなあ景吾。こんなの言い伝えに決まってんじゃん」
 「俺はこひゃ!? 突っ込んでる間に窒っ! く死しそうだよ!!」
 「そういえばそうだな。で、止め方かあ・・・。
  さてどんなのがあったやら・・・・・・」
 ひゃっ!
 ひゃっ!
 ひゃっ!
 ひゃっ!
 「・・・・・・ああ、こんなのがあった」
 「遅せえよ!!」
 「そうか教えなくていいか」
 「わはっ! ・・・るかった。教えてくれ」
 「誠意が欠片も感じられないなあ・・・」
 「教えてくれv」(←襟首を捻り上げてにっこりと)
 「仕方ないなあ・・・。
  しゃっくりっていうのは横隔膜の痙攣だから、
  ―――横隔膜ぶん殴るv」(←こちらも拳を固めにっこりと)
 「ひゃっは!!」
 「何だよボツかよ。じゃあ次の案は・・・。
  呼吸が乱れてるワケだから強制的に直せばいい。コップに水入れて、奥側に口つけて飲むといいらしいぞ?」
 「ひゃ?」
 「だからいつもと180度逆に口つけてな、コップ逆に倒して飲むんだ。ちゃんと入るように頭下げてな」
 「んひゃ! あ・・・」
 怪訝な顔をしつつも言われた通り準備し出した跡部。見守り、佐伯がぽんと拳を叩く。
 顎に手を当て・・・
 (そういやもっと簡単なのがあったな。しゃっくりといえば脅かしか)
 思い出したので、さっそくやってみる事にした。丁度跡部も水を飲み始め、今なら隙だらけの状態だ。
 音を立て息を吸い、
 一気に吐く!!





 「わっ!!」
 「ごぶふっ!?」





 かくて、跡部のしゃっくりは止まった。ついでに息も止まった。











別れ編―――
       
 「景吾!! 景吾!!
  何で俺を遺して死んじまうんだよ!?」
 跡部の死体に覆い被さり泣きじゃくる犯人。
 ぴたりと涙を止め・・・





 「そうか。エイプリールフールだからこれもウソって事で」
 「現実たった一言で捻じ曲げんじゃねーよ!!!」











再会編―――
       
 エイプリールフールにつき現実が捻じ曲がったため跡部が生き返った。
 「エイプリールフールって・・・、そーいう日なのか・・・・・・?」
 そういう日です。なので佐伯は常に現実を捻じ曲げます。
 「マジかよ・・・・・・」
 げんなりする跡部の肩に、
 佐伯の手が置かれる。
 「という事で」
 晴れやかで、にこやかな笑顔で。
 言った。





 「改めて付き合おう景吾!!」
 「断る」





 ・・・・・・・・・・・・。





 ぽん。
 「そうかこれもエイプリールフールって事で」
 「断固断るっつってんだろ!?」
 「参ったなあ・・・。そんな熱烈に返すなよ。照れんじゃん//」
 「どーいう解釈の成果だ!!」
 「じゃ、これからもよろしくなvv」
 「嫌じゃああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」















 佐伯にずりずり引き摺られ、跡部は涙と共に呟いた。
 「早く終わってくれエイプリールフール・・・・・・・・・・・・」



―――Fin















 ―――はい。【過ちを犯す瞬間】の逆ver、佐伯が過ちを冒しまくってみました。なのに妙に正しく見えてしまうのはなぜなのでしょう? やはり今日がエイプリールフールだからですか!?
 エイプリールフール・・・にちゃんと掛けているのかいないのか。実はサエ、このイベントに相応しいようであまり相応しくない人でした。なにせ本当の意味での『確信犯(己の言動は正しいと信じきっている人)』ですから。あえて自らウソをつく必要はどこにもなさそうです。たとえ周りには悪質な冗談としか見られなかったとしても!!
 ・・・そういえばエイプリールフール。我が家の両親の結婚記念日は明日です。さすがにこの日は避けたのか・・・・・・。

2006.4.1