気分 台無しv 2
跡部:「てめぇら逃げろ!! 起爆装置が見つかった!!」
続・爆弾事件。今度は跡部も通う氷帝学園に仕掛けられた。
範囲は学園中。既に各所で小規模な爆発が起こっている。そして本番ともいえるものの起爆装置は、逃げ道のどこかに仕掛けられた。
どこに何があるのかわからず、爆弾処理班も入って来れない。助かるためには中にいる誰かが見つけなければ。
―――立候補で代表になったのは、跡部だった。
跡部の警告を受け、その場にいた誰もが悲鳴を上げ逃げ出す。犯人の罠にかかり身動きの取れなくなってしまった彼を捨て。
いや・・・
佐伯:「―――景吾!!」
跡部:「佐伯!! てめぇ何でわざわざ来るんだよ!?」
佐伯:「馬鹿景吾!! お前が1人でまた何か馬鹿騒ぎに巻き込まれてるっていうのに無視出来るワケないだろ!?」
向こうからこの危険地帯に自ら足を踏み入れたこちらこそ馬鹿野郎の佐伯に、跡部は暫し驚いた表情を浮かべ・・・・・・
髪を掻き上げため息をついた。
掠れた声で、問う。
跡部:「だからって―――」
佐伯:「『てめぇまで来る必要なかっただろ・・・?』
―――とか思った?」
跡部:「〜〜〜〜〜〜っ。
・・・・・・人の台詞勝手に取ってんじゃねえ」
笑って言われ、跡部のため息がさらに深まった。
跡部:「んで?」
佐伯:「ん?」
跡部:「だから、てめぇが来る必要がどこにあったんだ?」
今度はもう少し普通に出せた。
顔を上げた跡部にじっと見つめられ。
佐伯は苦笑を浮かべ、
答えた。
佐伯:「放っておく理由もなかったからな」
跡部:「佐伯・・・・・・」
暫し、互いに無言になる。
起爆装置を踏み込んでしまい動けない跡部に代わり、佐伯がゆっくりと歩み寄ってくる。
頬を両手で包み込み、悲しむ目をしっかりと覗き込み。
佐伯:「お前の事だ。どうせまた1人で何もかんも背負い込もうとしてんだろ? お人好しが」
跡部:「そう言うてめぇは性根悪すぎんだよ。わかってんなら来んじゃねえ」
むくれつつ、跡部も佐伯の手を包み込んだ。
近寄り、触れ合い、キスをして。
どんっ―――!
跡部:「なっ・・・!?」
突き飛ばされて、跡部が数歩たたらを踏んだ。
見やる。足元を。起爆装置は自分ではなく佐伯が踏み込んでいた。
見やる。身代わりになどなってのけた正真正銘の大馬鹿野郎を。
佐伯は笑っていた。とても幸せそうに。
幸せそうに微笑み、言った。
佐伯:「逃げてくれ、景吾」
跡部:「なん、で・・・・・・」
目を見開く跡部。細めた佐伯は自分の胸に手を当て、
佐伯:「逃げて、お前は生きてくれ景吾。
そして、
――――――お前の胸の中で、俺を生かしておいてくれ。
それが、俺の最期のワガママだよ」
跡部:「佐伯・・・・・・」
動けない。進めもせず、されど戻れもせず。
ただ名を呟くだけの跡部を、佐伯が怒鳴りつけた。
佐伯:「早く行けよ!! 俺に無駄死にさせる気か!?」
跡部:「――――――っ!!」
跡部が俯く。
爪が剥がれるまでコンクリ片を抉る彼に、
佐伯が最後の言葉をかけた。
佐伯:「バイバイ、景吾」
今まで堪えていた涙を流し、それでも笑顔で手を振る佐伯。
跡部:「――――――――――――クソッ!!」
身を起こし、跡部は走り出した。
決して振り向かない。決して佐伯を見ない。見てしまえば、もう進めなくなる。
佐伯:「そうだ。それでいいんだ・・・・・・」
去り行く後姿に、佐伯は満足げに頷き・・・・・・
適当に崩れたコンクリ塊を拾い、自分の代わりに起爆装置の上に載せた。
佐伯:「さあって邪魔者もいなくなった。これで落ちてる物はおっれのっもの〜♪
おおお!? さっすが氷帝!! みんないいモン持ってんじゃんvv
―――っで!!」
スパーン!!
跡部:「てめぇにしちゃあやけに殊勝な事やってんな〜と思ったら・・・
―――やっぱそーいう魂胆か・・・!!」
佐伯:「―――景吾!! お前何でわざわざ戻って来るんだよ!?」
・・・・・・やはり放っておけず戻ってきた跡部に、悲痛な叫びを上げた。
跡部:「馬鹿野郎!! てめぇ1人残して俺だけ逃げれるワケねーだろ!?」
佐伯:「だからって戻って来る必要ないだろ!? せっかく逃げたのに!!」
うろたえる佐伯の手を掴み、
跡部は自分の元へと引き寄せた。
佐伯の片足がずれる。
跡部:「だったらてめぇも来い!!」
佐伯:「え・・・・・・?」
跡部:「俺だけでなんぞ逃げられるか! 俺が逃げる時ぁてめぇも一緒にだ!!」
佐伯:「景吾・・・・・・・・・・・・」
呟き、佐伯も跡部の手を取り・・・・・・・・・・・・
その場で佐伯は蹲った。頭を抱え。
佐伯:「ちくしょー!! せっかく頑張って爆弾作ったのに〜〜〜〜!!!」
跡部:「てめぇかよ犯人は!?
だったら尚更行くぞ警察に!!」
佐伯:「くそ〜〜〜〜〜!!!! 一攫千金のチャンスがあああああああ!!!!!!!!!!!
こーなったらお前を倒してでも計画を―――!!!」
跡部:「あ、そこに500円玉が」
佐伯:「え!? どこどこ!?」
しゅびっ!!
どかっ!!
きゅう〜☆
跡部:「・・・せめて自分見失うのは万札くらいからにしろよ。
んじゃ行くぞ佐伯」
ずりずりずりずりずりずり・・・・・・
そして、そこからは誰もいなくなった。その後どうなったのかは、誰も知らない。
―――何かが釈然としない方は、白黒反転の後もう一度お読みください。
―――何も期待しちゃ駄目ですよ。この2人ですから。
という事でまたしても何もかも無駄にする2人の(というかサエの)話でした。はあ・・・・・・。
2006.9.3〜4