別れ 2
「やけどなあ・・・」
半眼でぼりぼり頭を掻き、白石は尋ねてみた。
「前からず〜っと疑問やったんやけど、
・・・・・・自分そない金貯めて何するん?」
「別に貯まってないぞ?」
「貯まっとるやろ? いっつも人んばっか使わせよって」
げんなりとため息も出てきた。目の前のこの男、自分はもちろんの事風の噂によると他のヤツにもたかっているそうで。
なにせ身近に超大金持ち(と推測)がいるのだ。そりゃたかりたい放題だろう。
(・・・まあ、さすがに跡部もそない奢らんか)
あくまで家柄を推測で終わらせたのは、かのお坊ちゃまはそんな風評に反比例して、ロクに金をばら撒く事がないからだ。無駄に高級品をごてごて付けている様など見はしないし、練習試合とかでみんなで食べに行ってもファストフードか、せいぜいファミリーレストランまでだ。それも安上がりで済む類の。
「・・・・・・今お前俺以外のヤツの事考えてんだろ」
「金についてやろ?」
半眼で問われたのでしれっと言い返してやる。己も同じ事をやった自覚程度はあるのだろう。渋々ながらあっさり引っ込んだ。
「で?」
改めて尋ねる。
「自分何に金使とるん?」
と。
「え・・・・・・・・・・・・?」
話し相手兼現在別れ話進行中の彼―――佐伯が、きょとんと呆けた。
「『え?』?」
嫌な予感がする。呆けが徐々に驚愕に変わっていくのがさらにそれを助長する。
佐伯の視線があちらこちらへと泳ぎ・・・・・・
返してきた。
「100円玉でドミノ倒しとか」
スパ――――――ン!!!
白石は、持ちっ放しだった冊子で再び佐伯の頭を殴り倒した。
「痛ったいなあ! 何すんだよ!?」
「ちゃう!! そない使い方するモンやないで金は!!」
「そうなのか・・・?」
「次!! 他ないんか!?」
怒鳴りつけると、佐伯は再び悩み込み・・・
「5円玉に糸かけて催眠術ごっこ?」
「違うやろ!?」
「あ、折り曲げた札にクリップ2個止めて思いっきり引っ張るとクリップが止まるっていう手品が!!」
「札まで出たんにクリップ以下の役立ち度なんか!?」
「何!?
確かにこの手品において主役はクリップだ!! だがだからといって脇役を蔑ろにしていいものじゃない!!
主役だけじゃ進まないのが物語だ!! 例えばお前が7人揃って明らかに部が成立しないように!!」
「悪かったなあ団体行動苦手な性格で!!
やけどそん手品は折り易い紙やったら何でもええんやろ札やのうても!! せっかく稼いだモンもっと建設的に使わんかい!!」
「ならこれは確実に硬化専門かつ建設的だ! スクラッチを削る!!」
「爪でええやろ!?」
? ¿ ? ¿ ?
再びぎゃーぎゃーやり合う2人を遠くから見て。
「つまり・・・」
「日々金を貯める事に熱中しすぎて、その使用法を忘れたんじゃろな」
「けど何が凄いって、ホントに『金の使い道』ではある事だよねー」
「やっぱ面白いよな佐伯って」
「・・・やね」
こちらも合宿に参加していた忍足、仁王、新渡米、喜多、謙也は、
「さって練習練習、っと」
・・・・・・何も見なかった事にした。
―――2人の付き合いはさらに否Fin
―――【別れ以下略】の続きです。金が大事だというのならぜひその使い方を述べてもらわねば!!
しっかし・・・
・・・遠山『金』太郎が登場している(大分前からですが)今、単純に『金[かね]』と言うと『金[きん]』と呼んで浮気っぽく聞こえます? 実はしっかり「金ちゃん」と呼んでますが、白石は金太郎の事「金」と呼び捨てにしてたら萌えるなぁ〜とか密かに夢見てました。
2006.10.17〜18