真なる正解―――不二


 その騒ぎに、先に気付いたのはリョーマだった。
 『待てええええええ!!!!』
 『お前らこそ待て!! こうして事態は平和解決したじゃないか!! 今更争う理由がどこにある!?』
 『平和解決したからあんだろーが!!!』
 『つまり俺ら自分ん勘違いで制裁加えられたんやろ!?』
 『さらっと人犯人扱いしやがって!!』
 『俺らは勘違いじゃねーぞ!!』
 『今日1日でどんだけアンタに苛められたと思ってんだよ!?』
 「・・・・・・・・・・・・」
 騒ぎに首を向け、
 「・・・・・・・・・・・・」
 前に戻す。
 ―――訂正する。その騒ぎに気付かなかったのは、己の対戦相手である不二だけだった。
 「どうしたの?」
 極めて不思議そうに訊かれる。その台詞のバックには、罵声と何かがどこかにぶつかったりぶつかったり時々外れたりする音が
BGMとして流れていた。
 ため息をつき、リョーマは答えた。
 「いえ・・・。
  ・・・・・・何か向こうが五月蝿いな、って」
 「それだけでいいのか越前・・・?」
 同じ班で練習していた橘に突っ込まれ、今度はリョーマが不思議そうな顔つきをした。なので橘がため息をついた。
 大元たる不二はいつも通りの笑みを浮かべ、
 言う。
 「ああ、何かサエが財布失くしたらしいよ?」
 「サエ? ―――六角の佐伯か?」
 首を傾げ橘が問う。リョーマはさらに首を傾げていた。
 もちろんあの―――今まで自分も散々な苦汁をがぶ飲みさせられた相手を忘れたワケではない。どちらかというと、出来るならば忘却の彼方に葬り去りたかったのだが・・・・・・。
 忘れられない一要因に問い掛ける。もちろん忘れられない主要因は当人そのものの存在によりだ。
 「アンタなんでそんなに普通なんスか? 不二先輩」
 佐伯の不二可愛がりぶりは有名だ(この合宿を経て(注:現在合宿3日目)、ますます有名になった)。そして不二の佐伯べったり振りも、よく見る青学と六角部員の間では常識的事項だ。
 そんな不二が、佐伯の一大事に極めて冷静。知っている者から見れば物凄く奇異な光景だ。
 が、
 笑ったまま、不二が言った。いや・・・・・・、
 苦笑いのような、小馬鹿にするような笑みを浮かべ、言った。
 「よく考えてごらんよ。
  サエが財布失くした?





  ――――――あるワケないじゃないかそんな事」





 「・・・・・・・・・・・・。
  そういやそうでしたね」
 「でしょう?」
 こうして、今日の練習も平和に終わった。


―――了

 








 ―――ありえない話はやっぱりありえませんでした。という事で『財布』の概念を忘れたサエの話でした。
 割といろんな学校からそれなりに人が出てくるという事で、設定が全国終了後の
Jr.選抜でしたが・・・おかげで裕太が出せなかった(暴言)のが残念です。きっと裕太は来年来るさ!!
 ちなみに私的今年の
Jr.選抜予想(むしろ希望)

・立海&四天宝寺=全員(手塚が7人ですし、そんな学校を最も苦しめたところですし)。
・青学=手塚・不二・リョーマ・黄金ペア  氷帝=跡部・忍足・鳳宍ペア   山吹=千石・地味`s・新渡米喜多ペア(元々ダブルスが強い学校ですしね)
・不動峰=橘  ルドルフ=赤澤(出し損ねたなあ・・・)  比嘉=甲斐(木手も出そうかと思いつつ、手塚との試合結果により結局甲斐だけで)
・六角=サエ(言わずもがな)・リョーガ

といったところです。楽しそうだなあこの合宿。

2006.9.22007.2.10