L i n e  ~Go side~





「私、豪君の事、好きなの」


毎度お決まりの台詞に俺は黒板にもたれ頭を掻いた。





まいったなあ・・・






そう言われる―――そう想われる事は純粋に嬉しいが答えは最初から決まっていた。


「悪いんだけど・・・」





ホント、悪いとは思うんだけどさ・・・






心の中で未練たらしく言い訳する。


「何で・・・?」





―――って言われても・・・






「俺・・・好きなヤツいるから・・・」


嘘はついていない。たとえそれが一生片想いで終わるものだとしても。





どうせ判ってるよ
届く訳がない・・・
言える訳がない・・・
けど…・・・
―――想う事は自由だろ?






ガラリと扉を開き、少女は飛び出していった。


泣いていたかもしれない。


でも追うような真似はしない。


そんな資格が、自分にある訳はなかった。


俺は黒板にもたれたままただため息をついた。





俺もこうやって、フラれんのかなあ・・・






それ以前に笑い飛ばされるか、と自嘲的な事を考えていると声が聞こえてきた。


「好きなヤツがいる、ねえ・・・」


「烈、兄貴・・・?」


姿など見ずともわかる。教室に入ってくる予想通りの人を俺は凝視した。


「いたんだ、初耳」





チクリ






「それは―――」





言いたい
言いたい
言いたい
―――言うなら今しかない






「へえ、何? 両想い? それともまだ片想い?」





聞くな
聞くな
聞くな






「・・・あ、あ。片想い・・・」





兄貴が聞くか、それ・・・?






「それはまた。お前なら即言うと思ってたんだけど?」





仕方ねえだろ。それとも言って欲しい?






「ねえ・・・」


薄く笑った烈兄貴が近付いてくる。


「その娘に―――」


頬に手が添えられ、


「こんなコトして欲しいの?」


キスをされた。





嘘、だろ?
何で・・・?
こんなの、
―――都合のいい夢だ・・・






「何、して・・・」


荒い息で尋ねる。


「じゃあ・・・」


何も答えてはくれず行為だけは更に進んだ。


「こんなコトは?」





ドクリ






頬をなでられ、





ドクリ






髪を掻きあげられ、





ドクリ






顔中にキスの雨が降ってきた。





ドク・・・






・・・・・・・・・・・・





あーあ・・・
せっかく我慢してたのに・・・
言えるワケ、ねえのになあ・・・
烈兄貴がそんなコトするから・・・
デッドライン、越えちまったじゃねーか・・・






頬にかかる烈兄貴の手を掴んで、


驚く兄貴の腰を引きずり寄せる。


隙間なく躰を合わせ、


今度は俺からキスをした。





兄貴も男ならわかるよな
今俺は兄貴に欲情してるぜ
さあどうする?
自分から仕掛けたゲーム、まさか降りるなんて真似―――しねえよなあ・・・・・・






赤くなった頬で、潤んだ紅い瞳で、烈兄貴が言った。


「次は、どうして欲しい・・・?」


「次は・・・・・・」










* * * * *










「あ・・・、ん、は・・・・・・」


「はあ・・・・・・、そしたら次は髪ほどいて、そんで首舐めて・・・」


「ん・・・・・・。次は・・・?」


「制服脱がせて、躰触らせて・・・・・・」


「くすり」


「?」


「じゃあこの手離せよ。脱がさせられないだろ?」


「・・・・・・。んじゃ、まだいーや」


「いいのか?」


「まず上から順に、ってな」


「―――お前の口から出たとは思えないセリフだな」


「せっかくのモンなんだし、楽しまなねーと」


「何をまた・・・・・・」


「いーからいーからv」


「ん・・・、あ・・・・・・」










* * * * *










「・・・・・・で?」


「何が?」


「いーのかよ、こんなことして?」


「何で?」


本気でわからなかったのか、それともただはぐらかすためか、烈兄貴が訊いてきた。


「だからその・・・・・・」


「うん?」


「―――せなとか、泣くんじゃねーの? こんなトコ見たら」


「はあ?」





「はあ?」って・・・・・・
何でンなセリフ出てくんだよ。
だってアイツは、
兄貴の・・・・・・
―――彼女、なんだろ・・・・・・?






「ああ、泣くだろうね・・・・・・」


「だろ・・・・・・?」


やっぱり予想通り、と虚ろな目で相槌を打つ。


「泣いて狂喜乱舞するかも・・・というかそうしそう」


「へ・・・?」


「『烈君の面白いところ見ちゃったわvv』とか言って」


「・・・・・・」


「カメラとかも持ち出すんじゃないかな。でもって後で高く売りつけてきそう。誰かに売りつけるより俺に買い戻させた方が儲けは少ないけど後々持ち腐れはないって彼女自身よ〜くわかってるだろうし」


「・・・・・・って!!」


あまりといえばあまりな言葉に俺はがばりと身を起こした。


「せなって兄貴の彼女じゃねーのかよ!?」





だから、ずっと言えなかったってのに・・・!






思いっきりうろたえていると、兄貴がくつくつと笑った。俺の好きな、飾らない笑顔で。


「・・・なワケないだろ? 俺とせなさんはただの友達」


「け、けどしょっちゅう一緒にいるし・・・」


「一緒にいて? 何やってたか知らないだろ?」


「そ、それはまあ・・・・・・」


「5割は勉強。3割は生徒会の仕事」


「勉強って、他のヤツとは?」


「国立目指してるヤツけっこ―少ないから。それにせなさん頭いいし」


「・・・兄貴もじゃん」


「だから、だろ? バカのおもりは疲れた」


「・・・悪かったな。で、残りの2割は?」


「世間話」


「へ?」


「別名無駄話。お前だって普通に友達とするだろ?」


言われてみて、ようやくそりゃそうかと納得する。





じゃあ、さ・・・・・・
言ってもいい? 俺の気持ち
それとも――やっぱりだめなのか・・・?






「で?」


「へ・・・?」


「何か言いたい事あるか?」


「え? それって・・・?」


「ないんなら帰るけど。体早く洗いたいし」


これは、1つの賭け。


一生に一度の賭け。


もしこれで、何も言わなければ・・・・・・


―――この気持ちは永遠に伝えられないだろう。





さあ、どうする?
今日の事は、ただ俺の事を遊びに使っただけなのか
それとも、別の考えがあったのか
なあ、教えてよ
アニキハオレノコト、ドウオモッテルノ?






長い、沈黙の後


結論にたどり着いて、俺は烈兄貴をしっかりとこの目に収めた。


これで最後になるかもしれない。だからしっかり見ていたかった。


「あ、あのさ・・・」


「・・・・・・」


「俺、兄貴の事・・・・・・」


「・・・・・・」


「好き、なんだ・・・・・・」


何も言わない兄貴に、絶望感を憶えた、そんな時、


「俺も・・・お前の事好きだよ」


抱き締められて、耳元で囁かれる。


夢じゃない。


これは現実。


俺は―――賭けに、勝った。










* * * * *










抱き締められた腕の中で、烈兄貴を抱き締め返した。





これで――烈兄貴は俺のもの・・・・・・










End













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はー、長々とかかってようやく終わりました、この話。かかった時間の割には内容は薄い・・・しかも尻切れトンボというまさに最悪を絵に書いたような話。かなりダメっぽいです。
 見てわかるとおり、この話は烈サイドとセットです。とりあえずそちらは文字通り烈兄貴の気持ち(とか色々)を追ってますので、そちらを読むと兄貴がなんで強姦まがいの事をしたのか(笑)わかると思います、多分。
 半端にシリアスなんだかギャグなんだかワケわかりませんが、とりあえず少しでも楽しんでいただけたら――というかせめて暇つぶしぐらいになれたら幸いです。どーでもいいですが後書きまでコピるのは止めましょう自分。

2002.8.3write2001