破綻
   〜
I・・・・・・lo・・・ve・・・・・・yo・・・u・・・・・・・・・〜







おチビと付き合うようになってから
毎日が楽しくって、
ずっとこのまま続くと思ってた。
だから・・・
『不二のヤツ絶対黒魔術使ってるって!!』
『はあ? 黒魔術?』
『じゃなかったら説明できないじゃん! あれとかこれとか!!』
『はあ・・・。まあいいけどさあ・・・・・・
―――そんな事言ってたのバレたらそれこそ後で使われるんじゃない? その「黒魔術」』
『不吉な事言うにゃよ〜! おチビ〜〜!!』
こんな会話も、楽しみの一つだった・・・・・・。





・  ・  ・  ・  ・





「不二!!」
入って来るなり怒鳴りつけてくる英二に、不二はいつもどおりの笑みを浮かべた。
「どうしたの、英二?」
無邪気な笑顔。その足元にリョーマを従え、本当に楽しそうに。
「お前おチビに何した・・・・・・・・・・・・・」
怒りで声を震わせる英二。だが目には怒りではなく哀しみを浮かべ、そこにいる『おチビ』をただ眺めていた。
一糸纏わず床に座り込むリョーマ。その頭を椅子に座った不二の脚の間に潜り込ませ、おいしそうにそこにあるものを舐めている。
ぴちゃぴちゃと部屋に広がる卑猥な音。
「上手だよリョーマ君」
「ん・・・・・・」
不二に頭を撫でられ、虚ろな目で嬉しそうにリョーマが微笑んだ。
「かわいいでしょ、僕のリョーマ」
片肘を突いて不二が英二を見上げた。
「おチビは…お前のもんじゃない・・・・・・」
「そう? けど『今』のリョーマは僕のだよ。
―――キミにこの子は愛せる?」
「そんなの・・・・・・」
当たり前だろ? おチビはおチビなんだから。
そう言おうとして
リョーマと目が合った。
冷たい目。
警戒心を込めた眼差し。
今まで自分を見てくれていたような、迷惑そうにしてるけど嬉しそうな目はどこにもなかった。
「―――誰」
そう呟くリョーマの口端から、唾液とも精液ともつかない白い液が零れ落ちる。
目を見開く英二。その開かれた視界の中、リョーマをゆるく抱きしめ不二が冷笑を浮かべているのが見える。
「脆いものだね人間って。少し心をいじってやるだけですぐに壊れる」
抱きしめる不二には何の警戒も抱かない。腕の中で擦り寄り甘えるリョーマに、英二の目がかたかたと揺れた。
そこに突き刺さる不二の言葉。
「もう一度言うよ。
―――キミにこの子は愛せない」
「――――――!!!」
その言葉を受け―――
英二は部屋から飛び出した。





・  ・  ・  ・  ・





「おチビ・・・・・・」
あれからどれ位経っただろうか。
リョーマのいない生活。
その中では日付の経過など無意味なもので。
「おチビ・・・・・・」
英二は壊れたレコードのように、ただその名を呼び続けた。





「おチビ・・・・・・」
あのさらさらの髪に触れたい。





「おチビ・・・・・・」
あの大きな瞳に見つめられたい。





「おチビ・・・・・・」
あの柔らかい唇にキスしたい。





「おチビ・・・・・・」
あの小さな体を抱きしめたい。





『英二』
あのかわいい声でもう一度呼んでほしい。







たとえ、壊れた彼であろうと
それでもかまわなかった。



願うことはただひとつ。



















































もう一度、逢いたい・・・・・・。
















































・  ・  ・  ・  ・





「不二・・・・・・」
「来たね、英二」
再び訪れた英二に、不二は最後に見せた冷笑を浮かべた。
にっこりと笑い、
「どうしたの?」
「おチビに・・・逢わせて、下さい・・・・・・」
土下座して頼み込む彼に歩み寄り、虚ろな瞳を覗き込む。
「ふ〜ん。
我慢できなくなっちゃったんだ?」
不二の言葉に、こっくりと頷く英二。そこには前回のような威勢はどこにもなく、
ただ哀れな男がいるだけだった。
そんな様子にくす、と笑うと、不二は前回も座っていた椅子に腰掛けた。
「じゃあ・・・・・・」
脚を広げ、楽しそうにズボンのファスナーを下ろす。
「証明してもらおうかな」
下着から、以前リョーマが舐めていたものを取り出し・・・・・・
「前回のリョーマ君を見てたならわかるよね。
―――これ、舐めてみて」
「・・・・・・・・・・・・」
座り込んだまま動けない英二。そんな彼に、甘い甘い誘惑が手を差し伸べた。
「これは契約の証だよ。キミが僕に忠誠を誓うならばリョーマ君に逢わせてあげる。記憶も『直して』、ね」
その言葉を聞き、英二は膝をついたまま不二の取り出したものにキスをした。まるで姫に忠誠を誓う騎士のように、愛しげに。





「いい子だね・・・・・・」





・  ・  ・  ・  ・





「えーじ」





「おちび」





壊れた目に笑みを浮かべ抱きしめ合う2人。










床に重なるそんな2人をやはり椅子に座って見下ろし、





クス・・・・・・





「本当にかわいいね、2人とも」










部屋の中には2人の喘ぎ声と濡れた音、そして不二の笑い声だけが響いていた・・・・・・・・・・・・。










Fin・・・










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暗。というかこれを『悲恋』と呼んでいいのでしょうか・・・? 難しいにゃあ(身も蓋もない発言)。
と、いうわけでキリリク
923番話その2。いかかでしたか翠様―――などという発言は恐れ多くて出来ません。
本っ気でひねくれた発想ですみません。

2003.1.21