彼は幼い頃より大切に育てられていました。人々は彼を称してこう言います。








箱入り










 不二周助の幼馴染にして、最早お兄さんというより年頃の娘を持った父親的教育を施す跡部と佐伯。もちろん2人の『教育』は夜にも及ぶ。







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 「ほら、周ちゃん。頑張って」
 「う・・・んむ・・・・・・」
 「クッ。上手くなってきたじゃねえの。
  ならこっちも行くぜ」
 「あ、ちょ・・・待―――あ!!」
 「ゔ・・・! 跡部! 早すぎ!!」
 「てめぇだけに・・・・・・イイ思いさせられるかっての」
 「あ・・・! んあ・・・はん・・・・・・!!」
 「く・・・は・・・・・・!」
 「ふ・・・! やるじゃ、ねーの・・・・・・」
 「ぐ・・・! 教育の・・・賜物、ってヤツ・・・?」
 「ふあ・・・はむ・・・!! うん・・・・・・!!
  ――――――ああ!!」







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1.対英二



 「不二! あの・・・俺・・・・・・
  ―――お前の事が好きなんだ!!」
 「英・・・
  ―――っ!?」
 言葉途中で消えた声。吐いた息ごと全てを奪って。
 「ん・・・・・・ふう・・・・・・」
 「は・・・あ・・・・・・」
 激しく性急に行われるキス。気持ち全てを込めたそれを受け取り、離れる不二の頬はほんのり赤く染まっていた。
 「こういう・・・事だから」
 不二以上に真っ赤に染まった頬で英二が呟く。
 オズオズと、見上げる。その目に映ったのは―――
 ―――やったら冷めた目だった。
 「英二・・・・・・」
 「は、はい・・・!!」





 「ヘタすぎ」





 ぐわぁん――――――!!















2.対手塚



 「不二・・・。俺は、お前の事が好きだ」
 「手塚・・・・・・?」
 「友人としてではなくその・・・・・・恋愛対象として。
  つまりはだから・・・・・・キスしたいと思い、またその先も―――」
 「うん・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何?」
 「だから・・・『いいよ』って・・・・・・」
 「不二・・・・・・!」
 この時の事を手塚は忘れることはないだろう。赤い顔を俯かせ、それでも懸命に頷いてくれた不二の躰を、まるで壊れ物を扱うようにそっと抱きしめ・・・・・・。
 どの位経ったのだろう。そんな事もわからなくなるほどただひたすら不二を求め続けた。
 心地よい疲労に包まれ、穏やかに目を細める。その耳に―――
 ―――なぜか重苦しいため息が届いた。
 「手塚・・・・・・」
 「・・・・・・なんだ?」





 「初めてだっていうのはわかるけど、そうおっかなびっくり来られると萎える」





 ずごしゃっ――――――!!















3.対リョーマ



 「不二先輩好きっス。抱かせて?」
 「随分性急だなあ。まるで―――ってちょっと・・・・・・」
 何も言わせずリョーマが不二を押し倒す。その手の中で、不二を好きなように転がし、翻弄させ―――
 「どう? 俺結構ウマいでしょ?」
 いつもどおりの生意気な笑みで言う。その笑みの向こうで―――
 ―――不二もまた、笑みを・・・いや、苦笑を浮かべていた。
 「越前・・・・・・」
 「何・・・?」





 「キミ、小さいんだね」





 どんがらがっしゃ――――――ん!!















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 「―――なんていうことがあったんだよ」
 とある日の部活帰り。なぜだか校門前で待っていた跡部・佐伯と合流した不二は、事の顛末を話していた。のんびりと歩く彼らの後ろには、同じ中学のよしみでぜひ一緒に帰ろうと狙っていた英二・手塚・リョーマの姿が。
 それを肩越しで見やり―――
 聞き手2人は同時に吹き出した。
 「はぁーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
 持てる腹筋全てを駆使し思いっきり笑う跡部。
 「それはそれは・・・・・・・・・・・・」
 同情的な目線を送りつつも肩は奮え、手で軽く隠した口角を吊り上げる佐伯。
 屈辱まみれで拳を震わせる3人へと、決定打が飛ばされる。
 「不二に手ェ出そうなんざ百万年は早ええんだよバーカ」
 「周ちゃんもこんなの相手じゃ満足出来なかったでしょ?」
 「だったら俺ん家来いよ。たっぷり可愛がってやるぜ」
 「それでもっと『賢く』なろうね」
 「うん!」
 和気藹々と―――そこだけ和気藹々と去っていく3人。灰と化してそれを見送ること暫し。
 『あいつらかい! 不二仕込んだの!!』
 夕闇が濃く影を落とす中、その一角では3人の声が響いたという・・・・・・。















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 何だかヘンな話が出来上がっています。本日のイベントにてテニプリにそう詳しくはない友人から何のCP推奨なのかと尋ねられ、不二・跡部・佐伯・千石の幼馴染4人が絡んでれば良しと主張していた筈が気がつけば『跡部とサエは如何に親馬鹿な親になるか』について熱く語っていました。というわけで出来た話がコレ。コンセプトは冒頭通り。この2人ならばまず『娘』を嫁には出さないだろうなあ・・・・・・。なにせしかも相手側からすれば顔良しルックスばっちり頭脳明晰スポーツ万能(?)挙句人柄良かったり金持ちだったりでめちゃめちゃハードル高いです。しかもそれが『当たり前』の環境下で育った不二のハードルはさらに高そうです。

2003.12.28