てれほんしょっきんぐ
プルル・・・・・・
がちゃ。
「あ、周か? 俺―――」
『ああ景吾』
「って佐伯! なんでてめぇが周の携帯に出てやがる!!」
『ははっ。悪いな。今周ちゃん電話に出られないんだ』
「・・・・・・何でだ?」
『何だよ聞きたいのかよ。お前も物好きだな、景吾』
「〜〜〜!!
大体てめぇなんで周ん家いやがる!!」
『俺? もちろん周ちゃんに招かれたからさ。お前じゃ役不足だと』
「どういう意味だそりゃ!!」
『わざわざ訊くのか? ま、別にいいけどな。
―――お前がヘタすぎて嫌なんだとさ。痛い思いしたくないし』
「―――っ!! じゃあてめぇらやっぱまさか・・・・・・」
『ここまでくればもう確実だろ? それとも自分で確認する?
丁度周ちゃんもないてるトコだし。
・・・ああ、聞いて興奮すんなよ?』
「て、めぇ・・・・・・!!!」
『どう? 周ちゃん』
『あ・・・ん・・・・・・、話かけないで・・・・・・』
『結構今回頑張ってんじゃん。偉い偉い』
『あ・・・やあ・・・・・・。そこ触らないで・・・・・・』
『ホラ、もっと力抜いて。それじゃすぐイっちゃうって』
『そんな事、言ったって・・・・・・。あ、あ・・・・・・』
『あとちょっとだよ』
『サエ・・・。お願い・・・・・・』
『ダーメ。周ちゃんが最後までやるんだろ?』
『あ、もう・・・・・・ダメ・・・・・・
ああ――――――!!』
ぷつっ。
つー・・・、つー・・・
「佐伯の野郎・・・・・・!!!!!!」
・ ・ ・ ・ ・
「も〜!! だからヘンなところで話し掛けないでよ!!」
「ははっ。悪い悪い。
でもホント、結構いったじゃん。これならあとちょっとで5mだよ」
「今回いかせる筈だったのにーーー!!!」
「わわっ! ちょっと危ないって周ちゃん!! とりあえず包丁置いて!!」
暴れる不二から包丁と少しだけ皮の残ったりんごを奪い取る佐伯。残りをするする剥き、適当な大きさに切ってから(もちろん芯は取って)塩水の入ったボールへと入れていく。
既にボールの中には同じようなりんごが4個。
脇に捨てられた―――にしてはやたらと綺麗に並べられた皮を摘み上げ、呟く。
「1個につき1mずつ伸びてるって感じかな? 後5個くらいやったら本当に10m越えたりして」
「ねえホント? りんごの皮向きギネス記録10m以上って?」
疑い深げに尋ねる不二。途中で跡部の電話により妨害されたが、これでも相当頑張って剥いた。それでありながらまだ記録の半分以下らしい。
相当細くなった―――というかはっきりと皮より身のほうが多く剥いているような気のする皮を、こちらもまた摘み上げる。2人の間であっさりそれは切れた。まあ記録はちゃんと取ってあるから大丈夫だが。
「ギネス・・・かはわからないけど、実際10m以上行くってのはホント。この間テレビでやってたし」
「りんごの種類違うんじゃない? もっと大きいのとか」
「それはあるかもね。けどコレ、ふじりんごだよ?」
「だから? 僕に対する嫌味?」
「じゃなくて。被害妄想しない。
ふじならりんごの中でもかなり大きい部類だろ? 他の品種だとしても、これより大きいのはなかなかないんじゃないかな?」
それに俺、コレで8mいったよ―――と自慢も含めず淡々と言ってのける佐伯に、不二が口を尖らせた。
「む〜・・・!!」
が、もちろんその程度で堪えていたら彼の幼馴染みなど出来ないわけで。
(ま、景吾ならあっさり陥落するかもしれないけどな)
そんな事を思いつつ、佐伯は今2人で持って切れた皮を不二に突き出した。
「それに周ちゃん力入れすぎ。ホラ、今切れたトコも。剥き方ガタガタだし厚さもバラバラ。これじゃすぐ切れるって」
「だってサエが話し掛けてくるから!!」
「だからそれは俺じゃなくってヘンなタイミングで電話してきた景吾のせいだろ? それに周ちゃんも。すぐ乗せられない。無視して剥いてればよかったのに」
「話し掛けられたら聞いちゃうじゃないか!!」
ひととおり叫び、
不二はぼそっと呟いた。
「サエのスパルタ」
「んじゃ景吾にでもコーチしてもらう? アイツなら7mは確実だろ―――まあ初っ端はともかく。練習すれば意外と10m行くかもな」
「景が行っちゃったら意味がないじゃないか。しかも僕に負けたくないからって絶対頑張って練習するし!!」
「まあ確かに。周ちゃんには負けたくないだろうなあ・・・・・・。
けど景吾ならそれこそ優しく、手取り足取り教えてもらえるんじゃないのか?」
「だから嫌だって言ってんだろ? そうやって毎回手切ったり擦ったり押し潰したりするんだから」
「・・・・・・もしかして、ホンットに! 『手取り』『足取り』教えるのか?」
「サエやられた事ないの?」
「いや・・・。景吾は俺が出来ないの見て笑うだけだから」
不二の言い分を元に、頭の中でイメージを組み立てる。包丁を掴みりんごを剥く不二。後ろから、跡部が緩く抱き締めてを重ねる。
―――見た目[ビジュアル]だけはいいのだが。
(そりゃ怪我して当然だろ・・・・・・)
よっぽど相手を信頼して力を抜かない限り、そんな事をされれば反射的に力を篭め抗うものだろう。そして跡部はそういう相手に間違いなく力押しで打ち勝つ。
無理矢理やる → 怪我する → 警戒する → 力が篭る → 無理矢理やる → ・・・・・・
嗚呼素敵な悪循環。
ため息をつく佐伯を他所に、
「だから今回は絶対景の手の届かないくらい上手くなって逆に景に『教えて』あげるんだから。
ふふふふふ・・・、覚悟してよ、景・・・・・・」
どす黒いオーラを撒き散らし笑い続ける不二。
そんな様を見て思う。
「ああ、今日も平和だなあ・・・」
と。
・ ・ ・ ・ ・
ちなみに。
「周! てめぇ俺ってモンがありながら何二股かけてやがる!?」
「景! 今日こそ君には自分の行いを悔い改めてもらうよ!!」
『はあ・・・・・・?』
そんな、聞くもの全ての脳を破壊するような意味不明の喧嘩が繰り広げられたのは、
あれからわずか3日後の事だった。
そしてそれを巻き起こした人物は、
「あ〜今頃もきっと2人で仲良くやってるんだろーなあ」
などと、遥か遠く千葉の地にて空を見上げ呟いていたとかいないとか。
Fin
・ ・ ・ ・ ・
ワケがわかりません。まあその不条理さがエセ18禁の利点ですが。
ちなみにりんごの皮向き10m以上は本当です。しかもそれを見たのが何年も前。今ではもっといってたりして。ただし向いた後のりんごは無残でしたが。なにせ極細の皮の代理は何かと問われればもちろん実ですからねえ。
2004.10.6
|
|
|
|
|