喜劇・白雪姫
第1幕―――屋敷にて、鏡と対面する継母
私の出番は2幕目からのため、ここはのんびり見物タイム。
継母となったのは、風輪の瀬堂先輩だった。そこらの女子より綺麗だからという理由でのキャストだがこれでは・・・・・・
「鏡よ鏡、世界で一番綺麗なのは誰? もちろん僕だよね?」
お立ち台で振りそうな扇子を手に、優雅に微笑む瀬堂先輩。返事はいらなさげだが、それでも一応鏡役(音声のみ)の三村先輩が淡々とナレーション口調で答えた。
《国民100名を無作為抽出しアンケートを取ったところ、満場一致でお前に決定した》
・・・・・・そういえば、何だか朝から三村先輩、入り口で何かやってたなあ・・・・・・。ていうか、『国民』って日本国民・・・・・・? ただし顧問ら含む中学テニス部員となれば、決して『無作為抽出』ではないような気もするけど・・・。
「ああ、やっぱり―――」
《理由は『そう言わないと怖いから』》
スパーン!!
扇子による攻撃が鏡に炸裂。5秒ほど黙り込み、鏡は気を取り直して先を続けた。
《なお覆面回答にし、プライバシーは完全に保護する事を約束したところ、51対49で白雪姫の勝利となった。51名の男曰く『いくら事実として綺麗だろうが最後の一線で男を選びたくはない』。49名の女曰く『全然全く以って問題はなし』だそうだ。
次は男からの票獲得に努める事だ》
どがしゃあっ!!
攻撃第2弾。尖った靴による回し蹴りを受け、ついに鏡が粉々に砕け散った。
ふわりとスカートをなびかせ風雅に振り向く(言い方として間違ってはいない)。扇子をぱちりと閉じ、瀬堂先輩は短く声を上げた。
「三村!」
「はっ」
現れたのは―――もちろん三村先輩ご本人。まあこの人たちなら、腹話術による1人遊びという設定だろうが別に誰も不思議に思わない。
畏まった三村先輩に、瀬堂先輩は冷たい瞳を向けた。
「命令だ。白雪姫を抹殺して来い」
「はっ」
―――第2幕
第2幕―――森にて、狩人と白雪姫
ようやく主役登場。眠り姫よりマシとはいえ、今までヒマだった〜。
「あ、あの・・・」
心細く声を上げる私。暫く無言で歩いていた(舞台の中央まで5mくらい)三村先輩が振り向く。
「お前の継母から、お前を殺せと命令された」
「お継母様が? なぜ・・・?」
「お前のほうが美人コンテストで上回ったのが許せないらしい」
「いやそれ男女の比率変えた方が・・・・・・」
「だが本日の参加者こと、国民の比率は確かに男が51で女が49だ。女性だけ多く取ったのでは不公平な結果となる」
「そういう理由で私殺されるんですか・・・?」
「王国でありながら民主主義政策を取る。丁度いいアピールだな」
「51対49で・・・?」
「過半数は超えた。民主主義というのはそういうものだ。少数意見は黙殺される」
「まあ・・・、いいですけど・・・・・・」
問題だらけどころか問題しかない台詞のオンパレードにげんなり呻く。ここで延々話合っていても仕方がない。
「じゃあ―――」
逃げようと重心を後ろにずらす。白雪姫といえばここで狩人が姫を逃がす感動ストーリー! 継母にその後怒られるのにその後狩人に山場どころか出番すらなくなる、それこそ狩人を主役にすれば完全喜劇!!
そんな扱いに不満があるのか、三村先輩は私の動きに合わせ持っていた斧を振り上げた。
「え〜っと・・・・・・」
「言っただろ? 瀬堂の命令でお前を殺すと」
「ここは逃がすものでは・・・・・・」
「瀬堂だしな。逃がすと俺が何をされるかわからない」
「その気持ちは確かにわかりますけど・・・・・・」
「という事だ」
「何が?」
「心置きなく死んでくれ俺のために」
「嫌ですよ!!」
「もちろんお前の死は無駄にはしない。ちゃんと墓石には『白雪姫は死してなお美しかった』と彫りいれておく事を約束しよう。瀬堂の懲罰は来るだろうが、この程度の犠牲なら惜しくはない」
「なら逃がしてくださいよ!!」
「そうすると俺が代わりに殺される。人間一番大事なのは自分だ」
「そんな平たく言わないでくださいよ!! ホラ!! 動物の心臓持っていって誤魔化すとか!!」
「誤魔化されると思うか? あの瀬堂が」
「ぐ・・・・・・」
「納得してくれて感謝する」
「してない!!」
「殺す際はちゃんと一息で首を落とす。痛い思いは決してさせない」
「いかにもカッコよく妥協した風に言わない!! 生かそうと努力しなさいよ!!」
「・・・少し我侭だと人に言われる事はないか?」
「アンタ達先輩に言われる覚えはない!!」
「なら前向きに検討しよう。殺した証拠となりかつ決して疑われないものを持っていけばいい。
―――お前の血液1リットル程度でどうだろう」
「死ぬわああああああ!!!!!!!!」
「やはりここは諦めて―――」
「いやあああああああ!!!!!!!!! 助けて〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」
どたばたどたばたどたばた・・・・・・・・・・・・
―――第3幕
第3幕―――姫と狩人のその後
かろうじて逃げ延びる事に成功。見つけた森の家で、私は疲れた体を休めさせた。
深く深く、どこまでも深く眠りにつく。まるで二度と目が覚めないくらい深く・・・・・・
ぱちぱち・・・、ぱちぱち・・・
もくもくもくもく・・・・・・
「・・・・・・ん?」
木のはぜる音と煙、何より熱さで目が覚める。なぜか丸太に縛られて火に炙られていた。
「何なの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!????????」
『うわぁっ!!』
雄叫びを上げる私に、周りで不思議な踊りを踊っていた7人がひっくり返った。
「悪魔だ!! 地獄の使者が蘇ったんだ!!」
「もっと薪をくべろ!!」
「火力を上げろ!! 徹底的に焼き尽くすんだ!!」
「違あああああう!!!」
二度目の雄叫びと共に、縛っていた縄を引きちぎる。丁度燃えてボロボロになってたからなのだが、余計ビビられた。
「私は!! この国の姫なのよ!! 継母に殺されかけて命辛々逃げてきたの!!」
力説する私をじっと見て、小人AとBことせなと直也―――ちなみに小人7人のラインナップ。両部活の部長たる加瀬先輩と光坂部長、さらに後は身長で選ばれたのだろう烈・豪・せな・直也、それと風輪の女テニの子―――が、イマイチ感動が表に表れない口調で順に台詞を紡いだ。
「悪魔が誰かに変装して王国を乗っ取る事は良くある事だから」
「殺され命辛々逃げてきたとなれば決定ですね」
「だ〜か〜らあ!! むしろそれは逆!!」
「お前他人に責任押し付けるってのか!?」
「なんで無条件で私が悪魔だって信じてんのよアンタは!!」
スカーン!!
「ああっ!! 豪!! 大丈夫か!?」
「う、あ・・・。烈兄貴・・・。俺はもうダメだ・・・・・・」
「そんな!! こめかみヒールで抉られたくらいでお前が死ぬなんて俺は信じないからな!!」
「烈、兄貴・・・・・・。最期にこれだけは聞いてくれ・・・・・・。
俺は、兄貴の事ずっと好きだった・・・・・・」
「ああ」
「・・・・・・・・・・・・。返事は?」
「聞くだけだろ?」
「酷でえ・・・・・・・・・・・・(がくっ)」
「ああっ! 豪!! しっかりしろ!!」
「鬼だな」
「ああ。鬼決定だな」
「ホラ!! 鬼は烈で決定よ!!」
「けど鬼と悪魔は別物だから」
「まだあなたの容疑は晴れませんね」
「も〜ヤダ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
説得するのに、その後1時間かかった。
一方城にて。
「白雪姫を殺さなかった?」
「ああ」
瀬堂先輩の問いに、1%のためらいもなく三村先輩が頷いた。
「・・・・・・なんで?」
あまりのためらいのなさに、むしろこちらがためらったらしい瀬堂先輩が眉を寄せる。
「殺さない方がいいかと思ってな」
「つまりそれは、
―――僕より白雪姫に荷担する、と?」
「まさか」
底冷えのする寒さ。それを受け、まるで心地よい冷風だと言わんばかりに三村先輩は薄く笑ってくれた。
「俺が殺していいのか? 瀬堂」
「つまり?」
「お前はアイツに敗北した。障害を取り除くためお前は俺にアイツを殺せと命じた。
だが瀬堂、お前はそれでいいのか? 自分がやられたというのに、仕返しを他人に任せて。
復讐なら自分の手で成すべきだ。お前にそれを出来ない理由はない。他人任せで納得するお前じゃないだろ? だとしたらお前がその手でやるべきだ」
「う〜ん・・・。言われてみれば確かに・・・・・・」
うわ・・・。三村先輩自分の失敗のクセして責任瀬堂先輩になすりつけてるよ。この人もツワ者だなあ・・・。
余程突っ込もうかと思ったが、ここで口を出すと2人がかりで襲ってきそうな気がするため断念した。この2人のコラボレーションは何が来るのかわからないため、絶対自分には来て欲しくない。
「じゃあ君は、僕のために殺さなかった、っていうの?」
「ああ。お前のためだ」
「・・・・・・。
ところで君さっき言ってたアンケート、僕と白雪姫どっちに入れたの?」
「もちろんお前にだ」
「満場一致の方じゃなくって51対49の方。男性は全部白雪姫に入れたって言ってなかったっけ?」
「アンケートを取る側の俺に投票権があるワケないだろう?」
「・・・・・・さっき僕に入れたって」
「ちなみに白雪姫が隠れたのは小人の家だ」
「話ずらさないでよ」
「不法侵入でとっ捕まっているだろう。すぐに場所は移動しないはずだ」
「ねえどっち?」
「ただし小人に殺されるかもな。早く行った方がよくないか?」
「どっちに入れたの?」
「殺す際の道具は各種用意しているぞ。毒グシ・胸ひも・毒リンゴ。まあ好きなものを選べ」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
―――数合わせで白雪姫に入れた。一票でも多くしないと話が成り立たないからな」
「じゃあ―――」
「別に美を問うのに性別は関係ないだろ?」
「うん! じゃあ行ってくるね!」
「ああ。気をつけていけよ」
―――第4幕
第4幕―――継母の復讐劇〜毒グシ編〜
勝手に家に入り物を食い寝床を使った罪で、焼かれる代わりに私は召使として使われる事になった。姫としては屈辱だが、死と引き換えなら文句も言ってはいられない。
しこたまこき使われ、竈のそばで眠り灰まみれになり童話の種類が別になってきたところで、客が来た。
「すいません。物売りですがクシはいか―――」
瀬堂先輩の声がここで途切れた。全身もちろん頭から灰を被った私は、クシの前にシャンプーその他一式が必要だと考慮されたためだろう。
「―――がかと思われましたが、何でしたら洗浄セットはいかがでしょうか?」
さっと変えられる売り物。ぬう。さすが瀬堂先輩。一筋縄では行かないぞ。
そこへ・・・
「あら。お客様ですか?」
「ああせな。クシ売りだって」
端的に事実を告げ、
私はぽんと手を叩いた。
クシ売り。クシで梳く髪が必要。
せなを見る。長い髪が風になびいている。天使の輪っかは朝飯前だ!
「良かったわねせな。その髪梳いてもらったら?」
「よろしいんですか?」
「ええどうぞ」
というワケで、せなが髪を梳いてもらった。途端にふらりと倒れた。
「せなさん・・・?」
「おいせな! どうした!?」
わらわら集まってくる小人ら。彼らに見送られ退場するせなを、私は目元を手で覆って見送った。
(許せせな・・・・・・)
涙を堪える。ここで泣いてはいけない。泣くのならば最初から自分が犠牲になるべきだ。
顔を上げた頃には、もう物売りはいなくなっていた。
―――第5幕
第5幕―――継母の復讐劇〜胸ヒモ編〜
今日もまたこき使われて1日が・・・
「すいません。物売りですが、胸ヒモ改めタスキはいかがですか? 各種仕事時、袖が邪魔にならず便利ですよ」
「タスキ!?」
一体ここはいつ時代のどこの国設定だ!?
渡されたのは、確かにタスキ―――長いヒモだった。まあ、コレなら胸ヒモだろうがタスキだろうが何でもオッケーだろう。
「タスキかあ・・・。でも別に袖は―――」
「ボロボロになってますよ?」
明るく断言され、見る。
「ぅをう!?」
確かに袖はボロボロだった。家事をやっていて擦り切れたというより・・・・・・今しがたかまいたちに遭って切り裂かれたようなボロボロさ。
「い、いつの間に・・・!?」
明らかに犯人を見るが、物売りに扮装した瀬堂先輩はにこにこ笑うだけだった。
「・・・でもただの袖だし、捲くれば―――」
ピシ―――
「買いますよね?」
「・・・・・・。これは物売りではなく押し売りでは・・・・・・」
首に巻かれピッと張られ、私は目を逸らしホールドアップした。わざわざ後ろ向きにされて手が滑られるまでもなく絞殺されそうだ。
と・・・
今回もまた、救いの神こと小人が帰ってきた。
こちらを無表情に見やり、
「絞殺される際は気道を塞ぐより頚動脈を押さえる事をお勧めします。呼吸が出来ず即座に死ぬ人間はそうそういませんが、脳に血が回らなければものの数秒で気絶に追い込めます。あくまで気道を塞ぐことに拘りたいのでしたら気絶させた後でも構わないのではないでしょうか?」
「そこ直也!! 殺人を勧めるな!!」
「殺人を勧める? 何を意味のわからない事を。
僕はサバイバルの術を伝授しただけですよ? 前述の通り、気道を塞がれ即座に死ぬ人間はそうそういませんので、むやみに焦らずまずは落ち着く事です。そしてそれを外す事にばかり集中しすぎない事です。相手もまたそこに気を配っているでしょうから。
代わりに他のところを攻撃するのが有効な手段です。後ろから首を絞められていると想定するならば、頭突きを食らわす・顔面に裏拳・後ろに倒れ込む・わき腹に肘打ち・脚への攻撃その他いろいろ攻撃法はありますから」
「ほおおおおお・・・・・・」
どす黒い声で呟いたのは――――――私だった。
タスキだかなんだか、とにかく首を絞めるには丁度いいものを受け取り、
「だったらアンタが実践してみなさいよ!!!」
「―――っ!!」
―――10分後、直也は動かなくなった。ちゃんと忠告を元に、首に巻いたロープを枝に引っ掛け固定して、遠くに離れて見物していた。
「なるほど。確かに随分長くもつのね。
―――おや?」
見やる。瀬堂先輩はもういなくなっていた。
「・・・・・・・・・・・・。ま、いっか」
―――第6幕
第6幕―――継母の復讐劇〜毒リンゴ編〜
今日も物売りが来た。勧められたのはリンゴだった。
いかにも毒物注入済。どうやって断ろうか悩んでみたところ、
「お、美味そうなリンゴじゃねーの」
「あ、加瀬先輩・・・」
「1つ貰うぜ――――――ぐふっ!」
小人の森連続殺人事件、3人目の犠牲者が出た。・・・いや、4人目だった。最初に私がぶち倒した豪の勘定を忘れてた。
残る3人がばたばた駆け寄ってくる。
「加瀬部長!! しっかりしてください!!」
「お前やっぱり悪魔の申し子だったのか!?」
「ここはやっぱり―――」
据わった目で烈。弓を構え―――
「悪魔退治、しかないみたいだね」
その弓―――彼の殺意の意志は、
―――私の方を向いていた。
「いやああああああああ!!!!!!!!!!!!」
―――第7幕
第7幕―――王子様到来
ぱからっ。ぱからっ。
ヒヒーン!
「どーどーシルバー。ご苦労さん。
ここやな、姫さんがおるっちゅートコは」
白馬(ホンモノ)からひらりと舞い降りた不来。さすが運動神経あるだけある。
クリスタルの棺に横たえさせられ回りに封印の結界を施された私を見、その周りで歓喜の踊りを踊る小人3人とやんややんや盛り上げる継母と狩人を見。
「俺が倒すヤツは誰や!?」
『それ』
全員が異口同音で指した。私を。
「おっしゃ覚悟しいよ魔王!! 今日こそにっくき自分、地獄に送ったるさかい!!」
悪魔から魔王に昇進ですか!? 今日こそってあなたと私は初対面ですが!? にっくき言われてもそもそも確認しなきゃわかんない私をなぜそこまで憎むんですか!?
・・・いろいろ言いたい事は山以上にあったが、それらを全て押しのけ思った事は1つだった。
(大阪弁の王子って・・・・・・・・・・・・すっげーガラ悪・・・・・・)
ヒクヒク痙攣が始まるが、いかんいかんここは我慢! これから王子のキスでクライマックスではないか!!
一応人並みの女性っぽく、ちょっとどきどきしながら待つ。不来は結界を難なく越えクリスタルの蓋を開け身を屈め―――
「これで年貢の納め時やああああ!!!!!!」
「違あああああああう!!!!!!」
ドゴスッ!!!
「をぶっ・・・!!」
耐え切れなくなり突っ込む。振り回したクリスタルの蓋は、見事不来の掲げた剣―――ごと不来本人を吹っ飛ばした。
棺の中で仁王立ちする。がん!と踏み込むと、棺はあっさりがしゃんと割れた。周りがさらに引いていく。
「私は姫!! あなたが探してたその姫!!」
「・・・・・・・・・・・・」
何とか身を起こした不来。極めて不満そうな顔でこちらを見ていた。
「・・・・・・ええ〜」
「何よその不満そうな顔と声。何か文句あんの?」
「俺嫌や〜。こない暴力姫さん妻にすんの〜」
「うるっさいわねえ!! 私だって普段は清楚可憐おしとやかな婦女子なのよ!! たまたま今はこうなってるだけで!!」
なおも嫌や〜嫌や〜と首を振る不来に、私は口とへそをひん曲げた。ばきぼき指を鳴らし物理的強制力を発動させようとしたところで。
「まあ待ちなよ不来君。
そんな君にはもっとぴったりなお姫様がいるから」
「どこにですか?」
「そこに」
瀬堂先輩が手で指し示す。そこにいたのは烈だった。
『・・・・・・は?』
私と烈の声が、期せずハモった。
ぱちりと指が鳴る。同時に動き出した三村先輩が、烈を大きな布で隠した。
『ちょっと三村先輩!! 何するんですか!?』
『じっとしていろ。すぐ終わる』
『や、やだ・・・!! 先輩、そんな・・・・・・!! 恥ずかしい・・・・・・』
どたんばたん。
一体布の中で何をやっているのか。むしろ聞かされるこっちが恥ずかしい声を上げること1分。ばっ!と布を取ると、そこにはドレスに着替えた烈がいた。
『っおおおおおおおおおお!!!!!!!!!』
突如見せられた魔術ではなく奇術にか、それともまるであつらえたかのように似合っている烈にか、会場中から拍手喝采が沸き起こった。
「どうかな不来君? 清楚可憐でおしとやかな姫が誕生したけど」
「オッケー!! さー結婚しよか烈!!」
「おいちょっと待てよ不来!! その前に僕は男だぞ!?」
「あーそない細かい事は気にせんでええよ。なにせ俺は王子様やさかい。法律の1つや2つ、軽〜く変えてみせるで」
「そーいう問題じゃないだろ!?」
「2人ともお幸せに〜♪」
「おっしゃ超特急や! 行くでシルバー!!」
ヒヒーン!!
ぱからっ! ぱからっ!
「助けてええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!」
こうして、2人はあっという間にいなくなった。
静かになった森に、狩人三村先輩の声だけがとうとうと響き渡る。
「なるほど。これがお前なりの復讐か」
「考えたでしょ? 白雪姫は男にモテず一生結婚できないままでした、と」
「お前は『継母』な時点で、少なくとも白雪姫の実父と結婚したしな」
「この勝負は僕がもらったよ」
「はあ・・・。さいですか・・・・・・」
小人の森連続殺人事件もこの人にとってはその程度の意味しかなかったらしく。
とりあえず命の保障がなされたならもういっかと、私はぐったり疲れた声で頷くしかなかった。
―――最終幕
最終幕―――再び屋敷にて。
私と残った小人2人は、結局継母に引き取られる事になった。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」
《75対25でお前の優勢となった、瀬堂。ただし女の一部が同情心から白雪姫に寝返っている》
「やれやれ。まだこの僕の魅力をわかってないのか。
どうすればいいと思う?」
《同情心を逆に利用する事だ。1つは、ここでお前が白雪姫に対し寛容な態度を示せば懐の大きい人としてさらに人気が上がるだろう》
「白雪姫に優しくするの? 嫌だなあ」
《なら2つ目だ。同情した女たちを苛めてみろ。白雪姫に同情するヤツは自分を姫に置き換えて悲劇のヒロイン振る実質マゾだと思われる。置き換える必要がなくなれば白雪姫に肩入れする理由もなくなり、また苛めるお前を愛せばさらなる悲劇へと繋がる。これでお前は何の苦労もせず100票全て獲得の完全勝利を得るだろう》
「よし! さっそくやってみよう!
―――三村!」
「はっ」
「白雪姫に票入れした25人の個人情報、なるべく詳しく洗い出して」
「ここに既にある」
「さすが三村v 頼りになるねv」
「それほどでも」
「というか・・・プライバシーの保護は公約に掲げていたんじゃ・・・・・・」
「瀬堂の命令だからな」
「うわ。この人さいてー・・・・・・」
「白雪姫、独房へ1週間―――」
「あ〜いえいえ。ウソですv ナイス三村先輩vv」
「君は何三村に色目使ってるのかな? まあ何をやっても僕に勝てるとは思わないけど、
―――白雪姫。独房に1週間拘留」
「結局そうなんですかあああああああ!!!!!!!???????」
・・・・・・まあ、そんなこんなで私たちは幸せに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・? 暮らしましたとさ。
―――了