そうだ。俺は変わるんだ。そのためにも、まずはあの人に謝るんだ・・・!!
寛容・変容のマジック
「不二さ〜ん!!」
練習の合間。見かけた後姿に、切原は声を上げて呼び止めた。
「え? 何? 切原君」
きょとんと振り向く不二。振り向いて―――さらにきょとんとした。
驚く不二の前で、深々と頭を下げる。
「今まで本当に申し訳ありませんでした。試合前に何回もケンカを売り、また試合中も怪我させてしまった事、本当に申し訳ありません」
今更謝って許してもらえるとは思わなかった。今はどうあれ、かつて自分が彼を様々な方法・様々な意味で傷付けたのは事実だ。
だが、それでも謝りたまった。もしこれで彼に許してもらえるのなら―――もちろんそんな都合の良い事があるわけないとわかってはいても、それでももしそれが適ったとしたら―――
――――――自分は本当の意味で変われると思った。
「切原君・・・・・・」
そんな切原の心をどこまで察したのか、暫しの沈黙の後・・・
不二は切原の肩に手を置いた。
驚きに目を開き、ゆっくりと頭を上げる切原。まるで迷える子羊のような、そんな彼に不二は優しく微笑み、
「今更何いい子ぶって謝ってんの? そんな事してキミ全て許されるとでも思ってる?」
「は・・・・・・?」
天使の笑顔とはやたらとギャップのある内容に、切原の理解が遅れる。
呆気に取られる切原に、もちろん笑みのまま不二は言葉を―――毒舌を重ねた。
「試合前の挑発位はまあ許してあげるよ。生意気な年下は弟と青学[ウチ]のルーキーで慣れてるしね。単に従順なヤツよりむしろそっちの方が面白いし。
でも―――
―――試合中のアレはどうかなあ? キミ僕に何回ボールぶつけたか憶えてる? 幸い橘みたいに酷い状況にはならなかったけどさあ―――ああ、橘はどちらかっていうと自爆に近いんだっけ? それの責任までキミに追及するのは悪いか―――、でも僕試合後病院行きになってたんだよねえ。あと一歩でそれこそ橘や幸村と同じく入院になってたよ。危ないなあ」
「えっと・・・・・・」
「で、それなのに君は頭を下げて謝るだけ? 自分がどれだけやったかわかってる? 立派な傷害罪だよ。しかも『事故』としては絶対に認めてもらえない『故意の』、ね。
それが何? 頭下げれば許してもらえるって本気で思ってる? 『誠意溢れる態度』で許されるのは最低限犯罪には引っかからない辺りまでじゃないかなあ? ていうか本気で『誠意』を見せたいんだったらいっそ丸坊主にして土下座でもしてよ。僕もそこまで冷血漢じゃないから、その位やってくれたらもしかしたら許してあげられたかもね。でも駄目だなあ。その程度じゃあ・・・」
くすり、と冷笑が浮かぶ。はっきり言って自分の般若より遥かに恐ろしい。
ざっ―――! と顔から血の気をひかせる切原。さらに顔を近付けられ、耳元に囁かれる。
「訴えちゃおうか? 立海大付属中2年エースの切原赤也に暴行を受けました、って。
観客全員が証人だよ? 橘のは『事故』の一言で片付けられるけど、僕のは明らかにキミに責任があるわけだしね。
――――――立海の全国出場・・・・・・どうなっちゃうんだろうね?」
「お、脅すんスか!?」
「脅す? やだなあ。人聞き悪い事言わないでよ。
僕はただ仮定の話しただけさ。けど・・・
・・・・・・キミの態度次第かなあ・・・・・・?」
「な・・・、あ・・・・・・」
「さて切原、『謝罪』の方法でキミが他に思い浮かぶのは?」
「い・・・・・・、慰謝料、っスか・・・・・・?」
「なるほどねえ。慰謝料か。それも1つの手だね」
切原の言葉に、瞳を閉じて思案するように上を向く不二。
顔を戻し―――ゆっくりと目を開く。
「額に応じて考えてあげるよ・・・・・・・・・・・・」
底冷えする声。切原が硬直している間に、
いつもどおりの淡い笑みに戻り、不二はぽんと軽く肩を叩いた。
「まあそう深く考えないでよ。ね? 僕は気にしてないからさ」
「へ・・・・・・?」
手の平を返したようなその態度。「じゃあね」と明るく手を振り去っていく不二を見送って少し・・・
「―――ほう。不二に謝罪したのか、切原」
「真田副部長・・・・・・」
「お前もついに変わり始めたようだな。これからどのようになるのか楽しみだ。
―――しかし不二も大したものだな。あれだけの事をされ、なおかつ全てを水に流すとは・・・」
「はあ・・・・・・」
しきりに感心する真田に曖昧になんと返すべきかわからず頷き、
―――ふいに悟った。
(もしかし・・・なくてもさっきいきなり態度変えたのって・・・・・・)
タイミングからして、間違いなく真田が来たからだろう。
ついでにいうとあの言葉。まるで爽やかに全てを許したようだが、隠れた主語は間違いなく『慰謝料の額は』だろう。
(な・・・なんつー人だよあの人・・・・・・)
「ん? どうした? 切原」
「い、いえ何でもないっス!!」
尋ねてくる真田に必死で手を振る切原。
振って・・・・・・
その手を垂らし、深くため息をついた。
「思うんスけど・・・・・・
――――――俺より前に性格変えた方がいい人っているんじゃないっスか・・・・・・?」
「?」
―――切原、白くなった途端に敗北決定。
切原・・・。ああ、なんで白くなってしまったんだ・・・・・・。黒い君だけが唯一の、不二先輩への対抗手段だと思ってたのに・・・・・・。
そんなわけでJr.選抜合宿編もさる6/16で3週目突入。あ〜切原怪我の原因が本当にカルピンじゃなくってよかった(By『Jr.選抜合宿的傷害事件!』)・・・・・・。来週はいよいよ千石さんの出番だ〜〜〜vvv わ〜いわ〜い♪ もー思いっきり桃ぶち倒して下さい!!!
では予告で最も盛り上がった今回のアニメ、実は裏ポイントはやはり不二のバックに常に佇む千葉県民ですか?
2004.6.19