せんじょうの騙し合い 〜Party Game〜
7.賭けの代償 −シングルス編 Latter Part− <dodeca>
夕日の沈む水平線を正面に進む。このまま進めば多分九十九里に辿り着く・・・・・・といいなと思う。実は東京湾ではなく銚子から出発したのだ(おかげで『バイト案内』の来た佐伯は、交通費支給といったくだりがなかったため自転車で20kmほどかっ飛ばしてやってきた)。
水上バイクの上で今だ背中合わせの状態で、
佐伯が口を開いた。
「そういやお前これからどうするんだ?」
「・・・・・・いきなりシビアな問題突き出してくんなー・・・」
「だってこのまんまアメリカ帰るとかいって逆方向行かれたらどうしようもないからなあ」
「ああ、また無一文でアメリカ行きか」
「今回はそれ以下だ。パスポートも何も持ってない。即座に捕まるよ。
そういやお前大丈夫か? 不法入国して」
「してねーよ!」
「そうか偽造パスポートか」
「それも不法侵入だしそもそも俺は越前リョーガとして戸籍から住民票から全部あんだよもちろんパスポートもビザも!
まあにしてもだ。とりあえず桜吹雪が捕まっちまった以上アメリカにゃ帰れねーなあ」
「なんでだ?」
「俺は桜吹雪と共犯みてーなモンだし、特にアメリカじゃ有名だから帰りゃすぐバレる・・・・・・・・・・・・つーのもあるんだが」
「だが?」
「まず帰りの交通費がねえ。ついでに日本に行ったところで生活費も。そこらへんは全部桜吹雪に用意させてたし、持ってた分も船に置いてきちまったからな」
他人事のようにのんびり自分の貧困状況を語るリョーガ。じっと聞き、
「お前も大変だなリョーガ・・・・・・」
「何だよその同情的な眼差しと妙な猫なで声は!?」
「わかるぞお前の苦労は。でも大丈夫だ。お前は運がいい」
「・・・・・・どの辺りがだ?」
「1つ、越前家は千葉から結構近い。2つ、だから行くための交通費やら生活費やらは俺と一緒にバイトをすれば1日2日で捻り出せる」
「お!? 丁度いいバイトあんのか!?」
「あるぞ丁度いいのが。日払いかつ割と高めで何より合法的だ」
「・・・・・・・・・・・・それは俺に対する嫌味、と」
「まあ気にするなよ。海の家でのバイトなんだ」
「海の家か。なるほどな。けっこーまともじゃねえか」
「でもってお前はそこでお客さんたちにご指名されて会話してればオッケーだ。お前の顔と話術と度胸ならどかどか売り上げ伸ばせる!」
「海の家はいつからホストクラブになった・・・・・・?」
「その名も《クラブ・海の家》と―――」
「却下! ンなトコで中学生がバイトしてどこが『合法的』なんだよ」
「ちょっとした冗談だって。バイトっていっても知り合いがやっててお小遣いもらってるだけだから正式にはただの『お手伝い』だし」
「どこの部分が『冗談』なんだ!?」
「まあ本題に戻って、海の家でのバイトは本当。ただしお前も言ったとおり中学生のバイトはあんま良くないから、何か訊かれたら『駄賃つき手伝い』って言い切れよ特に教育委員会に遭遇したときは」
「『合法的』・・・・・・?
つーかちょっと待て。千葉から東京行く交通費稼ぐのになんで1日2日かかんだ? 1・2時間じゃねえのか?」
「ああお前はアメリカから帰ってきたばっかだから知らないんだよ。最近日本の交通事情と雇用状況は大幅に変わってな」
「いや。家越してきた5ヶ月前にも日本来てるし。んでもってそん時ぁどっちも普通だったぜ?」
「だから『最近』と」
「どーいう改革が行われた結果だ!? つまりお前ぜってー上前ハネるつもりだったな!?」
「わかってんだったらいちいち聞くなよ」
「開き直るんじゃねえ!!」
一通り突っ込みため息をついて、
リョーガの口調が再びのんびりに戻る。
「何にしろ、そもそも越前家[ウチ]に帰るつもりもねえしな・・・」
「? 何で?」
ぱちくりと瞬きする佐伯。笑ってそれを見て―――丁度横目で後ろを見たところ佐伯が振り向いてきたのだ―――、
「なんつーか・・・・・・、一回出ちまった家に今更のこのこ帰るってのもな・・・。親父も母さんも俺がやってる事知ってるし・・・。それに、
――――――俺が戻るとチビ助に悪りいからな」
・・・にやりと笑った。
意味がわからず佐伯が首を傾げた。別に2人の仲が悪いようにも見えなかった。恋愛がらみの云々も決着がついた。後あるとすれば・・・
(何だろうな?)
人の家の事情、それもまともに話して2日目のヤツの事情などわかるわけもない。わざわざ聞くのも悪そうだ。そもそも話す気がないからこんなぼかした言い方をしたのだろう。
考えるのは諦める。わからない事をいつまでも悩んでいても無駄なだけだ。
「なら・・・・・・
――――――俺ん家来るか?」
「は・・・?」
「ウチ今双子の姉貴が海外留学っていうか海外引っ越していないし。家族3人で持て余してんだよ。田舎は土地が安いとかいって広い家建てたから」
「え、と・・・」
「ああ、家族はちょっとクセあるけど慣れれば平気だから」
「そりゃお前見てりゃすっげー納得するけどな」
「生活費はまあ1人増えても何とかなるだろ。お前学校行ってないだろ? 罪悪感感じんならバイトでもやって少し稼いでくれ。というかそれやんないとその内部屋の電気ストップとか食らうから」
「いや全然何とかなってねえだろ3人の時点で既に」
「ああ、本当に金がないわけじゃないんだ。ただ1人が使える分が極端に制限されてて、それだけじゃ食いモンと水以外捨てないといけないだけで。だから真夏にクーラー付けられずひたすら涼しいトコ捜し求めてうろつくとかやりたくなかったらバイトした方がいいぞ。最後の手段として家の貯蓄下ろすっていうのもあるけど、やると毎日母さんに凄まじく嫌味言われ続ける上に利子が違法ラインだったような気がする28%だ」
「うあ。何かどんどん行く気失くすな」
「そうか。じゃあ今の話はなかった事で」
「ああいや! 行きます行きますお世話になります!!」
「そうか。じゃそのまま真っ直ぐな多分。
でも丁度よかったよ。今回のバイト費、お前の部屋から持ってきたから。まあ世話になる礼金だと思って」
「はあ!?」
「お前凄いなー。普通に財布に10万円とか入ってんだな。しかもいろいろ漁ったらけっこー金目のモンがごろごろと」
「何だよそれ! だったらそれ俺に渡しゃ問題解決じゃねえか!」
「じゃあ返す」
「・・・・・・ごめんなさい見捨てないでください」
「お前素直でいいなあ・・・vv」
「あーもーホントお前マジでムカつく!!」
・ ・ ・ ・ ・
夕日の沈んだ水平線を正面に進む。このまま進めば多分九十九里に辿り着く・・・・・・といいなと思う。日が沈んだおかげでもう方向が全くわからない上そろそろ冗談抜きで燃料がヤバそうだ。
水上バイクの上で今だ背中合わせの状態で、
リョーガが口を開いた。
「そういや『金の切れ目が縁の切れ目』なんて跡部クンも言ってたけど」
「ん? だとしたらお前はとっくに誰も彼もと縁切ってるだろうな」
「・・・そういう空しい事言うなよなただでさえいろいろ切羽詰ってるってのに」
「はいはい。んで?」
「いやそう言うけどさあ、
―――金が切れて始まる縁もあんだな」
「・・・・・・・・・・・・」
思い出す。自分たちが始めて会った7年前。あの時確かに全ての始まりは自分が無一文だった事だ。金があればあんなあからさまに怪しい話に乗りはしなかった。
思い返す。今こうしている現在。リョーガと自分が同じ方向に向かっているのは、今度はリョーガが一文無しだからだ。
回想を終え、
2人は同時にプッと噴き出した。
「ま、俺たちにはお似合いか」
「そうだな、何にしろ」
『これからよろしくな』
―――Fin
―――とりあえず終わったあああああ!!! と長編を書く度恒例の工夫のない出だしで始めます。
まずお詫び、いろいろくどくてすみません。話があちこち飛び、読まれる方はさぞかしわかりにくかったでしょう。しかし伏線大好き人間の私。どうしてもあれもこれもと入れたくなり、しかもコレ書き始め当初から全っ然!
違うクライマックスなのですが(当たり前。そもそもサエは出ないはずだったのだから)、それでありながら前を書き直さないという最悪ぶりを披露。なぜか展開どこどこ変わったのに前とあまり矛盾してないんですよねこじつけの成果として。
しっかしこの話、千石さん大活躍? おかげでさりげに他の人がすっかり忘れ去られている傾向にありますが、それでも一応予想以上にはみんな出張ってくれたかな〜・・・ダメですか? やっぱ。
終わった記念に映画の内容と絡めて書き出すと長いので省略しますが、映画で気に入っている2シーンがどちらもラスト近辺。リョーガがついに桜吹雪に完全反抗するオレンジ回想シーンと水上バイク2人乗りの越前兄弟。どっちも入れられてよかった(ただしボール当てたのリョーガが先でしたね。リョーマに散々促してたのでてっきりリョーマからかと・・・)・・・vv おかげで映画観られた方にはクドいかもなあと思いつつ・・・。ああしかしひとつ残念。映画ではせっかく正々堂々やろうとしてたところなおも八百長を迫る桜吹雪にリョーガが切れた的展開だったのですが、まあリョガサエにつきサエ絡みにしたところなんか安っぽい話になってしまったような・・・・・・。ああ! 映画の脚本家の方申し訳ありませんいろいろな意味で!
開き直って(早)、このラスト?
シーン、書いてて一番困ったのがサエの扱いでした。リョーガと同じように水の底から脱出するか、それとも表裏一体だからこそ自分にはお前が必要だという展開にするか。リョガサエ的展開(というか一般的CPの流れ)なら後半でしょうかね。ただしCPは基本的に受けの方が強いというのが自論な私はなよなよなままのサエは書けませんでした。やはりお互い独立独歩、その上で支え合える関係にしたい・・・! という感じでこんなラストです。けど・・・確か本当はサエと同じ台詞を言う(もちろん口調の差によりちょっとは変わるでしょうが)リョーガに、サエが「決めるも何も、選択肢ないじゃん・・・」と苦笑い―――今にも泣きそうな、それでいて本当に嬉しそうな笑顔を浮かべ両腕を広げる彼のもとへ飛び込む・・・・・・という展開だったような気がします。まあどっちにしろ折れていたのが鎖骨か鼻柱かといった程度の違いでしょうが。もうはちゃめちゃです。皆様、散々じらしたラストがコレ。いかがでしょうかねえ・・・。何だか石でも飛んできそうです・・・。しかし! 書き終わったのでようやっと映画2回目観に行けるー! しかも今日は丁度レディースデーだ!! さあ行くぞ!
そしてちなみに、実はこの話、ここで終わりではありません。映画における夕日に消えたリョーガのノリならアメリカ帰ってプロデビュー! というのも憧れるのですが(しかもアニメじゃリョーマアメリカ行くし。アニプリにも登場してくれないかしらお兄ちゃん・・・vv)、いきなり原作に突っ込んで全国大会。さって何が起こるのか・・・・・・ここまで来れば予想つく人もいらっしゃるでしょうね。では、早めに上げられるよう頑張ります!
・・・そういえば、コレを書くのに2・3回徹夜あるいは寸前やりました。む〜! 長かった・・・! 文字数カウントでは余裕で10万字超えてました。『お家騒動!』§0ですら9万だったのに・・・。そして―――あのテニスシーン、文字で書くのは無理です! 火柱vs津波(風味)で空に飛び立つって・・・。そのため映画では一番時間かかってるハズの越前兄弟戦Finalが十行前後で終わってしまった・・・・・・。あ、なおワンポイントマッチにしたのは、5−2からリョーマが巻き返して勝つとお兄ちゃん立場ないですし、それにそれだけやったら終わる前に船沈むでしょうからです。
では今度こそラストの『おまけ』にてv
そうそう。本編終了記念に最初に戻り、このタイトル。なんで『せんじょう』と平仮名なのかというと『船上』でも『戦場』でもどっちでもいいからだったりします余談として。なお各話のカウントの仕方がそれぞれ違うのは何となく(爆)です。一応主役扱いだったはずなのに途中から出番激減の跡部氏への配慮か、ドイツ語だのギリシャ語だのも入ってたりしますが。
2005.2.15〜18