メルヘヴン、心の底から誤った鑑賞法
〜こんな展開だったらイヤだ〜





 



Take2.


 「ふ・・・ふ、やるな。
  だが!!」
 なぜだか既にボロボロのコウガ。こちらは無傷のアルヴィスを指差し、言う。
 「お前には俺様に勝てない理由がある。そいつが何だかわかるか?」
 「なるほどな。
  身長では負けてるな。もちろん体重でもだ。声の低さでも負けそうだ。逆にテンションの高さもな。
  何より勝てないのは、弱いクセしてそういった大口叩く肝っ玉の大きさか」
 「違げえ!! というか肝っ玉のデカさは明らかにおめえの方がデケえだろ!?」
 「ふっ・・・。何を馬鹿な事を」
 「・・・今のを鼻で笑って否定できる要素がどこにあるのかが知りてえよ」
 肉体以上に精神にダメージを負ったらしい。げんなりと呟き、コウガは改めて萎えた指を指し直した。
 「お前のそのツラさ。そいつは強い男のツラじゃねえ」
 『―――っ!』
 フィールドの2箇所から声なき悲鳴が上がる。アルヴィスと―――アラン。
 「止めろ〜・・・。止めとけ〜・・・。止めといてくれその先は〜・・・!!!」
 「何だよおっちゃん。ンなビビってよ」
 きょとんと問い掛けてくるギンタ。もちろん何も知らない彼は、ただ異様に怯えるアランの様子を不審がって尋ねただけだ。が、
 アランはそんなギンタを見る余裕もなく、見開いた目を中心のきのこに向け震えるしかなかった。
 震え、予言する。
 「この試合、コウガが死ぬ」
 『え・・・・・・?』





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 そんな予言をされているとは知らず、ついでに今まで実に面倒くさそうだったアルヴィスの目にいやに冷たくそして熱いものが篭り始めていたのにも当然気付かず、コウガは言葉を続けた。
 「拝ませてやるぜ。本当に強い男のツラってヤツをな」
 己の顔を覆う仮面に手をかけ、外す。
 現れたのは・・・・・・
 ・・・・・・何ともブサイクな男だった。
 『・・・・・・・・・・・・』
 コメントを失くす一同。アルヴィスの目からも光が消える。
 瞼を落としそれを消した彼は、僅かに顔を横へと背けた。一瞬だけ肩が小さく震えた。
 (笑うな。笑ってやるな。
  顔は生まれつき、天性のもの。それを笑うのは失礼だろ? コイツだって『ブサイク=強い男』と前向きに捉える事で気持ちを昇華させ、それでもコンプレックスに負け普段は仮面で隠してるんじゃないか。
  そこを指摘して笑い飛ばすのはあまりに人でなしだろ?)
 必死で笑いを噛み殺すアルヴィス。そんな思いを胸の内に秘めているなどこれまた露知らず(むしろ知らなくて良かっただろう)、コウガは外した仮面をアルヴィスに突きつけた。
 「おめえみてえな綺麗なツラしたヤツは、心の中が穢れきってやがる」
 「うわ凄い偏見・・・」
 「けどアルヴィス・ドロシー・ナナシで考えるとけっこー合ってんじゃ・・・」
 「ギンたんアタシ綺麗って言ってくれるの!? ドロシーうれし〜vv」
 「何よギンタ!! 私は綺麗じゃないの!?」
 「えいやあの!! スノウは綺麗っていうより可愛いって感じだし―――!!」
 「俺まで入るんか。ギンタも酷いなあ。
  どちらかっちゅーとチェスナイト陣営でファントム・ロラン・キャンディスに焦点当てて欲しいわ。馬鹿・へたれ・変態で3強やんか」
 「そうですねえ。美形にロクなヤツはいない。お見事です」
 「なん? 俺にケンカ売っとるんか犬・・・?」
 「アルヴィスはそんなんじゃないもん!!」
 フィールド内外でいろいろボロクソに話が飛び交う。アルヴィスもそれに加わる―――事はなかった。
 「そうか・・・・・・」
 ぽつりと呟く。その瞳に、恐ろしく強いものを湛え。
 「っ・・・! なんだその目は」
 呑まれうろたえるコウガにロッドを突きつけ、
 アルヴィスは笑った。それはそれは綺麗に。
 「なら、
  ――――――それだけブサイクな顔なら、今更ちょっと位さらに崩れたところで気にならないよな?」
 「へ・・・・・・?」





 どがばきごすげすぐしゃげんがんごしごがげしげしぐちょぼぐがんがんがんがんがん・・・・・・





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 「ちなみにアルヴィスな、なにせアイツも指摘した通りあの顔だし、しかも今はまだしも第一次メルヘヴン大戦ん時なんてホントにただのガキだっただろ?
  クロスガードのメンバーにも散々からかわれかけてな、最初に言ったのがダンナじゃなかったら殺されてたな―――ああ、ダンナは多分オメー思い出して可愛いとか言ったんだろーなギンタ。
  チェスは・・・・・・それで生き残って? んのがファントムだけだって時点で大体察してくれ」
 『なるほど・・・・・・・・・・・・』



―――Take