メルヘヴン、心の底から誤った鑑賞法
〜こんな展開だったらイヤだ〜
Take4.
仰向けに倒れたコウガ。ブサイク美形以前に原型は最早欠片も留めていないが、それでも体の端が時折思い出したようにぴく・・・ぴく・・・と動くところからすると、1割程度は生きているらしい。
そしてアルヴィス。打たれ強さだけでナイトまでのし上がった相手を本当に力押しで負かした男は、殴りすぎて痺れた手をグーパーしていた。それと若干息は上がったか? いずれにせよ、まあダメージはその程度だった。
アームを発動させたままコウガに近寄りつつ、解説する。
「お前は確かに打たれ強い。それに関しては俺も認める。これだけ殴って今だに死んでいないのは、ファントムを除けばお前だけだ」
「ファントムにもやったんだ力押し・・・・・・」
「だが打たれ強いというのは所詮『痛みが我慢できる』だけだ。ダメージそのものは受けるし、溜まればいずれは死ぬ。
そして俺がいつも相手しているのは正真正銘死なない相手だからな。俺はいつもそいつを9分殺し程度にまでは追い込んでいる」
「しかもいつもだし・・・・・・」
「というか、ダンナですら封印がせいぜいだったファントムを毎日9分殺しって・・・・・・実はアルヴィスの方がもう強ええんじゃねえのか?」
「わかるだろう? 俺とお前では格が違うんだ」
「いやそれってむしろ下の方が光栄だと思う・・・・・・」
周りが何か言っている間にも、アルヴィスはコウガへと辿り着いた。なおその間コウガは何か呻くのが精一杯だった。
その口に、
カツッ・・・・・・
ロッドの先端を突っ込む。
「は・・・あ・・・・・・」
「ところで知っているか? たとえどんなに筋肉を鍛え打たれ強くしようが、決してどうしようもない部分というのは存在する。それこそアームを用い全身を強化しない限りはな。
―――口の中というのはそのポイントの1つだと思わないか?」
「ひゃめ・・・・・・!」
これから何をやろうとしているか察したらしい。コウガが動く範囲で懸命に首を振った。目からは涙が零れている。
見下ろし・・・
アルヴィスはふっ・・・と笑った。瞳を閉じ、肩を竦める。
「俺はお前の言うところの『心の中が穢れきったヤツ』だからな。そんな様を見せられても全く哀れみは感じないな」
「うわサイテー・・・・・・」
「だがあくまでそれはお前が決めた事だ。俺の心が穢れきっているというのは貴様の言い分によるとであり、実際はそうではないのかもしれない」
「実はけっこー気にしてたの・・・?」
「ちゅーか、口ン中に棒突っ込んで自己弁護不可の状態で謝罪の脅迫っちゅーのは・・・・・・・・・・・・ごっつう心穢れきっとる証とちゃう?」
「という事で、お前にチャンスをやろう」
レギンレイヴ城で待機しているナナシの声が聞こえたか、笑ったままアルヴィスはこんな提案を出した。
「今からロッドを外すから、好きな言葉を話せ。内容次第でお前の寿命は大幅に変わる」
「寿命が変わる・・・?」
「オブラートに包み込んでるようで実にストレートな言い振りね。つまりアイツが『美少年=心が穢れてる』発言を取り消して謝ったなら生かす、それ以外なら殺すってコト」
悩むギンタにドロシーが解説している間にも、ロッドを抜き取り・・・・・・
「てめえこのヤロ―――!!」
「ああそういえば―――」
ヒュッ―――!!
途端起き上がろうとしたコウガの、今度は右目に突きつける。眼球残り1cm。
瞬きすれば瞼が触れ合うところで止め、だがそんな事をしているとはとても思えない様子でアルヴィスは続けた。上を向き何かを思いついたように。
「目というのもさっきのポイントの1つだったな。このまま突っ込めば脳まで到達か。中でぐりぐり引っ掻き回せば、いくら体は打たれ強くとも生存は絶望的だろうな。生きていたら敬意を表し拍手をやろう。
――――――ところで今お前何かやりかけたか?」
「すいませんごめんなさい。美少年は心もとっても綺麗だと思います。綺麗なので人殺しとかそういう汚い事はやらないと信じています。美少年万歳」
「キャラ変わってるし・・・・・・」
見下ろすアルヴィスに泣き笑いで媚びるコウガ。多分互いに判定不能なほど心は穢れきっているだろう。
アルヴィスはうんうんと小刻みに頷き、
「つまり大前提として、自分が美少年だと思っていない俺は人殺しも可という事だな?」
『は・・・・・・・・・・・・?』
どがばきごすげすぐしゃげんがんごしごがげしげしぐちょぼぐがんがんがんがんがんげきごっぐしゃばきめきどごぐじゃぼきどすげっぎんがんごずぐしゃごげぼごぐしゅぶちゃばぎげしどずっ・・・・・・
―――Take・・・