『奇』跡 〜I love youI need youI want you





2.英二にとってのリョーマとは?  その1



 さてその後、なんとか暴れ狂う英二をなだめて再びリョーマと合わせる事に成功した一同。
 「リョーマ・・・・・・」
 とりあえず、覚えていないながらも全ては不二と大石から聞いた。自分の事、この先輩の事。そして―――自分と『英二先輩』の事。
 大きな瞳で、だがそれを自分より少し下を向け、心配そうにおどおどと自分に呼びかけてくる彼のその目をじっと見て、リョーマは確認するようにゆっくりとその名を呼んだ。
 「英・・・二・・・・・・先輩・・・・・・」
 それを聞き、英二の顔が少しずつ上を向いてきた。ゆっくりと、目を見開いて。
 「『英二』でいいよ、『おチビちゃん』v」
 にっと笑ってそう言う『英二』。その嬉しそうな顔に、リョーマもまた自然と笑みを零して囁いた。
 「『英二』・・・・・・」
 と―――
 なぜかそれを聞いた英二の顔がくわっ! と強張った。
 「英・・・・・・二・・・・・・?」
 心配そうに呼びかけ、英二に近付くリョーマ。
 伸ばしたその手が―――ぱしり、と弾かれる。
 「え・・・・・・・・・・・・?」
 わけがわからずリョーマが呆然とした。みんなの話を合わせると、自分とこの人は恋人同士で、でもってこの人は自分のことを凄く心配してて、最初に呼んだ時は本当に嬉しそうな顔をしたから、だから・・・・・・
 ぽろぽろと、目から涙が零れる。
 「俺・・・・・・おかしい、の・・・・・・?
  わか、んないよ・・・・・・。どー、したら・・・英二、喜んでくれんの・・・・・・?」
 弱々しい声で言うリョーマに―――
 「そんなの俺のおチビじゃない!!!」
 英二はそれだけ叫ぶと一気に走り去っていった。





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 再び残された一同。こちらもまたわけがわからず呆然とする中、淡々と乾が解説をした。いつものデータノートを広げ、
 「今までのデータによると・・・・・・
  越前が菊丸の名を呼ぶ際、笑顔だったことは
0.7%。なおここには唇を吊り上げたいわゆる『挑発的な笑み』も含まれる」
 「うわすっくないっスねー・・・・・・」
 「というか、じゃあ普通に笑ったのって何%さ・・・・・・」
 「さらに心配そうに見つめたのは
0.03%」
 「それってほとんど0なんじゃ・・・・・・」
 「そして菊丸の前で越前が泣いたのは完全に今回が初めてだ」
 「だろうな」
 「総合するに―――菊丸がああ思ったのも無理はない、というわけだ」
 「そっちに賛成なのか・・・・・・?」
 「越前も気の毒にな・・・・・・」
 半眼で突っ込む大石。心配そうに呟く河村。彼らが見やるその先では、今だ両腕でごしごしと顔を拭い、ひっく、えっぐと泣き続ける哀れな記憶喪失の少年がいた・・・・・・。






―――記憶喪失により性格改変にも務めてみましたv
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2003.4.13