『奇』跡 〜I love you,I need you,I want you!〜
3.英二にとってのリョーマとは? その2
とりあえずリョーマに『越前リョーマという人間が如何に生意気だったか』というテーマでの議論を延々3時間ほど聞かせ続け、笑顔のままさらりと超辛口トークをしてくる不二、ノート片手に理論的な値と共に理屈を並べる乾、そして全てにやたらと重々しく頷く桃の努力(?)によってようやく納得してもらえる事に成功した一同。
残る4人も手分けして探した結果、黄金ペアが反省会をするコンテナの上で1人いじけまくっていた英二を発見。ごねる彼を力ずくで誘拐―――もとい強制連行して学校まで連れ戻す。
「で、ふと思ったんだけど―――改めて会わそうと思うから何か不自然になるんじゃないかな?」
「なるほど。ではいつもどおり普通に部活をしていて接触すればいい、という事か」
「ああ、それはいいんじゃないかな。その方が英二もリラックスできるだろうし」
不二の提案に乾・大石が賛成する。他のレギュラーらも特に反対する理由もなかったためこの提案が採用される事になった。
・ ・ ・ ・ ・
さて部活にて。
「いい? 越前君。ポイントは『生意気さ』だよ」
「強気に攻めろ。そうすれば間違いなく菊丸は陥落する」
「・・・・・・。生意気に攻めて喜ぶ・・・て、それってマゾなんじゃ・・・・・・」
「いいぞ越前、その調子だ」
「そうそう。今の半眼。それで英二もイチコロだよv」
「だから・・・・・・」
なぜかめちゃくちゃなアドバイスをさも当然のように飛ばす不二と乾。
そして一方。
「ほら英二、いつまでも拗ねてないで」
「そうっスよ英二先輩。そんな暗いのらしくないっスよ!」
「けど〜・・・・・・」
「いつもの元気はどうしたんだよ、英二!?」
「『強気にアタック!』が先輩のやり方でしょ!?」
「うう〜・・・・・・」
なおも落ち込む英二をひたすらに持ち上げ、励ます大石と桃。なお、その他3人は交代要員として待機している。
ノリははっきり言って純情片想いの2人を応援する友人一同。「やってられっか!」とさじを投げたくてたまらないのだが、このまま2人を放っておくのもウザくてたまらない。
が、努力はいつか報われるもので(と一般的に思われている、というかそうでもなければそもそも努力などしていないわけで)―――
「おっし! んじゃ〜今度こそおチビにちゃんと声かけるからな〜!!」
「いいぞ英二! その調子だ!!」
「ファイトっす英二先輩! その根性が大事っス!!」
わ〜!!! と2人がかりで盛り上げるのを背に、英二はテニスコートの脇にいたリョーマへと駆け寄っていった。
「おっチビ〜〜〜vvv」
「ぐ・・・・・・!!」
いつものように抱きつく英二。初めての事にロクな防御も出来ずにまともに極められたリョーマ。
酸欠により朦朧とする意識の中を、先ほど不二と乾に言われた事がひたすらにグルグルと回る。
(ポイントは・・・・・・強気と生意気!!!)
この瞬間、リョーマの中で何かが目覚めた!!
「おぐ!?」
後ろから抱き付いていた英二のみぞおちを肘打ちし、拘束が緩んだところで思いっきり跳ね除ける。
ぐるりと反転し、地面にうずくまる英二にリョーマは冷たく言い放った。
「ウザいっすよ、アンタ」
言って―――後悔する。やりすぎた。これは間違いなくやりすぎた。
(せっかく英二から話し掛けてくれたってのに何やってんだよ俺は!!!)
記憶喪失でもわかる。恋人ならこんな事はしない。とっさにやった事とはいえ、今のじゃ痴漢撃退だ。
パニックになって、頭を抱えたい衝動にかられるリョーマ。が―――
呆然と自分を見上げていた英二が、それを実行する前に感極まった様子で再び―――今度は前から―――抱きついてきた。
「おチビ〜〜〜!!! 帰ってきてくれたんだね〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「すんませ―――って、は・・・・・・?」
先程の英二の様子を思い出し、とっさに謝ろうとしたリョーマが彼の摩訶不思議の態度に言葉を失った。
「え〜っと・・・・・・それって・・・・・・」
だが、尋ねるリョーマを完全に無視する形で抱き締めたり頬擦りしたり頭を撫でたりと急がしい英二。
「よかった〜〜〜vvv もう2度と逢えないかと思ったよ〜〜〜〜〜〜〜〜vvvvvvv」
「よかったね、英二」
「本当に、よかったよ・・・・・・」
などなど、英二の後ろでは他のレギュラーらは拍手を送り、特に大石などは嬉し涙まで流していた。
「・・・・・・・・・・・・」
素晴らしく納得のできない状況に、抱きつかれたままリョーマが半眼で呟いた。
「この人たちの中の俺って、何・・・・・・?」
が、残念ながらリョーマの呟きを聞くものは誰もいなかったらしい・・・・・・。
―――さて、他のレギュラーたち(特に不二と乾)は果たして2人をくっつけたいのかそれとも破綻させたいのか?
Go to next stage!
2003.4.13