The Nightmare





pre1〜






 (あつ・・・・・・)


 空気のよどんだ蒸し暑い通りをよたよたと歩きながら、烈は心の中でそんな事を呟いていた。口に出す気力もない。瞼にたまって視界を遮る汗を拭く気力もまた。
 季節は夏真っ盛り。じりじり照り付ける太陽の光に、さすがにいつもの笑顔を崩して恨みがましく空を睨みつける。容赦なく肌を焦がす陽射しは、まるで火そのもののようだ。体中を舐め回し、気力という名の燃料をゆっくりと燃やしていく。ゆっくりじっくり、しかし着実に。


 見上げ疲れた首を下に垂らす。目に入ったスーパーの袋。中身に合わせて不恰好なそれは、冷たさを誇示するかの如く周りに水滴をはびこらせている。
 (飲み物・・・飲んじゃおうかな・・・・・・)
 わざわざ暑い制服姿で烈がこんなところを歩いているのは、今日もまた生徒会の集まりがあったからだった。イベント好きのこの高校らしく夏休み後半に開かれる夏祭り。その下準備に生徒会メンバーは全員強制的に駆り出されているのだ。
 冷房完備の高校校舎。生徒会室も例外ではない。とはいえ中であっつい議論を何時間も繰り広げていればさすがにへばる。そこでじゃんけんに負けた1人が歩いて5分のスーパーへ飲み物を買いに行かされたのだが・・・・・・。
 (大体なんで全員欲しいものが違うんだよ・・・・・・)
 現在烈が両手に下げているのはペットボトル8本。計4
kgと少し。同じ4kgなら2Lを2本の方がまだ楽だというのに・・・。
 もちろん細身でありながら最低限(以上)の力はある。たかだか4
kgのものを持って5分歩くくらい、さして苦痛ではなかった。こんな状況でなければ。
 ペットボトルが左右に4本ずつ。どうやってもかさばり、自然ビニールも不恰好になる。直接腕をたらせばまず蹴飛ばすその広がりぶり。さすがにいくらなんでも蹴りながら帰ってきたなどとバレると他の面々に何を言われるか。仕方がないので少し腕を開いて歩いているが、ペットボトルの重量にプラスして腕まで持ち上げて歩いているのだ。余計に疲れる。
 (・・・・・・・・・・・・やっぱムリか)
 ペットボトルに向けていた視線を戻し、烈がため息をついた。これまた1人先に飲むと後でブーイングが飛んでくる。精根尽き果てかけた体にムチを打ってそんなのの相手をするくらいなら学校に戻るまで我慢した方が遥かにマシというものだ。


 (あ・・・・・・)


 顔を上げた烈の目の前で、信号が点滅を繰り返していた。ここの横断歩道は5本の道の交差したスクランブル交差点。これを逃せば帰るのがさらに遅くなる。
 「やば・・・・・・」
 声に出して呟き、ビニール袋を片手にまとめて走り出す烈。普段はほとんどしない行為。点滅した状態で慌てて渡るのは好きではなかった。まるで信号に踊らされ、嘲われているみたいで。
 そして―――




 キキ―――――!!!




 (―――やっぱり好きじゃないことはやるべきじゃないね・・・・・・)
 信号無視で突っ込んできたトラックをどこか現実離れした視界で見やりながら、烈はそんな事を考えていた・・・・・・。



―――pre















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 さてキリ番4900番を獲られましたもとい取られましたみどり様のリク、『記憶喪失最強烈兄貴』・・・・・・ん? 今なんか余計なフレーズが入っていたような・・・・・・。当り前ですがこの先の展開、もちろん烈兄貴は無事なんですけどね(いや、これで死んでたら大爆笑だろうに)。本日意識朦朧気味にて避ける気力もなかったようですこの人。普段ならこんな場合も余裕綽々で避けるか、当たり屋の如く受け身を取るかするでしょうが。
 ではみどり様、これと続く2
のみシリアスっぽくなりそうです。後はひたすらコメディー、というかギャグへと落ちていきそうです。とりあえずリクエストされた方々は全員出るように(多分)します。その影の濃さは人それぞれ―――というか問答無用で最強タッグ(誰と誰か、は貴方様ならもちろんお分かりでしょう)がひたすらに出番かっさらて行きそうですが・・・・・・。

2003.5.25