2.橋げたから身投げ―――跡部に遭遇


 行き交う人々・・・はあまりいないが車から取り残され1人川を見下ろす。光がきらきら乱反射する川は綺麗だった。
 手で体を持ち上げ手すりへ。立ち上がりバランスを取り・・・
 「危ねえ!!」
 どん!!
 「どうっわああああああああああ!?」
 どべばしゃーん!!
 ・・・警告の声と共に後ろから誰かに突き飛ばされ、私はそのまま景気よく川へダイブした。川というか、ヘドロの中へ。どうりで上から見下ろす時中が全く見えなかったワケだ。
 生理的嫌悪により死に物狂いで這い上がる。水面から顔を出し、
 「臭ッ!?」
 ひん曲がった鼻を押さえ少しでも逃れるよう上を見上げると、そこには1人の少年がいた。私を見下ろす怖そうな少年。手すりに触れずに私を見下ろし、きつい声で怒鳴りつけてくる。
 「何やってんだよてめぇは!」
 「見たまんま落ちてんのよ!!」
 「だから警告したじゃねえか危ねえって!!」
 「アンタが一番危ないわあ!!」
 「何わかんねえ事言ってやがる! この手すりは腐りかけで体重かけて乗ると崩れるんだよ!! 川に落ちたら危ねえだろ!?」
 「落ちたわしっかりアンタのせいで!!!」
 「俺は止めただろ!?」
 「止めるのに突き飛ばすなああああ!!! 止めるつもりだったんなら引き寄せるとか掴むとかしなさいよ!!」
 「仕方ねえだろとっさの事態だったんだからよ!!」
 「それで相手落としたら本末転倒でしょうが!!」
 「人にばっか責任押し付けてねえでてめぇもてめぇでだったら手が伸びてきた時点で掴めよな!! 何のために両足突っ張って体勢確保したんだよ!?」
 「それだけやる余裕があったんならアンタが掴め!! 出来るかンな人間外アクロバット!!」
 「俺の周りじゃ7割はそんくらい普通にやるぞ!!」
 「人間社会で生活しなさい!!」
 「ぐ・・・・・・!!」
 少年の言葉が止まった。どうやら思い当たるところではあったらしい。
 言い負かした事に満足し、助けてもらおうと手を伸ばしたところで・・・
 「まあ、何にせよその様子じゃ怪我1つなかったみてえだな。よかったじゃねえの。
  んじゃ、俺は行くからな」
 「ってちょっとおおお!! 落とした責任で助けなさいよおおお!!!」
 私の訴えを聞いた素振りも見せず―――いや絶対全く聞こえていない様子で―――名も知らぬ危ない彼は満足げに去っていった・・・・・・。



―――3.電車に飛び込み