7.睡眠薬―――リョーガに遭遇


 リストカットは失敗したが、まだ私には別の手がある。カミソリで切った後、痛くないよう購入した睡眠薬だ!! 本来なら病院で貰うか薬局巡ってちびちび買い集めるかしなければならないだろうが、何と今回親切にも大量に売ってもらったのだ!!
 「ふふふふふ・・・・・・。これでいよいよ私も・・・!!」
 受け取った粉薬―――こういうののメジャーといえば錠剤だが、大量に飲むなら粉を水に溶かした方がやりやすいだろうという事でそちらを貰った―――を、さっそくジュースに溶かして飲む。白い流体は何かバリウム臭くて嫌だ。
 一気に飲・・・・・・もうとして。
 「ぐふっ! ごげふっ! がふっ!?」
 全く溶けない粉に、思いっきりむせかえった。一緒に渡された
100%オレンジジュースがますます煽る。
 ばんばん床を叩いてのた打ち回って、
 (負けるな私!! 飲み干せば楽になれる!!)
 心の中でそんなエールを送り、私はそれだけで死ぬ思いで1Lひたすらに飲み干していった。





△     ▽     △     ▽     △






 所変わって某所。
 「お、佐伯! 今日はメシ食いに行こうぜ。俺の奢りだ!」
 「あれリョーガ。お前随分景気いいな」
 「だろ? 新しい商売始めたんだよ」
 「どんな?」
 「片栗粉をな、睡眠薬だっつって格安で売りさばくんだよ。味でバレねえようにちゃんとオレンジジュースで溶かしてるぜ」
 「なるほどなあ。かかるのは片栗粉代だけか。しかも買う人は大量に買ってくれる上に麻薬のバイヤーと違って1度きりのお付き合いになるしな」
 「いい商売だろ? しかも買ったヤツも自殺しようとしてたなんて負い目があるから、たとえ騙されても警察にゃ言えねえしな」
 「へえ・・・。
  で? それで儲けたのか?」
 「ああ。さっそく馬鹿が引っかかってよ。何か女だったけど、えらくノり気でよお」
 「ほお・・・。女か・・・。しかもノりまくってお前も売った、と」
 「ちょ! ちょっと待て!! 俺はあくまで客相手に積極的に売りつけただけで―――!!」
 「買う立場である弱い客にお前は積極的に迫った、と・・・」
 「だから違―――!!」
 「リョーガv」
 「は・・・はひ・・・・・・」
 「売上8割没収」
 「そ〜〜〜んな〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」





△     ▽     △     ▽     △






 死ぬほど苦しい思いで飲んだ後、襲ってきたのは死ぬほど苦しい腹痛だった。
 場所をトイレに変えのた打ち回り、ようやっと効き目が来たらしく朦朧とする頭で私は呟いた。
 「死ぬのって・・・・・・苦しい」



―――8.ガス中毒