これはとある休日の話。たまたま青学も、そして聖ルドルフも部活が、スクールが休みのこの日、不二家では由美子が母・淑子とともに料理作りにいそしんでいた。



 「周助! 今日は母さんと腕によりをかけて、美味しいモノつくるからね」
 「へえ・・・。楽しみだな」
 ピル、ピル、ピル・・・
 「あ・・・。
  ―――みんな来られるって」
 「ホント? アダルト君も?」
 「うん」
 「まだまだ君も?」
 「うん」
 「外ハネ君も?」
 「ああ」
 「裕太も帰って来るし、今日はにぎやかになりそうね」
 「で・・・、
  何のパーティーなの?」
 「ロシアンわさび寿司ルーレットパーティー」
 「え・・・?」







Daishuki な気持ち








 「わ〜いわ〜いv パーティーパーティーvv」
 「けど何やるんでしょうね」
 「どうせあの姉貴と兄貴の企画ですからとんでもないものになるかと・・・・・・。
  ―――本当にすみません」
 「いや。君が謝ることでもないだろう。それにせっかく招待されたのだから光栄に思わなければ」
 などと前向きなんだか後ろ向きなんだかよくわからない会話をしつつ、英二・リョーマ・裕太・手塚の4人は不二家へと向かっていた。
 「―――やあ。いらっしゃい」
 「お呼ばれに甘えちまったよんv」
 「どーも。不二先輩」
 「しかし不二、いいのか? 身内のパーティーではないのか?」
 「いや。別にかまわないよ。姉さんも楽しいのが好きだし」
 「・・・つーか兄貴、何やるつもりだ・・・・・・?」
 「ああ裕太。おかえり。
  えっとね、
  ―――『ロシアンわさび寿司ルーレットパーティー』だって」
  「「「「はい・・・・・・・・・・・・?」」」」
 それを聞いての4人の反応は、おおむね先程の不二のものと同じであった・・・・・・。
 さて・・・・・・・・・・・・。







*     *     *     *     *








 「マジ・・・・・・?」
 ダイニングに用意された『それ』を見て、英二は半笑いの表情で呟いた。最早笑うしかない。さすが不二家といわんばかりにテーブルの真ん中に用意された中華テーブル別名回転テーブル。そして6つの席には小皿と箸が用意されており、回転テーブルの真ん中にはご丁寧にしょうゆとわさびが置かれていた。
 「菊丸君・越前君・手塚君いらっしゃい。それに裕太、お帰りなさい」
 「う、うにゃ・・・」
 「ども・・・・・・」
 「おじゃま・・・しています・・・・・・」
 「あ、ああ・・・・・・」
 笑顔で出迎える由美子。その手に持たれたお盆を見て―――4人の顔色がさらに悪くなる。どうも不二の言葉は冗談でもからかいでもなく
100%事実だったらしい。
 硬直する4人を気にせず、由美子がテーブルにお皿を並べていく。お寿司の乗った、お皿を。
 「おお! アナゴ!!」
 アナゴが好物の英二が目を輝かせる。一種の現実逃避。が・・・・・・
 「よく見てください英二先輩!!」
 悲しみも苦しみもないどこかの世界へ旅立とうとしていた英二をリョーマの声が留める。彼にしては珍しい怒鳴り声。さすがにそれを聞いて英二が戻ってきて―――
 「うげぇぇぇ!!!???」
 彼には珍しくもなんともない驚きの声を上げた。確かにネタはアナゴだった。上にはタレもかかっていて、光を弾くその様は英二でなくとも食欲をそそるものがあった。ただし、ネタは
 「何なんだこれはああああ!!!!」
 「え? だから『わさび寿司』」
 叫ぶ英二ときょとんとする不二。果たしてどちらが異常なのか、それはこの寿司を―――特にアナゴの下のほうをもう少しよく見てみればおおむね誰もが「不二だ」と答えるだろう。
 おかしいのはシャリの方だった。いや、これを『シャリ』と称していいものか。アナゴの下は―――黄緑だった。もちろんご飯の色ではない。
 「このわさび寿司はご飯に含まれるわさびの分量によってあたりはずれが決まるのよ。0%、
30%、50%、70%、それに100%があるからね」
 「
100%って、それシャリ全部わさびかよ!!?」
  「「もちろん」」
 姉兄の頷きに、裕太のみならずその他3人もまたずざざざざっ―――! と後退した。ちなみに件の『アナゴ寿司』よくよく見れば下〜のほうが少しだけ白い。どうやらこれは
70%らしい。
 「俺たち殺す気かああ!!!」
 「やだなあ。そんなわけないじゃないか。ただパーティーを盛り上げる材料として用意しただけで」
 「盛り下がるだろーがンなモン食わされたら!!!」
 「ふふ。相変わらずにぎやかね。菊丸君は」
 裕太と英二の魂の叫び―――それは、この不二兄姉を前にして何の効果も発揮しなかった。
 「じゃあ、特に問題もないみたいだしそろそろ始めましょうか」
 「ある! ありまくるぞ問題は!!!」
 「そうだね。楽しくなりそうだね」
 「人の話聞けええええええええ!!!!!!」
 当然のごとく無視される裕太と英二。その頃リョーマと手塚は・・・・・・
 「やっぱ不二先輩って俺たちに何か恨み持ってるんスか・・・?」
 「いや・・・。これが不二だ。諦めろ・・・・・・」
 「そう・・・・・・っスね・・・・・・」
 蒼白を通り越して真っ白な顔で頷くリョーマ。その視線は手塚ではなく、その向こうでいつの間にかこちらを見ていた不二を捕らえていた。この上なく楽しそうな笑みで、『絶対逃がさないよ・・・』と無言で語る不二を・・・・・・。







*     *     *     *     *








 「ぐはっ!!」
 「ぐ・・・・・・!!!」
 「ゔ・・・・・・・・・・・・!!」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 そんな感想(?)を遺しばたばたと倒れる英二・裕太・リョーマ・手塚。
 それを見下ろし―――
 「よかったね姉さん。企画大成功みたい」
 「ええ。よかったわ。みんなに喜んでもらえて」
 静かな部屋に広がる笑い声。遮るもののないそれは、音波という波紋を思う存分広げ続けた・・・・・・。



―――(永遠に)Fin














*     *     *     *     *     *     *     *     *

 以上、不二先輩デビューアルバム『eyes』より『大好きな気持ち』でした(誤)。―――本気にはしないでくださいね。冒頭の会話は本当にしてましたが。しかし由美子姉さん・・・・・・名前で呼んであげようよ・・・。つーか手塚『アダルト君』って・・・・・・。
 『
eyes』いいですねえ。どの曲もいいなあ。割と激しいもの好きの私としては『My Time』『Black Rain』『feel my soul −闘いの中で−』の3曲がぱっと聴きではいいなと思ってましたが、企画で押し売り語りしたとおりどの曲もいろんな意味でいいですv そしてこれ以上語りだすと話以上に長くなること間違いなしなので、それはとことん語り隊にでも回すとして、
 ではラストは毎度恒例の


不二先輩デビューアルバム発売おめでとうございます!!


2003.7.4






おまけ:4人に何があったのか気になる方はこちらをどうぞ。





Daishuki な気持ちおまけ


殺シアン・ルーレット!