せんじょうの騙し合い Party Game








  2.船上にて

 結局断らずにやってきた一同。まずは設置されたテニスコートにて練習をし―――ついでに客に品定めさせる。
 「破滅への輪舞曲だ!! 踊ってもらうぜ!!」
 某人のたった1撃(いや2撃だが)で、客の予定賭け額は一気に跳ね上がった。
 「やっぱ魅せる言うたら跡部の仕事やな」
 「んじゃ、俺らも後に続きますか。
  ―――虎砲!!」
 「俺には効かないっスよ! スーパーライジング!」
 「にゃら俺だって〜! きっくまっるビーーーム!!!」
 「その手は封じさせてもらうよ。羆落とし!!」
 「甘いな不二。手塚ゾーン!」
 「今回こそ破ってみせますよ手塚さん!! ファントムボール!!」
 「・・・・・・音声コマンドかいな己ら」
 「ならば俺も負けてはおれんな――――――って叫ぶ技がないのか俺は!!」
 「・・・・・・・・・・・・いやもーええから真田。普通に打ちいよ」
 などなど、何だか謎な勝負をしているところで、相手チームらしき一同がやってきた。
 「どけ。ここはガキの遊び場じゃねえんだよ」
 「・・・・・・確かにそうやなあ」
 思わず頷く忍足。確かに最早彼らは完全に目的を忘れ去っているようだ。
 《
輝け! 第1回客の注目度集めたモン勝ち選手権!!》なるものをやっているらしい一同の中で、現在最も優勢な男がこちらに気付き声をかけてきた。
 「忍足!! てめぇどっちの味方だ!?」
 「敵味方関係あらへんやろ今の事は!?」
 「ああ!? てめぇ俺様のオンステージ邪魔するってか!?」
 「ホラみい!! テニスの『テ』の字も出ん時点で遊びやって証明しとるやん!!」
 「俺は真面目だ!!」
 「余計悪いわ!!」
 「ていうか・・・『テ』の字は出てたよね」
 「ついでに『ス』もね」
 「うっせー外野!!」
 「いや、今のは君への応援だったと思うんだけど」
 不二の突っ込みを綺麗さっぱり無視する跡部。だが今のやりとりは丁度現在頑張っていたその他一同の注目を集める事にもまた役に立っていた。
 集まるメンバーら。何となくノリで一触即発になりそうな辺りで。
 ―――火に油が注ぎこまれた。
 「よおチビ助。ちゃんと迷わず来れたか?」
 「リョーガ・・・・・・」
 相手チームから現れた男に、呟きの声が上がった。
 リョーマが他のメンバーを掻き分け、最前列へと進む。かの男―――リョーガの目の前へと。
 「なんでいきなり日本帰ってきたのか不思議だったんだけど、コレ乗るためだったんだ」
 「アメリカから乗ってきてもよかったんだけどな、どーせ日本寄るんだし、だったら久しぶりに里帰りでもしてみようかって思ってな」
 「・・・おチビ、知り合い?」
 軽く会話を交わしながらも、普段ならまずない様子で相手を睨め上げるリョーマに、さすがに雲行きの怪しさを感じ英二が口を挟んだ。
 リョーマ自身も悟ったか、視線は外し英二の方へ体ごと向けた。
 「知らない人」
 「ってオイ。お前愛しのおにーさまにそういう冗談飛ばすか普通?」
 「本気だから」
 「余計悪いっての」
 先ほどどこぞで交わされたのと極めて似た会話をし、リョーガは改めて選抜メンバーへと向き直った。
 「初めまして選ばれし諸君。俺はコイツの兄貴で越前リョーガ。よろしくな」
 「なっ・・・!!」
 「おチビのお兄さん!?」
 挨拶しながら、前へと進む。一歩、また一歩。
 先程のリョーマと同様、掻き分け進むはただ1人の元。
 ぴたりと目的の人物の前で止まり、
 「というわけで、よろしくな跡部クン」
 「え・・・?」
 「知り合いなのか、お前・・・・・・」
 周りから上がる驚きの声。まあ当然だろう。同じ青学部員ですら知らなかったというのに。
 「大したモンじゃねえよ。前に一度会っただけだ」
 向こうの方が5
cm高いというのにわざわざ腰を落とし上目遣いに見上げてくる―――この間「俺様を見下ろすヤツは嫌いだ」と言ってやったのに対する嫌がらせだろうか―――リョーガを、お望みどおり見下ろしながら、跡部は薄い笑みを浮かべた。
 「会って・・・この俺様に勝負を挑んできた、つーチャレンジャーだ」
 「跡部さんに!?」
 「なんて無謀な・・・!!」
 「っておいおい。一応ちゃんと引き分けだったじゃねえか。さりげに自分が勝ったっぽい捏造すんなよな」
 「俺は一言も嘘は言ってねえからなあ」
 にやにや笑うリョーガにしれっと言う跡部。和やかと取れなくもない空気だが、少なくとも選抜メンバーらには今の会話は十分な衝撃を与えた。
 「跡部相手に引き分けだと・・・!?」
 「うわ・・・。さっすがおチビの兄貴・・・」
 「にしてもマズいね。そんな実力者がメンバーの1人か・・・」
 「どうやら、舐めてかかりおると負けるんはホンマにこっちになるみたいやな」
 タカをくくっていたわけではないが、それでも最初の会話でもあったとおり相手は自分たちより弱いという先入観があったのだ。
 慄いている間にも、会話は進む。
 「でも、また君に会えて嬉しいよ。こういうのを『運命』って言うのかな?」
 「ざけんな。てめぇが仕組んだんじゃねーのか?」
 そして、会話をしながら動作もまた進む。
 顔が触れそうなほどに近付いていたリョーガ。跡部の顎に左手をかけ引き寄せ、あっさり弾かれる。
 弾かれた手を捻り、跡部の手を外側に押しやり再び接近。首に絡めた。
 右手を引き戻すには速すぎる。左手は既に死角で肘から押さえ込んでいる。今度こそチェックメイト―――
 「・・・・・・っと」
 リョーガが体を引き剥がした。後ろへ下がる。
 「ちっ。避けんなよ」
 「さすがに頭突きは食らいたくねえからな。いくら愛のムチだからって」
 「なら選ばせてやる。尖った拳と硬い踵と頭突き、どれにする?」
 「頭についてる唇でよろしく」
 「わかった。全部だな」
 「それもいいな。全部足すと熱い抱擁になりそうじゃねえ?」
 「全治3週間位は覚悟しとけよ」
 「恋の病じゃ一生治んねーだろ」
 「俺は医者じゃねえから治す義務はねえな」
 「つまり断る、と?」
 「一度たりとも受けちゃいねえだろ?」
 きっぱりと言い切る跡部を見て、
 今度こそリョーガが完全に離れた。
 「あーあ、残念。君だけは助けてあげようと思ったのに」
 「生憎だが、俺は情けで助けられるほど弱かねえ。そういう態度が嫌いだっつったと思ったがな」
 「助けてくれる王子様はもういるから?」
 面白そうに笑うリョーガ。見下ろす視線の先にいるのはもちろん自分の弟。
 合わせ、跡部の視線もまたリョーマへと向けられた。
 くっ、と笑う。
 「・・・・・・何?」
 「むしろコイツが姫だろ?」
 「それもそーだな」
 「どういう意味!?」
 口を尖らせ可愛らしく怒り出すリョーマ。確かにこの姿はとても『王子様』らしくない。
 くっくっくと笑いながら、リョーガが身を翻した。リョーマの横を通り過ぎざま、デコピンを食らわす。
 「何でもねーよチ・ビ・助」
 「痛っ!」
 その手をひらひら振り、
 「ま、せいぜい頑張ってくれよ。そうしねえとつまんねーからな」
 さすがリョーマの兄。全員の怒りを適度に集め、悠々と立ち去っていく。立ち去って、いこうとして・・・・・・
 「越・前・リョー・ガ・くんっ♪」
 「―――ああ?」
 今までと全く違う声に止められた。
 振り向く。怒りを露にする『お客さま[ゲスト]一同』の中で、唯一笑ったままの男の方を。
 笑みを浮かべたまま、千石はひょこひょこと彼の目の前まで歩み出た。
 手を差し出し、
 「実際会うのは初めてだよね。よろしく。俺、山吹中3年、テニス部エースの『ラッキー千石』こと千石清純」
 やけに説明的な台詞を入れる。気安く呼びかけられ若干こちらも不機嫌が入っていたリョーガが、
 「・・・・・・ああ」
 一言前と同じ言葉を呟いた。その顔に、笑みが浮かぶ。
 「お前本物だったのか!」
 「ピーンポーン。やっぱ疑ってたね?」
 「そりゃ
HN[ハンドルネーム]なんつーアテになんねーモンじゃあなあ。お前の事も十分有名になったしな」
 「ははっ。『せっかくの挽回のチャンスで勝てなかった選手』として?」
 「そう後ろ向きに捉えんなよ。ボビー相手のお前の逆転劇はけっこー話題になってんぜ?」
 「そりゃ光栄」
 「だから騙りかと思った」
 「うわおう。前言撤回」
 「・・・・・・知り合いなんスか? 千石さん」
 リョーマに口を挟まれ、そして他の者にも首を傾げられ。
 千石は笑って握手を解いた。
 リョーガを手で示し、
 「俺こないだ桜吹雪さんの説明した時さ、『グループのオーナー』って言ったよね? 持って来るチームは大抵その場限りで雇ってるらしいけど、中に何人かずっと固定の人がいるんだよね。彼―――越前リョーガくんもその一人。
  最初そういう情報聞いて驚いたよ。リョーマくん、君がかつてアメリカで活躍してた事は有名だからね。失礼を承知で言うけど、てっきり君の名前の記入ミスか、あるいは名前変えて加わってんのかと思った。実際君が日本に来た4月からは一切活動してなかったからね。
  それで興味持ってアポ取ったんだよ。『初めまして。俺、日本の山吹中3年、テニス部エースの「ラッキー千石」こと千石清純って言います』って感じの前振り入れてね。もし本物の・・・って言い方もおかしいかな? 越前リョーマくんなら俺の事は知ってるワケだしね。忘れててもいいようにこれだけ念押しといたし。
  で、返ってきた返事が『こっちこそ初めまして』。文章も長いし愛想も良かったからああ違うんだな〜って納得してそのままメル友。ただしお互い写真とかは一切送らなかったし、俺もリョーマくんとの関係については訊かなかったけどね」
 「なるほどな。てめぇが興味あるヤツってのはそいつの事か」
 「そ。だから招待されたときはホント『ラッキー』だったよ」
 「イカサマ仕掛けられて、か?」
 くつくつと笑うリョーガに、
 千石も笑って頷いた。
 「ああ。君がリョーマくんのお兄さんだったってわかっただけで十分ラッキーだね。俺別にそこまで勝ち負けには拘らないし」
 「んじゃ負けてくれるってか?」
 「さあね。生憎と俺はただのチーム員その1でね。決定権は俺にはないよ」
 「惜しいモンだな。お前ウチのチーム来ねえ? ぜってーやってけるぜ?」
 「ま、考えさせてもらうよ。俺は山吹中好きなモンでね。そう簡単に離れるワケにはいかないっしょ。このメンバーも含めて」
 「なら、いい返事期待してるぜ」
 今度こそ去っていくリョーガを、今度こそ誰も止めなかった。
 他の相手チームも去っていき、そして残された選抜チームは・・・
 「おい越前」
 「何スか?」
 「アイツ潰して構わねーんだよな?」
 「いいっスよ別に」
 「なら決まりだな」
 ばしりと拳で手のひらを打つ跡部。見つめてくる一同を、同じく獰猛な眼差しで見つめ返し、
 「八百長なんぞクソくらえだ。行くぜてめぇら!!」
 『オー!!』



―――








 ―――なぜだか知り合い多すぎですリョーガ。いやだって青学
Onlyと違ってこの選抜メンバーおいしすぎる人多すぎvv 裏工作とかみんなすっげーやってくれそうだ!!
 そして3ではいよいよなぜか(意味不明)・・・・・・!!

2005.2.23