せんじょうの騙し合い 〜Party Game〜
5.2日目午前中 −ダブルス編− <δ>
「―――っていう事らしいぜ」
こちらは選抜チーム控え室。あの後は何事もなく戻ってきた英二は、今見てきたことを整然と・・・を心がけ、結局普段の成績の悪さを暴露する支離滅裂さで説明した。
聞き手はひととおり黙って聞き、
「うわ〜。何か向こうも大変な事になってるね〜」
千石が、英二のぶっ飛び解説を極めて簡単にまとめてみせた。なお彼は英二が帰りがけにリョーガとごたごたやっている間に戻ってきていたらしい。まとめる彼の頭にでかでかと大きなたんこぶがあるのは見なかった事にして。
「つまり向こうの選手らも桜吹雪の被害者、という事か」
「本気できたねーなアイツ」
「せやったら俺らも悪い事してもうたなあ」
「仕方あるまい。正々堂々行った勝負の結果だ」
「まあそうだけど・・・・・・だからって放っては置けないでしょ」
「そんなのそいつらが悪むぐ」
「どっちにしろ―――
―――本当の勝負はこれから、ってか」
毎度ながらのまとめ役(一部まとめ方に問題あり)跡部の言葉に、全員で頷き、
「あ、そうそう跡べー、不二、おチビ」
「あん?」
「何? 英二」
「なんスか英二先輩」
名指しで呼びかける英二に、散りかけていた3人の目線が再び英二に集まった。
「あの、さ・・・」
「何だよ早く言えよ」
跡部に促され、それでも口篭る。忘れてたり言いにくかったりするのではない。どこからどう言えばいいのかわからないだけだ。
わからないまま、
とりあえず英二は直接関係あるところから言う事にした。
「おチビのお兄さんから伝言。『次出るヤツはマジでヤバい。ぜってー油断すんな』だって」
「リョーガから?」
「英二、会ったの?」
「つーかあの人敵でしょ?」
「なぜそんな警告を・・・?」
「あのさ・・・・・・」
「―――待て菊丸」
事情を―――とはいっても会ったいきさつだけだが―――言おうとし、なぜか跡部に止められた。
「『次出るヤツはマジでヤバい』。確かに言ったんだな? 越前リョーガが」
「あ、う、うん・・・・・・」
迫力に押され、何もやっていないのに警察に尋問されている並の(実際にやられた事はないが)バツの悪さで頷く。
「あの男がわざわざ警告するほどの相手だと?」
「それこそ油断は禁物だな。跡部・不二・越前」
真田と手塚に促され、
―――3人は頷かなかった。
互いに目を交わす。3人の頭に、同じ顔が浮かんだ。
「それってまさか・・・」
浮かんだそれを口にしようと不二が口を開きかけ・・・・・・
どす! どす! どす!
ばたん!!
「お前らさっき話聞いてたな!?」
「うげえ!?」
勇ましい足音と壊れる勢いで開け放たれた扉。開口一発の怒声と犯人は私ですと自白したいらしい英二のダミ声。どれかに(むしろ全部に)遮られ、不二は開いた口をつぐんだ。ついでに開いた目も閉じる。
引っ込んだ不二の代わりに、こういう揉め事大好き人間の切原がさっそく挑発に走った。
「だったら?」
「計画を台無しにしやがって!! お前ら全員この場で血祭りに上げてやる!!」
先頭にいたエセコックは、実に簡単に挑発に乗ってくれる人種のようだ。それこそ計画を台無しにする台詞を平気でホザき出した。
かくて話し合いによる穏便な解決は絶対無理となった―――元々誰も期待していなかったが。
「そんなら話は早ええ。テメーらが覚悟しろよ」
赤目モードではないものの、残忍な笑みを浮かべ切原がコックに向かい飛び出した。誰も止めない。代わりに切原の後に続く。
こうなればもう試合など無意味な事だ。巻き込まれた選手らを助け、頭である桜吹雪を押さえる。そうすればこの馬鹿げたゲームも終わるだろう。
と―――
「痛てえ!!」
そんな一同の思惑は、響いた切原の悲鳴であっさり打ち砕かれた。
「切原!!」
全員が足を止める。飛び出すと同時にやられていたらしいコックがようやくばたりと倒れる。消えた障害物の向こうから現れたのは・・・
「―――やれやれ。やっぱこういう展開になったか。駆けつけといてよかったよ」
『佐伯!?』
後ろでに捻り上げられ顔をしかめる切原と、軽く捻り上げため息をつくコック姿の佐伯だった。
いきなりの予想だにしない事態に、言葉を失う『知らなかった』5人に代わり、
『知っていた』者の代表として跡部が言葉を発した。
「やっぱ昨日の魚料理、ありゃてめぇが作ったのか」
やっぱも何も、昨日既に本人に会って確認済みなのだが、あえてそれはなかった事として問う。佐伯も理解したらしく、やはり今始めて会った的会話をしてきた。
「お前ん家で仕込まれたかいがあったよ。随分好評だったって?」
「レトルトよりゃな」
「あ、酷いなあ」
軽い茶化し合いに、硬直していた他の者も頭の回転を再開させた。
「何でお前ここいんだよ!?」
「別に? 割のいいバイトがあったんでな。応募したら受かった。ただそれだけだ」
「貴様! 我々を裏切るというのか!?」
「裏切るも何も、ただ受かったバイト先でお前たちが一悶着起こしてるってだけだしなあ。ちゃんと働かないと給料引かれる」
「う〜わ。サエくんらしい意見をありがとう。でもって出来たらその調子で切原くん解放してくれないかなあ。見たトコ他の人はともかく君は俺らに危害加える気ないんでしょ?」
「そりゃもちろん。治療費払いたくないし」
「本気で君らしい意見だね・・・。ただしむしろ突っかかっていったの切原くんの方だから何やっても正当防衛で通用すると思うけど」
「なるほど。じゃあそうするか」
「千石さん!! アンタ俺見捨てる気っスか!?」
「いや冗談だってv ねv」
「はいはい」
「うおっ・・・!」
とん、と背中を押され、切原がたたらを踏んで戻ってきた。一番近くにいた跡部が軽く受け止め、
「このヤロ―――うげっ!!」
「止めとけ切原」
ダッシュで向かいかけた切原の襟首を掴んで引き止めた。潰れた蛙のような声を出して切原がもんどりを打ったがそれは特に気にせず。
「んで? わざわざてめぇが顔出して来たって事は何か用事があんだろ? まさか本気で止めるだけに来たってワケでもねえだろ?」
「さっすが跡部。話早くて助かるよ。
―――最終決戦[シングルス]開始だ。跡部・不二・越前の3人はコートに入れだって」
「ああ。
行くぞ、不二・越前」
「そうだね」
「わかってるっスよ」
最低限を呟き、扉へと向かう3人。背中に、代表して手塚が声をかけた。
「油断せずに行ってこい。跡部・不二・越前」
「・・・ああ」
「そうだね」
「わかってるっスよ」
返事は先ほどと同じ。だが、そこには力強さが込められていた。
倒れたコックを踏み越え、扉を抜け。
佐伯の横を通り過ぎがてら、跡部は楽しげに笑った。
「もしここで俺がお前に攻撃しかけたらどうする?」
「誰か死ぬかもな」
さらりと―――何の感情も込められず言われた一言に、聞き手全員が再び凍りついた。
唯一平然としていた跡部が、無視してさらに問いかける。
「ちなみにてめぇは行かねえのか? コート」
「俺は見張り役」
「ほお」
「ま、頑張れv」
「言われねえでもな」
それを最後に、止まっていた跡部が歩き出した。不二とリョーマも後に続く。
閉じ込められた部屋の中で、完全に見えなくなるまで見送る一同。
「人質一気に増加、と」
現在の状況を、再び千石が極めて短くまとめてくれた。
・ ・ ・ ・ ・
従業員姿の男らに前後左右を挟まれコートに向かう。まるで囚人の気分だ。そこまで警戒せずとも逃げなどしないというのに。
歩く団体の前に、これまた一人の知り合いが現れた。
「よ。跡部クン、不二クン、チビ助」
「リョーガ・・・」
「リョーガ・・・」
跡部とリョーマが同時に呟く。相手の姿を見て、呼ばれた上でなお相手の名を呼ぶのは無駄でしかない。それでもしてしまうのはただの確認だ。昨夜同じ場所で同じようにし同じように呼びかけてきた男ではないと。
確認し―――それ以上は何も言わない。言う事は何もない。
リョーガも同じだったらしい。壁に凭れオレンジを弄び、それだけで終わる。
のんびりとすれ違う。まずは跡部。次いで不二。そしてリョーマ・・・・・・
「そういえば思い出した。親父の口癖。
『テニスはな、でっけえ夢見せてくれんだ。お前らも見つけろよ、でっけえ夢をな』だっけ」
すれ違いがてら呟き、リョーマはリョーガをちらりと見上げた。何かを望んでいたわけではない。ただ・・・
・・・・・・もしかしたら兄も憶えているのだろうか、そんな事を思ったりもした。
手の中でオレンジを弄っていたリョーガ。弟の言葉を聞き、
特に何も返さなかった。オレンジを止めたりもしない。
軽いため息をつき、
リョーマは止めていた足を動かした。
―――6いへ
―――いきなり車が飛び出してきたときのびっくり度(素直にストレスと言いましょう)で、レモン5個分のビタミンCが壊されるそうです。全て日本を基準として(国ごとに数値は変わるので)、皮ごと食って1個120gビタミンC量120mg、5個でビタミンCは600mg。リョーガが食べていたオレンジをバレンシアオレンジと仮定し考えればこちらは実のみ(さすがに普段食わない皮のビタミンC量は不明だった・・・。ただしマーマレードがほとんど0だからあんまないのかなあ・・・。でもビタミンCは熱に弱いし、マーマレードなんてぐつぐつ煮込むし・・・)で1個130g含有ビタミンC量52mg。皮とか入れて60mg位。今年4月に変更になりますが、現時点で15歳男子が1日に必要なビタミンC量は90mgでオレンジ1.5個分。スポーツ選手ならばさらに多く(ここで調べるのに飽きた(爆))。つまりリョーガがあれだけオレンジを食っているのはそれだけストレスが溜まってるから!? やっぱ苦労してるのねああいうバカ・・・もとい人のトコにいると!!
はいそんな謎なノリで5です。この話、まるで英二と忍足に悪意を持っているかのようなぞんざいな扱いでしたがそんな事はないですよ。えへ(と、説得力を一瞬で失くす)v まあ本題に戻って、映画でも実際この辺りは軽くしか取り上げられなかったんですよね。次のシングルス3試合に比べて。そして今回英二と千石さん大活躍☆ 英二の盗み見は映画まんまのネタです。さらに今後の急転直下の展開も英二が絡んでます映画では。あの映画で『活躍』した人を上げると、リョーマ、手塚、そして英二だと思います。なお千石さんの登場。本当はあのシーンを直接跡部にしようかとも思ったのですが、やはりこういう水面下的裏方は千石さん向きかと。2人でいて千石さんが英二押さえてる間に跡部が猫放すという手もあったのですけどね。皆様からのメッセージの中で、この話は千石さんが活躍しているのがいい(ちょっと違う)というのもありましたしv
いよいよ次は話も核心に迫るシングルスです。そしてこれだとまるでむしろリョーガ&サエサイドが選抜チーム引き抜こうとしているようですな。
2005.2.11〜13