シーン2 『障害ブツ』リレー
午後最大のイベント、学校対抗障害物リレー。ここではみんなランニングシャツで肩丸出し―――という変態発言はいいとして、いろいろやるワケですよ。最初は普通の短距離走にアメ食い競争、塔をらせん状にぐるぐる上ってなぜか雪道をぐるぐる下って、水中騎馬戦ラストに再び短距離走、と。
―――最初の短距離走シーンからおっそろしくキナくさいレースに見えたのは私だけですか・・・?
@―――短距離走スタートと同時にスパートをかけた神尾。さすがスピードエース。あっさり他の選手を引き離し―――
神尾:「へへっ。このまま一気に行く―――うおわっ!!」
突如バランスを崩し、あっさり転倒した。
千石:「ラッキー♪」
笑いながら、神尾を抜き去る千石。トップを走りながら、手の中にあった『それ』を弄んだ。
それ――――――スタート兼ゴール地点にあった装置の一部である、ネジを。
神尾の膝裏に飛ばしバランスを崩させた彼は、そんなイカサマをやったとは到底信じられない明るい笑みを浮かべた。
千石:「ははっ。わっるいねえ神尾くんっ」
ツキを呼び込まず自ら起こすラッキー男千石清純。『楽あれば苦あり』ということわざ通り、良い事があれば次に起こるのは悪い事だ。それでありながら千石に良い事しか起こらない理由は・・・
―――もちろん彼に代わり悪い事を引き受けてくれる存在があるからだ。
ゴール寸前。
手塚:「む・・・!!」
跡部:「手塚!!」
なぜかいきなり崩れ出すゴール兼スタート地点。手塚を庇い脚を負傷した跡部は、それでも手塚に肩を貸してもらってダブル優勝――――――を逃した。
長々と手塚と見つめ合い語り合っている間に、人数不足により2度出場した千石に抜き去られ・・・・・・。
千石:「いや〜大変だったねえ2人とも。でもゴール出来てよかったね」
跡部:「てめぇ千石!! 普通目の前でああいう事が起こったら止まるなり手ぇ貸すなりしやがれ!! 何無視して先行ってやがる!?」
千石:「いやだって、2人がいい感じだったから邪魔しちゃ悪いかな〜って思って。
ああでも優勝出来たなんてほんっと俺ってラッキー♪」
跡部:「てめぇ今すぐぶっ殺す!!!」
A―――雪道下り跡部は今回のイベントに本気で多額の投資を行ったらしい。真夏の東京に降雪機など持ち込み、外に突き出ていた部分を雪山へと変えてしまった。
用意されていた各種器具(スキー・スノボ・ソリなど何でも選択自由らしい。ただしエンジンのついたものはなかったが)を使い、山肌に沿って作られた細い道を下っていく。
そんな様を、実況らしい桜乃が解説していた。
桜乃:「さあ! みなさん続々雪道に出てきました! 追い越し不可能のこのテクニックコースを、それでも出来るだけ前と差を詰めようとかなりの速度で爆走して―――えええええええ!!!???」
途中で解説が切れる。絶叫と化したそれに観客一同耳を塞ぐ―――事も忘れ、全員で同じ絶叫を上げた。「アイツ正気か!?」「死ぬだろありゃ!!」などといった声まで上がる。
それはそうだろう。なにせ―――
―――コースを無視し、70度くらいはありそうな山道をまっすぐ下ろうとすれば。
ダウンヒルの如く、飛び降りる勢いで下っていく佐伯。巧みなスキー板捌きで、一定間隔にある本来のコースを足がかりに前のアメ食い競争での樹の遅れを一気に挽回していく。
当たり前だが、普通の人がこんな事をすればあっさり転倒、転がって下に叩きつけられるのがオチだ。しかも通常の雪山と違いあくまで『造られた』コース。山部分の下は雪の一切ない硬い鉄板が広がっている。死ぬかどうかはともかく、落ちて『奇跡の生還』はまず無理だろう。
なのにそれをあっさり、しかも全く危なげなくやる佐伯に、会場中から拍手が沸き起こった。
ジロー:「すげー!! アイツすげー!!」
ブン太:「マジどーやってんだよ!?」
ずっと寝っぱなしだったジローも起き、ブン太といっしょにはしゃぎだした。
それらを横目で見て、
跡部:「そりゃー毎回毎回スキーに行っては頂上から突き落とされてりゃ嫌でもあの程度出来るようになんだろ・・・・・・」
不二:「つまりはサエの倍以上突き落とされた君は実演済み、と?」
跡部:「やっぱ柵作っときゃよかったぜ・・・!!」
そして・・・
石川校長:「青学・不動峰・ルドルフ・山吹・氷帝・城西湘南・立海の棄権により、このレース、六角の優勝!!」
わ〜!!
森:「アイツわざとコース崩しやがったな・・・!!」
柳生:「なんと卑怯な・・・・・・!!」
千石:「てゆーかダメじゃんみんな。ちゃんとクライマー気分で降りてこなきゃ」
向日:「だったらテメーがやってみろよ!!」
佐伯の通った後、雪崩の勢いで崩れ落ちたコース。他の面々はそこでストップを余儀なくされ、臨時でよこされたヘリコプターに救助されるという極めて情けない終わりを迎えるハメとなった。
爽やかな笑顔で優勝カップを受け取る佐伯へと、その他全員が硬く硬く硬〜〜〜〜〜〜く握った雪球を振りかぶった・・・・・・。
B―――水中騎馬戦水に入るなりリレーだという事を忘れ互いのタスキを奪い合う一同。青学もまた参戦しようとして、
大石:「待つんだみんな! これはリレーだ! 無駄な争いはせず、タスキを繋ぐ事を最優先させよう!!」
冷静なブレーンにより、本来の目的を思い出した。
暴れる周りを他所にこそこそとコースを進み、ついにアンカー手塚の元へと到着した。
手塚:「越前!!」
リョーマ:「部長―――!!!」
互いに伸ばし合う手。握られたタスキが2人の間で―――
ひょい
青学一同:『!!??』
いきなり横からかっさらわれたタスキに、全員が声も出せずその行方を首を振って追った。その先では、
仁王:「隙だらけじゃ」
ブン太:「へへ〜。残念でした☆」
柳生:「これも勝負の世界というものです」
青学一同:『立海!!』
切原:「ご名答ってな。んじゃ―――ホラよっ!!」
騎手として上に乗っていた切原。仁王から受け取ったタスキをご丁寧に軽く縛り上げ、一番の激戦区へと放り投げた。
青学一同:『っあああああああ!!!!!!』
切原:「今までご苦労さん。タスキがなけりゃ次へは繋げねえぜ?」
桃:「クッソ・・・!!」
呻いて戻るも時既に遅し。激戦区が超激戦区へとグレードアップする中・・・・・・
不二:「はい手塚」
手塚:「不二・・・・・・。
なぜお前がコレを持っている・・・?」
プール脇からひょっこり現れた不二。差し出されたそれ―――タスキに、手塚が眉を顰めた。
不二:「実は切原も相当急いで投げたみたいでね、ちょっと飛びすぎてプール越えてたんだ」
手塚:「なら今アイツらがやっているのは・・・・・・」
不二:「正真正銘意味のない争いだね。まあ人目を集めるのには役に立ってるみたいだけど」
手塚:「・・・・・・何?」
不二:「みんながそっちばっかり見てる間に、跡部と真田がとっくに行っちゃったけど? 今からの追い上げはもう無理じゃないかな?」
手塚:「なぜそれを先に言わん!?」
ちなみにこちらはゴール前。件のゴール地点崩壊現場では・・・・・・
真田:「跡部!!」
跡部:「おっ、と・・・」
がらがらがらぐわっしゃーん!!!
跡部:「・・・・・・何やってんだ? 真田」
真田:「いや・・・何でもない」
跡部:「? そっか。んじゃ先行くな」
真田:「・・・・・・。ああ」
崩落の予兆などとっくに気付いていた跡部。真田に促される前にさっさと自分で避難していた彼は、助けようとし1人で下敷きになった真田を放ってさっさとゴールしたのだった・・・・・・
―――3
・・・・・・はい問題だらけの障害物リレーでした。最初に転んだ神尾を千石さんが抜き去ったとき、絶対この人がコケさせたんだろーなあと思ってしまうんですけど・・・。しかもゴール地点崩壊って・・・。いくら急いで造ったからってンなに簡単に壊れるか・・・? コレはもーコケさせようとした千石さんがネジ数本引き抜いたからだ・・・!! ―――という風に思うんですけどねえ・・・。しかもそのせいで跡部が怪我したとなれば余計に・・・。
雪山直滑降(まっすぐ下りるの意)。誰かやってくれないかなあ・・・とか望んじゃダメですかねえ。
そして問題の水中騎馬戦。渡し渡されるリョーマと手塚がスローモーションできらきら光ってるんですよね。やっぱあれは「ひょい」の前振り―――じゃあなかったのか・・・!! 普通に渡されがっくり来た自分もどうかと思います。
2005.2.28