テニプリパロディ略してパロプリ劇場
―――スリップスリップ千石次第!―――





第3回―――1


 手塚・不二夫妻の家で世話になる事になった跡部。一応立場は客人だが・・・・・・
 「おい何やってんだよ不二!!」
 「え・・・?
  床の雑巾がけ・・・だけど?」
 「いくらあったくなってきたからってンな事やってたら手ぇ荒れんだろーが!
  あーもーンなになっちまって・・・!!」
 桶に突っ込んでいた手を無理やり出させ、両手で挟んでさすってやる。容姿の可愛さに反して真っ赤でがさがさになった手が、少しずつ体温を取り戻していった。
 「雑巾がけは俺がやっとくから!! お前はちゃんと手ぇあっためとけ!」
 「え? でも悪いよ。お客さまにそんな事―――」
 「いいから。ンな事に気ぃ回す余裕あんならちったあ自分の事も考えろ。
  ったくてめぇら夫婦は揃いも揃って・・・」
 ぶつくさ言いながら雑巾がけを始める跡部。彼がYシャツネクタイでそんな事をやる様は果てしなく違和感を生むが、それでも実は慣れているだけあって動作に淀みはなかった。
 「・・・・・・・・・・・・ありがとう」
 早くも離れつつある背中に向け、不二がぽつりと呟いた。返事はなかったが―――軽く右手が上げられるのが見えた。





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 「―――お前は何をやっているんだ? 跡部」
 とん。
 「―――っ!?」
 ごぐえふげふごほっ!!!
 その日の夜。お風呂を沸かそうと(もちろん不二に代わって)火を熾していた跡部は、突然背中を叩かれ、咥えていた竹から盛大に煙を吸い込んだ。
 危うく死にかけ何とか回復。ホースを口に突っ込んで排ガスを吸い込む自殺法は絶対取りたくないと心に決め、
 「何・・・って、そりゃ見たまんまだろーよ。一応言っとくがお笑い一発芸じゃねえぞ?」
 「そうか・・・。
  だがお前は客人だろう? そのような真似をさせる―――」
 「ああまーいいじゃねえか誰が何だろうが。大体俺は客っつっても勝手に押しかけただけだろ? 何も役に立ってねーんだからせめてこん位やらせろ。
  ―――つー事だから、不二にゃ文句は言うなよ? あくまで俺が無理やりやってるだけだ」
 「・・・・・・・・・・・・そうか」
 言葉は同じだったが、手塚の口調は少しだけ柔らかくなっていた。
 暫く、薪の爆ぜる音と息を吹きかける音だけが広がる。途中で跡部が竹を笛代わりに曲演奏したり、手塚が対抗してすかーとしか音が鳴らなかったり、そういえばこれだと間接キスかなどと笑ったり、つー事はてめぇは不二ともやってんのかと跡部がぶち切れたり夫婦なんだからその位は普通だろうと手塚が反論して火に油を注ぎ込んだりといろいろあったが、その内それらも納まり。
 「そういや手塚、てめぇ不二の他に妻いねえのか? 確か一夫多妻が普通じゃねーのか?」
 跡部が異国の人だという誤解は今だ抜けていない。余計な面倒防止に跡部もそれを受け入れ―――そして利用し尋ねる。
 「確かにな。本妻以外に複数の妻を持つのが普通だろうな」
 肯き、
 手塚はそのままの、何気ない口調で言った。
 「俺の妻は不二1人だ。アイツ1人がいさえしてくれれば、それだけで充分だ」
 「・・・・・・・・・・・・。
  へえ」
 毎度恒例耳の腐るバカップル台詞だが、
 なぜか今は心地よく聞こえた。



―――第3回 2

2006.1.12