テニプリパロディ略してパロプリ劇場
―――スリップスリップ千石次第!―――
第4回―――1
リョーガを止めに来たはずが、なぜかリョーガに止められるハメになった跡部。前は武器を持った家来に囲まれ、後ろにはリョーガ当人。どちらから逃げるのが得策か。
―――悩む事もなく前にした。前にいるのは烏合の衆。まあちょっとは腕が立つかもしれないが・・・
「この野郎、やっぱ殿のお命を狙ってきたか!!」
「覚悟―――!!」
「止めろ! 捕らえるだけでいい! 殺すんじゃねえ!!」
リョーガの叱咤が響く。刀を振り上げた家来がびくりと止まった。
そいつに当て身。隣にいたもう一人の足を蹴り強制的にどかせ、跡部はその場を脱出した。
適当に廊下を駆け抜ける。途中で追っ手にも出会ったが、やはり指示が飛んでいるのかあくまで捕まえる事に重点を置いているようだ。統制力の取れた一団に感謝、といったところか。
《リョーガくんが意外と常識ある人でよかったねえ。友達は殺さないんだね》
(それもあるな。
ついでに俺を殺すと佐伯が本気で怒るからな。逆に生かしておけば取引の材料に使える。アイツの安全保障に俺はぴったりなんだろ)
《何かもう・・・、悪役なんだかただのへたれなんだか・・・・・・。
でも、なら捕まるのも1つの手じゃん?》
立場は保証されるだろう。部下への示しもあるから牢には入れられるだろうがその程度。拷問などすれば以下略だ。
(かもな。だが・・・)
《だが?》
尋ねる千石に、跡部は声に出して言った。追っ手をさらに3人叩きのめし。
「生憎と、人に利用されんのは大っ嫌いでな。
アイツの駒になんぞ誰がなるか」
《君・・・・・・、この時代だったら絶対早死にしてたよ?》
「そりゃ結構。俺がこの時代にいたんなら手っ取り早く天下統一してる。そうすりゃ俺が支配者だ」
《・・・・・・。
貴重なご意見ありがとうございました》
会話の終わりと共に、廊下も終わりとなった。行く手は2つ。右か、左か。
「こっちだな」
《うわ絶対やると思ったけど!!》
「だからお見通しなんだよ!!」
「げ・・・」
迷わず真正面の襖をなぎ倒し中に入る。だがそこは敵の巣窟だった。
《さすがリョーガくん・・・。命より金を取るサエくんの性格は読みきれなくとも、2択で絶対3を選ぶ跡部くんの性格は読みきったね》
「つまり次からは4を選べって事か・・・」
《いやむしろ1か2選んだ方がいいと思うよ・・・。
君けっこーいろいろ考え過ぎて自滅する派でしょ?》
「うっせーなあ・・・・・・」
ぼそぼそとぼやく。今更どんなに己の運の悪さを嘆いたところで、この現実は変わりそうになかった。
大勢対1人。向こうはこちらを殺さないが、こちらも向こうを殺せない。
殺していいなら1人だけ徹底的に破壊して恐怖を煽り立てるといった手も取れるが、出来ればあまりそういうエグい方法は取りたくない。しかも1人殺せばさすがに向こうも容赦してはくれないだろう。
《要約して絶体絶命、ただ今ピンチ絶好調!》
(そーいう解説はいんねーよ!!)
「かかれぇ!!」
家来の号令と―――
バッ!! ボシュッ!! バシュッ!!
「うあっ!!」
「何っ!?」
《手裏剣!?》
突如飛んできた何か―――千石の見極めによると手裏剣。確かに畳に突き刺さっている金属片はそれっぽかった。さすが解説者。目も良くなければ出来ないらしい―――が駆け出しかけた家来の足を止めたのは同時だった。
どこからともなくわらわらと人が集まる。室内で何の意味があるのか黒装束。つまりは外からやってきたらしい一団は・・・
「―――やあ景吾。待たせたな」
「その声―――佐伯か!!」
「正解」
―――第4回 2
2006.1.15