テニプリパロディ略してパロプリ劇場
―――スリップスリップ千石次第!―――
第4回―――3
佐伯お手製の『トンビ』に運ばれ夜空を舞う。交通の要所、坂上を眼下に見下ろし。
「うっわ〜。やっぱここは栄えてるな〜」
「戦国時代の光景を生で空から見下ろす、ねえ・・・。まさかンな事する日が来るとはな」
「貴重な体験だよな。
暫くこうしてよっか。久しぶりのデートだしな。夜空で、ってのもムードあるだろ?」
「バーカ何言ってやがる//。
つーか今までどこ行ってやがったんだよ? 勝手に連れてきたと思ったらいきなりいなくなりやがって」
「だから。ちゃんとこうして戻ってきただろ?」
「遅せえよ。
こっちは散々なメに遭ってたんだぞ?」
《だから君の周りの人がね》
「黙ってろ解説オンリー。
―――来るんだったらもっと早く来いよ」
ぼそりと呟く。実際さして苦労したわけでもないが、それでも今までどこにいるのか完全に不明だった佐伯との再会に、つい愚痴が零れてしまうのは止め様がなかった。
せめて顔は見られないようにと肩に埋め、存在を確認するようにぎゅっと抱き締める。多少硝煙や何やらは混じっているが、その奥からするのは間違いなく佐伯の匂いだった。
風が安定してきた。もう操縦の必要もないのだろう。佐伯の両手が頭と背中に回ってきた。
やはりぽんぽんと撫でられ。
「ごめんな。ずっと傍にいてやれなくって」
「ん・・・・・・・・・・・・」
それだけ頷く。それ以上は何も言わなかった。佐伯も―――跡部も。
悔しかった。佐伯の実際の年齢なんかは聞いた事がないが、生きてる環境の違いなのか、時折見た目以上に中身の年齢差を思い知らされる。
今もそうだ。自分はただ流されるまま過ごしてきただけだというのに、佐伯はこの時代でしっかり生活を確立しているようだ。
文句しか言えない子どもの自分。受け入れる器を持った大人の佐伯。
素直に礼も言えないから、だからせめて態度で伝えたい。来てくれてありがとう・・・と。
黙っていると、佐伯がおどけて笑い出した。
「けど俺だって苦労したんだぞ? 何せ2年前に放り出されちまったからな」
「2年前?」
「ああ。俺が落ちたのが天正元年―――今より2年前だ。
リョーガもお前もいないし、移動しようにも時元移動機は直せそうにないし。
仕方ないから2年待ったんだよ」
「んじゃお前・・・・・・」
まじまじと佐伯の顔を見る。ぱっと見た感じではそんなに変わっていないようだが、言われてみれば自分の中での彼より精悍な顔つきになったようだ。
2年の月日―――年齢と環境と―――は、彼を更に大人に仕立てていた。
「ん? どうした?」
「べ、別に何でもねーよ・・・//!!」
ばっちりと目が合い、跡部は慌てて顔ごと逸らした。頬が熱い。触れ合う体から聞こえるかもしれない。普段より早い心臓の音が。
不自然なまでに首を捻ったまま、言う。
「・・・・・・悪かったな」
自分よりもずっと大変だったというのに。2年もずっと自分を待っていたというのに。
なのに文句など言って。
視線を落とす跡部。上で、佐伯が笑うのが気配で伝わった。
「とにかく、こうしてお前のピンチに駆けつけて助ける事に成功した。
どうだ景吾? 見直したか?」
「っておい!! それで何で迫ってくんだよ!? 引っ付くんじゃねえ!! 顔も離せ!!
あんまいい気になってんじゃ―――!!」
「ほらほら景吾、そう動くなって。危ないだろ?
じっとしてろ。じっと、な・・・・・・」
耳元に囁かれる。心地よい声。
両手を腰の後ろで組み、軽く抱き締められる。
「・・・・・・。
ん・・・・・・」
安堵の吐息と共に呟き、跡部もまた体をゆるく絡めた。
きつくなくていい。ただこうして、互いの存在が感じ取れれば。
《跡部くんは、サエくんに支えられ、風に身を任せた。
サエくんから伝わる温もりが、今の跡部くんには何よりも心地よかった・・・・・・》
「―――ってこーいうところだけナレーションしてんじゃねえ!!」
《だって、
欲しいよねえ? みんな》
「そうだよなあ?」
「てめぇもかよ!?」
―――第4回 4
2006.1.15