テニプリパロディ略してパロプリ劇場
―――スリップスリップ千石次第!―――





第5回―――5


 リョーガの姿が見えなくなる。残されたのは、無数の死体と、馬2頭と―――跡部と佐伯。
 残され、
 跡部がぽつりと呟く。
 「最低だなお前・・・・・・」
 言いたい事なら山ほどある。山ほどあり過ぎて、何を言えばいいのか思いつけないほどだ。
 最短でまとめた跡部に、佐伯もまた最短でまとめてきた。
 「仕方ないだろ」
 跡部の中で、何かが切れた。
 今までかろうじて押さえていたものが、溢れ出す。
 「何が? 何が仕方ねえんだ?
  リョーガ殺すのがか? 俺騙すのがか?
  言ってみろよ佐伯!!」
 「聞いてくれ景吾。
  最初は俺だってそういうつもりじゃなかった。けど事情が変わっちまったんだよ」
 「変わったから殺すってか!?
  てめぇだって言ってたじゃねえか!! リョーガは仲間だって!!
  事情が変わればてめぇは仲間だって殺すのか!?」
 なんとか宥めようとする佐伯。全く止まらず跡部は迫り続け・・・
 「俺が殺したくて殺すとでも思ってるのか!? 自分だけ苦しんでると思うな!!」
 「―――っ!?」
 逆に怒鳴りつけられ、跡部は吐き出し続けた息を吸い込んで止まった。
 喉を引きつらせる跡部の襟を掴み上げ、
 「いいかよく聞け。
  俺はプロの殺し屋だ。この戦国の世と同じように、仲間が容易く敵になる時代で生きてきた。
  俺の仕事に、相手が仲間かどうかなんて関係ないんだよ!!」
 「佐伯お前・・・・・・」
 悲鳴のような叫び声。佐伯のこんな声は、初めて聞いた。
 叫び疲れたか、佐伯が手を下ろした。
 上がった息を落ち着け、最後にため息を吐く。
 「俺だって出来るんなら殺したくはないさ。
  アイツは仲間だ。ずっと思ってた。裏切ったり、騙したりしない、本当の仲間だって。本当の仲間に―――なれるって・・・。
  ずっと、信じてた・・・・・・」
 「なのに・・・、殺すのか・・・?
  なのに・・・・・・、
  ―――お前はアイツを殺しちまうのか・・・・・・?」
 「ああ・・・・・・」
 頷かれた。
 最後にもう一つだけ、訊く。
 「なら、それが俺だったら・・・?
  それが俺でも、お前は殺すのか・・・・・・!?」
 「・・・っ」
 「答えろ!!」
 暫しの無言の後、
 「・・・・・・・・・・・・ああ」
 やはり頷かれた。
 「仕事とあればね。けど―――
  ・・・・・・そうならないよう、願ってるよ」
 そうならないよう、本当に願っているのだろう。
 痛く伝わる。偽りのない気持ち。
 殺したくない。だから、





 ――――――リョーガを殺すのを止めるな、と。





 完全に言う事はなくなった。
 決して視線を合わせようとしない佐伯から跡部も逸らし、踵を返した。
 脇に待機させておいた馬を、街道まで戻す。
 「どこ行くんだ?」
 「どこだっていいだろ? てめぇにゃもう関係ねえ」
 「景吾・・・・・・」
 佐伯が顔を上げる。その顔を―――
 思い切り殴った。





 バシン―――!!





 「っ―――!」
 後ろに吹っ飛び、尻餅をついた佐伯。甘んじて受け入れる程度の罪悪感はあったようだ。昏い満足を覚える。
 冷め切った目で見下ろし、
 「よおおくわかったぜ、佐伯。
  結局てめぇにゃ『友情』なんつー気持ち、端からなかったんだな。
  すっかり騙されたぜ。
  そんなてめぇから見りゃ、俺はさぞかし面白かっただろ? 『友情』なんつーモンにほだされてンなトコまで来ちまってよ」
 愉う。もう愉いしか出てこない。
 それこそ狂ったように笑う跡部の目から、
 堪えきれなくなった涙が零れた。
 それを拭う事もなく、続ける。
 「てめぇも笑えよ! 俺はそんなてめぇの事、一番の友人だって思ってたんだぜ!? お笑い種だぜ!!
  おかげで俺は・・・・・・一番大事な友人に裏切られちまったよ!!」
 「景吾・・・・・・」
 立ち上がり、佐伯が手を伸ばしてくる。
 頬に触れかけた手を跳ね除け、
 「信じらんねえ・・・・・・。





  ――――――てめぇなんかもう仲間じゃねえよ!!」





 それだけ言い捨て、跡部もまた馬を走らせその場を後にした。





・     ・     ・     ・     ・






 街道を走りながら、風で涙を乾かす。跡部のその顔には、もう絶望は浮かんでいなかった。
 あるのは1つの決意。
 (こーなったら俺1人でぜってーやってやる・・・!! 何としてでもリョーガを助ける!!)
 《『何としてでも』って・・・・・・、
  ・・・・・・具体的にどうやって?》
 頭の中に流れる2人目の声。久しぶりに解説が戻ってきた。
 そこにいるワケでもないが、目線を上に上げる。
 コイツは何も言わない。何も訊いてこない。自分たちの事をずっと見聞きしていたというのに。
 ―――それが、今はありがたかった。今は・・・・・・必要ない事を考えていたくはなかった。
 前に目を戻し、千石の質問に答える。
 (手塚と不二の力借りる。アイツは信長んトコの所属だ。7年ありゃ、以前よりもうちっと位が上がってるだろうしな。
  直接リョーガは無理でも、アイツのツテ辿りゃ信長か秀吉か、上手くいきゃその辺りに接触出来る)
 《都合よく助けなんて借りれる?》
 (借りれんだろ。『内助の功』で貸しがある。不二が頼めば手塚は断りはしねえ。断るようなら不二に泣き真似仕込んでやる)
 《うわ君が意外に知能犯になってくる・・・》
 (手段なんぞ選んでられる余裕ねえからな)
 タイムリミットまで後3週間程度。その間に何が出来るか、それにより何が起こるか。そんな事はどうでもいい。
 ただ、自分は決めたのだ。絶対にリョーガを助けると。
 息を吸う。吸った息で肺を固め、
 一気に吐く!





 「それで歴史が変わるんだったらンなモン変わっちまえ!! 仲間殺さねえと作れねえ歴史なら、俺がこの手で壊してやる!!
  ―――俺はぜってー仲間を死なせねえ!!」





・     ・     ・     ・     ・






 リョーガと跡部、2人の『仲間』が去っていった方を見やり、
 佐伯はため息をついた。
 「俺が歴史を取るのはな・・・、リョーガ、景吾。





  ――――――お前たちと仲間になれた今現在を、無くしたくないからだよ・・・・・・」





 呟くその頬を涙が伝うのは、決して殴られた傷が痛むからだけではないだろう・・・・・・。



―――第6回 1











 ―――前回カッコよかったのは薔薇之介ですが、今回うららがすっごいカッコよかったです!! 歴史を変えてでも石松を助けるその様は正に漢!! いや女だけど!!
 さって本編に合わせ急転直下の展開を迎えた第5回。果たして跡部はリョーガを助ける事が出来るのか!? それともサエが殺してしまうのか!? まずは私が楽しみです!! ラストのサエの呟きは勝手に私が入れたもの。今だに薔薇之介の真意が明らかにされない! 一体なぜそこまで石松を死なせる事に拘るんだ薔薇之介〜〜〜!!!

2006.1.1516