テニプリパロディ略してパロプリ劇場
―――スリップスリップ千石次第!―――





突発ラスト予想!―――1


 さてこちらは長浜。今日は真面目に表の掃き掃除をしていた不二は、向こうから沸き立ってきた砂埃にきょとんとした。
 徐々にこちらに近付き・・・
 ヒヒーン!!
 ずざざざざぁっ!!
 「手塚いるかあ!?」
 「跡部!!」
 まるで道場破りの如く声を張り上げる男。7年経ったのに全く変わらない知り合いの登場に、不二は珍しく普通に驚いた。





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 「それで? 久しぶりに現れたと思ったら何の用だ?」
 騒ぎを聞きつけ駆けつけてきた手塚。
 7年経ち、意外と見た目が変わらない・・・というか見た目に実年齢の追いついてきた彼の、相も変わらない仏頂面を前に、
 跡部はいきなり土下座した。
 「頼む! 力貸してくれ!!」





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 「光秀様が信長様を殺し、その後秀吉様に殺される・・・?」
 場所を変え(さすがに表であれだけやるのは目立ち過ぎた)、静かな部屋で向かい合う。
 お茶を持ってきてくれた不二も交え―――もちろんお茶は口をつける程度にした―――、2人を相手に跡部は自分の知る『未来』を話した。もちろん素直に信じてくれる筈もなく、手塚が眉間の皺をさらに増やすだけだった。
 「そのような事―――」
 「―――待って、手塚」
 否定しかけた手塚を、
 止めたのは不二だった。
 跡部を見る。普段の笑顔ではなく、薄く目を開いて。
 「跡部、2つ確認させて?」
 「ああ・・・」
 「君と光秀様は知り合いなの?」
 「ああ」
 「君は、それを前にどうしたいの? 僕らにどんな助けを借りたいの?」
 2つ目の返事は、少し遅れた。『助けを借りる事』が大前提であったため、具体的にどうしようか考えていなかった。
 少し悩み、
 正直に告げる。
 「どんな助けを借りたいか、借りれるかは・・・・・・まだ考えてねえ。むしろこれはお前らの返事次第だからな。
  やりたいのは―――
  光秀を助けたい。アイツは俺の仲間―――いや、友人なんだ。むざむざ殺させたくねーんだ」
 「・・・・・・そう」
 不二が頷く。隣に座る手塚の手を取り、
 「助けよう? 手塚。
  僕らに何が出来るかわからないけど、それでも何かはしなくっちゃ」
 「だが不二・・・。大体今の話が本当だと言う―――」
 「証拠ならあるよ。
  思い出してよ、跡部が以前来た7年前の事。あの後、僕君に馬買ってあげたよね?」
 「あ、ああ・・・」
 「あれ提案してくれたの跡部だよ?
  ヘソクリはあるけど、君のためにどう使えばいいのかわからなかった僕に教えてくれたんだ。『だったら馬買え』って。そしたらそれが信長様に気に入って頂けて、出世の第一歩になるって」
 「そういえば、俺も言われたな。お前に何か提案されたら頷けと。まさかそれも・・・」
 「ね? 跡部の言ったとおりだよ? それで手塚、少しずつだけど領地頂けてるんでしょ?」
 「先程の話といいこの事といい、お前は『未来人』なのか? 光秀様と同じく」
 「・・・・・・。ああ」
 未来が先読み出来るかという意味では違う。それならリョーガがどうなるかがまず見たい。
 だが、リョーガがそう呼ばれているのと同じ理由でならそうだ。
 混乱を避けるため、その辺りの説明は抜きで頷く。
 頷きを確認し、
 なぜか意気込んだのは不二だった。
 「ほら!」
 「む・・・?」
 「こんなに珍しい力を授かった人が同じ場所に2人! 赤の他人なんて思えないでしょ!? 普通何か関係があるでしょ!?」
 「そういえば・・・
  跡部は南蛮から来たらしい事を言っていたな。実際見た目も俺たちと大きく違う。武者ならあるだろう髷もない。
  光秀様もそうだな。噂では、現れた当初は服も大分違っていたらしい」
 「ほらほら!! ますます友人説に信憑性が出てきたよ!?」
 「・・・そこだったのか論点は?」
 「だから!!
  友達だったら助けたくて当たり前でしょ!? でもって僕らだってもう友達でしょ!?
  友達助けるのに何悩んでんの!? 助けてあげようよ!!」
 「―――っ!」
 握り拳を作った不二の演説に、跡部はびくりと反応した。
 ―――『友達だったら助けたくて当たり前でしょ!?』
 つい先ほど、その『友達』に裏切られた。彼は友を仕事だから殺すと言う。
 ふと、目頭が熱くなる。涙なら枯れるまで流したというのに。
 (あーやべ。マジで泣くかもしんねえ・・・)
 《『純朴・人恋慕情』ってトコ? あ、これだと温泉旅っぽい?》
 千石の茶化しに、ようやっと跡部は顔を綻ばせた。涙ごと手で押さえつつ、微笑む。
 その向こうでは、観念した手塚が頷き・・・
 「・・・・・・。
  そうだな。お前もそう言うのなら・・・。
  わかった。跡部。俺たちに出来る事があれば言ってくれ。俺たちはお前に手を貸す―――どうした? 鼻柱など押さえて」
 「鼻血出そうなの?」
 「違げえ!!」





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 2人の協力が得られる事になったところで、改めて話を戻す。
 本能寺の変から、光秀が殺されるところまで詳細を語り・・・
 「何!? つまりあと数日で信長様が殺されると!?」
 (やべえ・・・。そういやこっから始まるのか・・・・・・)
 目を見開き戦慄く手塚。当たり前だ。現時点で彼は、その信長に仕えているのだから。
 どう話そうか悩む。ここで手塚が信長を助けてしまえば・・・・・・いや。
 (待てよ? 歴史なんぞもうどー変わろうがいいじゃねえか。
  ここでリョーガの作戦バラして信長殺させなけりゃ、アイツが殺される事もなくなるんじゃ・・・・・・)
 いや駄目だ。歴史の教科書で学んだところによると、信長は鳴かないホトトギスを殺すヤツ。実際信長は晩年になればなるほど残忍・冷酷・ヒステリックな性格が顕著になってくるという。腹心ですら難癖をつけ追放したという男を相手に、謀反を起こそうとしたなどとバレたらそれこそ殺される。
 「では急いで信長様に伝えねば!!」
 勢いよく立ち上がる手塚を殴り倒して気絶させようとし・・・
 「跡部も来い!! 今すぐ坂本城に行くぞ!!」
 「ちょっと待て!! 信長って安土城にいんじゃねえのか!?」
 信長が京都本能寺に入ったのは5月
29日。そんなに遠くはないのだから出発もそんなものだろう。いずれにせよ・・・
 ―――わざわざ光秀のいる坂本城に行く理由がない。
 (つーか、ンな話歴史にゃなかったよな)
 些細過ぎてスルーされたのか、それとも・・・
 《リョーガくんが変えたか、だね》
 千石が後を続ける。
 頷き、跡部は首を振った。
 (となるとやべえな・・・)
 《なんで?》
 (何が起こるかわかんねえ。もう俺らにとっても完全に『未来』の事になっちまった)
 《・・・・・・なるほど》
 場合によっては、本能寺の変を待たずすぐ殺すかもしれない。
 頭が切れ裏工作が得意なリョーガ。普段ならそんな気まぐれの行為絶対しないだろうが、果たして今はどうか・・・・・・。
 (なにせ今は佐伯に裏切られてヤケ起こしてる状態だ。
  多分もう、アイツにとっちゃ『佐伯の思い通り動かない事』が重要であって『天下を取る事』なんてどうでもよくなってんだろうな・・・)
 だとすると―――
 「おい手塚、なんで信長が今坂本城にいんだ?」
 「正確にはまだだ。これから中国遠征をするに当たり、秀吉様率いる隊を鼓舞するため、もうすぐ来られるそうだ」
 「って事は秀吉も坂本城にいるってか!?」
 「ああ。最後の作戦会議をするという事で来られている」
 「最悪だ・・・・・・」
 信長と秀吉。光秀―――いやリョーガにとって運命を左右する重要な2人。そして天下統一のため欠かせない存在。
 ―――2人まとめて今ここで殺せば、さぞかし景気よく歴史は変わるだろう。
 もう自分1人の命では購えないほどの変化。佐伯の仕事理由を完全に奪う気か。
 《もういっこ。これだとサエくん以外に殺される》
 「―――っ!!」
 皆のいる前で主と仲間を殺す。即座に自分も殺されるだろう。殺しを請け負った佐伯に対する、最高の復讐。
 立ち上がる。もう迷っている時間はない。
 「おっし手塚! 坂上城行くぞ!!」
 「うむ!」



―――突発ラスト予想! 2

2006.1.1617